
活動の大きさ、筋肉の厚さ、最大筋力は別々に見る
腹筋が働いていると分かると、次は「それなら腹筋が強くなるのか」が気になる。つり下げ式腕立ての継続試験では、男性8人が限界までの運動を各回3セット、週3回、8週間行った。トレーニング中の最大反復回数は初回から最終回へ92%増加し、腹直筋の厚さは27%、外腹斜筋の厚さは14%増加した。男性8人の継続試験なので、18〜39歳の女性に同じ変化率を見込む根拠にはできない。[2]
同じ試験では、肘を伸ばす筋肉の厚さは16%、曲げる筋肉の厚さは3%増えた。一方、肘の伸展・屈曲の最大等尺性筋力と、ベンチプレスで持ち上げられる最大重量には変化がなかった。筋肉が厚くなったという結果と、別の測り方で最大の力が増えなかったという結果は、同時に起きている。[2]
ここで、腹筋の最大筋力も増えなかったと付け足すのは誤りになる。変化がなかった測定は肘の力とベンチプレスであり、筋厚の変化とは測定項目が違う。研究の良い結果を広げすぎないことと、変化のない項目を広げすぎないことは、同じくらい大切である。腹筋の活動、腹筋の厚さ、腕の最大の力を同じ成績表の欄に入れない読み方が要る。[2]
また、これは少人数の男性がつり下げ式を繰り返した試験である。床の腕立てで下降だけを強調すれば同じ筋厚の変化が起こる、という処方には変換できない。上げる時と下げる時の配分を決める根拠として使うより、運動中の活動と継続後の適応には別の測定が必要だと理解するための結果である。[2]
中央線の帰り道に見た短い動画では、「お腹に効く」と字幕が出るだけかもしれない。その言葉が運動中の筋活動、後日の筋厚、最大筋力のどれを指しているかで、受け取る内容は変わる。反復回数が増えたことも、厚さが増えたことも成果だが、測った項目を省略しないほうが、自分の練習の目標を選びやすい。[2]
継続後の変化では、練習した動作と評価した動作の組み合わせも見たい。つり下げ式腕立ての反復回数が伸びた一方、ベンチプレスの最大重量は変わらなかった。腕立ての回数を伸ばす目標と、別の押す種目で最大重量を伸ばす目標は、同じ結果として扱えない。[2]
疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。
支える課題を増やすと、腰への荷重も変わりうる
腕立て中に腹筋を使いたいからといって、支持面を揺らす方法を急いで選ぶ必要はない。運動習慣のある男性11人で標準の腕立てとつり下げ式を比べた研究では、つり下げ式で腹壁の筋肉と広背筋の活動が高くなった。同時に、生体力学モデルで予測した腰の椎間関節の平均圧縮力と最大圧縮力も大きくなった。運動習慣のある男性の結果であり、18〜39歳の女性にも同じ荷重や活動の差が生じるかは、この比較だけでは判断できない。[7]
腹筋の活動増加と、腰の回転に対する硬さへの筋肉の寄与の増加は、この研究では一緒に観察された。体幹を支える働きが増えたことは、腰への圧縮荷重が減ったことを意味しない。支えが増えることと、荷重が増えることは両立する。お腹が忙しい種目が、腰にはいつでも軽い種目だとは限らないのである。[7]
研究者は、高い腰部圧縮荷重に耐えられない人では、つり下げ式の利点より腰の組織への過負荷の懸念が上回る可能性を指摘している。ただし、ここで扱う圧縮力は測定した動作や筋活動からモデルで推定した値であり、全員がけがをするという結果ではない。活動が高いという情報だけでも、荷重が高いという情報だけでも、個人の適否は決められない。[7]
自宅での目標は、研究の中で最も高い活動を記録した条件を再現することだけではない。上げる時に形が崩れると感じたなら、まず現在の支え方と反復経過を確認するほうが問いに合っている。腰に痛みがある、運動を続けてよいか迷うといった場合は医師に相談する。つり下げ式で得られた活動増加は、痛みを我慢して支持条件を難しくする理由にはならない。[2][7]
数字の基準も区別したい。床に対する活動の増加率と、最大随意収縮に対する活動の割合は、分母が違う。静止時の15〜27%という差は床を基準にした相対差である。[5]
練習のメモには、床で実施したか、反復の終盤だったか、押し戻す途中だったかを残せる。ただし、その観察を腹筋が弱いという診断へ直結させない。研究では筋電図、姿勢、手にかかる力を組み合わせて体幹の働きを調べている。自宅の観察は、次に同じ条件で見返すための記録として使いたい。[7][12]

よくある誤解
「下げる時は重力に任せるので、腹筋は休んでいる」という説明は、体幹を支える役割を落としている。肘を曲げた位置を維持する条件でも腹筋活動は測定され、腕立て中の腰の回転への抵抗には腹筋群が寄与していた。体が上下しているかだけで、腹筋の仕事の有無は判断できない。一方で、この結果から下降中の活動を一定と決めることもできない。[5][12]
「上げる時にお腹がつらいから、その局面だけが腹筋トレーニングになる」とも限らない。つり下げ式の実験では反復の終盤に腹筋活動が増えたが、これは開始と終了の比較である。つらさを感じた局面の記憶と、反復が進んだことによる変化を分けたい。動作の向きと、どこまで繰り返したかの両方を残せば、別の日にも比べる項目が見える。[2]
「不安定な道具なら腹筋の効果だけを上乗せできる」という期待にも注意が要る。つり下げ式では腹筋活動と腰への圧縮荷重がともに増えた研究があり、ボールの研究では種目によって筋活動の変化が異なった。不安定さは、お腹にだけ届く追加料金のようなものではない。支持条件を変えれば体全体への課題が変わる、と考えるほうが結果に沿っている。[7][9]
今日からできること
- 記録には「上げる時」「下げる時」と「反復の序盤」「終盤」を別々に書く。男性6人で観察された腹筋活動の増加は開始と終了の比較であり、動作の向きの順位ではない。[2]
- 比べたい日は、床かつり下げ式かなどの支持条件を記す。男性20人の比較では、静止時にも反復時にも支持条件による活動の差があった。[5]
- 数字を見る時は単位の意味まで読む。64.32%はモデル内の関節の硬さへの寄与であり、46%から88%は最大随意収縮を基準にした腹直筋活動の変化である。[2][12]
- 運動後の目標を「回数」「筋肉の厚さ」「最大の力」に分ける。男性8人の8週間の試験では、増えた項目と変わらなかった項目が混在した。研究の週3回という設定を、そのまま自分の必須回数にはしない。[2]
- 不安定な支持を選ぶ前に、腹筋活動だけでなく腰への荷重も考える。男性11人のモデル研究は、つり下げ式で両方が増えることを示している。[7]
腕立ての途中を振り返る時は、どちらの向きが「正解」かを急いで決めなくてよい。下降、上昇、反復の終盤を区別して観察すれば、活動の測定結果を自分の感覚へ乱暴に置き換えずに済む。研究が示す体幹の支えを知り、練習では体の位置の変化を記録する。その距離を保つことが、短い動画の断言に振り回されない助けになる。[2][5][12]

オンザショアで、動きを確かめる予定を暮らしに置く
動作の途中に目を向ける練習には、続けて体を動かす時間も用意しておきたい。オンザショア立川店は8:00〜23:30の営業で、年中無休である。仕事の前後や休日など、暮らしの中で運動する時間を考える際の選択肢になる。店舗は東京都立川市曙町2-14-10 エトロワビル3F、JR立川駅北口から徒歩1分にある。
溶岩プレートを敷いたスタジオでのホットヨガに加え、常温のヨガ、ピラティス、パーソナルトレーニングがある。ヨガだけで25種類以上のレッスンを設けている。腕立ての特定の局面を変えれば効果が出るという約束ではなく、運動を続ける場所として、種目や通う時間を検討できる。
妊娠中は溶岩ホットヨガに参加できず、常温のマタニティヨガがある。医師から運動を止められている方は利用できない。参加条件と通える時間を照らし合わせ、店舗案内と料金を確認しておきたい。
ヨガの体験は税込1,980円で、60分のレッスンにバスタオル2枚、フェイスタオル1枚、ヨガマットのレンタルを含む。動きを確かめる予定が立ったら、体験予約で日時を選べる。
参考文献
[2] Suspended Push-up Training Augments Size of not only Upper Limb but also Abdominal Muscles. — Kohiruimaki R, Maeo S, Kanehisa H., 2019, International journal of sports medicine. DOI: 10.1055/a-0989-2482
[5] Muscular activities during sling- and ground-based push-up exercise. — Maeo S, Chou T, Yamamoto M, Kanehisa H., 2014, BMC research notes. DOI: 10.1186/1756-0500-7-192
[7] Muscular contribution to low-back loading and stiffness during standard and suspended push-ups. — Beach TA, Howarth SJ, Callaghan JP., 2008, Human movement science. DOI: 10.1016/j.humov.2007.12.002
[9] Changes in muscle activity and perceived exertion during exercises performed on a swiss ball. — Marshall P, Murphy B., 2006, Applied physiology, nutrition, and metabolism = Physiologie appliquee, nutrition et metabolisme. DOI: 10.1139/h06-006
[12] Abdominal muscles dominate contributions to vertebral joint stiffness during the push-up. — Howarth SJ, Beach TA, Callaghan JP., 2008, Journal of applied biomechanics. DOI: 10.1123/jab.24.2.130
この記事の情報は2026年10月時点のものです。個別の健康状態については医師にご相談ください。
ヨガとからだの小さな疑問のほかの記事
- 腕立ての前に腹筋を疲れさせると姿勢は変わる?自宅で順番を決める記録の取り方
- 腕立てで腹筋より首が疲れるとき、顔を上げる姿勢と回数の記録を分けて考える
- 腕立て伏せで腹筋を使うには骨盤を丸める?腰の反りと支える姿勢を研究で考える
- ダイエットのエアロバイクは目標ワットを表示する?数字と目盛りで違う負荷の保ち方
- ダイエットの有酸素運動は自分を君と呼ぶ?散歩の独り言と日本語の違いを読む
- ダイエットの有酸素運動を小分けにすると空腹も変わる?連続運動と食欲を比べる
- ダイエットの有酸素運動は時間で燃料も変わる?一定負荷と脂肪の割合を読む
- ダイエットの有酸素運動中に食べ物の動画を見る?画像研究と食事量の距離を読む
- ダイエットの筋トレ動画は動きが飛ぶと分かりにくい?滑らかさと覚え方の境界
- ダイエットの筋トレはセット後に何を聞く?次回の確認点を相談と記録で残す
- ダイエット用踏み台は奥行きも必要?収納前に確かめたい足のはみ出しと戻り方
- ピラティスの呼吸は胸が広がれば十分?左右の肋骨を合否の物差しにしない読み方
- ピラティスの呼吸は吐いた後に間を置く?休止の場所と心拍の数字を読み解く
- ランニング初心者は会話の内容でも足運びが変わる?考える負担とペースの読み方
- ウォーキングとランニングを交互に、加速と減速でずれる境目をどう記録するか
- ウォーキングとランニングは同じ距離なら同じ消費?安静分を含む数字の読み方
- スクワットで腹筋を鍛えるなら呼吸も記録、反復の後半のお腹をどう比べるか
- プランクは足首を交差するときつい?床につく足と骨盤の向きから支え方を読む
- 心肺機能を鍛える効果は初回と比べてよい?再検査で選ぶ訓練前の基準値
- 心肺機能を鍛える室内運動は長く休んでもよい?息の戻りと続けた成果を分ける
- フォームローラーで同じ場所へ戻るとつらい?時間的加重から考える反復中の記録
- フォームローラーで脚を伸ばす姿勢を選ぶ前に、関節角度と超音波画像の違いを知る
- ダイエットの運動動画は似た体型の見本を選ぶ?始める自信と強度を分けて読む
- 体力をつける食事はたんぱく質だけで十分?簡単な献立の前に鉄と疲れを考える
- ウォーキングとランニングの違いは練習歴にもある?短距離系と持久系で読む境目
- ダイエットの筋トレ動画は背景と服の色も確認、手足の輪郭を見失わない選び方
- ダイエットの筋トレは利き手から始める?休憩の配り方と開始側の根拠を読む
- ウォーキングとランニングは靴の左右の重さで変わる?慣れた足運びをどう読むか
- ダイエットの運動動画は声が遅れると困る?音を足す効果と同時にまねる価値を読む
疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。
2







