長期COVID(post-COVID condition、いわゆる long COVID)は、SARS-CoV-2感染から12週を超えて症状が続く状態を指し、世界でおよそ6,500万人が該当するとされます。最も多い症状は疲労で、患者の58%に及びます。自律神経障害、神経炎症、免疫調節異常、認知機能障害が病態として挙げられ、有効な治療は限られています。

この状況で、運動とリハビリテーションは有力な候補です。そして実際、複数のメタ解析が「運動は long COVID の疲労を改善する」という結果を出しています。

ところが同じ時期に、まったく別の研究群が次のことを示しました——long COVID 患者のおよそ半数が、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)の診断基準を満たす。そしてME/CFSの中核症状である労作後倦怠感(PEM)は、運動によって悪化しうるものです。

この記事は、その矛盾と、ヨガがそこに置かれる特異な位置を扱います。結論を先に言えば、鍵は「動かないヨガ」という設計にあります。

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運動は効く、というメタ解析

2023年6月までに発表されたRCT9本・672人を統合したメタ解析があります。介入は有酸素運動、多要素運動、呼吸運動、太極拳。

アウトカム効果量(95%CI)
疲労0.89(0.27〜1.50)
息切れ1.21(0.33〜2.09)
不安有意な効果なし
抑うつ有意な効果なし
認知機能障害有意な効果なし

出典: Cheng ら (2024) より作成。組み入れ9本のうち6本がバイアスリスク高。

サブグループ解析では、多要素運動が最も広い範囲(疲労・息切れ・抑うつ)に及び、監視下の運動、週4回以下の頻度、受動的対照群を用いた研究で正の効果が見られました(Cheng, 2024, Worldviews on Evidence-Based Nursing)。

より大規模な検証もあります。2025年7月までに検索した51本の試験・4,026人を対象としたメタ解析では、運動トレーニングについて6分間歩行試験(MD 83.20 m、95%CI 52.04〜114.37)、30秒椅子立ち上がりテスト(MD 3.05回)、SF-12精神的サマリースコア(MD 3.10)、予測値に対する最大酸素摂取量(MD 6.00%)で有意差が認められました(Tan, 2025, eClinicalMedicine)。

6分間歩行距離が83 m 伸びるというのは、リハビリテーション研究として非常に大きな数字です。ここだけ見れば、答えは出ているように見えます。

ただし、対象者の半数はME/CFSの基準を満たす

2021年2月から4月にかけて、long COVID の成人を対象に妥当性の確認された質問紙で症状を測定した観察研究があります。213人を解析した結果は次のとおりでした。

指標結果
FACIT疲労尺度の合計得点18(SD 10)/0〜52点、低いほど重度
慢性疲労を経験していた割合71.4%
ME/CFSで用いられるPEM基準を満たした割合58.7%

出典: Twomey ら (2022) より作成。PEM = 労作後倦怠感。

著者らの結論——「long COVID は臨床的に意味のある慢性疲労を特徴とし、その重症度は他のいくつかの臨床状態における疲労と少なくとも同等である。PEMはこの患者群にとって重大な課題である」(Twomey, 2022, Physical Therapy)。著者らは、後退と悪化の可能性があることを、リハビリテーションの推奨を組み立てる際の前提として挙げています。

同じ推定は、より大きな統合でも再現されています。2020年1月から2023年5月の臨床研究から13本・1,973人の long COVID 患者を集めたメタ解析は、51%(95%CI 42〜60%)がME/CFSの診断基準を満たしたと報告しました。最も多い症状は疲労、睡眠障害、筋・関節痛で、ME/CFSの特徴的症状であるPEMも経験していました(Dehlia, 2024, Journal of Infection)。

PEMが運動研究に投げかける問題
労作後倦怠感は、身体的・認知的な活動のあとに、数時間から数日遅れて症状が著しく悪化する現象です。運動によって「鍛える」という発想が通用せず、むしろ悪化させうる。
ここから、運動のメタ解析を読む際の重い問いが生じます——組み入れられた試験の参加者に、PEMを持つ人はどれだけ含まれていたのか。運動を続けられなかった人が脱落していれば、残った人の結果だけが統合されます。効果が「ある」と出た解析が、実は「運動に耐えられた人たちの中で効果があった」という限定つきの結論である可能性を、この領域は排除できていません。

感染後のME/CFSという枠組み自体は、パンデミックの早い段階から指摘されていました。COVID-19と感染後ME/CFSの関係を整理した総説は、ウイルス感染後に持続する多系統症状の共通性を論じています(Poenaru, 2021, Therapeutic Advances in Infectious Disease)。大規模観察研究も、COVID-19後のME発症率・有病率を報告しています(Vernon, 2025, Journal of General Internal Medicine)。

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動かないヨガ——等尺性ヨガという設計

ここでヨガの位置づけが変わります。ヨガのすべてが「動く」わけではないからです。

日本の研究グループが開発した等尺性ヨガ(isometric yoga)は、関節を動かさずに筋を収縮させる形式で、座位版と臥位版があります。ほぼ寝たきりの患者でも実施できるよう設計されており、ME/CFS患者、とくに線維筋痛症を併存する患者を想定しています。

2025年に発表されたRCTは、3か月以上の従来治療で満足な改善が得られなかったME/CFS成人48人(男性7人・女性41人、20〜70歳)を、ヨガ群24人と対照群24人に無作為に割り付けました。ヨガ群は従来治療に加えて約12週間の臥位等尺性ヨガ(病院受診時にヨガ指導者と25分のセッション、加えて自宅での毎日のセッション)を実施。対照群は従来治療のみです。

主要な評価はパフォーマンス・ステータス(PS)——日常生活の機能水準を表す指標でした。

結果——介入期間後、ヨガ群のPS得点は対照群より有意に低く(P < 0.001)、機能水準の改善が示唆されました。Chalder疲労尺度の得点は両群で低下しています(Oka, 2025, BioPsychoSocial Medicine)。

疲労尺度が両群で下がった一方、機能水準の差がついたという結果の形は注目に値します。疲労という主観の強さより、「何ができるか」のほうが動いた。ME/CFSの臨床で最終的に問題になるのは後者です。

この領域の文献を地図にした調査もあります。PubMed・Cochrane Library・Google Scholarを2025年4月まで検索し、ME/CFS成人へのヨガ介入を評価した研究を集めた結果、組み入れられたのは6本の一次研究で、その大半が日本の単一グループのものでした。介入は適応型等尺性ヨガ(座位/臥位、2〜3か月、週2回のセッションと自宅練習)に集中しています。疲労が一貫して軽減され、活力、疼痛、抑うつ、自律神経機能、そして腫瘍壊死因子α(TNF-α)などのバイオマーカーの改善が報告されました。有害事象は軽微で一過性。

著者らの留保は明確です——「適応型等尺性ヨガはME/CFSの疲労軽減において有望性を示すが、証拠は小さな標本、単群デザイン、短い追跡期間によって制限されている。これまでのところ、質的研究も大規模研究も実施されていない」(Giridharan, 2025, International Research Journal of Ayurveda & Yoga)。

マインドフル運動全般で見たとき

気功・太極拳・ヨガという「動きを伴うマインドフルな運動」を一括して検証したメタ解析もあります。2023年10月までに6つのデータベースを検索し、待機群・無介入・能動的対照と比較したRCTを対象としました。組み入れは13本・661人で、大半が中等度または高いバイアスリスクを持っていました。

主要評価項目である疲労について、マインドフル運動は対照介入より有効でした——SMD −0.44(95%CI −0.63〜−0.25)、I² = 48%、p < 0.0001。不安、抑うつ症状の重症度、睡眠の質という副次評価項目でも正の効果が観察されています。

ただし著者らは、証拠の確実性(GRADE)を「低」または「非常に低い」と判定しました(Fricke-Comellas, 2024, Healthcare)。効果は見えているが、その効果推定値がどれだけ信頼できるかについては、控えめな評価です。

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long COVID 専用に作られたヨガは、何を示したか

ここまでの研究の多くは、既存のヨガをlong COVIDに当てはめたものでした。では、この状態のために一から設計したらどうなるか。

インドとスウェーデンのヨガ専門家、long COVID研究者、患者アドボケイトによる合意形成プロセスを経て、成人のlong COVID向けに共同設計されたヨガプログラム(Breathe Easy)があります。30〜65歳の29人を、12週間のヨガプログラム群と健康増進(HP)介入群に1:1で無作為化し、追跡評価は盲検化。全員が通常の医学的治療を受けています。主要評価項目は実行可能性、副次評価項目は健康関連QOL(SF-36)でした。

指標結果
追跡率86%
遵守率(週2回以上)65%
遵守率(週1回以上)95%
重篤な有害事象報告なし
SF-36 身体的健康の群間差B = −1.30(95%CI −3.60〜1.00)

出典: Welfordsson ら (2026) より作成。予備的解析であり検出力不足。

実行可能性は確認され、遵守率は高く、重篤な有害事象はありませんでした。しかし介入前後の群間差は認められていません(Welfordsson, 2026, Complementary Therapies in Medicine)。著者ら自身が検出力不足と明記しており、これは「効果がない」ことの証明ではなく「まだ示されていない」ことの記述です。

ただし対照が「健康増進介入」——つまり能動的対照であることは重要です。先に見た運動のメタ解析で効果が出たのは、多くが受動的対照との比較でした。同じ時間、同じ枠組みで別のことをする群と比べたとき、差が消える。この構図は、ヨガ研究の他の領域でも繰り返し現れるものです。

いま最も強い証拠は、どこにあるか

long COVIDの介入全般を扱ったリビング系統的レビューが、この問いに答えています。2023年12月までのデータベースから、long COVIDの成人を薬物・非薬物介入、プラセボ/シャム、通常ケアに無作為化した試験24本・3,695人を組み入れました。内訳は薬物4本、身体活動またはリハビリテーション8本、行動的介入3本、食事4本、医療機器・技術4本、運動と精神的健康リハビリの組み合わせ1本です。

中等度の確実性で支持されたのは、次の二つでした。

  • オンラインの認知行動療法(CBT)——通常ケアと比べて疲労を軽減する可能性が高い(平均差 −8.4、95%CI −13.11〜−3.69、CISの疲労下位尺度)。集中力も改善する可能性が高い(−5.2、−7.97〜−2.43)。
  • オンラインの監視下・身体的および精神的健康の複合リハビリテーションプログラム——全般的健康の改善につながる可能性が高く、意味のある改善または回復を経験する患者が1,000人あたり推定161人多い(95%CI 61人多い〜292人多い)。抑うつ症状も軽減する可能性が高い。

(Zeraatkar, 2024, The BMJ)。ヨガは、この24本の中に独立した介入としては現れていません。

ヨガに関する文献の全体像を描いた調査は、2020年1月から2025年3月に6つのデータベースを検索し、重複除去後1,563件から31本(RCT 7本、比較臨床試験11本、前後比較9本、横断3本、症例集積1本、計2,847人)を特定しました。介入は自律神経、呼吸、疲労、神経認知、免疫の各領域を扱っています。著者らが挙げた主要な研究ギャップは、long COVIDに特化したRCTの少なさ、神経画像研究の不在、南アジア以外の証拠の乏しさでした(Bansal, 2026, Yoga Mimamsa)。パンデミック初期には、既存のヨガ研究から類推する形の文献レビューが書かれていました(Jaconiano, 2022, Complementary Therapies in Clinical Practice)。

その空白を埋める試験は、いくつも動いています。ドイツの3施設で、long COVID症候群による持続的疲労を持つ患者100人を、ヨガと健康教育の2群に無作為化する多施設RCTのプロトコルが公表されました。両介入とも12週間、週90分の監視下グループセッションと60分の自宅練習。主要評価項目は無作為化12週後のChalder疲労尺度で、副次評価項目にDePaul症状質問票による労作後倦怠感が含まれています(Cramer, 2025, BMJ Open)。PEMが正面から測定対象になっている点が、この領域の成熟を示しています。スウェーデンでも、健康関連QOLを主要評価項目として、ヨガと健康増進を比較するRCTのプロトコルが公表されています(Brodén, 2024, BMJ Open)。

読むときの手がかり

論点いま言えることまだ言えないこと
運動と疲労メタ解析で効果量0.89、6分間歩行距離+83 mPEMを持つ人でも同じか
PEMの頻度long COVID患者の51〜59%がME/CFS基準またはPEM基準を満たす—
等尺性ヨガME/CFS 48人のRCTで機能水準が有意に改善(P < 0.001)日本の単一グループ以外での再現
マインドフル運動全般疲労にSMD −0.44証拠の確実性は「低」〜「非常に低い」
long COVID専用ヨガ遵守率が高く、重篤な有害事象なし能動的対照に対する優位性(29人では検出力不足)
最も強い証拠オンラインCBTと、オンライン複合リハビリ(中等度の確実性)ヨガ単独の同水準の証拠
不安・抑うつ・認知—運動のメタ解析で有意な効果なし

実務的な読み方を三つ。

まず、自分にPEMがあるかを確かめる。労作の数時間後から数日後にかけて症状が著しく悪化する経験があるなら、一般的な運動処方の推奨をそのまま当てはめてはいけません。この判断は自己流で行うものではなく、long COVID外来や内科で評価を受けるべきものです。運動のメタ解析が示した効果量は、PEMを持つ人に対する保証ではありません。

「動くヨガ」と「動かないヨガ」を区別する。この領域でME/CFS患者を対象にした唯一の対照試験は、臥位で行う等尺性ヨガでした。ハタヨガのフローやヴィンヤサとは別物です。ヨガという言葉の広さが、ここでは危険に働きます。実施形式が何かを必ず確認してください。

証拠の階層に対して謙虚でいる。いまのところ、中等度の確実性で支持されているのはオンラインCBTとオンライン複合リハビリであり、ヨガはそこに届いていません。31本の研究があり、7本がRCTで、long COVIDに特化したものはさらに少ない——これが現在地です。有害事象の報告がなく、自宅で自己管理できる介入であることを踏まえれば、他の治療と並行して試す価値は十分にあります。ただしそれは「効果が確立している」という意味ではありません。

出典

  1. Cheng X, et al. The effectiveness of exercise in alleviating long COVID symptoms: A systematic review and meta-analysis. Worldviews on Evidence-Based Nursing. 2024. DOI: 10.1111/wvn.12743
  2. Tan C, et al. Effects of therapeutic interventions on long COVID: a meta-analysis of randomized controlled trials. eClinicalMedicine. 2025. DOI: 10.1016/j.eclinm.2025.103412
  3. Twomey R, et al. Chronic Fatigue and Postexertional Malaise in People Living With Long COVID: An Observational Study. Physical Therapy. 2022. DOI: 10.1093/ptj/pzac005
  4. Dehlia A, et al. The persistence of Myalgic Encephalomyelitis/Chronic Fatigue Syndrome (ME/CFS) after SARS-CoV-2 infection: A systematic review and meta-analysis. The Journal of Infection. 2024. DOI: 10.1016/j.jinf.2024.106297
  5. Poenaru S, et al. COVID-19 and post-infectious myalgic encephalomyelitis/chronic fatigue syndrome: a narrative review. Therapeutic Advances in Infectious Disease. 2021. DOI: 10.1177/20499361211009385
  6. Vernon SD, et al. Incidence and Prevalence of Post-COVID-19 Myalgic Encephalomyelitis: A Report from the Observational RECOVER-Adult Study. Journal of General Internal Medicine. 2025. DOI: 10.1007/s11606-024-09290-9
  7. Oka T, et al. Effects of recumbent isometric yoga on the daily functioning level of patients with myalgic encephalomyelitis/chronic fatigue syndrome: a randomized, controlled trial. BioPsychoSocial Medicine. 2025. DOI: 10.1186/s13030-025-00339-7
  8. Giridharan S, et al. Yoga Interventions for Chronic Fatigue Syndrome/Myalgic Encephalomyelitis – A Scoping Review. International Research Journal of Ayurveda & Yoga. 2025. DOI: 10.48165/irjay.2025.80902
  9. Fricke-Comellas H, et al. Exploring the Effects of Qigong, Tai Chi, and Yoga on Fatigue, Mental Health, and Sleep Quality in Chronic Fatigue and Post-COVID Syndromes: A Systematic Review with Meta-Analysis. Healthcare. 2024. DOI: 10.3390/healthcare12202020
  10. Welfordsson P, et al. Feasibility and preliminary effects of a yoga program developed for adults with post COVID-19 condition (Breathe Easy): Pilot randomized controlled trial. Complementary Therapies in Medicine. 2026. DOI: 10.1016/j.ctim.2026.103367
  11. Zeraatkar D, et al. Interventions for the management of long covid (post-covid condition): living systematic review. The BMJ. 2024. DOI: 10.1136/bmj-2024-081318
  12. Bansal B, et al. Yoga as a multimodal therapeutic intervention for post-COVID-19 syndrome (long COVID-19): A scoping review mapping neurological, autonomic, immunological, and rehabilitative evidence. Yoga Mimamsa. 2026. DOI: 10.4103/ymjscy.ymjscy_17_26
  13. Jaconiano S, et al. Yoga for COVID-19: An ancient practice for a new condition – A literature review. Complementary Therapies in Clinical Practice. 2022. DOI: 10.1016/j.ctcp.2022.101717
  14. Cramer H, et al. Yoga versus health education for persistent fatigue in patients with post-COVID-19 syndrome: protocol for a multicentre randomised controlled trial. BMJ Open. 2025. DOI: 10.1136/bmjopen-2025-107840
  15. Brodén M, et al. Effects of yoga compared with health promotion on health-related quality of life in adults with post-COVID-19 condition: protocol for a randomised controlled trial. BMJ Open. 2024. DOI: 10.1136/bmjopen-2024-085525

本記事は研究論文の要約であり、医学的助言ではありません。労作後に症状が著しく悪化する(労作後倦怠感)経験がある方は、運動を始める前に必ず医師にご相談ください。long COVIDでは、一般的な運動処方がかえって症状を悪化させることがあります。呼吸困難、胸痛、動悸、失神がある場合は速やかに受診してください。

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