ダイエット中の筋トレで糖質量を考えるとき、筋肉の糖の蓄え、肝臓との関係、血糖、運動成績を同じものとして扱わないことが大切だ。食事をした日の筋トレと空腹時や運動量が多い日の違いを研究から読み、糖質を減らした後の除脂肪量の変化も、筋肉そのものの減少と分けて考える。
筋トレ用の着替えを用意しながら、おにぎりを食べるか迷う。これから筋トレだが、ダイエット中だから糖質は控えたほうがよいのか。それとも、脚を動かす分を先に足すべきなのか。食べる前に、何の不足を埋めようとしているのかを分けたい。
筋トレで筋肉の糖の蓄えは減る。しかし、減ることと、糖質を追加すれば必ず回数や力が増えることは別である。系統的レビューでは、糖質の追加が役立つ場面は空腹時や運動量の多い条件に偏り、食事をした状態の比較的少ないセット数では、追加による成績改善は一貫しなかった。[1][13]
また、筋肉の貯蔵を調べた結果を、肝臓の残量や全身の糖質必要量に読み替えることはできない。本記事では「有酸素運動を毎日すると糖の蓄えは戻る?休む時間と食事から筋グリコーゲンを読む」に回復日程の問いを譲り、筋トレの日の糖質量を決める前に、どの臓器の何を見ているかを整理する。[1][18]

筋肉の蓄えと肝臓の話を混ぜない
グリコーゲンは糖の貯蔵にかかわる物質である。筋トレ研究で登場する筋グリコーゲンとは、筋肉の中で測った蓄えを指す。筋トレ直後の変化をまとめたメタ分析が対象にしたのは、太ももの外側にある外側広筋のグリコーゲン濃度だ。肝臓を測った結果ではない。メタ分析の対象は男性168人、女性12人で、18〜39歳の女性に減少量をそのまま当てはめることはできない。[1][18]
この区別は、食卓で考えるより重要だ。「筋トレで糖が減った」という短い説明には、測定した場所が省かれている。外側広筋の濃度が下がったという結果から、肝臓も同じ割合で減った、腕も同じだけ使った、食べた糖質をそのまま同量補えばよい、とは進めない。測定した筋肉の濃度と、食事として食べる量の間には、別の問いがある。[1][18]
肝臓と筋肉が無関係という意味でもない。非アルコール性脂肪肝疾患とその進行を主題に、臓器間の情報交換を扱うレビューでは、骨格筋はエネルギーや糖代謝にかかわり、筋肉から分泌される物質などを介して他の臓器と関係すると整理されている。筋肉と肝臓の関係を考えることと、両者の貯蔵量を同じ指標として扱うことは違うのである。肝疾患を主題とした知見から、健康な18〜39歳の女性の糖質必要量を直接決めることはできない。[20]
たとえば「肝臓の糖を空にすると筋トレが効く」という言葉を見たら、まず何を測った研究なのかを確かめたい。血液の糖を測ったのか、筋肉を採取したのか、運動回数を数えたのか。臓器の名前が入った説明ほど精密に聞こえるが、名前だけで測定の範囲は広がらない。[1][18][20]
実際に食事を選ぶ場面では、見えない肝臓の残量を推定して主食を削るより、自分が食事をした状態で運動するのか、どの程度の量を行うのかを整理するほうが、筋トレの糖質研究の条件に照らしやすい。系統的レビューが分けていたのも、空腹の条件、運動による消耗、短期の食事操作、長期の食事と筋トレという違いだった。[13]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
筋トレで減る量は、重さだけでは決まらない
急性の筋トレがグリコーゲンに与える影響を調べたメタ分析には、男性168人、女性12人を含む20研究が入った。全体として外側広筋のグリコーゲン濃度は有意に低下した。18〜39歳の女性に減少の大きさをそのまま当てはめることはできないが、筋トレでも筋肉の糖が使われることを示す結果である。[1]
一方、研究間の違いにも目を向けたい。セット数が多いほど、またセッションが長いほど減少が大きい関連があり、強度が高いほど減少が小さい関連が示された。重いものを持つほど、糖の減り方も必ず大きくなるという単純な関係ではなかった。[1]
ここでいう関連は、研究条件の違いを統計的に検討したものである。重さを軽くすれば自分の糖の消費が増える、長く続ければ一定量ずつ減る、と個人向けの計算式にすることはできない。セット数、時間、強度、トレーニング経験を一緒に見る必要があるという読み方が適切だ。[1]
さらに、平均の変化が有意でも、すべての場面で同じ変化が起こるわけではない。このメタ分析の予測区間は減少から増加側にまたがっており、異なる条件で得られる結果には幅がある。平均を「筋トレをすれば必ずこの量がなくなる」と読み替えないことが、食事の量を過剰に決めつけない出発点になる。[1]
女性の読者にとっては、参加者の構成も大切である。女性を含む研究のまとめではあるが、男性が大半を占める。全体の結論として筋グリコーゲンの減少を認めつつ、その大きさをそのまま自分の食事量に置き換えるのは避けたい。自分に必要な糖質の量を、筋肉の測定結果だけで決めることには距離がある。[1]
仕事帰りの短い筋トレと、休日に多くの種目を重ねる日を、同じ「筋トレの日」として扱うと、その距離が見えにくくなる。買うおにぎりの個数を先に決めるより、何をどれだけ行う予定なのかを言葉にしておく。これは消費量を当てるためではなく、研究と自分の場面の違いを確かめるための整理である。[1][13]

糖質を増やせば、筋トレの回数も増えるのか
糖質摂取と筋力・筋トレ成績を調べた系統的レビューは49研究をまとめている。運動前後の短い時間で糖質を加える試験だけでなく、グリコーゲンを減らした後の補給、短期間の食事変更、長い期間の食事とトレーニングも含めた検討だ。対象は筋トレ実践者や競技者の研究が39、余暇に運動する人の研究が6、未経験者の研究が4であり、18〜39歳の女性だけに対応する結論としては扱えない。[13]
急性の補給を扱った19研究では、13研究で成績改善がなく、6研究で改善があった。改善は主に空腹の対照条件や、筋群あたり10セットを超える運動で見られた。糖質には意味がない、と切り捨てる結果でも、運動前には誰でも追加すべきだ、と言い切る結果でもない。[13]
食事をした状態で、筋群あたり10セットまでの筋トレでは、糖質そのものが成績に与える影響は小さいとレビューは整理している。ただし、この区切りを食事制限の境界線にしない。少ないセットなら食事を抜いてよいという比較ではなく、食事をした条件で追加する意義を検討した結論だからだ。[13]
比較相手にも違いがある。糖質のある食事と水を比べれば差が出ても、感覚を似せた朝食の対照と比べると差が出なかった研究がある。何かを食べた経験や比較条件を含め、糖質だけの寄与を見分ける難しさがある。朝食を食べた日に調子がよかったとしても、その理由を糖質の量だけに決めない姿勢につながる。[13]
レビューでは、量を増やすほど成績がよくなるという用量反応の証拠も認められなかった。補給の有無と補給量の多寡は別の比較である。「少しで役立つかもしれない」から「多いほどよい」へは進めない。糖質の数字を増やす前に、運動条件と比較条件を見る必要がある。[13]
血糖が動いても、筋肉の貯蔵とは別の結果だ
この違いを具体的に示すのが、運動前の糖質補給を調べた二重盲検のクロスオーバー試験だ。同じ参加者が異なる条件を経験し、糖質補給のある日とない日を比べた。糖質はマルトデキストリンという形で与えられ、血糖、インスリン、筋グリコーゲン、運動成績が別々に調べられた。[18]
条件は3時間の絶食後、最大挙上重量の70%でレッグプレスを限界まで4セット行い、休憩は45秒というものだった。運動前の糖質は体重あたり2g/kgである。これらは試験の条件であり、日常の補給量や筋トレの処方として示された数字ではない。[18]
補給によってインスリンなどの反応は変化したが、限界まで行うレッグプレスの成績は改善しなかった。筋グリコーゲン濃度は両条件で時間とともに低下し、運動後1時間の回復でも糖質による貯蔵の増加は認められなかった。血液中の反応が変わることは、筋肉の残量や成績が同じ方向に変わる保証ではなかったのである。[18]
この試験だけで、長い筋トレでも補給が不要だとは言えない。しかし、糖が利用できる状態にすれば必ず反復回数が増える、という説明への反例にはなる。何を飲んだかより、何が変わったかが研究の結論だ。糖の話題には、血液、筋肉、運動成績という別々の成績表がある。[13][18]
回復の時点を限定して読むことも欠かせない。運動後1時間で差がなかったという結果は、その時点での比較である。その日の夕食や翌日の運動まで同じ結論が続くと決めることはできない。反対に、短時間の血糖の変化だけを見て、筋肉への補給が終わったと判断することも避けたい。時間と測定対象をセットで読むと、補給の宣伝で省かれやすい条件が見えてくる。[18]
食事から運動までの間隔も、条件の一部だ。レッグプレス試験の3時間の絶食と、系統的レビューに含まれる空腹の対照条件を、すべて同じ状態として扱う必要はない。「空腹だった」という感想だけで他人の試験を再現したことにはならない。研究の結果を日常へ移すときは、同じ点と違う点の両方を残したい。[13][18]
数字で読む筋トレと糖質
20研究:急性の筋トレによる筋グリコーゲン変化を統合した研究数だ。[1]
男性168人・女性12人:同メタ分析の参加者構成で、女性への数量的な当てはめには注意がいる。[1]
49研究:糖質摂取と筋トレなどの成績を検討した系統的レビューの規模だ。[13]
13研究と6研究:急性の補給で、それぞれ改善なしと改善ありだった研究数だ。[13]
4セット:糖質補給でレッグプレス成績が改善しなかった試験の運動量である。[18]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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