月経痛に対するヨガの効果を調べたメタ分析は、標準化平均差 −2.09 という非常に大きい数字を報告しています。運動介入の研究でこの水準の効果量が出ることは、めったにありません。
ところが同じ数字の信頼区間は −3.99〜−0.19。上限はゼロのすぐ手前です。そして元になった試験は4件・230名にすぎません。
さらに、複数の運動を直接比較したネットワークメタ分析では、ヨガは比較された運動の中で最も効果が小さい部類に位置づけられています。
大きい数字と、その不確かさ。順に整理します。

ヨガに絞った統合
Kim SD. Yoga for menstrual pain in primary dysmenorrhea: A meta-analysis of randomized controlled trials. Complementary Therapies in Clinical Practice. 2019;36:94–99. DOI: 10.1016/j.ctcp.2019.06.006
2018年12月までに英語で発表された無作為化比較試験を4つのデータベースから検索したものです。原発性月経困難症のある230名(ヨガ群129名・非ヨガ群101名)を対象とした4試験が統合されました。
| 項目 | 結果 |
|---|---|
| 統合効果量(SMD) | −2.09 |
| 95%信頼区間 | −3.99〜−0.19 |
| p値 | 0.031 |
| 試験数 | 4 |
SMD −2.09 は、慣例的な目安では「非常に大きい」に分類されます。しかし信頼区間の幅は 3.8 もあり、真の効果は「ほとんどゼロ」から「極端に大きい」まで、どこにあってもおかしくありません。
4試験・230名という規模で、この幅が生じるのは自然なことです。点推定値だけを取り出して「効果量 −2.09」と引用すると、この不確かさが見えなくなります。
質の評価を行ったレビューも、同様の注意を促しています。14研究(無作為化比較試験8件・準実験研究6件、13〜45歳、計1,409名)を検討したものでは、Downs and Black チェックリストの評価が「おおむね中程度の質で、中程度のバイアスリスク」(無作為化比較試験15〜23点、準実験研究10〜17点、満点32点)とされています。
著者らの結論は「原発性月経困難症のある女性にとって、ヨガが安全で効果的な生活の質改善の方法であるという予備的な証拠が示された」としつつ、「ヨガの臨床的意義の大きさを確定するには、方法論的質の高い、より大規模な無作為化比較試験が今後必要である」と述べています(McGovern & Cheung, 2018, Journal of Midwifery & Women’s Health)。
他の運動と比べると順位が下がる
ここが、この領域を読むうえで最も重要な部分です。
Tsai IC, et al. Comparative Effectiveness of Different Exercises for Reducing Pain Intensity in Primary Dysmenorrhea: A Systematic Review and Network Meta-analysis of Randomized Controlled Trials. Sports Medicine – Open. 2024;10:40. DOI: 10.1186/s40798-024-00718-4
2024年2月2日までの無作為化比較試験から、29試験・1,808名を対象としたネットワークメタ分析です(INPLASY202330050)。リラクセーション運動、筋力トレーニング、有酸素運動、ヨガ、混合運動、骨盤底筋体操が比較されました。
| 時点 | 結果 |
|---|---|
| 4週間後 | リラクセーション運動が最も効果的(−3.56、95%CI −5.03〜−2.08) |
| 8週間後 | すべての運動が有効。リラクセーション運動 −3.87(−5.51〜−2.22) |
| ヨガ −2.75(−4.00〜−1.51) | |
| 脱落リスク | リラクセーション運動が有意に低い(−0.11、−0.20〜0.02)。対照群より脱落リスクが高い運動はなかった |
著者らの結論は「8週間の介入後、すべての運動介入が原発性月経困難症の月経痛を減らすのに有効であった。しかしリラクセーション運動が4週・8週のいずれでも最も効果的で、脱落リスクも最も低かった」というものです。
ヨガは「効果がある」群に含まれますが、示された範囲では最も小さい値でした。そして4週間の時点では、リラクセーション運動が単独で最も効果的とされています。
薬以外の介入全体で見ると
Li X, et al. Efficacy of non-pharmacological interventions for primary dysmenorrhoea: a systematic review and Bayesian network meta-analysis. BMJ Evidence-Based Medicine. 2024;29(3):162–170. DOI: 10.1136/bmjebm-2023-112434
運動、生薬、鍼、アロマセラピー、経皮的電気神経刺激、温熱、指圧、ヨガの8つの非薬物介入を比較した、33研究のベイズ型ネットワークメタ分析です(PROSPERO CRD42022351021)。
従来型のメタ分析では、8つの介入すべてがプラセボまたは無治療と比べて月経痛の軽減に正の効果を示しました。しかしベイズ型ネットワークメタ分析で、痛みの強さ(VAS)の減少をもたらす可能性が高いとされたのは次の3つです。
| 介入 | 効果(95%CI) |
|---|---|
| 運動 | −3.20(−4.01〜−2.34) |
| 温熱 | −2.97(−4.66〜−1.29) |
| 鍼 | −2.90(−3.97〜−2.85) |
結論は「とくに運動と鍼が、短期治療における潜在的に有効な非薬物治療とみなされる。実際、より大規模で方法論的質の高い研究が必要である」でした。ヨガは単独で上位に挙げられていません。
16試験を対象とした別のネットワークメタ分析でも、ヨガは無介入対照と比べて有意(SMD −2.12、95%CI −3.13〜−1.09)でしたが、結論は「鍼、灸、耳穴療法が原発性月経困難症の最良の治療であるかもしれない」というものでした(Liu ら, 2025, Journal of Pain Research)。

対照群でも痛みが減った試験
個別の試験を見ると、結果はさらに複雑になります。
Çelik C, et al. Effects of yoga on pain, sleep quality, and aerobic endurance in young women with primary dysmenorrhea: A randomized controlled trial. Health Care for Women International. 2026. DOI: 10.1080/07399332.2026.2682319
原発性月経困難症のある18〜25歳の女性36名を、ヨガ群18名と対照群18名に割り付け、12週間のプログラムを実施したものです。
| アウトカム | 結果 |
|---|---|
| 月経痛 | 両群とも減少(ヨガ p < .001、対照 p = .041)。群間差は有意でない(p > .05) |
| 睡眠効率・入眠潜時・睡眠時間 | 群間差なし |
| 入眠後覚醒 | ヨガ群で減少(p = .032)、対照群は変化なし(p = .813) |
| 心肺持久力 | 有意な変化なし(p > .05) |
ヨガ群の中では痛みが有意に減ったのに、対照群と比べると差がなかった。対照群でも p = .041 で減っています。
これは、この領域で注意すべき構造を示しています。月経痛は周期によって変動し、時間とともに自然に軽くなることもある症状です。群内の前後比較だけでは、介入の効果と自然経過を区別できません。
著者らの表現も慎重です。「12週間のヨガ介入は、群内では月経痛を減らし睡眠の連続性を改善するかもしれない。しかし有酸素性持久力には有意な改善が観察されなかった。」
月経前症候群(PMS)では
Pal A, et al. Evaluation of the effectiveness of yoga in management of premenstrual syndrome: a systematic review and meta-analysis. Journal of Psychosomatic Obstetrics & Gynecology. 2022;43(4):517–525. DOI: 10.1080/0167482X.2022.2086457
14研究が同定され、うち11研究が定量的解析に用いられました。
「ヨガは PMS の管理において有益であることが見出された。この便益は、PMS のすべての下位領域を個別に検討したときにも見られた——身体的下位領域を除いて。」
つまり感情面・行動面には効果が見られた一方、身体症状には見られなかったということです。著者らは限界として「研究の異質性、出版バイアスの可能性、限定的な選択基準」を挙げています。
データと結論が一致していない例
PMS に関するもうひとつの統合を、注意深く読む必要があります。
Ranga M, et al. The Effect of Yoga Therapy in Premenstrual Syndrome: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials. Journal of Obstetrics and Gynaecology Canada. 2024. DOI: 10.1016/j.jogc.2024.102579
224件から14研究が選ばれ、7研究がメタ分析に用いられました。報告された数値は次のとおりです。
| アウトカム | 平均差(95%CI) | I² | 判定 |
|---|---|---|---|
| 収縮期血圧 | −0.30(−2.29〜1.69) | 96% | 有意でない |
| 拡張期血圧 | −0.25(−0.99〜0.49) | 79% | 有意でない |
| 心拍数 | 0.08(−0.83〜0.99) | 89% | 有意でない |
| Moos 月経苦悩質問票 | 1.50(0.91〜2.10) | 92% | 有意 |
メタ分析に投入された4つのアウトカムのうち、3つ(血圧2種と心拍数)は有意ではありませんでした。そして有意だった1つも I² = 92% と、研究間のばらつきが極端です。
ところが、この論文の結論はこうです。「ヨガは、月経痛、月経不順、ストレス、緊張、不安を含む医学的・心理的状態のある人を助けうる。女性の感情的・行動的・身体的な PMS 症状を軽減し、生活の質を高めることが示されている。」
報告されたデータと、結論の書きぶりが一致していません。有意でなかった3つのアウトカムには触れず、メタ分析の対象外だった知見を含めて肯定的にまとめられています。
これは、この分野の論文を読むときに常に確認すべき点です。抄録の結論だけを読むのではなく、実際に報告された数値と信頼区間を見る必要があります。

用量についての所見
Li X, et al. A systematic review of exercise interventions on negative affect, pain, and fatigue in women with premenstrual syndrome. BMC Women’s Health. 2026;26. DOI: 10.1186/s12905-025-04242-9
20論文を対象とした系統的レビュー・メタ分析です。内訳はランニング6件、ピラティス3件、ヨガ11件でした。運動全般で、否定的感情(P < 0.01)、痛み症状(P < 0.01)、倦怠感症状(P < 0.01)の改善が示されています。
| アウトカム | より効果的だった条件 |
|---|---|
| 否定的感情 | ランニング 9〜12週間・週3回以上 |
| 痛み症状 | ヨガ 9〜12週間・週3回以上 |
| 倦怠感 | ヨガ 9〜12週間 |
ここでは、アウトカムによって有利な運動が分かれています。気分にはランニング、痛みと倦怠感にはヨガという結果でした。ただしこれは下位群解析であり、直接比較ではありません。
86研究を対象としたナラティブレビューでも、「ヨガと有酸素療法の介入が、全体的な健康の一貫した改善と痛みの重症度の減少を示した。ストレッチと筋力トレーニングの介入も便益をもたらすが、その帰結ははるかに不明瞭である」と評価されています。このレビューは「研究方法と所見のばらつきのため、メタ分析は成功しなかった」と明記しています(Chaurasia ら, 2026, Physiotherapy Research International)。
安全性について
安全性に関しては、複数の情報源が一致しています。
Tsai らのネットワークメタ分析では「対照群より脱落リスクが高い運動の種類はなかった」とされています。Chaurasia らのレビューでは「全体として重大な有害作用は報告されておらず、遵守率は高かった」と報告されました。
個別の試験でも、有害事象の報告は見られません。ただし、これらの試験の対象は原発性月経困難症——つまり器質的な原因が特定されていない月経痛です。子宮内膜症や子宮筋腫などによる続発性月経困難症は、別に扱われるべき問題です。
いま言えること
- ヨガに絞った統合では SMD −2.09 と非常に大きい。ただし信頼区間は −3.99〜−0.19、元になった試験は4件・230名
- 29試験1,808名のネットワークメタ分析では、8週間後にすべての運動が有効。ただしリラクセーション運動 −3.87 に対し、ヨガ −2.75
- 4週間の時点では、リラクセーション運動が最も効果的で、脱落リスクも最も低い
- 非薬物介入33研究のベイズ型解析で上位に挙がったのは、運動(−3.20)、温熱(−2.97)、鍼(−2.90)。ヨガは単独で上位に入っていない
- 12週間の無作為化比較試験では、両群とも痛みが減り、群間差は有意でなかった
- PMS では、感情面・行動面に効果が見られた一方、身体的下位領域には見られなかった
- ある PMS の統合では、メタ分析した4アウトカムのうち3つ(血圧2種・心拍数)が有意でなかったにもかかわらず、結論は肯定的に書かれている
- 下位群解析では、否定的感情にはランニング、痛みと倦怠感にはヨガが有利。いずれも9〜12週間・週3回以上
- 重大な有害作用の報告はなく、遵守率は高い
この領域の読み方をまとめると、次のようになります。
月経痛に対して、体を動かすことは有効である——ここは複数の統合が一致しています。
しかし「ヨガでなければならない」という証拠はありません。運動どうしを直接比べた解析では、ヨガはむしろ下位に位置づけられ、リラクセーション運動や鍼、温熱のほうが高く評価されています。
そしてヨガに絞った統合の大きな効果量は、4試験・230名という小さな基盤の上に立っています。
実務的に確からしいのは、9〜12週間、週3回以上という用量です。複数の下位群解析がこの範囲を支持しています。そして続けやすさ——Tsai らが脱落リスクを主要な評価項目のひとつに据えたのは、この点を重視したためと考えられます。
最後に、月経痛の背景に器質的な原因がある場合は、運動では対処できません。痛みが強い、悪化している、鎮痛薬が効かない、月経以外の時期にも痛むといった場合は、原因の評価が先にあります。
出典
- Kim SD. Yoga for menstrual pain in primary dysmenorrhea: A meta-analysis of randomized controlled trials. Complementary Therapies in Clinical Practice. 2019. DOI: 10.1016/j.ctcp.2019.06.006
- McGovern CE, Cheung C. Yoga and Quality of Life in Women with Primary Dysmenorrhea: A Systematic Review. Journal of Midwifery & Women’s Health. 2018. DOI: 10.1111/jmwh.12729
- Tsai IC, et al. Comparative Effectiveness of Different Exercises for Reducing Pain Intensity in Primary Dysmenorrhea: A Systematic Review and Network Meta-analysis of Randomized Controlled Trials. Sports Medicine – Open. 2024;10:40. DOI: 10.1186/s40798-024-00718-4
- Li X, et al. Efficacy of non-pharmacological interventions for primary dysmenorrhoea: a systematic review and Bayesian network meta-analysis. BMJ Evidence-Based Medicine. 2024. DOI: 10.1136/bmjebm-2023-112434
- Liu J, et al. Efficacy and Safety of Non-Pharmacological Therapies for Primary Dysmenorrhea: A Network Meta-Analysis. Journal of Pain Research. 2025. DOI: 10.2147/JPR.S498184
- Çelik C, et al. Effects of yoga on pain, sleep quality, and aerobic endurance in young women with primary dysmenorrhea: A randomized controlled trial. Health Care for Women International. 2026. DOI: 10.1080/07399332.2026.2682319
- Pal A, et al. Evaluation of the effectiveness of yoga in management of premenstrual syndrome: a systematic review and meta-analysis. Journal of Psychosomatic Obstetrics & Gynecology. 2022. DOI: 10.1080/0167482X.2022.2086457
- Ranga M, et al. The Effect of Yoga Therapy in Premenstrual Syndrome: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials. Journal of Obstetrics and Gynaecology Canada. 2024. DOI: 10.1016/j.jogc.2024.102579
- Li X, et al. A systematic review of exercise interventions on negative affect, pain, and fatigue in women with premenstrual syndrome. BMC Women’s Health. 2026. DOI: 10.1186/s12905-025-04242-9
- Chaurasia T, et al. Effectiveness of Different Exercises for Relieving Menstrual Symptoms: A Narrative Review. Physiotherapy Research International. 2026. DOI: 10.1002/pri.70229
この記事は公表された研究の要約であり、診断や治療の助言ではありません。ここで扱った研究は原発性月経困難症(器質的原因が特定されていない月経痛)を対象としています。痛みが強い、年々悪化している、鎮痛薬が効かない、月経以外の時期にも痛む、出血量が多いといった場合は、婦人科で原因の評価を受けてください。






