スクワットで重い負荷を持てるようになれば、スポーツでも高く跳べるのか。サッカーやバスケットボール選手の研究、若い女性の比較試験から、最大筋力と跳躍の変化を分けて読む。跳ぶ練習との組み合わせ、走る運動の重ね方、疲れるまで繰り返す意味も確かめる。
週末のバレーボールで、ネットの向こうへもう少し高く手を出したい。スクワットの重さは増えたのに、跳んだ感触は以前と変わらない。重さの記録は伸びた。その力を、踏み切りでどう使うかが次の課題になる。
スクワットを含む筋力トレーニングは、スポーツ選手の跳躍を改善する手段になりうる。サッカー選手を対象とした系統的レビューとネットワークメタ分析では、通常の練習と比べ、伝統的な筋力トレーニングによるスクワットジャンプの高さの差は平均4.40cmだった。対象は競技選手であり、18〜39歳の女性一般への適用には、競技経験や練習内容の違いを考慮する必要がある。[1]
若い女性の比較試験では、最大筋力の改善が同様でも、運動の組み合わせによって跳躍への適応が異なった。[15] スクワットの負荷と跳躍の高さを別々に確かめ、筋力をつける練習と跳ぶ動作を練習する役割を分けて考えたい。

重さの記録と跳ぶ高さは、別々に確かめる
筋力の研究では、最大挙上重量、つまり所定の動作で持ち上げられる最も重い負荷を使って変化を見ることがある。跳躍の研究では、実際のジャンプの高さを測る。同じ試験の中で両方が測定されているのは、片方の数字だけではもう片方の成果を置き換えられないからだ。若い女性を対象とした比較試験でも、ハーフスクワットの最大挙上重量と跳躍高は別々の評価項目だった。[15]
その試験では、若い女性20人が、下半身のパワートレーニングを行う群と、その直後に低強度のランニングを加える群に分かれた。期間は6週間、頻度は週3回である。最大筋力に関係する指標は両群で同じように改善したが、跳躍への適応は同じではなかった。[15] 重い物を持てるようになった事実と、跳ぶ動作が改善した事実を分ける必要がある。
ここでいうパワートレーニングは、研究が下半身のパワー向上を狙って組んだ運動である。家で行うスクワットなら何でも同じ内容になる、とは読まない。試験に参加した人の運動経験、組み合わせた運動、評価した動作を見て、初めて自分の練習との距離が分かる。[15]
ジャンプにも測り方の違いがある。研究にはスクワットジャンプ、カウンタームーブメントジャンプ、さらに腕振りを使う跳躍が登場する。しゃがんだ姿勢からの跳躍、反動動作を伴う跳躍、腕の動きを含む跳躍というように、評価する課題が違う。女子バレーボール選手の試験では、これらを分けて測定している。[4] 「ジャンプ力が上がった」という短い紹介を読んだら、どの課題かまで確かめたい。
体育館での目標も同じように言葉にできる。助走して打つ場面なのか、その場で上に跳ぶ場面なのか。自分が欲しい動作を先に決めれば、スクワットの負荷だけを追う記録から、競技で何が変わったかを見る記録へ進める。これは新しい数値目標を増やすためではない。研究が複数の跳躍課題を分ける読み方を、自分の目標にも当てはめるためである。[4][16]
短いダッシュへの移り方は、既存記事「スクワットで足は速くなる?重さの記録と短いダッシュの伸びを分けて読む」に譲る。ここでは、地面から上へ離れる動作に絞って、脚の力が成果に移る条件を考える。
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
選手の研究では跳躍が改善するが、約束の高さではない
サッカー選手の系統的レビューとネットワークメタ分析は、31件の研究をまとめ、筋力、跳躍、スピードなどを狙う運動を比較したものだ。ネットワークメタ分析とは、複数の運動法の比較関係を利用して効果を推定する方法である。スクワットジャンプでは、伝統的な筋力トレーニングと通常練習の平均差が4.40cm、95%信頼区間は2.07〜6.74cmだった。[1]
信頼区間は推定の幅を示すもので、参加者全員の伸びがその範囲に収まったという意味ではない。また、この差はサッカー選手を対象にした複数研究の比較結果である。読者がスクワットを始めれば同じ高さが上乗せされる、という予約券にはならない。論文も比較によって確実性が異なり、不確実さが残るとしている。[1]
研究の名前に「筋力トレーニング」とあっても、単独のスクワットだけの成績と混同しないことも大事だ。運動法という大きな分類の平均と、個別種目の処方は別の話である。このメタ分析からは、跳躍を目標とするとき筋力を重視する根拠を読めるが、特定の重さや深さが全員の正解だとは決められない。[1]
筋力が跳躍へ移る過程を考える手掛かりは、若い女性の比較試験にある。研究では、反動を使う跳躍だけでなく、筋線維の断面積や筋線維を信号が伝わる速度も測定した。パワートレーニングだけの群では、筋線維の断面積と、安静時の平均筋線維伝導速度が増加した。直後にランニングを加えた群では、その変化は見られなかった。[15]
研究者は、跳躍への適応の違いには、筋線維の肥大と伝導速度の変化が一部関わる可能性を挙げている。筋力の検査値に加え、筋の形や信号伝達にも着目した説明である。ただし、この試験は伸張反射そのものの寄与を切り分けた実験ではない。反動を使う跳躍への適応を、ひとつの仕組みだけで説明することは避けたい。[15]
反動を使う跳躍は、筋が伸ばされた後に短くなる動作を伴う。研究ではこの一連の動きを伸張短縮サイクルとして扱っている。若い女性の試験が示したのは、その動作を使う跳躍の高さやピークパワーへの適応と、最大筋力への適応が異なるという点だ。[15] スクワットで持てる負荷は力の変化を確かめる記録になる。反動を使って跳ぶ目標には、対応する跳躍の記録も必要になる。
跳ぶ練習の成績を、スクワットだけの手柄にしない
跳ぶ動作を繰り返すプライオメトリックトレーニングにも、跳躍高を改善する研究がある。バスケットボール選手を対象とした系統的レビューとメタ分析では、17研究、444人をまとめ、反動を使うジャンプの効果量は0.77、95%信頼区間は0.42〜1.11だった。スクワットジャンプでは0.86、95%信頼区間は0.52〜1.20である。[3]
これらはcmの増加量ではなく、研究間の結果をそろえて示した効果量だ。反動を使うジャンプでは研究間のばらつきも大きかった。18〜39歳の女性一般に当てはめる際は、対象がバスケットボール選手である点と、研究間のばらつきを考慮する必要がある。それでも、この分析は筋力トレーニングなどと混ぜず、跳ぶトレーニング自体の効果を検討した点で役立つ。[3]
複数の運動を合わせた試験もある。十分に訓練された16歳未満のバスケットボール選手18人を無作為に分けた研究では、8週間、週2回、垂直方向を狙う群と水平方向を狙う群を比べた。垂直群はスクワット、ジャンプスクワット、垂直跳びの組み合わせだった。両群で右脚の片脚垂直跳びが改善したが、水平群では短距離走の改善も見られた。18〜39歳の女性の運動計画に使う際は、成長期の競技選手の結果である点を考慮する必要がある。[7]
この試験は、動作の方向に合わせて運動を組んでいる。垂直群にはスクワットによる負荷を扱う動作と、実際に上へ跳ぶ動作が含まれた。水平群では股関節を伸ばす筋力運動に、そりを引くダッシュと疾走を組み合わせている。力をつける課題と、その力を狙った方向へ使う課題を一緒に練習する構成だ。これが動作特異性、つまり目標の動作に対応させて練習を選ぶ視点である。[7]
競技練習にスクワットを追加しようと思ったら、すでに練習でどの跳躍を行っているかも振り返りたい。練習全体で跳ぶ機会がある人と、筋力トレーニングだけを行う人では、研究に近づけるための相談内容も変わる。負荷を増やすことと、動作を組み合わせることを分けて相談する理由がここにある。[3][7]
研究を自分の練習へ持ち帰る際は、競技名だけでなく、比較相手にも目を向けたい。通常練習との差を問う研究と、異なる運動法同士を比べる研究では、数字が答える質問が違う。前者で効果があったとしても、後者のどの方法より優れるかまで決まるわけではない。[1][3][7]
数字で読むスクワットと跳躍
31研究:サッカー選手の複数の運動法を比較した系統的レビューとネットワークメタ分析。[1]
4.40cm:筋力トレーニングと通常練習のスクワットジャンプの平均差。95%信頼区間は2.07〜6.74cm。[1]
444人:跳ぶトレーニング単独を調べたバスケットボール選手のメタ分析の対象者数。[3]
20人・6週間:若い女性で、パワートレーニング後のランニング追加を比較した試験。[15]
64人・8週間:スクワット中の速度低下の許容範囲を変えた、若い筋力トレーニング経験者の試験。[18]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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