怖い話で鳥肌が立つのはなぜ?ぞくっとする感覚と毛が立つ反応の違いを読む

心理研究では「ぞくっ」という体験が、鳥肌・ぴりぴり感と、冷たさ・震えのまとまりに分かれた。本人が語る感覚と目に見える立毛を区別すると、恐怖と感動の違いが見えてくる。人の感情研究とマウスの実験を読み分け、肌の変化だけで怖さを採点できない理由と、体験を言葉に残す方法を考える。

怪談の朗読で、誰もいない廊下から足音が近づいてくる。次の言葉を待つ間に、背中がぞくっとする。腕を見ると、思ったほど変わっていない。それでも「鳥肌が立った」と友人には伝えるだろう。この言葉には、毛が立つ見た目だけでなく、冷たい感じや震えまで入り込んでいる。[2]

怖い話と鳥肌の関係を考える鍵は、その感覚と、実際に毛が立つ反応を分けることだ。人が語る「ぞくっ」には異なる感覚と感情が含まれ、恐怖に近いものも、驚きや感動に近いものもある。一方、恐怖を学習させたマウスでは毛が立つ反応が観察されている。恐怖と立毛のつながりは研究されているが、両者を同じものとして数えるわけにはいかない。[2][8]

既存記事「鳥肌は寒いとき何の役に立つ?毛を立てる小さな筋肉と人の薄い毛皮の話」には寒さの問いを譲る。ここで追うのは、冷房の効き具合ではなく、怖い物語を前にしたときの「感じた」と「起きた」の違いである。

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「鳥肌が立った」は感覚の名前でもある

立毛とは、毛が立つ現象を指す言葉である。恐怖や怒りの表現として歴史的にも研究されてきた。ただし、毛が立つことを観察する話と、本人が何を感じたかを聞く話は、入り口が違う。歴史を扱った論考でも、動物の立毛と人の表情や姿をどう結びつけるかが問題になっている。[6]

人の「ぞくっ」を詳しく調べた心理研究は、まず参加者にその体験の意味を記述してもらった。別の集団が、そこに出てきた身体感覚を似ているもの同士に分けた。その結果、鳥肌、ぴりぴりする感じ、冷たさ、震えという4つのまとまりが見いだされた。研究者が先に「恐怖の症状」を並べたのではなく、人がどんな感覚をその言葉に含めるかから出発したのである。[2]

さらに、それらは大きく2つにまとまった。鳥肌とぴりぴり感が近いまとまり、冷たさと震えが近いまとまりだ。質問紙による別の検討でも、この下位と上位のまとまりに対応する構造が支持された。日常ではひと言で済ませる体験が、調べると枝分かれしていた。[2]

たとえば、怪談を聞いた後に「背中が冷えた」と言う人と、「腕がぶつぶつした」と言う人がいたとする。どちらも鳥肌と呼べるとしても、選ぶ感覚の項目は違い得る。これは感覚を疑うための区別ではない。何を体験したかを、もう少し正確に受け取るための区別である。[2]

ここで注意したいのは、感覚の分類が、そのまま肌の映像による確認にはならないことだ。この研究が示したのは、人の記述や質問紙に現れる感覚の構造である。「鳥肌」という言葉を選んだ回数を、そのまま毛が立った回数と読み替えるのは別の話になる。[2]

帰りの中央線で怖い動画を見て、袖の中の腕を確かめずに「鳥肌」と送る。その表現は会話として自然だ。しかし研究を読むときには、自己申告なのか、肌を測ったのかを確かめたい。体験の報告と身体の測定を分けるだけで、同じ単語の下にある違いが見えてくる。[2][4]

疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。

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怖さのぞくっと、感動のぞくっとは同じか

先ほどの心理研究では、体験談の分析でも、鳥肌・ぴりぴり感と、冷たさ・震えのまとまりが再現された。前者は後者に比べ、畏敬、驚き、楽しさが大きく、嫌悪、恐怖、悲しみが小さかった。畏敬とは、大きなものや圧倒されるものに触れたときの感情として考えると読みやすい。[2]

つまり、ぞくっとする体験を全部「怖かったから」と整理すると、気持ちの向きが逆のものまで同居する。舞台の圧巻の場面で引き込まれた体験と、物語の嫌な結末から目をそらしたくなった体験では、同じ言葉が使われても感情の組み合わせが違い得る。この研究では、前者のまとまりに驚きや楽しさ、後者に恐怖などが相対的に多かった。[2]

日記を使った検討でも、その違いは人と人の比較だけでなく、同じ人の中の体験の違いにまで広がっていた。鳥肌・ぴりぴり感のまとまりには肯定的な感情と近づきたくなる刺激、冷たさ・震えのまとまりには否定的な感情と避けたくなる刺激が結びついていた。「鳥肌が立ちやすい人」という人物像だけでは済まないのである。[2]

ただし、この結果を「恐怖では毛が立たず、感動だけで立つ」と読むのも誤りだ。研究が分けたのは、感覚と感情のまとまりであり、毛が立つ原因を排他的に振り分けたのではない。ある種類の体験に恐怖が相対的に少ないことと、恐怖がそこで起こらないことは違う。[2]

同じ論文では、自己実現と自己消滅に関する内容への接触を操作する検討も行い、前者が鳥肌・ぴりぴり感、後者が冷たさ・震えのまとまりをそれぞれ引き起こした。また、対人関係の親密さへの影響の向きも異なった。単に皮膚の形だけを見るより、体験の意味を含めて考えたほうが、研究の問いに近い。[2]

曲の展開や聴き慣れが鳥肌にどう関わるかは、隣の記事の問いである。怖い話については、まず「ぞくっとした」に恐怖だけを詰め込まないことが大切だ。自分は怖がったのか、圧倒されたのか、それとも両方だったのか。その違いを残しておく。[2][4]

恐怖と毛が立つ反応を結ぶ動物実験

感覚の言葉を離れ、毛が立つ反応そのものを見るとどうなるか。マウスを用いた実験では、条件づけられた恐怖ストレスのもとで情動性の立毛が示された。条件づけとは、経験によって刺激と恐怖の関係を学ぶことだ。研究では通過式の装置を用い、恐怖に関連した毛の反応を評価している。対象がマウスであるため、18〜39歳の女性が物語で感じる恐怖に、そのまま当てはめることはできない。[8]

この実験は、人が怖い話を読んで感想を答える調査ではない。対象はマウスで、学習された恐怖を使っている。したがって「怪談で鳥肌が立つ人は何割か」の答えにはならない。それでも、恐怖に関わる状況と、目に見える立毛を結ぶ実験として読む意味がある。[8]

ストレスと不安に関わるノルアドレナリンの仕組みをまとめた前臨床研究のレビューも、恐怖の表れと立毛を扱う。ノルアドレナリンはここでは神経の情報伝達に関わる物質であり、青斑核という脳の領域を中心とする系が論じられている。青斑核からのつながりは大脳皮質や複数の脳の領域に広がり、環境変化に応じて脳の働きを調整するのに適した配置だと説明されている。[3]

レビューでは、ストレスへの接触が青斑核の発火増加や、その投射先でのノルアドレナリンの放出・代謝の増加と関連するとしている。ネコでは青斑核の発火増加が、背中を丸める姿勢や立毛という恐怖の行動的な表れとも関連していた。対象はネコであり、18〜39歳の女性でも同じ関係が成り立つかは、人で確かめる必要がある。毛の変化は、恐怖に関わる神経の働きと無関係な飾りではない。[3]

一方、ネコの観察をそのまま人の怪談の説明文に移し、「あなたも同じ脳の順序で反応した」と言い切ることはできない。ここで言えるのは、前臨床研究で、ストレスや恐怖に関わる神経系と立毛の関係が調べられてきたということだ。人の主観の研究と動物の神経の研究は、同じ問いの違う面を照らしている。[2][3][8]

このテーマには、見た目から心を読むことの難しさを考えさせる歴史もある。立毛と精神疾患の関係についてダーウィンの考えを検討した歴史的論考は、彼が精神科医から送られた女性患者の写真をどう読んだかをたどっている。対象は女性の精神科患者の写真をめぐる歴史であり、18〜39歳の女性一般の感情を推測する根拠にはできない。動物と患者の立毛を似たものとみなすことへの当初の疑いが、写真を見ることで和らいだ経緯が扱われた。[6]

ただし、この論考はその読み方に対する反論も検討し、後年のダーウィンが記録写真の価値に懐疑的だったこととの対照も論じる。写真に写る姿を見て納得した、という歴史と、そこからの解釈が正しい、という評価は別なのである。毛が立った姿を根拠に、人の心の状態まで読めたことにはならない。[6]

いまスマホで腕の写真を撮れるとしても、同じ区別は残る。写真を見せることと、その瞬間の怖さを言葉にすることは、それぞれ別の情報を渡す行為だ。歴史の議論を現代の測定結果に置き換えるわけではないが、見える反応から何を推測するかには慎重さが要る。人の感覚を聞く研究と、動物の反応を測る研究を並べるときも、その橋を急いで渡らないようにしたい。[2][6][8]

数字で読むぞくっとする体験

4つの感覚群:鳥肌、ぴりぴり感、冷たさ、震えが、記述の分類から見いだされた。[2]

2つの上位群:鳥肌・ぴりぴり感と、冷たさ・震えに大きくまとまった。[2]

5つの研究:記述、質問紙、体験談、日記、接触内容の操作という異なる方法で検討された。[2]

5つの理論:畏敬と恐怖の併存を扱う研究で比較された。人同士の比較と同じ人の中の比較では、結論の確かさが異なった。[4]

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宮川涼 Founder

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