夜中に体が動かず、気づくと仰向けだった。その記憶を金縛りの原因とは決めない。レム睡眠の筋緊張低下、頭を支えられない姿勢でレムが短く切れた記録、神経筋疾患での仰向けと呼吸、パーキンソン病の終夜検査が数えた仰向けの時間を、別の測定として読む。1人の記録は一般化しない。
掛け布団を肩まで引いて眠ったはずなのに、目が覚めたとき、天井は見えている。なのに指が、思いどおりには動かない。やがて指は戻る。朝、検索の欄に残る言葉は、金縛りと、仰向け、である。
仰向けだと金縛りが増えるのか。この問いへの答えは、ここで扱う研究からは決まらない。分かるのは、レム睡眠には筋の緊張低下が伴うこと、頭の支えがない座位ではレム睡眠が細切れになった例があることだ。神経筋疾患の呼吸やパーキンソン病の体位の研究も、睡眠麻痺の起こりやすさを比較した研究とは区別して読む。[1][2][4][5]
公開済みの「金縛りはなぜ起きる?体が動かず声も出ない夜の仕組みと、一般の人7.6%・学生28.3%の開き」は、金縛りが起きる仕組みと、経験した人の割合を扱っている。そちらに仕組みの話は譲る。この文章が追うのは、寝る向きの記憶と、筋の緊張が下がる状態とを、別の測定として読むことである。

天井を見ていた朝は、検査の項目と違う
寝る姿勢の研究を読むとき、最初に確かめたいのは何を測ったかである。睡眠の段階と長さ、夜間に仰向けでいた時間の割合、呼吸のために働く横隔膜の筋電図、首や平衡感覚への刺激に応じた筋活動。同じ「睡眠と姿勢」の話でも、記録する項目は異なる。筋電図とは、筋肉が働く際の電気的な活動を記録したものである。[1][4][5][9][10]
レム睡眠の筋緊張低下は、眠りの状態を表す言葉である。一方、仰向けは体の向き、横隔膜の筋電図は呼吸筋の活動を表す。パーキンソン病の研究では、体位と、レム睡眠中に筋緊張低下が欠ける程度を同じ検査で調べている。複数の項目を並べて測ることで、どの変化が一緒に現れるかを探っているのである。[2][5][9]
この記事で扱う根拠の限界はここにまとめておく。特殊な座位で過ごした人、疾患のある人、宇宙飛行士、乳児、猫の記録は、筋緊張と姿勢や呼吸とのつながりを考える材料になる。健康な成人女性の仰向けと横向きで金縛りの頻度を比べた結果や、姿勢変更による予防効果は示していない。以下では、それぞれの研究が実際に測った現象をたどる。[1][3][4][5][6][9][10][12]
疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。
90分ごとに戻る筋の緊張低下
成人の眠りは、最初からレム睡眠ではない。総説は、入眠がノンレムの段階1から始まり、段階2、段階3へと深くなると整理している。段階2では紡錘波と徐波が現れ、段階3では徐波が増える。レム睡眠は約90分ごとに戻り、そのとき筋の緊張低下と、急速な眼球運動がある。[2]
この戻り方を、総説は二つの過程で説明している。一つは、起きていた時間に応じて眠気を積む恒常性の過程。もう一つは、体内の約24時間のリズムで、振動子は二つある。外の同期因子も影響する。二つの過程は一部では独立し、互いに影響もする。さらに、逆説睡眠が規則正しく戻ることについては、「オン」と「オフ」の神経群が互いを抑えるモデルが置かれている。周期の説明は、体位の好みではなく、この相互の抑制に置かれている。[2]
姿勢は、別の文脈で一度出てくる。睡眠研究は当初、人を観察することに頼り、眠りやすい条件として、姿勢、外の条件、睡眠時間と必要量を調べ、断眠や時刻をずらしたときの結果も見た、と総説は書いている。その文が置いているのは、姿勢を条件の一つとして調べてきた、という事実である。[2]

頭が支えられない姿勢では、レム睡眠が切れる
姿勢と筋の緊張低下が、レム睡眠の長さを変えた記録がある。舞台は布団の仰向けではない。パフォーマンス作家のポワンシュヴァルは、パリのギャラリーで、自分の体をかたどった金属彫刻のなかに8日7夜、座ったまま入った。頭は筒の先の絵だけを見る向きで、他の視覚刺激は遮られた。内部にクッションはなく、頭の支えもなかった。特殊な環境で過ごした成人1人の症例であり、18〜39歳の女性の日常の睡眠にそのまま当てはめることはできない。[4]
終夜の脳波記録と、飲み込んだ体温カプセルで、体温は2分ごとに測られた。24時間あたりの睡眠は平均355.1分。内訳は、浅い徐波睡眠が段階1で47.1分、段階2で192.2分、深い徐波睡眠が段階3で100.4分、レム睡眠は4.3パーセントで15.4分だった。眠りは夜に偏ったが、一連の睡眠は20分を超えなかった。[4]
深い眠りは、この不快な条件でもよく保たれた。レム睡眠は著しく損なわれ、数分で終わり、すぐ覚醒が続いた。著者らの説明は、頭が支えられていないことである。レム睡眠では筋が緊張を失う。その結果、頭が思わず前へ折れ、長くは維持できなかった。著者らは、筋緊張低下によって頭が前へ折れたことを、レム睡眠が続かなかった理由と考えている。[4]
同じ論文は、航空機の座席で首の筋緊張が落ちるとレム睡眠が細切れになる研究に触れ、人では頭の支えがないことがレム睡眠を分断する要因だと述べる。選択的にレム睡眠だけを断つ古典的な方法も、筋の緊張低下を使い、猫が小さな止まり木から水に落ちる手続きだった、と紹介している。[4]
著者らは、頭の位置だけでは説明を閉じない。作品へ注意を保つために本人が用いた瞑想的な技法の影響も、除外できないと書いている。その状態は、視覚の幻覚を挟む夢のようなものとして述べられている。完全な隔離でもなかった。騒音、彫刻越しに時々話しかける観客、日中の光の変化が、時刻の手がかりになっていた。公演中の熱波は室温を上げ、最も暑い夜の総睡眠時間を減らした。[4]
深部体温の最低は、午前5時17分から6時35分のあいだにあった。リズムの位相は期間の前後でずれず、不動でも概日リズムの脱同期は起きなかった。一方、体温の振幅は開始時から終了時までに30パーセントを超えて小さくなった。身体活動の低下と矛盾しない、と著者らは述べている。結論は、物理的に窮屈で不快な条件でも深睡眠は維持され、レム睡眠はきわだって減る、というものだ。短い期間の生存的な状況では、深い徐波睡眠による回復がレム睡眠より優先される、とも書いている。ここでの優先順位は、8日7夜、座位、頭の支えなしという条件下での著者らの解釈である。[4]
病気の肺では、仰向けが呼吸の条件になる
仰向けが悪条件として書かれるのは、神経筋疾患の睡眠中の呼吸である。胸部医学の総説は、ふだんのレム睡眠で起きる筋の緊張低下、肺気量の減少、化学感受性の低下、気道を広げる筋の活動低下が、神経筋疾患では重大な弱点になると述べている。そこに呼吸筋の弱さ、上気道がつぶれやすい病気の特徴、拡張型心筋症が重なると、さまざまな睡眠呼吸障害が起きる。疾患を対象にした総説なので、18〜39歳の女性全般にそのまま当てはめることはできない。[1]
神経筋疾患で減った肺気量は、眠りと仰向けによってさらに損なわれる。睡眠呼吸障害のときに、上気道の虚脱と、血中の酸素が下がることが強まる、と総説は書く。最もよく見られる事象は、横隔膜性、または偽中枢性の事象である。位相性のレム睡眠で、胸郭が1回換気量に寄与する分が減るためだ。閉塞性の睡眠時無呼吸と、中枢性の無呼吸も多い。[1]
対処として総説が書くのは、非侵襲的な人工換気である。生存と睡眠の質を改善しうる一方、拡張型心筋症や球症状が強い場合には慎重であるべきだ、とある。換気自体が無呼吸や声門の閉鎖を起こし、覚醒を増やし、睡眠の構造を崩すこともある。終夜ポリグラフは、事象の種類を分け、設定を直す役割を持つ。[1]
この総説では、体位だけを単独で扱わず、呼吸筋の弱さ、気道の状態、心臓の合併症、換気の設定を合わせて評価している。仰向けという共通語があっても、検査が解こうとしている問題は病気に伴う呼吸障害である。[1]
数字で読む、姿勢と筋緊張の記録
355.1分と15.4分:頭の支えがない座位で8日7夜を過ごした1人の、24時間あたりの睡眠と、そのうちのレム睡眠。レム睡眠は4.3パーセントで、一連の睡眠は20分以下だった。[4]
30パーセント超:同じ8日間で、深部体温の振幅が開始時から終了時までに小さくなった幅。最低体温の時刻は、午前5時17分から6時35分のあいだに残った。[4]
63人と30人:パーキンソン病の終夜検査の対象人数と、対照の人数。診断前33人のうち、レム睡眠行動障害ありは13人、なしは20人。[5]
230と233:地上で、仰向けの覚醒時を100としたときの横隔膜筋電図。ノンレム段階2の平均が230、レム睡眠の平均が233。対象は宇宙飛行士1人、連続30時間。[9]
132:同じ1人が宇宙にいるときの、レム睡眠の横隔膜筋電図。覚醒を100とした平均で、ノンレム段階2は103だった。[9]
56.7パーセント:除脳した猫の青斑核複合体で、0.15ヘルツ、プラスマイナス10度の傾斜に応答したニューロンの割合。141個のうち80個。首の回転は99個のうち73個で、73.7パーセント。[3]
疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。
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