独り言の声は録音すると別人みたい?骨伝導と自分の声だと感じる仕組みを読む

独り言を録音すると、自分の声なのに別人のように聞こえる。発声中に加わる骨伝導と、録音を聞くときの違いを研究で読む。声の高さだけでは決まらない自己認識、他人の声を自分の声と感じる実験、補聴器で変わる聞こえ方を通じて、録音の違和感と声の良し悪しを切り分ける。

洗い物をしながら「明日は早く出よう」とつぶやいた。その声を録音して聞くと、さっきの自分とは少し違う。声の主は間違いなく自分なのに、耳だけが他人行儀になる。

発声中の自分の声には、空気を通る音に加えて、体の振動を通じた骨伝導が含まれる。録音再生では、その発声中と同じ骨伝導の手掛かりが伴わないことが、違って聞こえる主な理由のひとつである。骨伝導による振動の刺激を加えると、自分と他人の声の聞き分けが改善した実験もある。[2][10]

さらに「自分が出した声だ」という感覚は、音色だけで決まらない。発声と同時に返ってくる音の一致も関わる。[7]「独り言はなぜ言うのか、増えたら心配?言葉をふさぐ実験と自分への声かけの試験を読む」では独り言の働きを扱っている。ここでは、独り言を言う理由から離れて、自分の声が自分にどう聞こえるかを追っていく。

ヨガとからだの記事のイメージ写真 立川駅徒歩1分年中無休の溶岩ホットヨガスタジオ

話している自分だけが聞く音の経路がある

声は口から出て、空気を伝わり、耳へ届く。この経路を空気伝導と呼ぶ。一方、発声による振動が体を介して伝わる経路が骨伝導である。自分が声を出しているときの聞こえは、この両方を含む。録音された音を聞く場面と、声を出しながら聞く場面の差を考える出発点になる。[2][10]

Reinfeldtらの音響実験は、自分の声に含まれる空気伝導と骨伝導の関係を調べた。空気を通る音を弱めつつ、耳を覆うこと自体による影響を抑えるよう設計した大型の耳覆いを用い、発声中の耳の中の音圧などから各成分を評価している。単に録音を聞かせて感想を尋ねた実験ではなく、伝わり方を分けて測ろうとした研究である。[2]

調べた音は10種類の音素、つまり言葉を構成する音の単位だった。多くの音素で、1〜2 kHzの周波数帯では骨伝導成分が優勢だった。結果は音素によって少し異なり、発声の似た音では共通点も見られた。[2]「体を伝わる音は低い音だけ」と片付けるより、どの音を発声し、どの周波数帯を見るかが大切なのである。

ここで注意したいのは、この結果を「自分の声の大半は骨伝導だ」と言い換えないことだ。優勢だったのは、調べた多くの音素における特定の周波数帯である。音域を区切った比較と、声全体の割合は同じではない。[2]骨伝導が何割だから録音が何割違う、といった計算にはつながらない。

キッチンでつぶやいた声と、あとで再生した声を比べるとき、声の主は変わらなくても、耳へ届く手掛かりは同じではない。[10]録音に向かって「こんな声ではない」と言い返す前に、普段の自分が聞いている音には、再生音にそのままは載らない経路があると考えるとよい。

疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。

空き枠を見て予約電話で予約 042-595-8039LINE

骨伝導は音色だけでなく、自分の声の判定にも関わる

Orepicらは2023年、3つの研究を通じて、自分の声の刺激に骨伝導による振動・触覚の手掛かりを加えた。音声を混ぜ合わせて変化させる手法と、知覚の判断を測る実験を組み合わせ、空気伝導で提示する場合と骨伝導で提示する場合を比べた。[10]

結果は、自分と他人の声の聞き分けが骨伝導で改善するというものだった。ただし、知っている他人の声と別の他人の声を区別する課題では、同じ改善は見られなかった。[10]振動を足せば、どんな声でも一律に分かりやすくなるという結果ではない。自分の声を識別する場面に特徴的な違いがあった。

この区別は、録音の違和感を理解するうえで面白い。声の判定には、耳に入る音に加えて振動や触覚も関わる。自然な発声に伴う振動や触覚を含めた手掛かりが、これは自分の声だという判断を助けるというのが、この実験の示す方向である。[10]自分の声は、音として聞く対象であると同時に、体を伴って経験する対象でもある。

同じ研究では、音響的な類似性とは別に、聞き慣れの影響も示された。自分の声は、知らない人の声よりも、知っている人の声と混同されやすかった。音響上の違いが大きければ声全般の聞き分けはよくなる一方、親しさも独立した寄与をしていた。[10]

家族の声に似ていると言われた経験を考えるときにも、声の判定を「似ている音なら間違え、似ていなければ間違えない」という物差しだけで読むのは足りない。研究では、音響的な違いと親しさが別々に関わっていたからだ。[10]自分の耳なのだから、自分の声には絶対に間違わないという保証もない。

声を使う専門家なら、自分の声の聞こえ方を正確に把握しているのだろうか。Vurmaの研究では、プロの歌手15人が異なる高さで単純な発声練習を行い、その録音から7種類の加工版が作られた。参加者は、加工した音が歌っている最中の自分の声の知覚にどの程度似ているかを評価した。対象はプロ歌手であり、18〜39歳の女性の日常の独り言に同じ加工が合うかは、この比較だけでは判断できない。[15]

最も似ていると評価されたのは、口から耳へ回り込む空気伝導成分、骨伝導成分、耳の筋反射による聴覚感度への影響を考慮したフィルターを用いた刺激だった。周波数ごとの強め方と弱め方を表すフィルターの特性は、台形に近い形だったという。[15]単純に低音を増やす、という説明より複数の要素を含む。

これはプロ歌手の歌声を対象にした比較であり、家で独り言をつぶやく全員に同じ加工が合うという処方ではない。[15]それでも、声に熟練した人でも、発声中の聞こえに近づけるために複数の伝わり方を考える必要があった点は重要だ。録音と本人の感覚のずれを、本人の耳が悪いからだと決める理由にはならない。

録音を聞いて「自分ではもっと違う響きのつもりだった」と感じるとき、音の好みと、発声中に近いかどうかは分けて考えたい。この研究が尋ねたのは、どの加工版が上手な歌かではなく、どれが自分の発声中の聞こえに似ているかである。[15]似ている音、好きな音、他人に聞かせたい音は、同じ質問ではない。

声の高さのずれは、自分の声かどうかでも意味が変わる

Korzyukovらの2017年の実験では、声を出している人へ返す音の高さを変え、発声の反応と脳の電気的な反応を比べた。ずらす大きさは100セントと400セントだった。セントは音程の差を表す単位であり、ここでは実験で加えた変化の大きさを区別するために使われている。[3]

小さいほうの変化は自分の発声の音程の誤り、大きいほうは外部から生じた音程変化として知覚された可能性が示された。大きい変化への発声の反応は、小さい変化への反応より小さかった。単純に、耳へ返る音を大きく変えるほど、声も大きく修正されるという結果ではなかったのである。[3]

脳の電気的な反応にも違いがあった。小さい変化では音を高くずらした場合と低くずらした場合で反応に差が見られなかった一方、大きい変化では、ずらす向きによって反応が異なった。著者らは、自分が音を生み出したという感覚の有無が、音程の変化方向に対する聴覚処理を変える可能性を示している。[3]

この「自分が行った」という感覚を、主体感と呼ぶ。声を聞いて誰の声かを答えることと、自分の動作がその音を生んだと感じることは、関連はあっても同じ質問ではない。[3][7]録音で自分の声だと分かっていても、話した瞬間の聞こえと違うと感じる場面を考える際にも、判定の種類を分ける視点が役立つ。

ただし、100セントまでなら必ず自分の声、400セントなら必ず他人の声という日常の境界線を、この実験から設けることはできない。ここで比較されたのは、設定された大きさの音程変化への発声と電気的反応である。[3]スマホの録音の違和感をその数値で採点する話ではない。数字は実験条件を読むために置くものであり、自分の声を合格や不合格に分ける基準ではない。

声の伝わり方を調べた音響実験、加工音の似ている度合いを尋ねた歌手の実験、返る音を変えた発声実験では、測っているものが異なる。[2][3][15]それぞれの結果を合わせるときも、骨伝導で改善した識別を、声の高さの修正量と同じ効果の大きさとして扱わない。この違いを保つことで、「録音は別人みたい」という日常のひと言の中に、音色、識別、発声の調整という別の論点が含まれると分かる。

数字で読む自分の声

10種類の音素:空気伝導と骨伝導の関係を調べた音の単位。音によって結果に違いがあった。[2]

1〜2 kHz:調べた多くの音素で骨伝導成分が優勢だった周波数帯。声全体の割合ではない。[2]

3つの研究:骨伝導による刺激と自分・他人の声の区別を調べた一連の実験。[10]

15人と7種類:プロ歌手の人数と、各録音から作った加工版の数。日常会話の全員を代表する値ではない。[15]

13人:声の帰属判断と脳活動を調べた研究に参加した健康な男性の人数。[18]

疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。

空き枠を見て予約電話で予約 042-595-8039LINE

💬 ご質問がある場合はこちらからどうぞ

オンザショアのチャットで質問する(24時間受付)

レッスン内容・料金・体験のご予約など、気になることをお気軽にお尋ねください。

author avatar
宮川涼 Founder

1

2

関連記事

ご体験予約