利き足は練習で変えられる?反対側の上達と自然に選ぶ足が変わることの違い

利き足を変えるには反対側を練習すればよいのか。サッカー選手の足の使い方、柔道選手の左右の好み、女性ダンサーの回転成功率を調べた研究から、上達と選択の変化を分けて読む。右足を選び続けても左足が不得意とは限らない理由と、練習の成果を何で確かめるかを考える。

左足でも蹴れるようになりたい。ところが、練習では左を使えても、とっさにボールが来ると右が出る。この食い違いを「まだ上達していない」と片づける前に、足の好みと技術を分けたい。プロのサッカー選手を調べた研究では、普段は選ばない足を使った場面でも選手は巧みだったが、使う足の偏りは残っていた。競技選手の観察なので、18〜39歳の女性の日常の足の選び方へそのまま当てはめるには、競技経験や動作の違いを考える必要がある。[1]

利き足を変えるという願いには、反対側の技術を伸ばしたいという意味と、自然に選ぶ側そのものを替えたいという意味がある。研究から返せる答えは同じではない。サッカーの観察では技術と選択のずれが見られ、柔道選手と対照群の比較では、長年の運動・姿勢の技能獲得に伴って左右の好みが変わる可能性が示唆されている。[1][7]

「利き足の割合と調べ方、ボールを蹴る足と支える軸足の違いを研究で読む」では、割合や調べ方を扱っている。ここでは判定の話をそこへ譲り、練習した後に何が変われば成果と呼べるのかを考える。左利きへの改名より、左足でできることが増えるか。その問いの方が、自分の練習を見失いにくい。

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「使える足」と「使いたい足」を分けて考える

サッカー研究を読むときに大切なのは、足を選ぶ頻度と、選んだ後の動作の出来を区別することである。Careyらは、アマチュア選手400人の自己申告と、プロ選手426人の実際の競技中の足の使用を別々に調べた。前者は本人が自分をどう捉えているか、後者はピッチで何が起きたかを見ている。同じ質問紙を両群に配って比較した研究ではない。対象はサッカー選手であり、18〜39歳の女性一般で同じ使用の偏りが生じるかは別に確かめる課題だ。[1]

アマチュアの約80%には右足への好みがあり、プロでも実際の使用から見た右への偏りは約75%だった。数字だけを眺めて、プロになると練習によって好みがその差だけ減る、と読むことはできない。対象も測り方も違い、同じ人が練習前後で変わった量ではないからだ。著者らが強調したのは、プロでも両足を同じように使う選手は少なかったことである。[1]

それでも、好まない足を使ったときのプロの成績は巧みだった。この結果は「使う回数が少ないから、その足ではできない」という推測を崩す。競技中の足の選択の偏りを、技術の不足だけで説明するのは難しいというのが著者らの見方だ。反対側に出番が少ないことと、その側の練習が無駄だったことはつながらない。[1]

日常の目標に置き換えるなら、友人とのボール遊びで左にもパスを出したいのか、考えずに左を出すようになりたいのかを先に言葉にする。前者の成果を知りたい日に、どちらを先に選んだかだけを記録すると、知りたいことと記録が食い違う。技術の課題には技術の観察を、選択の課題には選択の観察を対応させる、という整理である。[1]

ここでの「好み」は、好きな色のような気分の話だけではない。研究では、本人が答える側の偏りも、実際の動作で表れる使用の偏りも扱われている。そのため「自分では両足を使えると思う」と「試合で両足を使っている」は別々に確かめる必要がある。自己評価を捨てるのではなく、自己評価だけで終えない読み方だ。[1]

疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。

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余裕のあるキックと試合中の選択は同じではない

アマチュア選手の回答では、強い足の偏りが認められたのは主にペナルティーキックなどのフリーキックだった。研究では、準備と実行のために十分な時間と空間を使える、自分のペースで行う動作として説明されている。一方、プロ選手の実際の足の使用では、偏りは調べたすべての行動に認められた。[1]

この違いは、「練習場で選ぶ足」と「動きの続く競技で使う足」を一緒にしない理由になる。静止したボールをどちらで蹴るか決める場面と、競技中に実際にどちらを使ったかという場面では、観察しているものが違う。前者の質問への答えだけから、後者の左右の配分まで決めつけないことが必要だ。[1]

ただし、この研究から「焦ると必ず利き足になる」「考える時間を減らせば好みが変わる」という練習法を引き出すのも飛躍である。示されたのは自己申告と実際の使用の違い、そして使用と技術のずれだ。目標に合った場面で確かめるという手がかりにはなるが、足を替えるための特定の処方箋にはならない。[1]

たとえば左で蹴ると決めた練習の日には、左を使った事実そのものは選択の変化の証拠にならない。指示どおりに実行できたのか、自由に選べるときにも左が出たのかを分けて書くとよい。この区別は、研究が分けていた技術と使用の考え方を、自分の記録へ持ち込む工夫である。左足に出番を指定することと、左足が選ばれることを混ぜない。[1]

さらに、試合で右を多く使った日でも、左で実行した動作が以前より扱いやすかったなら、その観察は残してよい。左右の使用率だけを成績表にすると、使ったときの質が落ちてしまう。プロ選手の結果が面白いのもそこだ。足の出勤日数と仕事の出来は、同じ帳簿ではなかった。[1]

柔道の研究は「好みが変わる可能性」も示している

一方で、左右の好みは練習と無関係に固定されている、とまで言うのは強すぎる。熟練した男性柔道選手と対照群を比べたMikheevらの研究は、手足や姿勢の好み、左右の耳や視野に分けた課題などを調べ、長期の運動訓練に関連する左右の特徴を検討している。男性の熟練選手を扱う比較なので、18〜39歳の女性が日常的に練習した場合の変化をそのまま予測する研究にはならない。[7]

柔道選手は全体としては右利きでも、特定の動作では対照群より左手を選びやすく、その傾向は特に熟練した選手で目立った。手や足の好みに関する項目どうしの関係や、立つ側との関係も両群で異なっていた。著者らは、長年の柔道で運動や姿勢の技能を獲得する過程において、左右の好みが修正される可能性を示唆した。[7]

大事なのは、具体的な結果と著者の解釈を両方残すことである。左手を選ぶ動作が多かったという結果を、「柔道をすれば利き足が反転する」と書き換えることはできない。しかし、足の選択は絶対に動かないという話に合わせて、好みの変化の示唆そのものを消すこともできない。競技や課題によって異なる姿が見えている。[7]

この研究は、同じ初心者を練習開始から追い、その前後を無作為に分けた群と比べた試験ではない。熟練選手と対照群の違いには、訓練を受けた結果の可能性と、もともとその競技を選び続けた人の特徴の可能性が重なる。著者の示唆を尊重しつつ、練習の因果効果として確定したとは扱わない。[7]

サッカーと柔道の結果を、どちらか一方が正しくもう一方は間違い、と並べる必要もない。競技の内容、調べた動作、本人の回答か実際の行動かが異なる。足を使う頻度が偏ったまま巧みなプロ選手がいることと、長期の技能獲得で好みが変化する可能性は両立する。変わる部分を動作ごとに問う方が、研究の答えに近い。[1][7]

数字を比較する際には、母数にも目を向けたい。アマチュアの約80%という値のもとになったのは質問に答えた選手であり、プロの約75%は競技中の使用を評価した別の選手群である。両者を並べた図を見たつもりになると、初心者が練習してプロへ育つ過程のように感じやすい。しかし、この研究がつくったのは同じ人の成長曲線ではない。練習の成果を知るには何を比較した値なのかを確かめる、という注意が必要だ。[1]

また、プロが好まない足でも巧みだったという結果には、その足を実際に使った場面に注目したという条件がある。そこから、どんな局面でも左右の技能が完全に等しいとか、両足を同じだけ使わせれば成績が上がるという結論へ進むことはできない。観察された選択と結果から、実施していない練習の効果までは決められないためだ。[1]

このように読むと、研究の面白さは成功例の数より、直感では同じだと思っていた項目が分かれるところにある。選ばれる側、実行できる側、本人が得意だと答える側を、無理にひとつへそろえない。その食い違い自体を観察の対象にした点が、自分の練習を考える手がかりになる。[1]

数字で読む利き足と技能のずれ

アマチュア400人:手足の好みと、好まない足の練習について自己申告を調べた対象である。[1]

プロ426人:競技中の実際の足の使用を調べた対象で、練習前後の追跡人数ではない。[1]

約80%と約75%:それぞれアマチュアとプロでの右足への偏りで、同じ測定法による改善率ではない。[1]

女性ダンサー8人:左右の跳躍と好む方向・好まない方向の回転を比較した研究の規模である。[5]

回転成功率73%と50%:好む方向と好まない方向の結果であり、練習で増加した幅ではない。[5]

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宮川涼 Founder

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