連載「ヨガはなぜ効くのか」全10回の第7回です。

「長年ヨガを続けている人の脳は、そうでない人の脳と違う」。この種の見出しは、色のついた脳の断面図とともに、繰り返し紹介されてきました。実際、島皮質や海馬の灰白質が大きい、前頭前野の活動が高い、デフォルトモードネットワークの結びつきが変わっている——そうした報告は確かに存在します。

しかし、その画像が何を示しているのかは、見出しが伝えるほど単純ではありません。結論を先に置きます。ヨガや瞑想の実践者と非実践者を比べた脳画像研究の大半は横断研究であり、脳が先か実践が先かを区別できません。標本は多くが数十人規模で、この分野で必要とされる水準を大きく下回ります。そして、大規模な集団研究では逆向きの所見も出ています。脳画像は、ヨガの機序を語るうえで最も説得力のある見た目を持ちながら、最も慎重に読むべき証拠でもあります。

痛みを軸にした神経画像の知見は別の記事にまとめてあります。この回は、機序の主張として脳画像をどう読むかに絞ります。

ヨガはなぜ効くのか 第7回 脳の構造と機能灰白質とデフォルトモードネットワーク|オンザショア立川店 立川駅徒歩1分年中無休の溶岩ホットヨガスタジオ

脳画像は何を測っているのか

まず用語を整理します。構造MRIは、脳の形と大きさを撮ります。よく使われるボクセルベース形態計測(VBM)は、脳を小さな立方体に区切って、神経細胞の本体が集まる灰白質の量を場所ごとに比べる方法です。「灰白質が多い」は、神経細胞が増えたことを直接示すものではありません。細胞の大きさ、樹状突起の広がり、血管、グリア細胞、さらには撮影時の水分量まで、さまざまな要因が信号に影響します。

機能MRIは、脳の活動に伴う血流と酸素消費の変化を撮ります。課題をやらせて活動部位を見る方法と、何もせず寝ているあいだの信号のゆらぎから領域どうしの結びつきを推定する方法(安静時機能的結合)があります。デフォルトモードネットワークは後者で見つかった概念で、課題をしていないときに活動が高まる、内側前頭前野や後部帯状回を含む領域の集まりを指します。自分について考えること、記憶をたどること、心がさまようことと関連づけられてきました。

ここで最初の落とし穴があります。ある領域の活動が変わったからといって、そこに割り当てられた心の働きが変わったとは言えません。ひとつの領域は多くの機能に関与しており、逆方向に推論する(活動部位から心の状態を言い当てる)のは、論理的に無理があります。デフォルトモードネットワークの変化を「心のさまよいが減った」と読み替える説明は、この無理を含んでいることが少なくありません。

よく引かれる所見——島皮質と海馬

ヨガの神経画像研究を網羅的に整理した総説から始めます。

van Aalst J, Ceccarini J, Demyttenaere K, Sunaert S, Van Laere K. What Has Neuroimaging Taught Us on the Neurobiology of Yoga? A Review. Frontiers in Integrative Neuroscience. 2020;14:34.

査読を経た34件(形態に関するもの11件、機能に関するもの26件、両方に分類されたもの3件を含む)が対象です。一貫して見られる所見として挙げられたのは、島皮質と海馬の灰白質体積の増加、前頭前野の活動の上昇、そして主にデフォルトモードネットワーク内の機能的結合の変化でした。

ただし著者らは、所見のばらつきが大きいこと、その一因がヨガの流派やアプローチの違いと標本サイズの限界にあることを明記しています。そして、この連載の観点から最も重要な指摘がこれです——身体活動のような直接の比較対照群は、これまでほとんど使われてこなかった。つまり、観察された差が「ヨガ特有のもの」なのか「体を動かす習慣一般のもの」なのかを、この文献群はほとんど区別できていません。

個別の研究を見ます。

Gothe NP, Hayes JM, Temali C, Damoiseaux JS. Differences in Brain Structure and Function Among Yoga Practitioners and Controls. Frontiers in Integrative Neuroscience. 2018;12:26.

3年以上の実践歴を持つヨガ実践者13名(平均年齢35.8歳)と、年齢・性別を合わせた対照13名(平均年齢35.7歳)を比較しました。所得・学歴・推定最大酸素摂取量・身体活動量に群間差はありません。結果、左の海馬の灰白質体積がヨガ実践者で大きく(p = 0.017)、作業記憶の課題中の背外側前頭前野の活動はヨガ実践者で低いという所見が得られました。

注目すべきは、課題の反応時間と正答率には群間差がなかったことです。脳の構造と活動に差があり、行動には差がない。この場合、脳の差が何を意味するのかは未解決のまま残ります。著者ら自身も、介入研究と縦断研究が必要だと結んでいます。

加齢との関係を見た研究もあります。ヴィルミュール(Villemure)らは、ヨガ実践者と対照で加齢に伴う灰白質の減少を比較し、対照群では既知の加齢性の減少が見られた一方、ヨガ実践者では見られなかったと報告しました。実践年数は左半球(島皮質、前頭弁蓋部、眼窩前頭皮質)の体積と、週あたりの実践時間は一次体性感覚野・楔前部・海馬・一次視覚野の体積と相関していました。運動と脳の大きさ一般については別の記事があります。

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因果の向きが決まらない

ここまでの研究に共通する構造的な問題があります。すべて横断研究、つまりある時点で2つの集団を比べたものです。ヨガを続けたから脳がそうなったのか、もともとそういう脳を持つ人がヨガを続けやすいのか、この設計では区別できません。実践年数との相関も同じで、長く続けられる人の特性が反映されている可能性を排除できません。

もっと大きな集団で調べると、話が変わることがあります。

Gotink RA, Vernooij MW, Ikram MA, et al. Meditation and yoga practice are associated with smaller right amygdala volume: the Rotterdam study. Brain Imaging and Behavior. 2018;12(6):1631-1639.

住民ベースの大規模コホートに組み込まれた研究で、3,742名が横断的な解析の対象となり、うち2,397名は複数回の脳スキャンを受けています。何らかの実践をしていたのは15.7%でした。年齢・性別・学歴・頭蓋内容積・心血管リスク・不安・抑うつ・ストレスを調整したうえで、瞑想やヨガの実践は右の扁桃体の体積が小さいこと(β = -31.8 mm3、p = .005)、左の海馬の体積が小さいこと(β = -75.3 mm3、p = .025)と関連していました。

ここで二重の意味で注意が要ります。第一に、海馬については先ほどの小規模研究と逆向きの結果です。第二に、この研究では瞑想やヨガを実践している人のほうが、経験しているストレスを有意に多く報告し(1から5の尺度で平均差0.2、p < .001)、抑うつ症状の得点も高いという結果でした(CESDで平均差1.03、p = .015)。著者らはこれを「ストレスがあるからこそ実践を始め、それが対処に役立っている」という向きで解釈しています。もっともな解釈ですが、同時に横断研究では逆の解釈も同じくらい成り立つことを示す実例でもあります。

介入の形で調べた研究でも、方向は一定しません。ユアン(Yuan)らは思春期の38名(平均年齢16.48歳、標準偏差1.29)に12週間の瞑想を含む訓練を行い、前後で構造MRIを撮りました。得られたのは左の後部島皮質を中心とした灰白質体積の減少で、対照期間には有意な変化がありませんでした。著者らは、成人で報告されてきた増加と食い違う理由として、思春期の脳の特性を挙げています。増えるのか減るのか、増えたら良いのか、いずれも確定していません。

標本が小さすぎる

この分野には、ヨガ研究に限らない大きな問題があります。個人差と脳の指標を結びつける研究に、どれだけの人数が必要かを検証した論文です。

Marek S, Tervo-Clemmens B, Calabro FJ, et al. Reproducible brain-wide association studies require thousands of individuals. Nature. 2022;603(7902):654-660.

合計約50,000名を含む3つの大規模データセットを使い、標本サイズを変えながら効果量と再現性を調べました。結果は率直に言って厳しいものです。脳と行動・精神的健康の関連はこれまで考えられていたより小さく、典型的な標本サイズでは検出力が不足し、効果量が水増しされ、再現に失敗する。標本が数千人規模に達して初めて再現率が改善し、効果量の水増しが減る。そして著者らは、神経画像研究の標本サイズの中央値がおよそ25名であることを指摘しています。

ヨガ・瞑想の構造研究の標本規模は、まさにこの水準です。先ほどの研究は13名対13名でした。もちろん、この論文が扱ったのは主に集団内の個人差を見る研究であり、介入前後の変化を追う研究や、病変・介入のように効果が大きい対象には、より小さい標本でも意味があるとされています。それでも、「実践者と非実践者の脳の差」という問いの立て方は、まさに個人差の研究そのものです。

マインドフルネス関連の灰白質研究を統合したメタアナリシスは、この点を具体的に検証しています。

Pernet CR, Belov N, Delorme A, Zammit A. Mindfulness related changes in grey matter: a systematic review and meta-analysis. Brain Imaging and Behavior. 2021;15(5):2720-2730.

25件を系統的に精査し、うち16件で活性化尤度推定という手法を用いた結果、研究間で一貫した効果が認められた領域は、右の前部腹側島皮質ただ一つでした。効果量は右島皮質でCohenのdが約0.8、全脳の最大値を使うと約1.0と、中程度から大きい水準です。しかし著者らは同時に、選択バイアス・情報バイアス・脱落バイアス・確証バイアスという設計上の問題と、統計的検出力の弱さを列挙し、瞑想を治療的介入として確立するには方法論の改善が必要だと結論しています。

yogaのレッスン前の様子生徒の足もとにあるヨガマット 立川駅徒歩1分年中無休の溶岩ホットヨガスタジオ

デフォルトモードネットワークという言葉の使われ方

デフォルトモードネットワークは、ヨガや瞑想の説明で最も人気のある用語かもしれません。出発点となった研究のひとつがこれです。

Brewer JA, Worhunsky PD, Gray JR, Tang YY, Weber J, Kober H. Meditation experience is associated with differences in default mode network activity and connectivity. Proceedings of the National Academy of Sciences. 2011;108(50):20254-20259.

経験を積んだ瞑想実践者と初心者の対照を比べ、瞑想中に内側前頭前野と後部帯状回という主要な節点の活動が相対的に低下すること、後部帯状回・背側前帯状回・背外側前頭前野の結合が実践者で強いことを報告しました。「心がさまようこと」の減少と整合する所見だとされています。影響力の大きい研究で、以降の説明の枠組みを作りました。

では、訓練によって本当に変わるのか。無作為化に近い設計の研究を統合したメタアナリシスがあります。ラーリグ(Rahrig)らがマインドフルネス訓練群226名と対照群204名を含む12件を統合した結果、有意に増加したのは、顕著性ネットワークに属する左中帯状回とデフォルトモードネットワークの中心である後部帯状回とのあいだの結合ひとつでした(Hedgeのg = .234、p = 0.0288、異質性の指標は15.87)。出版バイアスの検定は有意ではありません(bias = 2.17、p = 0.162)。

効果量0.234は小さい部類です。そして、見つかったのはネットワーク内の結合が下がったのではなく、ネットワーク間の結合が上がったという所見でした。「デフォルトモードネットワークが静まる」という一般向けの説明とは、必ずしも一致しません。この領域では、結合が増えたという報告も減ったという報告も両方あり、どちらも「良い変化」として解釈されてきました。どちらに転んでも肯定的に読める枠組みは、仮説として弱いものです。

構造より機能のほうが動きやすい

ルーサー(Ruther)らがマインドフルネスストレス低減法の脳画像研究を整理した最近の総説は、構造と機能を分けて評価しています。27件(構造MRI 9件、活動の研究10件、機能的結合の研究11件)を対象とした結果、構造MRIの所見は一貫せず、大半の研究で有意な灰白質の変化は認められませんでした。一方、機能MRIでは、感情の調整や注意に関わるネットワークの活動と結合の変化が比較的一貫して観察されています。

これは直感に合う結果です。数週間から数か月の訓練で脳の形が測定可能なほど変わるという主張は、もともと強い主張でした。活動パターンの変化のほうが、短い期間で起こりうると考えるほうが自然です。ただし、機能的結合の指標にも測定の安定性という別の問題があり、そちらも解決済みではありません。

主張裏づけの強さ読むときの注意
実践者は島皮質・海馬の灰白質が大きい横断研究では繰り返し報告因果の向きが不明。大規模研究では逆向きも
訓練で灰白質が増える一貫しない。多くは有意差なし介入研究の数と標本が足りない
デフォルトモードネットワークが変わる変化は出るが方向が一定しない効果量は小さい。解釈が過剰になりやすい
脳の変化が症状の改善を説明する媒介を検証した研究はごく少数機序と転帰は別の問い

この回のまとめ

脳画像は、ヨガの機序を論じる材料として最も強い印象を与えます。しかし、印象の強さと証拠の強さは別のものです。この領域の研究の大半は横断研究で因果の向きが決まらず、標本は必要とされる水準を大きく下回り、比較対照として身体活動を置いた研究はほとんどありません。統合すると、一貫して残る所見はごくわずかになります。

言えるのはここまでです。ヨガや瞑想の実践者の脳には、非実践者と異なる特徴が繰り返し報告されている。その差が実践によって生じたのか、実践を続ける人にもともとあったのかは、現在の研究設計では決められない。脳の画像が添えられていても、それは「なぜ効くのか」の答えではなく、答えを探すための手がかりの一つにすぎません。

次回予告

第8回は「柔軟性はなぜ増すのか——伸張耐性説と結合組織」を扱います。ヨガを続けると体が柔らかくなる。これは主観的にも客観的にも確かめやすい変化ですが、その理由は長らく議論の的でした。筋肉が伸びたのか、それとも「伸ばされる痛みに耐えられるようになった」だけなのか。測定の細部が答えを分ける領域です。

この連載の全10回

  1. 第1回|「効く」とは何か——機序を問う理由と研究の読み方
  2. 第2回|自律神経と迷走神経——心拍変動が語ること
  3. 第3回|ゆっくり呼吸の生理学——圧受容器反射と化学受容器
  4. 第4回|内受容感覚と島皮質——「身体に気づく」の神経基盤
  5. 第5回|HPA軸とコルチゾール——ストレス反応系は変わるのか
  6. 第6回|炎症マーカー——IL-6・CRP・TNF-αは動くのか
  7. 第7回|脳の構造と機能——灰白質とデフォルトモードネットワーク(この記事)
  8. 第8回|柔軟性はなぜ増すのか——伸張耐性説と結合組織
  9. 第9回|どの成分が効いているのか——成分分解試験という方法
  10. 第10回|総括——特異的効果と非特異的効果、機序研究の限界

出典

  1. van Aalst J, Ceccarini J, Demyttenaere K, Sunaert S, Van Laere K. What Has Neuroimaging Taught Us on the Neurobiology of Yoga? A Review. Frontiers in Integrative Neuroscience. 2020;14:34.
  2. Gothe NP, Hayes JM, Temali C, Damoiseaux JS. Differences in Brain Structure and Function Among Yoga Practitioners and Controls. Frontiers in Integrative Neuroscience. 2018;12:26.
  3. Villemure C, Čeko M, Cotton VA, Bushnell MC. Neuroprotective effects of yoga practice: age-, experience-, and frequency-dependent plasticity. Frontiers in Human Neuroscience. 2015;9:281.
  4. Gotink RA, Vernooij MW, Ikram MA, et al. Meditation and yoga practice are associated with smaller right amygdala volume: the Rotterdam study. Brain Imaging and Behavior. 2018;12(6):1631-1639.
  5. Yuan JP, Connolly CG, Henje E, et al. Gray Matter Changes in Adolescents Participating in a Meditation Training. Frontiers in Human Neuroscience. 2020;14:319.
  6. Marek S, Tervo-Clemmens B, Calabro FJ, et al. Reproducible brain-wide association studies require thousands of individuals. Nature. 2022;603(7902):654-660.
  7. Pernet CR, Belov N, Delorme A, Zammit A. Mindfulness related changes in grey matter: a systematic review and meta-analysis. Brain Imaging and Behavior. 2021;15(5):2720-2730.
  8. Brewer JA, Worhunsky PD, Gray JR, Tang YY, Weber J, Kober H. Meditation experience is associated with differences in default mode network activity and connectivity. Proceedings of the National Academy of Sciences. 2011;108(50):20254-20259.
  9. Rahrig H, Vago DR, Passarelli MA, Auten A, Lynn NA, Brown KW. Meta-analytic evidence that mindfulness training alters resting state default mode network connectivity. Scientific Reports. 2022;12(1):12260.
  10. Ruther S, Jackson E, vanSonnenberg E. Mindfulness on the brain: a review of structural and functional MRI findings in mindfulness-based stress reduction. European Journal of Radiology. 2026;195:112619.

この記事は公表された研究の要約であり、診断や治療の助言ではありません。脳画像の所見は病気の診断や治療効果を示すものではありません。記憶力や集中力の低下が続く場合、頭痛・めまい・意識の変化がある場合は、運動や瞑想の習慣で自己判断せず医療機関にご相談ください。てんかん、精神疾患の治療を受けている方は、瞑想を含む新しい実践を始める前に主治医に確認してください。

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