目の錯覚で靴の色が違って見える?右脳左脳の診断より光の手がかりを読む

同じ靴の写真を見ても色の答えが合わない。その違いを考える鍵は、物の色と照明の色をどう分けて見ているかにある。ドレス写真、背景、光沢、色の記憶を調べた実験から、色恒常性の働きと限界を読む。右脳左脳の性格診断に進む前に、見えている色と言葉で答える色を分けて考える記事である。

同じ靴の写真を囲んでいるのに、友人と色の答えが合わない。「この色にしか見えない」と返したら、向こうも同じ強さで別の色を答える。画面の靴より先に、会話のほうが脱ぎ履きしにくくなる。

こうした写真を考える入口は、物に当たる光をどう見積もるかである。色恒常性とは、照明が変わって目に届く光が変わっても、物の表面の色を比較的安定して見る働きだ。ドレス写真を調べた研究では、写真の中の照明をどのような色と捉えたかが、ドレスの色の見え方の違いを説明した。[1][4]

ここで取り上げるのはドレス写真や実物の色合わせ、照明の変化を扱った研究であり、ネット上で広まった特定の靴画像の錯視を直接検証した研究ではない。その靴の色が人によって違って見える原因を、これらの結果だけで確定することはできない。研究から説明できる範囲を、光の手がかりと色の答え方の仕組みに絞って読む。性格診断の話は既存記事「右脳と左脳の性格診断にエビデンスはあるか、1,011人の脳画像が支持しなかった右脳派」に譲り、色の回答を脳の型の名前に置き換えない読み方を考える。

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目に届く光には、物と照明の情報が混ざっている

赤い布を見ているつもりでも、目に入るのは布だけから決まる情報ではない。表面が光をどう反射するかと、そこにどのような光が当たるかが、反射して目に届く光の中で絡み合う。照明の色の知覚を扱ったレビューは、この絡み合いを出発点としている。物の見かけの色と照明の見かけの色がどう関係するかには、なお未解決の問いがある。[7]

ここで区別したいのは、「画面上でこの部分がどんな色をしているか」と「写っている物はどんな色だと思うか」である。写真を前にした会話では、この問いが重なりやすい。ドレス研究では、写真に答えた色の名前と、その見え方に合わせて選んだ色見本に答えた名前とが食い違った。名前だけでは色合わせの違いを十分に捉えられなかったのである。[4]

靴ひもの色を尋ねるときにも、見えた印象を答えているのか、実物の色を推測しているのかを確かめたい。これは筆者による会話の問いを整理する提案だ。研究で知覚と命名のずれが示された対象はドレス写真である。靴の写真でも同じずれが起きていると判断するには、その画像で色名と色合わせを比較する検証が必要になる。[4]

色恒常性は「いつでも同じ色に補正する機能」と理解するとつまずく。実際の物体を異なる照明の下に置いた実験では、光の変化の方向や背景によって成績が異なった。見え方を保つ働きには条件があり、その条件を調べることが研究になる。写真の色が人によって割れた場面も、まず光の条件を考える題材として読むのが筋である。[1][4]

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青い光の変化は、気づきにくいことがある

実物の場面を使ったPearceらの実験は、物の色を直接答えさせる方法とは別に、照明の違いを見分ける課題を用いた。見慣れた物や見慣れない物を置き、背景も一様なものと色の変化があるものを用意した。照明は10チャンネルの発光ダイオード照明装置で作り、昼光に沿う、おおむね青と黄の方向の変化と、それとは異なる赤と緑の方向の変化を比較した。[1]

照明の変化は昼光に沿う方向で見分けにくく、とくに青みが増す方向で見分けにくかった。著者らは、裏返せば青い昼光の照明に対して表面の色が安定して見えることを示すと解釈した。一様な背景では照明の変化を見分けやすくなり、色恒常性は弱まった。この背景の結果は、物が見慣れた種類かどうかによらず認められた。[1]

つまり、この課題では「違いに気づくのが得意」が、そのまま「物の色を安定して見るのが得意」を意味しない。光の変化が目立たないことが、物の見え方を保つ側に働く。色のテストなら全部、正解をよく当てる人が優秀だと思って読むと、この関係を取り違える。何の変化を答える課題なのかが肝心である。[1]

別の実験では、22人が部屋全体の照明の色の連続的な変化を見た。10秒間の条件で、変化を検出できる境目は、基準になる照明の色温度と変化の向きによって異なった。暖かい色の基準光になるほど、さらに冷たい色へ向かう変化が気づかれにくくなるなど、出発点と方向の組み合わせが効いていた。[18]

この照明実験の基準光には、色温度13,000 K、6500 K、4160 K、2000 Kが使われた。色温度はここでは光の色を区別する条件であり、部屋の暑さを示す数字ではない。10秒の条件で平均の検出閾値は、色の差を表す尺度で2〜15の範囲だった。この幅は、人がいつでも同じ大きさの色の変化に気づくわけではないことを示している。基準光と変化の向きによる違いとして読む数字であり、靴の写真の判定基準には転用できない。[18]

著者らは、全体の明るさの変化を伴わない場合、自然な昼光の典型的な色変化は検出の境目より小さい可能性を示した。これは「夕方の光は誰にも分からない」という意味ではない。調べたのは制御された照明下での色の時間変化である。明るさも風景も変わる駅前の夕暮れ全体を、同じ結果で説明するわけにはいかない。[18]

ドレスの色は、単純な二択の能力テストではなかった

青と黒、白と金。色名が大きく割れたドレス写真について、AstonとHurlbertは、写真に当たっていると感じる照明の色や、ドレスの見える色を色合わせで調べた。結果は、推定された照明の色がドレスの色合わせの違いを説明するというものだった。曖昧な写真を見るとき、光をどう解釈するかが関係するという仮説を支持している。[4]

一方、別の照明弁別課題で測った色恒常性の閾値、つまり変化を見分けられる境目は、ドレスの色知覚とは関連しなかった。写真で何色に見えたかを、色恒常性全般の成績表とみなすのは行き過ぎである。同じ「色恒常性」という言葉がつく課題でも、同じ個人差を測っているとは限らない。[4]

ここには読み比べる価値のある結果もある。Witzelらは以前の実験の再解析とオンライン調査を行い、ドレスの見え方が色恒常性の個人差と強く関係すると報告した。ただし、光沢や主観的な灰色、曖昧な陰影など、ほかの現象の個人差はドレスの個人差と独立していた。あらゆる見え方を貫く、全般的な知覚の流儀があるという考えには否定的だった。[15]

前者の課題では関連がなく、後者の研究では関連がある。この違いを消して「色恒常性が強い人なら必ずこの色」とは書けない。両方が指している共通点は、ドレスの照明の解釈に注目することだ。そこからさらに、ほかの画像にも通用する人の分類を作る段階では慎重さが必要になる。[4][15]

ドレス研究では、自分にとって色みがないと感じる設定も調べられた。この設定は輝度、つまり明るさの条件に依存した。著者らは、個人ごとに明るさを調整して測る場合に限って、主観的な白の基準の違いがドレスの色の違いを説明しうるとした。また、その設定の結果は、想定されていた照明の見え方との対応には一致しなかった。「その人が白と呼ぶ点さえ分かれば、写真の光も分かる」という簡単な関係ではなかったのである。[4]

朝型と夜型の話も同様である。Astonらは生活時間の傾向を尋ねる質問紙と色合わせの関係を調べ、中程度の相関を認めたが、統計的に有意とされたのは10%水準だけだった。この結果を「朝型ならこの色に見える」という判別規則にはできない。魅力的な物語と、回答を分類できる証拠との間には距離がある。[4]

実験を読むときは、回答欄の違いにも目を向けたい。照明が変わったことを検出する課題、見える色を見本で再現する課題、色の名前を答える課題では、問われる仕事が異なる。今回の数字欄も、人の能力を横並びに比較する一覧ではない。何をどのような条件で測った数字なのかを添えて初めて、写真の色の話を考える材料になる。[1][4][18]

数字で読む光と色の実験

10チャンネル:実物の物体を照らす光を作り、照明の違いを調べた装置の構成である。[1]

22人:昼光に沿って変化する照明の検出を調べた実験の参加者数である。[18]

10秒:同実験で平均検出閾値が比較された、固定した刺激の継続時間である。[18]

4種類の場面:典型的な色を持つ物など、周囲に置く物を変えて色合わせを比較した。[5]

10分:実物の色を覚えてから合わせる課題で、偏りとばらつきが増えた遅延条件である。[8]

1.5秒:光沢の手がかりを調べる実験で、参加者が見たアニメーションの長さである。[10]

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宮川涼 Founder

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