甘いものは別腹の科学的根拠、主菜を25%減らしてもデザートの量は変わらなかった

甘いものは別腹の科学的根拠として調べられてきたのは、味の飽きである。食べ続けた味だけ快さが下がり、他の味は保たれる。昼食の主菜を25%減らしてもデザートの量は変わらず、1種類のスナックをテレビを見ながら食べると飽きが現れなかった。満腹でも食べられる仕組みを読み直す。

別腹は日本語だけの言い訳ではない。2025年の英語の論文は、この現象を「プディングのお腹」と呼んでいた[2]。

学問の名前は感覚特異性満腹という。ある食べものを食べ続けると、その味の快さと欲しさだけが下がり、食べていないものの快さは保たれる[2][11]。「もう食べられない」の一部は、特定の味への飽きで説明できるわけである。パスタで満ち足りた人なら、パスタの快さは下がっても、ティラミスの快さはまだ下がっていない、という理屈になる。

そして、もっと奇妙な実験がある。81人の昼食で主菜を最大25%減らしても、そのあとのデザートの量に影響はなかった。80%と75%の量では空腹感が増えたのに、である[14]。デザートは、主菜の空けた席に座るわけではないらしい。

運動の直後のおやつなら「ダイエットのおやつは運動直後なら別腹?食べ始めるまでの間隔と空腹を読む」、想像で満足するかなら「運動前後の甘いものは想像だけでも満足する?反復回数と食べる場面の違いを読む」が同じサイトで先に書いている。こちらは運動の話をしない。夕飯のあとの冷蔵庫の話である。

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チョコレートを食べると、チョコの画像を握る力が落ちる

この現象を、言葉ではなく握力で測った実験がある。40人の参加者が、ごく短く、33ミリ秒か200ミリ秒だけ映る食べものの画像を「勝ち取る」ために握力計を握る[2]。チョコレートかオレンジを割り当て、実際に食べる前と後で握る力を比べた。

チョコレートの画像を握る力は、チョコレートを食べたあと、はっきり落ちた。オレンジの画像への力は落ちなかった[2]。ごく短い画像に向ける努力の量にも、飽きが出ているわけである。

そもそも参加者は、比較の画像より食べものの画像に強い力を出していた[2]。握っているのは自分の手なのに、さっき食べたものによって力が変わる。

疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。

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主菜を減らしても、デザートは動かなかった

冒頭の実験を、もう少し丁寧に見る。81人が4週続けて、同じ曜日に同じ昼食を取った。主菜を、1週目に本人が食べた量の90%、85%、80%、75%に減らし、デザートは好きなだけ食べてよい[14]。

主菜が80%と75%のとき、参加者ははっきり空腹を感じていた。それでもデザートの量に影響はなかった[14]。主菜の減った分をデザートで取り戻すなら、デザートは増えるはずである。増えなかった。

もちろん一つの試験で、減らした幅も25%までである。空腹と満腹の感じは、主菜の前、主菜の後、デザートの後の3回測っている。著者ら自身、どこまで減らせるかはさらに調べる必要があると書く[14]。しかも同じ昼食を4週続けるという、かなり不自然な条件である。ただ、デザートの量は主菜の量で決まる、という単純な読みには反例が立った。

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脂肪の量より、甘いかしょっぱいかが効いた

では何が飽きの境界を決めるのか。肥満の女性21人と標準体重の女性23人に、低脂肪と高脂肪、甘いものとしょっぱいものを組み合わせて試した研究がある。サンドイッチでもスナックでも、飽きの強さを左右したのは脂肪の量より味だった[17]。甘いか塩辛いかのほうが、脂肪の量より強く効いたのである。

脂っこさより味の違いが効くのなら、ラーメンのあとに杏仁豆腐が入り、ケーキのあとに塩味のせんべいが恋しくなるのは、この線に沿っている。

甘いものの内側では、飽きは広がる。低カロリー甘味料で甘くした飲みものを水と比べた40人と64人の2つの試験で、試した甘いものすべてで快さと欲しさが下がった。しょっぱいものには影響しなかった[11]。甘い味は一つの区画として飽きられるらしい。この効果は飲んだ直後のもので、2時間後には消えていた。反動で甘いものが余計に欲しくなることもなかった[11]。

同じ論文の51人の試験では、もう一つ気になる数字が出た。砂糖入りのコーラ500mLを飲んでも、一緒に好きなだけ食べられるスナックで減ったカロリーは、飲んだ分の平均20%にとどまった[11]。飲みもののカロリーは、帳簿をすり抜けやすいように見える。ここでは炭酸の効果も測られていて、炭酸水はふつうの水より空腹を減らし、満腹感を増やした[11]。

品数より、盛りの量の差のほうが大きかった

別腹の話になると「品数が多いほど食べる」とよく言われる。確かに効く。だが、大きさを測ると拍子抜けする。

女性42人の昼食の試験では、同じ好物の3皿より違う料理の3皿のほうが、15±7g多く食べた。一方で盛りを450gから600gに増やすと、57±7g多く食べた[9]。品数の効果は、盛りの大きさの効果のおよそ4分の1である。3皿を順に出した女性49人の試験でも、品数と盛りは足し合わさって食べる量を増やし、違う料理が続く食事では飽きが小さかった[9]。著者らの読みでは、飽きの大きさは同じか小さいまま食べる量だけが増えた、つまり飽きが遅れて来たのである[9]。違う料理の皿は、飽きの到着を遅らせているらしい。

2025年のレビューは、食べる量を動かす食品側の要因を、盛りの大きさ、エネルギー密度、品数の三つにまとめ、なかでもエネルギー密度が最も支配的だろうと書く。水分を増やすような小さな変更でもエネルギーの摂取は減るという[6]。品数は、とくに味や食感が互いに違うときに効く[6]。これらの性質を全部備えた食べものに囲まれているのが、いまの食環境だとも指摘する[6]。

盛りの効果には妙な性質もある。量の表示や盛りの訓練では抑えられず、値段を変えても変わらなかったのに、残りを持ち帰ってよいと伝えると弱まった[13]。もったいなさの計算が、別の棚にあるらしい。もう一つの手がかりは早さである。盛りが大きいと一口も大きく、食べる速さも上がる。口の中にある時間が短いと飽きが遅れるのではないか、とこのレビューは推測する。実際、多く食べたのに飽きの大きさが盛りの大小で変わらなかった研究がある[13]。

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テレビを見ながらだと、1種類のスナックでも飽きが現れなかった

女性を対象に、テレビありとテレビなしでスナックを1回ずつ食べてもらった試験がある。全員がテレビありで多く食べた。そして1種類のスナックをテレビを見ながら食べた群では、快さの評価の上で飽きそのものが現れず、それが食べる量の多さに結びついていた[16]。同じだけ満腹を感じるのに、テレビありではより多く食べる必要もあった[16]。

条件もある。テレビで気分がよくなった人や、知らない番組を見た人では影響が小さく、ふだんテレビをよく見る人では大きかった[16]。夜11時のスマホの動画で同じことが起きるかは、この試験の外の話である。ただ、ベッドの上で袋菓子が底をつくまで味を覚えていなかったあの夜には、説明の候補がついた。

飽きの正体は「慣れ」なのか

時間がたつと戻り、特定の刺激にだけ起きる。この性質は、繰り返しの刺激への「慣れ」とよく似ているので、感覚特異性満腹は慣れの一種だと考えられてきた[8]。

ところが検証は素直に進まない。ネズミの実験では、時間がたつと戻る性質は確かめられたが、別の刺激を挟んで慣れを解除するはずの操作は効かず、注意をそらす操作も飽きを変えなかった[8]。人の57人の試験でも、評価の順番を変え、ほかの食べものを先に味見させて飽きを解除しようとしたが、飽きの強さは変わらなかった[19]。

少なくともこの手順では典型的な慣れとは言いにくい、というのが著者らの結論である[8]。身近な現象なのに、中身の説明はまだ閉じていない。

数字で読む別腹

  • 25%: 主菜を減らしてもデザートの量に影響がなかった幅の上限。81人の試験[14]
  • 15gと57g: 品数を増やしたときと盛りを増やしたときの、昼食の増え方。女性42人[9]
  • 2時間: 低カロリー甘味料の飲みものによる甘いものへの飽きが消えていた時点。反動の増加もなし[11]
  • 21人と23人: 飽きの強さに差がなかった肥満の女性と標準体重の女性[17]
  • 約4倍: 満腹後の自由なスナックで、ナルコレプシー1型の患者が対照より多く取ったカロリー[15]

疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。

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宮川涼 Founder

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