「ピラティスは1レッスンで何キロカロリー消費しますか」「有酸素運動の代わりになりますか」——スタジオで最も多く受ける質問のひとつです。答えるには、ピラティスの運動強度を実際に測った研究を見る必要があります。そして、その研究は2026年に初めて統合されました。
結論を先に言えば、ピラティスの代謝強度は「軽度から中等度」で、消費エネルギーは1分あたり3〜4 kcal 程度。 ウォーキングと同程度か、それよりやや低い水準です。ただし、この数字は休息の取り方で大きく動き、しかも研究の確実性は「非常に低い」。この記事では、強度の測り方から始めて、この数字が何を意味し、何を意味しないかを整理します。そして「強度が低いなら心肺持久力は上がらないのか」という当然の疑問に、もう一本のメタアナリシスで答えます。
要点(結論から)
- ピラティスの強度は軽度〜中等度、3.0〜3.7 METs。 正確に測るほど 3.0 に近づく。
- 消費エネルギーは 1分あたり 3〜4 kcal、60分で 200 kcal 前後。 減量の手段として語る数字ではない。
- 強度は休息時間で2倍近く変わる。 「ピラティスの強度」は一つの値ではない。
運動強度はどう測るのか
METs(メッツ)
最も広く使われる指標が MET(代謝当量)です。安静時の酸素消費量(体重1kg・1分あたり約3.5mL)を 1 MET とし、その何倍のエネルギーを使っているかで運動の強さを表します。国際的な分類では、3.0 METs 未満を「軽度」、3.0〜5.9 METs を「中等度」、6.0 METs 以上を「高強度」とするのが標準です。普通の速さのウォーキングが 3 METs 前後、ジョギングはその2倍以上に相当します。
各種の運動の MET 値をまとめた「身体活動のコンペンディウム」(Ainsworth らによる2011年版)では、「ピラティス(一般)」に 3.0 METs が割り当てられています。つまり、分類上は中等度の下限ぎりぎりです。
消費エネルギーと心拍数
MET から消費エネルギーを概算する式はありますが、正確に測るには間接熱量測定——呼気中の酸素と二酸化炭素を分析する方法——が要ります。心拍数から推定する方法もありますが、ピラティスのように呼吸を意図的に制御し、姿勢を保持する時間が長い運動では、心拍数と実際の酸素消費のずれが大きくなることが知られています。この違いは、以下の結果を読むときに効いてきます。
なぜ心拍数からの推定はずれるのか
ランニングや自転車のような全身の持久的運動では、心拍数と酸素消費量はほぼ直線的に対応します。しかしピラティスには、この対応を崩す要素が複数あります。第一に、姿勢を保持する等尺性収縮が多いこと。筋肉に力を入れたまま動かさない状態では、酸素消費はさほど増えないのに血圧と心拍数は上がります。第二に、呼吸の意図的な制御。息を止めたり深く吐いたりする操作は、心拍数を動かしますが、代謝とは別の理由です。第三に、動作の合間の休息が多く、心拍数が上がりきる前に次の動作に移ること。
この結果、心拍数を使った推定は、ピラティスの強度を実際より高く見積もる方向に偏りやすい。以下の解析で、心拍数から推定した研究を除くと強度が下がるのは、この偏りが表れたものと考えられます。
2026年のメタアナリシス——3.7 METs、ただし幅が広い
Vitor GBB, de Oliveira LC, Pessôa RAG, Aguiar AF, de Oliveira RG. Metabolic intensity and energy cost of Pilates exercises: an exploratory systematic review and meta-analysis. Systematic Reviews. 2026;15:42.
ピラティスの運動強度を実測した研究を集めたところ、条件を満たしたのは6件、237名だけでした。参加者はすべて健康な若年成人です。
| 指標 | 統合値(95%信頼区間) | I² |
|---|---|---|
| METs | 3.7(3.1〜4.3) | 98% |
| 酸素摂取量(mL/kg/分) | 10.3(8.1〜12.6) | 99% |
| 心拍数(拍/分) | 108.6(104.1〜113.0) | 85% |
| 消費エネルギー(kcal/分) | 3.8(3.1〜4.5) | 98% |
| 主観的運動強度(Borg 6〜20) | 10.6(9.3〜12.0) | 40% |
統合値は 3.7 METs、1分あたり 3.8 kcal。60分のレッスンなら、単純計算で 200 kcal 強です。心拍数は 108 拍/分で、主観的な強度は「楽である」から「ややきつい」の間。数字の上では、中等度の運動の下のほうに位置します。
「高品質研究だけ」にすると 3.0 METs に下がる
ここで重要な感度分析があります。心拍数からの推定式を使った2研究を除き、間接熱量測定を行った質の高い研究だけで統合し直すと、METs は 3.0(2.3〜3.6)、消費エネルギーは 2.9 kcal/分(2.3〜3.6)に下がります。信頼区間の下限は 2.3 METs で、「軽度」の範囲に入ります。
これはコンペンディウムの 3.0 METs と一致する値です。心拍数から推定した研究が全体の統合値を押し上げていたことになり、正確に測るほど、ピラティスの強度は低めに出る。
I² = 98% が意味すること
METs と消費エネルギーの I² は 98% で、研究間のばらつきは極端です。著者らが最も大きな要因として挙げたのは休息時間でした。動作の間の休息が60秒以下のプロトコルでは約 3.4 METs、60秒を超えるプロトコルでは約 2.0 METs。つまり、同じ「ピラティス」でも、テンポの速いクラスと、一つひとつの動作を丁寧に説明しながら進めるクラスでは、強度が2倍近く違うということです。
加えて、6研究はすべて健康な若年成人を対象にしています。高齢者、初心者、疾患のある人ではまったく異なる可能性があり、しかも同じ動作でも熟練者と初心者では消費エネルギーが違います。著者らは確実性を「非常に低い」と評価し、1研究を除くごとに統合値が大きく動く不安定さも報告しています。
研究が区別していないもの
6研究の統合には、もう一つの限界があります。マットと器具(リフォーマーなど)が区別されていないことです。リフォーマーはスプリングの抵抗を使うため、設定によっては筋力トレーニングに近い負荷になり、同時に動作の補助にも使えるため負荷を下げることもできます。同じ「ピラティス」という名前で、消費エネルギーが大きく異なる可能性があり、6研究ではそれを分けて推定するだけの数がありません。
また、60分のレッスンの内訳も研究ごとに違います。ウォームアップ、説明、動作の保持、休息、クールダウン——このうち代謝が上がるのは動作の時間だけで、説明や修正に時間をかける指導形式では、レッスン全体の平均強度は下がります。「1レッスンで何キロカロリー」という問いに単一の答えがないのは、このためです。
「痩せる運動」として語らないために
この数字から導ける結論は限られています。60分で 200 kcal 前後という消費量は、ゆっくりしたウォーキング1時間と同程度で、これだけで体重を落とすことは現実的ではありません。シリーズの体組成の記事で見たとおり、ピラティスのメタアナリシスで体重や体脂肪率に変化が出た研究はありますが、その機序が消費エネルギーの増加だけで説明できるかは疑わしく、除脂肪量は変わっていませんでした。
本稿では「ピラティスで痩せる」とは書きません。 消費エネルギーの数字が、それを支持しないからです。ピラティスの価値は消費カロリーではなく、体幹の制御、バランス、姿勢の意識、動作の質にあり、それは別の記事で扱ってきたとおりです。
週150分の推奨との関係
世界保健機関をはじめとする国際的な身体活動の指針は、成人に週150〜300分の中等度の有酸素性身体活動を勧めています。「中等度」の定義は 3.0 METs 以上なので、ピラティスは定義上はぎりぎり算入できることになります。しかし、高品質研究の信頼区間の下限(2.3 METs)は軽度の範囲であり、休息の長いクラスでは 2.0 METs 程度に留まります。
実践上の含意は明確です。ピラティスを週1〜2回行っているだけで「推奨される身体活動量を満たしている」とは言えません。ウォーキングや自転車のような、確実に中等度以上になる活動を別に確保することが、指針の趣旨に沿った行動です。ピラティスはその上に積み重ねるものであって、置き換えるものではありません。
では、心肺持久力は上がらないのか
強度が軽度〜中等度なら、心肺持久力(VO₂max などで測る全身持久力)は改善しないと考えるのが自然です。ところが、この問いを直接調べたメタアナリシスは、やや意外な結果を示しています。
Pessôa RAG, de Oliveira LC, Vitor GBB, de Oliveira RG. Effects of Pilates exercises on cardiorespiratory fitness: A systematic review and meta-analysis. Complementary Therapies in Clinical Practice. 2023;52:101772.
同じ研究グループによる2023年の解析は、12件の無作為化比較試験、569名を統合し、対照群と比べて心肺持久力の効果量 SMD 0.96(95%信頼区間 0.39〜1.54)を報告しています。質の高い3研究(129名)に絞ると SMD 1.14(0.25〜2.04)。効果量としては「大きい」に分類される値です。
ただし条件があります。効果が現れたのは、練習の総時間が 1,440分(24時間)以上の場合でした。週2回・60分なら12週間、週1回なら24週間に相当します。それ未満の量では効果は確認されていません。マットと器具では差がなく、他の運動との比較では同等でした。
強度が低いのに持久力が上がる理由
この2本の結果は矛盾していません。心肺持久力を高めるのに必要なのは「高強度」ではなく、「現在の体力に対して十分な刺激が、十分な量、継続すること」です。運動習慣のない人にとっては 3 METs でも相対的には十分な刺激になり、それを24時間分積み重ねれば持久力は動きます。逆に、すでに走っている人がピラティスで持久力を伸ばすことは期待できません。
効果量 0.96 という数字は大きく見えますが、対照群が「運動なし」であることを踏まえれば、「運動を始めたら持久力が上がった」という当然の結果でもあります。他の運動と同等という結果が、この読みを裏づけています。
この結果の使い方
- ピラティスの強度は軽度〜中等度、3.0〜3.7 METs。 正確に測るほど 3.0 に近づく。
- 消費エネルギーは 1分あたり 3〜4 kcal、60分で 200 kcal 前後。 減量の手段として語る数字ではない。
- 強度は休息時間で2倍近く変わる。 「ピラティスの強度」は一つの値ではない。
- 心肺持久力は、運動習慣のない人が総計24時間以上続ければ上がる。 他の運動と同等であり、優れてはいない。
- 有酸素運動の代わりにはならない。 週150分の中等度の身体活動という国際的な推奨に、ピラティスは「中等度の下限」として算入できる程度である。
- 研究の対象は健康な若年成人のみ。 高齢者や疾患のある人での強度は測られていない。
出典
- Vitor GBB, de Oliveira LC, Pessôa RAG, Aguiar AF, de Oliveira RG. Metabolic intensity and energy cost of Pilates exercises: an exploratory systematic review and meta-analysis. Systematic Reviews. 2026;15:42.
- Pessôa RAG, de Oliveira LC, Vitor GBB, de Oliveira RG. Effects of Pilates exercises on cardiorespiratory fitness: A systematic review and meta-analysis. Complementary Therapies in Clinical Practice. 2023;52:101772.
- Ainsworth BE, Haskell WL, Herrmann SD, et al. 2011 Compendium of Physical Activities: a second update of codes and MET values. Medicine & Science in Sports & Exercise. 2011;43(8):1575–1581.
この記事は公表された研究の要約であり、診断や治療の助言ではありません。心疾患、高血圧、糖尿病などの持病がある方、運動中に胸の痛みや強い息切れを感じたことがある方は、運動を始める前に医師にご相談ください。

