親子のハグで赤ちゃんは落ち着く?抱く強さと月齢で違う心拍の反応を読む

親子のハグの効果は、強く抱けば大きくなるのか。赤ちゃんの心拍を測った実験から、抱っことハグの違い、月齢や抱く相手による反応を読む。採血時の抱擁と授乳を組み合わせた試験、乳児の個人差のレビューも手がかりに、泣きやむことと心拍の変化を分け、家庭での受け止め方を考える。

夕飯の支度を止めて抱き上げても、赤ちゃんは泣いている。もう少しぎゅっとすれば安心するのか、それとも腕の中が窮屈なのか。親子のハグの効果を知りたいとき、まず分けたいのは抱く力と、抱かれる子の反応だ。

親子のハグで心拍がゆっくりになる反応は、乳児を対象にした実験で観察されている。ただし、強く抱くほどよいという結果ではない。生後4か月を超える赤ちゃんでは親のハグで心拍の間隔が延びた一方、それより幼い赤ちゃんでは同じ反応が見られず、接触の圧との関係も違った。[2]

したがって、ハグには落ち着きにつながる生理的な反応がある、と読むことはできる。しかし「誰が、どの月齢の子を、どう抱くか」を外すと、研究の答えが変わってしまう。[2] 大人の血圧やホルモンの話は既存記事「ハグの効果は医学的にどこまで?血圧とオキシトシンの実験を読む」に譲り、ここでは乳児の心拍と抱き方の比較に焦点を当てる。

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抱っことハグを分けると、問いが具体的になる

赤ちゃんを抱くという言葉には、体を支えることも、愛情を込めて抱きしめることも含まれる。買い物袋を置くための抱き上げと、帰宅して顔を見ながら抱きしめる時間を、日常ではわざわざ別の名前にしない。ところが実験では、その違いが比較の入口になる。

Yoshidaらの研究は、生後1年以内の乳児について、親が抱いて支える条件、ハグする条件、強くハグする条件で心拍の反応を調べたものである。対象は乳児であり、18〜39歳の女性自身の心拍反応へそのまま当てはめることはできない。同じ「親の腕の中」でも、抱き方を分けて測っている点が肝だ。[2] 単に触れているかどうかだけを比べる実験とは、答えられる問いが異なる。

親のハグの際には、頭の動きが少ないことが、抱いて支える条件や強いハグの条件と比べて、より大きな心拍間隔の増加を予測した。[2] ここを「頭を動かせないようにすると落ち着く」と読むのは逆である。研究が観察したのは動きと心拍反応との関係であり、動きを制限する育児法を試したわけではない。[2]

日常に持ち帰るなら、まず抱いている子の様子へ目を向ける、という読み方になる。抱く側の気持ちが強まったからといって、腕の力も強める必要はない。実験で比較された抱き方を、そのまま家庭用の手順書に変換しないことが大切だ。親の愛情の量を、腕にかける力で採点する実験ではないのである。

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心拍がゆっくりになることは、何を表すのか

研究で用いられたのは、心電図で捉える拍動と拍動の間隔である。論文ではこれをR–R間隔と呼んでいる。間隔が長くなるという結果は、心拍数が下がる方向を意味し、この研究では副交感神経の活動が強まる反応として解釈された。[2] 「心拍が上がった」のか「心拍の間隔が延びた」のかで、文章の意味が反対になる。

生後4か月を超える乳児では、親のハグ中にこの間隔が増加した。[2] 抱いている親には、赤ちゃんの体の重みや表情しか見えなくても、測定では心臓の拍動の並びが違っていたわけだ。見た目の印象だけでなく、生理的な指標から親子の触れ合いを調べた点に、この実験の面白さがある。

ただし、心拍の反応と、泣きやむこと、眠ること、将来の心の発達は別々の問いである。著者らは結果から、親子のハグが親子の絆と乳児の心理生理的な発達を支える可能性を示唆している。[2] その示唆を「ハグを続ければ発達がよくなる」という確定した長期効果に置き換えることはできない。

たとえば、抱いている間に声が静かになったとしても、それだけで研究と同じ心拍反応が起きたと判断する必要はない。反対に、まだ泣いているから触れ合いに意味がなかった、と結論することも早い。実験で測った指標と、家庭で知りたい出来事を並べておくと、期待を膨らませすぎずに読むことができる。

ハグの実験を読むときに便利なのは、「何と比べて」という言葉を補うことだ。親のハグと強いハグの比較なら抱き方、親と見知らぬ女性の比較なら抱く相手、月齢の異なる乳児の結果なら対象の違いが中心になる。[2] それぞれの比較を混ぜてしまうと、相手が違ったための結果なのか、抱き方が違ったための結果なのかが見えなくなる。

ここでいう落ち着きは、ひとつの測定値だけで生活全体を説明する言葉ではない。たとえば「安心しているように見える」は親の観察であり、心拍間隔の増加は測定の結果だ。[2] 両者を行き来して考えることはできても、同じ言葉として置き換えない。この区別を守ると、数字を使った説明ほど確かに聞こえるという錯覚から距離を取れる。

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月齢と抱く相手で、同じ反応にはならなかった

この実験を「赤ちゃんはハグで落ち着く」という見出しだけで覚えると、大事な分かれ道を落としてしまう。生後4か月未満の乳児では、親のハグによる心拍間隔の増加は見られなかった。むしろ、接触の圧と関連して心拍間隔が短くなる反応を示した。[2] 年長の乳児と年少の乳児を、一括りにはできない結果だ。

これは「幼い子には愛情が伝わらない」という話ではない。測定された心拍の変化が、月齢の異なる集団で同じ形ではなかったという意味である。[2] 発達の研究の数字を、家庭の親子関係の評価へ持ち込むと、研究が答えていない問いまで答えたことになってしまう。

また、見知らぬ女性によるハグでは、乳児の心拍間隔の増加が見られなかった。[2] 触れられるという物理的な出来事だけで説明を終えず、誰に抱かれるかも比較した結果である。ただし、比較相手は見知らぬ女性だ。そこから祖父母や保育者、きょうだいの抱っこを順位づけすることはできない。

家庭では、別の人に抱かれたときの泣き方を見て「自分より抱くのが上手だ」と感じる場面もある。しかし、この研究が分けたのは親と見知らぬ相手であり、家族それぞれの技術の優劣ではない。[2] 条件の名前を丁寧に読むことは、親が不要な競争へ引き込まれないためにも役に立つ。

月齢の区分も、家庭で合否を決める日付にはしない。研究では4か月より上と下で反応が異なったが、乳児の感情調整を扱ったレビューは、同じ発達時期でも行動、生理、気質によって反応の道筋が大きく違うと整理している。[2][7] カレンダーの区切りと、目の前の子の反応を同一視しない読み方が必要になる。

採血時の試験は、抱擁と授乳の組み合わせを調べた

もうひとつの関連研究は、家庭でのハグではなく、新生児のかかとから採血する場面のランダム化比較試験である。新生児96人を48人ずつに分け、通常の介入と、抱擁しながら母乳を吸わせる介入を比較した。[1] 対象は採血を受ける新生児であり、18〜39歳の女性が日常で受けるハグの効果にはそのまま当てはめられない。比較する群を無作為に分けた試験という強みはあるが、問いは医療処置時の痛みに絞られている。

抱擁と母乳吸啜を組み合わせた群では、通常の介入群より泣く時間と出血時間が短く、心拍数と新生児の痛み評価尺度の得点が低かった。血液中の酸素の状態を示す酸素飽和度は高く、採血の成功や採血時間についても良好な結果だったと報告されている。[1] 著者らは、この組み合わせが採血時の痛みなどを軽減すると結論している。[1]

ここでは、結果の方向と効果の大きさを分けたい。泣く時間が短かったことと、「何分短くなる」と家庭に約束できることは違う。また、抱擁と吸啜を同時に行った比較なので、観察された差をハグだけの働きに割り振ることはできない。[1] 母乳の方法を選ぶべきだという一般的な勧めにも直結しない。

試験では痛みの評価だけでなく、採血に関わる複数の結果を見ている。[1] 痛みの尺度の得点が低いこと、泣く時間が短いこと、採血が進めやすいことは、それぞれ異なる観察である。親が気にする泣き声と、医療者が確認する処置の経過が、同じ介入の中で調べられていた点にも目を向けたい。

この試験を心拍のハグ実験と並べる価値は、対象と場面の違いが見えることにある。前者は処置を受ける新生児への複合的な介入、後者は生後1年以内の乳児が抱かれたときの生理反応の比較だ。[1][2] どちらにも心拍が登場するが、同じ効果を繰り返し確認した研究として数えるのは適切ではない。

数字で読む親子の触れ合い

生後1年以内:抱いて支える、ハグする、強くハグする条件で乳児の心拍を比較した対象である。[2]

生後4か月超:親のハグで心拍間隔の増加が観察された月齢の区分である。[2]

生後4か月未満:同じ間隔の増加は見られず、接触の圧と関連した間隔の短縮が観察された。[2]

96人、各群48人:採血時の抱擁と母乳吸啜の試験の対象数と群分けであり、家庭でのハグ実験の人数ではない。[1]

各群27人:口唇口蓋裂の乳児の装置治療と母親の満足度を比べた別の試験の人数である。ハグの回数を比較した試験ではない。[19]

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宮川涼 Founder

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