間食の乳製品と紅茶を合わせると、たんぱく質の消化は悪くなるのか。茶のポリフェノールと乳たんぱく質の結合を調べた研究から、結合、消化、吸収、腹持ちの違いを読み分ける。利用しやすさが下がるというレビューと高まる実験結果、動物のタンニン研究を日常の一杯へ移す際の注意点も確かめる。
ヨーグルトのふたを開ける横で、紅茶の湯気が立つ。その組み合わせを楽しんでいたのに、「茶のタンニンはたんぱく質と結合する」という話を読むと、急に食べ合わせが気になる。カップの中の出来事が、そのまま体の中の損になるのだろうか。
茶のポリフェノールと乳たんぱく質が相互作用することは、食品化学の研究で示されている。ただし、その結合を見つけたことと、人が間食で摂ったたんぱく質をどれだけ消化・吸収するかは別の問いだ。茶の成分の利用しやすさが下がり得るというレビューがある一方、実験条件下で高まるという結果もある。[5][15]
したがって、紅茶と乳製品を合わせただけで「たんぱく質が無駄になる」と決めるのは飛躍である。反対に、結合するから腹持ちがよくなる、と期待を足すのも早い。まずは、研究で変化したのが茶の成分なのか、たんぱく質なのかを分けて読む必要がある。[5][15]

紅茶と乳たんぱく質は、何が結びつくのか
ポリフェノールは茶に含まれる成分群であり、茶と牛乳の組み合わせを扱ったレビューでは、乳たんぱく質との強い相互作用が取り上げられている。牛乳を加えることで茶の成分の利用可能性が変わり得る、というのがこの問題の出発点だ。「牛乳を入れる」という日常の動作も、食品の成分同士が出会う条件を変える操作として調べられている。[5]
牛乳のたんぱく質と主要な茶ポリフェノールを調べた食品化学の実験では、水素結合やファンデルワールス力を介した相互作用が報告された。いずれも分子同士の引き合いを説明する言葉である。茶の成分が乳たんぱく質のアミノ酸残基、つまりたんぱく質を構成する部分と関わり、複合体を作ったという結果だ。対象は牛乳由来のたんぱく質と茶の成分であり、18〜39歳の女性の消化・吸収への当てはめには、人を対象とする検証が必要だ。[15]
複合体とは、ここでは異なる成分が結びついたまとまりを指す。この実験では、乳たんぱく質の二次構造、すなわち分子の部分的な折り畳まれ方も変化した。らせん状の構造などが減り、シート状の構造が増えたと報告されている。混ぜても何も起きない、という理解は研究と合わない。[15]
しかし、構造が変わったという説明に「栄養が消えた」という訳をつける必要はない。この研究が評価したのは、相互作用と茶ポリフェノールの実験条件下での利用しやすさである。乳たんぱく質の形の変化は重要な観察だが、それ自体を人のたんぱく質不足の判定に置き換えることはできない。[15]
日常では、ミルクティーを作る場合と、紅茶を飲みながら別の食品を食べる場合が一緒に語られがちだ。けれども、食品化学の実験を読む際には、どの成分を直接組み合わせたのかを先に見るほうがよい。乳たんぱく質と茶ポリフェノールの実験結果を、すべての間食とすべての飲み方に広げないためである。[15]
「間食の冷奴は凍らせるとたんぱく質も変わる?穴のある構造と消化を研究で読む」は食品そのものの加工を扱う記事だ。また、茶との結びつき一般は「女性の抹茶プロテインは消化が違う?茶の成分とたんぱく質の結びつきを研究で読む」に譲る。ここでは、紅茶に乳製品を合わせるときに生まれる疑問に絞り、何を測った結果なら食べ合わせの判断に使えるかを追っていく。
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
茶の成分の利用しやすさは、下がる報告も上がる報告もある
茶に牛乳を加えることを扱うレビューは、たんぱく質とポリフェノールの強い相互作用により、茶ポリフェノールの利用可能性が下がり得るとしている。一方で、乳たんぱく質には、消化管を通じた茶のカテキンの輸送や吸収に関わる働きもあると整理している。結合という同じ言葉の下に、成分の利用を妨げる面と運ぶ面が置かれている。[5]
これに対し、牛乳たんぱく質と茶ポリフェノールを組み合わせた実験では、相互作用によって茶ポリフェノールのバイオアクセシビリティーが高まった。これは、消化の過程を経て利用に向かい得る状態をみる指標であり、人の血液中に入った量と同じものとしては読まない。特に、ガレート基を持つ茶ポリフェノールで改善が大きかったという結果である。[15]
名前を挙げると、エピカテキンガレートとエピガロカテキンガレートである。難しい名前を覚えることよりも、「茶の成分を全部まとめて同じものと扱っていない」という点が大切だ。研究は個々の成分による違いも捉えている。紅茶という飲み物の名前だけでは、実験条件の細部まで同じにはならない。[15]
ここで、レビューと個別実験のどちらかを都合よく捨てると話が簡単になりすぎる。「牛乳を入れると茶のよさが消える」とも、「牛乳を入れれば必ず利用が高まる」とも固定しないほうがよい。レビューが整理する幅広い相互作用と、個別実験で観察された改善を並べると、少なくとも方向を一律に決められないことが分かる。[5][15]
また、利用しやすくなったのが茶のポリフェノールであるなら、その文章の主語を途中で乳たんぱく質に入れ替えてはいけない。「茶の成分が利用されやすい」から「たんぱく質も多く吸収される」へは、そのまま進めない。両方を同じカップに入れたという事実だけでは、測定した対象まで同じにならないのだ。[15]
間食を選ぶ立場からは、これは飲み方を細かく管理するための知識というより、広告や短い投稿の読み違いを減らす知識になる。「吸収がよくなる」という一文に出会ったら、何の成分の、どの段階の指標なのかを探す。対象が明確になるだけで、紅茶と乳製品を合わせる判断に使える話かどうかが見えやすくなる。[5][15]
タンニンの消化研究では、動物と食べ物の条件を見る
茶の食べ合わせを検索すると、タンニンがたんぱく質の消化を妨げるという説明に出会う。タンニンと栄養利用を扱う古いレビューは、栄養利用効率の低下などを挙げつつ、その主な生化学的な理由を、食事たんぱく質の消化阻害だけに求めていない。消化・吸収された後の栄養素の代謝への作用を重視している。[1]
この整理は、「結合した、消化できない、栄養にならない」という一直線の説明に立ち止まる理由になる。消化する段階と、吸収した後に利用する段階は、研究上も分けて考えられている。ただし、タンニン全般の栄養上の影響を論じたレビューを、紅茶を飲む人の間食の損失率として読むこともできない。[1]
具体的な消化の数字がある研究として、タンニン量の異なるソルガムという穀物を使った豚の試験がある。高タンニンと低タンニンの穀物を加工し、未処理のものと比較したところ、高タンニン側で乾物、エネルギー、たんぱく質、アミノ酸の消化率が改善した。個々のアミノ酸の改善幅は7.5〜23.5%だった。対象は豚であり、この改善幅を18〜39歳の女性の間食にそのまま当てはめることはできない。[4]
この結果には条件がある。穀物に重量比30%の蒸留水を加え、25℃で20日間保存する処理を行い、試験食には穀物を85%配合していた。保存にはカビの増殖を抑えるための酸の混合物も使われた。乳製品のおやつに紅茶を添える場面とは、動物も原料も処理も違う。改善幅の数字だけを持ち帰ることはできない。[4]
豚の研究では、消化管の末端側の小腸で測った消化率と、消化管全体で測った値にも違いがあった。タンニンと関わったたんぱく質の性質からは、水となじみにくい部分同士の結びつきが複合体形成で重要だと示唆された。消化研究は、単に「混ぜたら減った」を測るものではなく、どこで何を回収して評価したかも問う研究なのだ。[4]
同じ処理でも、低タンニンのソルガムでは消化率の改善が見られなかった。この違いは、何らかの加工をすればたんぱく質の利用が必ず高まる、という話ではないことを示す。処理の名前だけでなく、もともとの原料の性質を合わせて考える必要がある。紅茶との食べ合わせについても、タンニンという共通語だけで別の食品の結果を借りない読み方につながる。[4]
また、消化管全体の値が小腸末端の値と違ったことは、消化率という数字に測定場所の情報が必要な理由になる。異なる地点の数字を、同じ意味の成績表として並べれば比較を誤る。何を食べさせたかに加え、どこまでの過程を評価した数字かを確かめたい。[4]
数字で読むタンニン研究の条件
7.5〜23.5%:高タンニンのソルガムを処理した豚の試験での、個々のアミノ酸の消化率の改善幅。人の紅茶の効果ではない。[4]
30%:同じ豚の試験で穀物に加えた蒸留水の重量比。家庭の飲み方を指定する値ではない。[4]
20日間:同じ試験の穀物処理の期間。紅茶を飲む時刻の間隔を調べた数字ではない。[4]
8頭:飼料を入れ替えて比べた乳牛の試験の対象数。人の食べ合わせ試験の人数ではない。[2]
60.7%と69.1%:その乳牛試験の異なる飼料での見かけの粗たんぱく質消化率。紅茶と牛乳の組み合わせの値ではない。[2]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
1
2






