プロテインの筋肉への反応は男女で違う?女性の量を決める前に読む比較研究

プロテインで筋力アップを目指す女性は、男性より少ない量でよいのか。男女を直接比べた筋たんぱく質合成の研究と、若い女性だけの試験を読み比べる。ホルモン、血中アミノ酸、筋肉の合成、長期の筋力を分け、性別だけで量や効果を決めないための見方を、運動後の食事の場面から考える。

筋トレを終えて更衣室へ戻ると、隣の人が大きなシェーカーを振っている。自分も同じ量を飲むべきか、それとも女性なら少なめでよいのか。容器の大きさを見ても、筋肉の反応までは分からない。

答えの芯は、女性の筋肉も、たんぱく質を摂った状態での筋トレに反応するということだ。若い男女を直接比較した実験では、運動後の筋たんぱく質合成の増加に性差は認められなかった。男性のホルモン上昇が大きいから、女性では同じように合成が起こらないという考えは、この実験では否定された。[9]

ただし、これは男女の最適な摂取量が同じと証明した研究ではない。若い女性だけを調べた別の試験では、運動後にたんぱく質を飲んでも、飲まない場合より合成が有意に増えなかった。女性だから不要とも、男女とも同じ量が正解とも決めず、何を比べた実験かを読む必要がある。[9][20]

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男女で比べるなら、筋肉の何を測ったか

筋たんぱく質合成とは、筋肉のたんぱく質が新しく作られる過程である。今回の男女比較が調べたのは、とくに筋原線維という収縮に関わる部分の合成だ。運動後に力がついた気がするか、鏡で脚が変わったかではなく、筋組織を採取して、その過程の速さを測っている。[9]

若い男性と女性をそれぞれ8人ずつ調べた実験では、高強度の筋力トレーニングを行い、直後と運動26時間後にホエイたんぱく質25gを摂った。ホエイは乳由来のたんぱく質である。太ももの筋組織を運動前後に繰り返し採取し、回復中の合成と細胞内の反応を比較した。[9]

運動後1〜5時間の合成は、男性で2.3倍、女性で2.7倍に増加した。運動から24時間の回復を経たあとのたんぱく質摂取でも、男女で同様に合成が高まった。研究の結論は、栄養を摂った状態での筋力トレーニングに対する合成反応に、男女差は認められなかったというものだ。[9]

女性の数値の方が大きいから女性が優れている、と順位を付けるのも違う。ここで重要なのは倍率の並びではなく、研究として性差が検出されなかった点である。小規模な実験の平均値を、そのまま自分と隣の人の成長速度に置き換えることはできない。[9]

また、この実験では男女とも同じ量を摂っているが、摂取量を変えて男女別の最適量を探す設計ではなかった。同じ量で反応を観察したことと、同じ量が最適だったことは別の主張である。「女性は男性の半分」という換算表も、この比較からは作れない。[9]

既存記事「プロテインは女性用を選ぶべき?表示の違いと筋肉に必要な成分を読み解く」では商品の表示を扱っている。ここで考えるのは表示の分類ではなく、実際の筋組織の反応を男女で比べたとき、どこまで違いが見えるかである。

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ホルモンの大きな差が、そのまま合成の差ではない

同じ男女比較では、運動後早期のテストステロンの反応も測っている。テストステロンは、筋肉の適応との関わりが議論されてきたホルモンだ。運動後の早い回復期における血中濃度の曲線下面積は、男性が女性の45倍だった。曲線下面積は、時間を通じた反応の大きさを捉える指標である。[9]

ところが、筋たんぱく質合成の増加には性差が認められなかった。ホルモンの反応に大きな差があっても、同じ実験で測った筋肉の合成まで、それに比例した差は生じなかった。女性では血中テストステロン濃度が低くても合成が十分に刺激される、というのが研究者の示した結果である。[9]

細胞の中で合成に関わる合図にも、一部は性差があった。合図を伝えるたんぱく質の反応が男性で大きい項目があった一方、男女差がない項目もあった。それでも、最終的に測定した合成反応は同様だった。途中の合図と、実際に進んだ合成は、分けて読む必要がある。[9]

この区別は、運動の手応えを判断するときにも役立つ。「男性の方がホルモンが多いから、自分が食事を整えても意味が薄い」という諦めには、この直接比較は根拠を与えない。ただし、短時間のホルモン反応と合成が一致しなかった結果を、あらゆる年齢や長期の筋肉量について性差がないという話に広げることもできない。[9]

中央線の車内で男性向けの筋トレ動画を見て、食事まで別世界のものに感じることがある。だが、この研究の中では、女性の筋肉でも合成は活発になっていた。性別の一般論で自分の反応を先回りして小さく見積もるより、比較された条件を確かめたい。[9]

若い女性の試験で、追加の効果が出なかった理由を急がない

一方、健康な若い女性36人を対象にした無作為化二重盲検プラセボ対照試験では、違う角度の結果が得られている。参加者の年齢は平均23歳で、下半身の筋力トレーニング後に、ホエイ20g、菜種由来のたんぱく質20g、エネルギーを含まない対照飲料のいずれかを摂った。[20]

運動は、事前に測った最大挙上重量の80%で行う下半身の8セットだった。最大挙上重量は、1回持ち上げられる最大の重さである。その後5時間の血中アミノ酸と筋たんぱく質合成を測ったところ、運動自体は合成を強く高めたが、飲料の群による合成速度の有意差はなかった。[20]

合成速度の平均は、ホエイで毎時0.071%、菜種由来で毎時0.069%、対照で毎時0.061%だった。平均が高い順に並ぶことと、統計的に差が確認されたことは同じではない。この試験では群間差の検定は有意ではなく、たんぱく質を加えたことによる上乗せは確認されなかった。[20]

それでは、前の男女比較と矛盾するのか。男女比較は、たんぱく質を摂った状態での運動への反応を男女で比べている。女性だけの試験は、運動後に異なる飲料を摂った群どうしを比べている。前者が尋ねたのは性差であり、後者が尋ねたのは運動への追加効果だ。問いを区別すれば、両方の結果を並べて理解できる。[9][20]

さらに、両研究ではたんぱく質の量も運動条件も測定の設計も異なる。結果の違いを性別だけのせいにはできない。なぜ上乗せが出なかったかを、ホルモンや女性特有の体質で説明したくなるが、この比較だけで原因を特定することはできない。[9][20]

実用上も、「この条件で追加の増加が確認されなかった」と「女性にはたんぱく質が要らない」は遠く離れている。食事から必要な栄養を摂る話と、運動直後の飲料が合成をさらに高めるかという話を混ぜないことだ。飲んだら必ず上乗せがあるという期待も、飲まないと運動が無駄になるという不安も、この試験の結果とは合わない。[20]

数字を比べる際には、対照群の役割にも注目したい。女性だけの試験では、たんぱく質を含まない飲料の群も同じ筋力トレーニングを行っている。したがって、その群は「何もしていない人たち」ではない。運動による刺激がある土台の上に、飲料がどれだけ追加の違いを作るかを調べた比較である。[20]

これに対し、男女比較で示された倍率は、運動後の合成が高まった程度を表す。対照飲料との差を示す数字として扱ってはいけない。たとえば「女性は2.7倍になったから、プロテインだけで合成がそれだけ増えた」と読むと、運動を含む実験条件を飲料だけの効果にすり替えてしまう。[9]

測定した時間にも意味がある。女性の飲料比較が見たのは運動後5時間で、男女比較では翌日の回復段階も測っている。飲んだ直後の反応を知りたいのか、回復の途中も知りたいのかで、役立つ結果は変わる。短い観察を長期の成果の代役にせず、時間の範囲ごとに結果を受け取る読み方が必要だ。[9][20]

実験の数値を生活に持ち帰るなら、まず「男女の比較」「飲料を加える比較」「合成が起こった時間」を余白に書いてみるとよい。同じ筋肉の研究でも、この区別によって、量について答えられる部分と答えられない部分が見えてくる。研究どうしの違いを消して、性別だけを答えとして残さないための読み方である。[9][20]

数字で読む男女差と運動後の合成

男女各8人:たんぱく質を摂った状態での運動反応を直接比較した人数である。[9]

25g:男女比較で運動直後と26時間後に摂ったホエイの量であり、最適量の結論ではない。[9]

2.3倍と2.7倍:運動後早期の男性と女性の合成増加で、研究では性差は認められなかった。[9]

45倍:男性のテストステロン反応の大きさであり、筋肉の合成の男女比ではない。[9]

36人:女性だけの試験の参加者数。20gの摂取による運動後5時間の合成の上乗せは有意でなかった。[20]

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