食欲を抑えるスープを探すとき、旨味で満足すれば食事量も減ると思いがちである。野菜スープや鶏のだしに旨味調味料を加えた比較試験から、食べ始めのおいしさ、食後の満腹感、実際の摂取量を分けて読む。女性と男性で異なる研究条件や、食事までの時間、たんぱく質との組み合わせも確かめる。
夕食の鍋からだしの香りが立つ。温かいスープをひと口飲めば、空腹は落ち着くのだろうか。けれど、だしのよい香りに触れた途端、むしろ食べる気が出ることもある。旨味を使った比較試験でも、口にした直後の食欲が増す一方、その後の食事量が減るという、時間によって向きの違う反応が観察されている。[6]
食欲を抑えるスープに旨味が役立つ可能性はある。ただし、旨味を加えれば必ず食べる量が減るわけではない。野菜スープで昼食の摂取エネルギーが減った女性の試験もあれば、満腹感や食べたい気持ちは変わっても、後の食事量が変わらなかった試験もある。[1][2][9]
そこで、ここでは「おいしかった」「空腹が落ち着いた」「実際に食べる量が変わった」を別々に読む。薄味の工夫は既存記事「ダイエットのわかめスープは旨味で薄味にできる?運動日の汁物と塩味を読む」に譲り、今回は食前の旨味と、その後の食欲・食事量の関係に絞る。

旨味の満足と満腹感は、同じ結果ではない
旨味は甘味や塩味などと並ぶ基本的な味で、食品中の遊離アミノ酸のひとつであるグルタミン酸によって生じる。だしと旨味を扱ったレビューは、日本のだしと西洋のスープストックで味の特徴が異なることにも触れている。身近な「だしが利いている」という感覚にも、食品に含まれる味の成分という足場がある。[12]
ただし、味がおいしいことと、お腹が満ちることは別の評価である。研究で使われるグルタミン酸ナトリウムは、旨味調味料の成分で、以下ではMSGと呼ぶ。鶏のだしにMSGを加えた中年女性の比較試験では、おいしさや好ましさは高まったが、食欲の自己評価は条件間で違わなかった。それでもMSGだけを加えた条件では、後に食べた総エネルギーが少なかった。対象が中年女性のため、18〜39歳の女性にそのまま当てはめられるかは別に検証する必要がある。[8]
この結果を「満足したから少なく食べた」と一本道にすると、研究で測った項目を取り違える。口に入れたときの好ましさは味の評価、空腹や満腹は自分が感じた状態、摂取エネルギーは食べた食品から求める量である。評価の対象が違うので、結果が別々の向きに動くこともある。[2][8][9]
逆向きの例もある。標準体重の女性を対象にした別の試験では、MSGを加えた鶏のだしで、食事前の一部の時間帯に空腹や間食したい気持ちが弱くなった。しかし、次の昼食で食べたエネルギーは、同じエネルギー量のMSGなしのだしと変わらなかった。「落ち着いた実感」はあっても、皿の上の結果は別だったのである。[9]
スープを選ぶ読者にとって、この区別は実用的だ。ほっとして食事に向かえたことを大切にしつつ、それを自動的な食事量の減少へ置き換えない。食べる量を減らすことだけを、スープが役立ったかどうかの採点基準にする必要もない。試験でも、感覚と摂取量は独立して確かめられている。[2][9]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
女性の試験では昼食が減ったが、午後まで同じではない
女性を対象とした無作為化二重盲検クロスオーバー試験では、過体重または肥満があり、摂食障害のない成人女性68人が参加した。クロスオーバーとは、同じ参加者が異なる条件を経験して比べる方法である。比較したのは、通常の野菜スープと、そこにMSGを加えた同じ野菜スープだった。[1]
スープは200 mlで、MSGの濃度は100 ml当たり0.5 gだった。昼食と午後の間食のそれぞれ10分前に飲み、その後は自由に食べられる条件で摂取量を測った。対照のスープはナトリウム量をそろえてあった。単に塩分の多い汁物と少ない汁物を比べた試験ではない点が、旨味の追加を考えるうえで大切だ。[1]
MSG入りでは、対照と比べて昼食の摂取エネルギーが有意に少なく、高脂肪の塩味系食品からのエネルギーも少なかった。一方、午後の間食では摂取エネルギーは低い方向だったものの、有意差はなかった。昼食で出た差を、そのまま午後にも続いた効果として扱うことはできない。[1]
ここでの「有意差」は、条件間の違いを統計的に評価した結果を指す。昼食の差が認められたことは重要だが、誰でも同じ分だけ減るという意味ではない。対象は体格や健康状態に条件のある成人女性であり、その場の自由摂取を比べた試験である。日々の体重変化や長期の食習慣を直接示す結果へ広げずに読む必要がある。[1]
もうひとつの比較試験では、標準体重で健康な中年女性86人が、低エネルギーの鶏風味のだしを飲んだ。だしは200 mlで、MSGなし、MSGのみ、MSGとイノシン酸を加えた条件を比較した。イノシン酸は旨味に関係する成分で、この試験ではMSGとの組み合わせも検証している。中年女性の結果を18〜39歳の女性にそのまま当てはめるには、年齢層の違いが残る。[8]
だしを飲んだ15分後に、味や脂肪量の異なる16種類のスナックを自由に食べた。MSGのみの条件では、総エネルギー、甘いものや高脂肪のスナックからのエネルギー、添加糖の摂取量が少なかった。しかし、MSGにイノシン酸を組み合わせた条件では、同じ所見は得られなかった。旨味に関係する成分を足すほど、食事量への作用も強くなるという単純な関係ではなかった。[8]
この試験の食事は、家庭の夕飯をそのまま再現したものではない。いろいろなスナックを選べる場で、何をどれだけ食べるかを見た結果である。昼食の野菜スープの試験とは、対象の体格だけでなく、後に出された食べ物も違う。両方を「スープで食欲が抑えられた」と短く表現すると、食品選択という具体的な違いが消えてしまう。[1][8]
おいしさで食べ始めの食欲が増すこともある
旨味には、食べ始めと食べた後で異なる反応が出る可能性がある。食事制限の傾向が低いボランティア26人の参加者内比較では、450 gのスープにMSGとイノシン酸を加えた場合、最初に味わったときの食欲がすぐに増した。同時にスープの好ましさも高まった。おいしいと感じて食べる気が出ること自体は、この試験で満腹感の失敗とは扱われていない。[6]
その後の自由に食べる昼食では、MSGとイノシン酸を加えた条件の方が、加えない条件より摂取量を減らした。スープには低エネルギーのものと、炭水化物・たんぱく質を多く含む高エネルギーのものがあり、旨味成分による摂取量の差はスープのエネルギー条件にかかわらず観察された。高エネルギーのスープ自体にも、後の摂取量を減らす作用が認められた。[6]
ここから見えるのは、食欲の時間差である。飲み始めに食欲が増したという一点だけで「旨味は食べすぎを招く」と決めるのも、後で摂取量が減ったから「最初から食欲を消す」と説明するのも正確ではない。食べている最中と、食べた後の満ち足りた状態を分けると、同じ試験内の結果がつながる。[6]
ただし、この試験はMSGとイノシン酸の組み合わせである。先ほどの中年女性の試験ではMSGのみで差が出て、組み合わせでは同じ結果にならなかった。試験ごとに参加者やスープ、後の食事が違う以上、「組み合わせが常に優れる」とも「組み合わせは役立たない」とも言い切れない。旨味という言葉が同じでも、比較した中身をそろえて読む必要がある。[6][8]
比較の相手にも注意したい。野菜スープの女性の試験は、スープを飲まない場合との比較ではなく、同じ野菜スープにMSGがあるかないかの比較だった。鶏風味のだしの試験も、だしを基本にして旨味成分の追加を比べている。「スープという料理そのものが、何も飲まない場合よりよい」と説明するための結果とは、問いの置き方が異なる。[1][8]
夕食の献立に落とし込むなら、今まで飲んでいた汁物の味をどう考えるか、という程度から読めばよい。食前のスープを新しく必ず追加することと、既にあるスープの旨味を変えることでは、食卓で起こる変更も違う。試験が直接比べたのは後者に近い条件であり、飲む習慣のない人に新しい習慣を義務づける結果ではない。[1][8]
数字で読む旨味スープの比較条件
68人:過体重・肥満の成人女性を対象にした、野菜スープの無作為化比較試験の人数である。[1]
200 ml:その試験で昼食や間食の前に飲んだスープ量である。毎日の推奨量を決めた数字ではない。[1]
10分:野菜スープを飲んでから自由に食べるまでの間隔だった。[1]
26人:MSGとイノシン酸入りのスープで、食べ始めの食欲と後の摂取量を調べた試験の人数である。[6]
120分:若い男性のにんじんスープの試験で、次の食事量を測った時点である。[2]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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