新型コロナ後遺症(long COVID)に対するピラティスを調べた、49名の無作為化比較試験があります。週3回・12週間、オンライン群・対面群・対照群の3群に分けました。
| 群 | 結果 |
|---|---|
| 対面マットピラティス群 | 総合的・身体的・精神的疲労、体幹の等尺性筋力、上肢の筋持久力、有酸素能力が改善(p < .05) |
| オンラインマットピラティス群 | いずれも有意な改善なし |
| 両群共通 | 脂肪量、筋量、除脂肪量、体脂肪率、体重、BMI、腹囲・臀囲に変化なし/血糖、HbA1c、中性脂肪、総コレステロール、HDL、LDL、血圧に有意な変化なし(p > .05) |
結論は「我々の結果は、疲労と機能的能力に関連する長期COVIDの持続症状を軽減する有効な介入として、対面のマットピラティストレーニングの潜在力を強調する」(Cunha ら, 2024, International Journal of Environmental Research and Public Health)。
同じ内容を、同じ回数、同じ期間やっても、画面越しでは効果が確認できませんでした。

ピラティスが監督下の運動を上回った試験
59名を、ピラティス群・監督下の身体運動群・対照群に分けた8週間(週2回・計16セッション)の盲検化無作為化試験があります。
| アウトカム | 結果 |
|---|---|
| 6分間歩行距離 | ピラティス群のみ増加(p < .001、d = 0.762) |
| 運動後の修正ボルグスケール | ピラティス群のみ低下(p < .010、d = −0.835) |
| ピッツバーグ睡眠質問票 | ピラティス群のみ低下(p < .005、d = −0.699) |
| ピラティス vs 監督下運動(6分間歩行) | 95%CI 26.129〜179.770、p < .010、d = 1.021 |
| ピラティス vs 対照(疲労) | 95%CI −2.352〜−0.162、p < .050、d = 0.919 |
監督下の身体運動群では、6分間歩行距離が増えませんでした。ピラティス群だけが増え、しかも群間差の効果量は1.021です(Jorge ら, 2024, Journal of Bodywork and Movement Therapies)。
この2試験を並べると、単純な図式では読めないことが分かります。同じピラティスでも、実施形態によって結果が逆になる。
運動療法全般では、どうなっているか
14試験1,244名を統合したベイズ的メタ分析です。
Pouliopoulou DV, et al. Rehabilitation Interventions for Physical Capacity and Quality of Life in Adults With Post–COVID-19 Condition. JAMA Network Open. 2023. DOI: 10.1001/jamanetworkopen.2023.33838
| アウトカム | 結果 |
|---|---|
| 機能的運動能力 | −0.56(95%確信区間 −0.87〜−0.22)、確実性「中」、優越性の事後確率99% |
| 研究間分散 | τ² = 0.04(0.00〜0.60)=異質性は低い |
| 運動誘発性の有害事象 | オッズ比1.68(95%確信区間 0.32〜9.94) |
注目すべきは最後の行です。0.32から9.94——下限は「半分に減る」、上限は「10倍になる」。この幅では、何も言えません。
「しかしながら、運動誘発性の有害事象を経験する確率については、有意な不確実性と不正確さがあった。」
「安全性のアウトカムをめぐる不確実性を考えると、有害事象のモニタリングを強化した追加の試験が必要である。」
これは、この分野に固有の問題です。long COVIDの一部の人には労作後倦怠感(PEM)——活動の後に数日から数週間にわたって症状が悪化する現象——があり、運動が逆効果になりうることが知られています。

統合ごとに、有意になるアウトカムが違う
| 統合 | 有意だったもの | 有意でなかったもの |
|---|---|---|
| Chen ら, 2023(23研究1,579名) | 呼吸困難、疲労、抑うつ、6分間歩行、FEV1/FVC、生活の質 | — |
| Cheng ら, 2024(9研究672名) | 疲労(0.89、0.27〜1.50)、呼吸困難(1.21、0.33〜2.09) | 不安、抑うつ、認知機能障害 |
| Aggarwal ら, 2026 | 最大酸素摂取量(0.37、0.28〜0.45)、SF-12身体活動(0.64、0.45〜0.84)、I² = 0% | FEV1/FVC、6分間歩行、握力、mMRC呼吸困難スケール |
| Li ら, 2025(37研究3,363名) | 6分間歩行、30秒立ち座り、握力、FEV1、FVC、最大吸気圧・呼気圧、生活の質、疲労、呼吸困難、不安 | 抑うつ |
| Chakraverty ら, 2026(12研究1,403名) | 短期の6分間歩行(+102.34 m)、呼吸困難(−1.44)、不安(−1.64) | 長期の生活の質と呼吸困難 |
Cheng らの解析では6分間歩行が有意、Aggarwal らの解析では6分間歩行が有意でない。同じ指標で結論が割れています。
Cheng らは「含まれた研究の大半(9件中6件)がバイアスリスク高だった」と明記しています。
Aggarwal らの結論は率直です——「運動に基づくリハビリテーションは、長期COVIDのある人の心肺フィットネスと身体機能の改善に、控えめな便益を示す。しかしながら、肺機能、筋力、呼吸器症状への効果の証拠は、限られており一貫していない」(Aggarwal ら, 2026, Preventive Medicine: Research & Reviews)。
長期の効果は、確認されていない
Chakraverty らの解析が、この点を明示しています——「生活の質や呼吸困難について、統合された量的解析では有意な長期効果は観察されなかった。ただし質的な所見は、一部の縦断研究で生活の質の持続的改善を示した」。
結論は「リハビリテーションプログラムは短期的な便益をもたらした。長期的な有効性の証拠は、限られており一貫していない」(Chakraverty ら, 2026, ERJ Open Research)。

どれくらいの期間が最適か
37研究3,363名を統合した解析が、期間別のサブグループ解析を行っています。
| 期間 | 改善したもの |
|---|---|
| 4週以下 | 6分間歩行 |
| 4〜8週 | 6分間歩行、肺機能(FEV1、FVC)、生活の質、疲労 |
| 8週超 | 生活の質、疲労 |
種目別では——呼吸法は6分間歩行・肺機能・生活の質を改善。多要素運動は6分間歩行と疲労を改善。両者の組み合わせは6分間歩行、FEV1、FVC、生活の質、疲労を改善。
結論は「4〜8週のプログラムと、呼吸法・多要素トレーニングの両方の組み合わせが、長期COVID症候群の管理に最も効果的である」(Li ら, 2025, Therapeutic Advances in Respiratory Disease)。
Cheng らのサブグループ解析も、実務的な条件を示しています——多要素運動が最も広い範囲の症状に効き(疲労、呼吸困難、抑うつ)、監督下であること、頻度が週4回以下であることが、一部の症状に正の効果を示した(Cheng ら, 2024, Worldviews on Evidence-Based Nursing)。
週4回以下——多すぎないことが条件に入っている点が、この領域の特徴です。
安全性の実際
8研究を検討した系統的レビューは、有害事象を具体的に報告しています。
「有害事象を報告した5研究では、発生率は低く、報告された場合も軽度だった。」
「十分な情報を報告した7研究のうち、運動を受けた252名中、耐容性に関連する問題で介入を中止したのは1名だった。」
ただし著者らは慎重です——「利用可能な証拠は、運動介入が長期COVIDのある一部の人にとって有益かつ耐容できる可能性を示唆する。しかしながら、証拠基盤は、標本サイズが小さく追跡期間の短い、限られた数の研究から成る」。8研究の標本サイズは39〜119名(平均56名)、追跡は2〜28週(平均8.5週)でした(McDowell ら, 2025, BMJ Open)。
5つの無作為化比較試験512名を検討した早期のレビューも、同様の慎重さを示しています——「リハビリテーションは呼吸困難、不安、運動恐怖を改善したように見えた。肺機能の結果は一貫しなかった一方、筋力、歩行能力、立ち座りの成績、生活の質には改善が検出された」。そして「質的に確かなデザインに基づくさらなる研究を待って」という条件つきで推奨しています(Fugazzaro ら, 2022, International Journal of Environmental Research and Public Health)。
Chen らの23研究1,579名の統合も「カスタマイズされた運動に基づくリハビリテーションプログラムと、特定の型の長期COVIDへのその効果には、今後の大規模研究が必要である」としています(Chen ら, 2023, Medicine & Science in Sports & Exercise)。
呼吸困難に焦点を当てた多施設無作為化比較試験も実施されています。COVID-19関連の急性呼吸窮迫症候群後の患者を対象とした研究です(Romanet ら, 2023, Annals of Physical and Rehabilitation Medicine)。
なぜ結論が揃わないのか
統合ごとに有意になるアウトカムが違う理由は、いくつか指摘できます。
| 要因 | 内容 |
|---|---|
| 「long COVID」の定義が研究ごとに違う | McDowell らは適格基準に「研究の著者が定義するところの長期COVID」と書かざるをえなかった |
| 症状の型が混ざっている | 呼吸器型、循環器型、神経認知型、労作後倦怠感型が同じ「long COVID」として統合されている |
| 重症度の幅が大きい | 入院・人工呼吸を経た人と、軽症から後遺症が残った人では、回復の経過が異なる |
| 自然回復が進む | 時間経過とともに改善する人が一定数いるため、対照群も良くなる |
| 介入の中身が多様 | 呼吸法のみ、有酸素のみ、多要素、太極拳などが「運動」として一括りにされている |
Chen らが「特定の型の長期COVIDへの効果」という言い方をしているのは、この問題を指しています。「long COVIDに運動は効くか」という問い自体が、粗すぎるのかもしれません。
ピラティスを選ぶ理由があるとすれば
これまでの所見を踏まえると、ピラティスに固有の利点として説明できそうな点が3つあります。
| 特徴 | long COVIDとの関係 |
|---|---|
| 強度を自分で調整しやすい | 労作後倦怠感のリスクがある人にとって、心拍数を上げすぎない選択肢になりうる |
| 呼吸が組み込まれている | 37研究の解析で、呼吸法は6分間歩行・肺機能・生活の質を改善したと報告されている |
| 臥位・座位で行える | 起立性の症状がある人でも実施しやすい |
ただし、これらは試験で直接検証された仮説ではありません。Jorge らの試験でピラティスが監督下運動を上回った理由も、論文中では説明されていません。
いま言えること
- 対面のマットピラティスは疲労・筋力・有酸素能力を改善した。同じ内容のオンライン群では有意な改善なし
- 体組成と血液の代謝指標には、どちらの群でも変化がなかった
- 別の試験では、ピラティス群だけが6分間歩行を伸ばし、監督下の身体運動群は伸ばさなかった(群間 d = 1.021)
- 14試験1,244名の統合で、機能的運動能力は −0.56(確実性「中」、優越性の事後確率99%)
- ただし運動誘発性有害事象のオッズ比は1.68で、確信区間が0.32〜9.94
- 統合ごとに有意になるアウトカムが違う。6分間歩行は有意にも非有意にもなる
- 長期の効果は、統合された量的解析では確認されていない
- 最適な期間は4〜8週。呼吸法と多要素運動の組み合わせが最も効果的
- 頻度は週4回以下のほうが良い結果という報告がある
- 有害事象の報告は少なく軽度。252名中、耐容性の問題で中止したのは1名
- ただし研究は小規模(平均56名)かつ短期(平均8.5週)
実務的な整理です。
やってみる価値はありますが、「一部の人にとって」という但し書きが外せません。これは統合の著者自身が使っている表現です。
最も重要なのは、労作後倦怠感(PEM)の有無です。運動した翌日や数日後に症状が悪化するパターンがある場合、通常の運動療法は適しません。まず医療機関で評価を受けてください。
始めるなら、非常に軽い強度から。「今日できた量」の半分くらいから始め、翌日と翌々日の状態を見てから増やす——という進め方が安全です。
そして、画面越しより対面のほうが良い結果が出ています。強度の調整と、悪化の兆候を第三者が見ていることが、この領域では意味を持つのかもしれません。
出典
- Cunha ACR, et al. Online and Face-to-Face Mat Pilates Training for Long COVID-19 Patients: A Randomized Controlled Trial on Health Outcomes. International Journal of Environmental Research and Public Health. 2024. DOI: 10.3390/ijerph21101385
- Jorge M, et al. Eight weeks of Pilates Method improves physical fitness and sleep quality of individuals with post-COVID-19 syndrome: A randomized clinical trial blinded. Journal of Bodywork and Movement Therapies. 2024. DOI: 10.1016/j.jbmt.2024.11.037
- Pouliopoulou DV, et al. Rehabilitation Interventions for Physical Capacity and Quality of Life in Adults With Post–COVID-19 Condition. JAMA Network Open. 2023. DOI: 10.1001/jamanetworkopen.2023.33838
- Chen XK, et al. Effect of Physical Exercise–Based Rehabilitation on Long COVID: A Systematic Review and Meta-analysis. Medicine & Science in Sports & Exercise. 2023. DOI: 10.1249/mss.0000000000003280
- Cheng X, et al. The effectiveness of exercise in alleviating long COVID symptoms: A systematic review and meta-analysis. Worldviews on Evidence-Based Nursing. 2024. DOI: 10.1111/wvn.12743
- Aggarwal S, et al. Effectiveness of Physical Activity in Long COVID-19 Rehabilitation: A Systematic Review and Meta-analysis. Preventive Medicine: Research & Reviews. 2026. DOI: 10.4103/pmrr.pmrr_143_25
- Li S, et al. Effect of pulmonary rehabilitation for patients with long COVID-19: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Therapeutic Advances in Respiratory Disease. 2025. DOI: 10.1177/17534666251323482
- Chakraverty S, et al. Rehabilitation in long COVID: a systematic review and meta-analysis. ERJ Open Research. 2026. DOI: 10.1183/23120541.00133-2026
- McDowell CP, et al. Effectiveness and tolerance of exercise interventions for long COVID: a systematic review of randomised controlled trials. BMJ Open. 2025. DOI: 10.1136/bmjopen-2023-082441
- Fugazzaro S, et al. Rehabilitation Interventions for Post-Acute COVID-19 Syndrome: A Systematic Review. International Journal of Environmental Research and Public Health. 2022. DOI: 10.3390/ijerph19095185
- Romanet C, et al. Effectiveness of exercise training on the dyspnoea of individuals with long COVID: A randomised controlled multicentre trial. Annals of Physical and Rehabilitation Medicine. 2023. DOI: 10.1016/j.rehab.2023.101765
この記事は公表された研究の要約であり、診断や治療の助言ではありません。新型コロナ後遺症のうち、労作後倦怠感(PEM/post-exertional malaise)——活動の後に数時間から数日遅れて症状が強く悪化する現象——がある場合、通常の運動療法は症状を悪化させることがあります。運動を始める前に、必ず医療機関でPEMの有無を評価してもらってください。胸痛、安静時の強い動悸、立ち上がったときの激しい動悸やふらつき(体位性頻脈症候群の可能性)、息切れの悪化がある場合は、運動を中止して受診してください。心筋炎の既往がある方は、専門医の許可なく運動を再開しないでください。






