筋トレで大胸筋が大きくならない?一か所の厚さと全体の体積で違う成長の読み方

筋トレを続けても大胸筋が大きくならないと感じたら、何を測って成長を判断しているかを確かめたい。部位ごとの筋厚、筋肉全体の体積、押せる重さは別の指標である。男女を対象にした比較試験や長期の測定研究から、局所の変化を胸全体に広げない読み方と、記録を見直す手順を考える。

ベンチプレスの記録帳を閉じて鏡を見る。押せる重さは増えたのに、鏡の前では「胸は変わっていない」と感じる。このとき見直したいのは、種目だけでなく、何を成長の物差しにしているかである。

大胸筋が大きくならないかどうかは、一か所の厚さだけでは胸全体について決められない。男女を対象にした比較試験では、同じ大胸筋でも測定部位によって群間差の出方が異なった。18〜39歳の女性に同じ部位差が出るかは、この男女を合わせた結果だけでは判断できない。局所の筋厚を測る結果と、筋肉全体がどれだけ増えたかという問いを分ける必要がある。[2]

「姿勢改善で胸が大きくなるのは本当?立つ時の形と乳房の体積を読み分ける」は、既存記事に譲る。ここで追うのは乳房の大きさではなく、大胸筋の研究が測った場所と範囲である。女性が筋トレの成果を読むときも、鏡の印象を研究の筋厚と同じものとして扱わないことから始めたい。

既存の「ハムストリングの大きさは一か所で分かる?厚さと体積で違う測定結果の読み方」には、裏ももの画像測定と信頼性の論点を譲る。この記事では、大胸筋の部位別の結果を使って、セット構成の優劣をどこまで判断できるかに焦点を置く。

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一か所の厚さで、胸全体の成長は分かるか

筋厚は筋肉の厚みを表す測定値である。大胸筋のトレーニング研究では、超音波画像を使ってその変化を追っている。たとえば、筋トレ経験のある男性を全身方式と分割方式に分けた比較試験も、大胸筋の評価には超音波による筋厚を使った。男性の結果を18〜39歳の女性にそのまま当てはめるには検証が必要である。「大きさを調べた」という説明を読んだら、まず何を測ったのかを確かめたい。[3]

厚さと体積は、そもそも問いが違う。厚さを測る問いは「その場所がどれだけ厚いか」であり、体積を測る問いは「対象とした筋肉が空間をどれだけ占めるか」である。胸のある場所が厚くなったという結果を、胸のどの場所も同じように成長したという文章に置き換えると、測定した範囲を越えてしまう。部位を分けて測った試験は、その違いを考える具体例になる。[2]

体積を測る方法を示す例として、ニワトリの胸筋を画像で調べた動物研究がある。磁気共鳴画像を使い、横断面の画像を立体的に組み直して胸筋の体積と形を推定した研究である。筋肉重量と筋体積の関係では、決定係数が0.99と報告された。決定係数は、ここでは両者の関係の当てはまりを表す値である。動物の測定研究であり、18〜39歳の女性の筋トレによる成長を直接説明する結果ではない。[17]

ただし、これは人の筋トレの効果を確かめた試験ではない。ニワトリで重量と体積がよく対応したからといって、人の大胸筋の一点の厚さから全体の体積を正確に計算できるとはいえない。この研究を置く意味は、人の成長量を予測するためではなく、体積の評価には空間的な広がりを扱う測定があると理解するためである。[17]

日常の記録でも、見たいものの名前をそろえたい。「胸を大きくしたい」と書くだけでは、押せる重さ、局所の筋厚、胸全体の体積、服を着た印象が同じ目標欄に入ってしまう。研究に照らすなら、筋力テストと筋厚の測定を別々に記録している点が参考になる。筋力の結果を筋肉全体の体積の代わりにする必要はない。[3][4]

鏡の中の胸には、測定点の印が付いていない。だからこそ、見た目が変わらないという感想と、研究で局所の厚さが変わったという結果は、急いで一致させなくてよい。まずは自分が知りたい変化と、目の前の記録が答える範囲をそろえる。その整理ができれば、「変化がない」という言葉を必要以上に広げずに済む。

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同じ大胸筋でも、測る部位で結果は異なる

部位の違いを直接考えられるのが、筋トレ経験のある男女21人を対象にした無作為化比較試験である。内訳は男性12人、女性9人で、慣らしの期間を経て、通常のセットと、反復の間にも短い休憩を入れるセットに分かれた。介入期間は8週間で、トレーニング量をそろえてベンチプレスのセット構成を比較している。18〜39歳の女性に同じ差が生じるかは、男女合計の結果からは判断できない。[2]

通常のセットでは、反復の途中に休憩を挟まず、セット間に休む。比較したクラスターセットは、反復の間にも休憩を置く構成である。この試験では最大挙上重量の85%を使い、5回を4セット行った。通常群のセット間休憩は5分、クラスター群は反復間30秒とセット間3分であった。単に「休んだ群」と「休まない群」の比較ではない。[2]

通常群ではセット中の速度低下が大きく、大胸筋の近位部の筋厚について、クラスター群を上回る結果が報告された。筋厚の群間差の効果量は小さく、絶対値で0.34であった。中央部でも通常群に有利な小さい効果量がみられたが、そちらは有意な群間差ではなかった。他の評価項目についても、有意差は認められなかった。[2]

効果量は、違いの大きさを共通の尺度で表した値である。「統計的に差があった」と「差が大きい」は同じ意味ではない。また、中央部に有意差がなかったことも、その場所が全く変化しなかったという意味ではない。ここで比較しているのは、異なるセット構成による変化の違いである。個々の参加者が成長したかという問いとも区別する必要がある。[2]

この結果から読み取れるのは、通常のセットが胸全体を必ず大きくするという万能な優劣ではない。著者らも、大きい速度低下が大胸筋の特定部位の筋肥大を促す可能性を述べている。特定部位の結果であることと、小さい差であることを残して読むのが、この試験に見合う受け止め方である。[2]

女性が含まれる点は身近だが、男女を合わせた比較の結果を、そのまま女性だけの効果と呼ぶことも避けたい。参加者の構成を確認することと、女性に同じ差が出ると断言することには距離がある。「女性も参加した試験では、部位によって結果が異なった」という表現なら、対象と結論の両方を保てる。[2]

比較の条件にも目を向けたい。この試験はトレーニング量をそろえているため、単純に多く反復した群と少なく反復した群の差として読むものではない。一方、反復間の休憩もセット間の休憩も構成が異なる。結果を「休憩は短いほどよい」という単独の規則にすると、試験で比較した条件から離れてしまう。[2]

近位部に有意差があり、中央部に有意差がないという組み合わせも、近位部のほうが中央部より確実に育つと証明したわけではない。それぞれの場所についてセット構成を比較した結果である。場所同士の優劣と、同じ場所での群同士の差を分けると、胸のどこを狙うべきかという別の問いに飛びにくくなる。[2]

研究紹介に「大胸筋がより発達した」とだけあったら、近位部の話か、中央部の話か、それとも筋肉全体の話かを読み直す価値がある。部位の名前は細かい注釈に見えるが、その一語を落とすだけで結果の広さが変わってしまう。新しい種目を足す前に、まず比較の単位を確認したい。[2]

重さの伸びと筋厚の伸びを、別の欄に置く

筋トレ経験のある男性23人を対象にした無作為化比較試験では、筋群を1日に1回鍛える構成と、1日に2回に分けて鍛える構成を8週間比較した。ベンチプレスの最大挙上重量は、前者で4.6%、後者で6.8%増加したが、群間に有意差はなかった。大胸筋を含む測定部位の筋厚も両群で増えた一方、群間差はなかった。男性の試験であり、18〜39歳の女性でも同じ結果になるかは別に確かめる必要がある。[4]

同じ試験では、スクワットの最大挙上重量の伸びは、1日に2回の群が有意に大きかった。つまり、下半身の筋力で得られた優位を、胸の筋厚にもそのまま持ち込むことはできない。研究の題名や最も目立つ結果だけで、全身のすべての指標が同じ方向に動いたと考えると、胸についての判断を誤る。[4]

全身方式と分割方式を比べた別の無作為化比較試験では、筋トレ経験のある男性21人が10週間取り組み、両群で筋力と筋厚が改善した。分割方式で有意に大きかった筋厚の変化は、太ももの外側広筋であった。この結果も、「分割したほうが大胸筋全体の体積が増える」と言い換える根拠にはならない。男性を対象とした結果を18〜39歳の女性にそのまま適用するには検証が必要である。[3]

筋トレの記録帳には重量と回数を書きやすい。画像検査による筋厚は、同じように毎回書き込めるものではない。だから記録欄が埋まっている指標だけを、体の変化の代表にしたくなる。しかし、これらの研究が筋力と筋厚を分けて評価していることは、数字の種類を混ぜないための手掛かりになる。[3][4]

たとえば「以前より押せるが、胸の外見は変わったと感じない」と記録するなら、矛盾として消す必要はない。押せる能力についての記録は残し、外見の感想も別に置く。そこから直ちに筋肉全体が増えていないと結論することも、見えないだけで確実に増えていると励ますことも避けたい。研究が測った対象に合わせ、言えることを選ぶ読み方である。[2][4]

数字で読む大胸筋の測定

21人:男性12人、女性9人でセット構成を比較した試験の対象人数である。[2]

8週間:その試験の介入期間であり、胸全体の体積を保証する期限ではない。[2]

0.34:通常セットに有利だった大胸筋近位部の筋厚の、効果量の絶対値である。[2]

4.6%と6.8%:1日1回群と2回群のベンチプレス最大挙上重量の伸び。群間差は有意ではない。[4]

24週間:未経験の若い男性で、胸と腕の筋厚の経過を追った研究の期間である。[14]

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宮川涼 Founder

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