ダイエットの運動は止まって力を出しても消費する?静止と反復の酸素コストを読む

ポーズを保つ運動は、動かないから消費も少ないのか。静止した脚で力を出す実験と、膝を動かす実験を比べ、負荷、休憩、働く筋肉、酸素消費の測り方で変わる答えを読む。女性の脂肪利用の研究も手がかりに、その場の消費と体脂肪の変化を分け、自宅やレッスンの記録に何を残すかを考える。

夜、マットの上で姿勢を保っている。動画の先生は止まっているし、自分もほとんど動いていない。それでも脚は仕事をしているように感じる。「これも消費に入るのか」という疑問には、入ると答えられる。座って脚で板を押す静止運動でも、加える力が増すにつれてエネルギー消費が増えた実験がある。[15]

ただし、「静止は反復より消費が少ない」「つらいほどカロリーも多い」と、見た目や感覚だけで順位を付けるのは早い。電気刺激で膝を動かした実験では反復の酸素消費が大きかった一方、別の対象・条件では静止と自転車運動の差が有意ではなかった。何をそろえて比べたかが答えを左右する。[9][16]

既存記事「ダイエットの運動は翌日思い出して変える?動作の記憶を更新する条件と限界を読む」には動作の学び直しを譲る。ここで扱う問いは、止まって力を出す最中に何が消費され、反復運動の数字とどこまで比較できるかである。体重の変化を採点する前に、運動の中身を見ておきたい。

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止まっている脚にも消費はある

動きを伴わず力を出す運動を、ここでは等尺性運動と呼ぶ。座位で脚を板に押しつけ、押す時間と休む時間を交互に置く方法が研究に使われている。板が移動しなくても、測定されたエネルギー消費は負荷に応じて変わった。目に見える移動がないことと、体内で消費がないことは同じではない。[15]

この測定法を検討した実験では、安静時と、両脚で板を断続的に押すときの消費を、呼吸のガスから調べる間接熱量測定で比べた。18〜39歳の女性が日常で行うポーズの消費量へ応用するには、その女性と姿勢を対象とした検証が必要だ。加えた負荷は5、10、15、20、25 kg力である。それぞれ30秒押し、30秒休む組み合わせを8回繰り返し、休憩を含む8分間の消費を評価した。[15]

負荷と消費の関係は各参加者でほぼ直線的で、相関係数は0.9を上回った。これは、その実験の範囲では強く押すほど消費も増える関係があったという結果である。「止まる運動だから消費しない」という見方は、この結果には合わない。ただし測ったのは、姿勢も押し方もそろえた脚の課題である。[15]

ここでのkg力は、板を押す力を表す。家庭で持つ重りの重さや、自分の体重をそのまま代入する欄ではない。マットの上で腕と脚を使うポーズを、この実験の負荷と同じものとして扱うこともできない。研究の数字を使うなら、「両脚で板を押す」「座っている」「休憩を挟む」という条件まで一緒に読む必要がある。[15]

立川駅北口から帰って、ようやく確保したマットの時間を「動かなかったから無意味」と取り消す必要はない。一方、板を押した研究を根拠に、好きなポーズへ消費量の札を付けるのも飛躍である。実験は静止中の消費が負荷とともに変わることを示している。ポーズごとのカロリー表として読むものではない。[15]

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同じ時間でも、押す時間と休む時間が違う

静止運動の記録は、開始から終了までの長さだけでは足りない。先ほどの実験で評価した8分間には、押していない時間も含まれていた。連続して押し続けた8分間の値ではない。「同じ時間キープした」という言葉でも、途中で力を抜いたのか、断続的に押したのかによって、研究との対応が変わる。[15]

この点は、実験を日常へ置き換える際に役立つ。動画を止めて説明を聞く時間、姿勢を取り直す時間、力を入れて保つ時間を、運動ノートでは別の言葉にしておく。これは消費を細かく計算するためというより、あとで同じ練習を再現するための工夫である。少なくとも実験の8分を、力を出し続けた時間と読み違えずに済む。[15]

繰り返し測定の結果も興味深い。同じ実験を別の3日間に行った人では、負荷に対して消費が増える傾きの個人内の変動係数は約10%だった。対して人と人の間の変動係数は35%だった。変動係数は、平均に対するばらつきの大きさを表す。条件をそろえても、消費の増え方には個人差があった。[15]

人と人のばらつきは体重から独立しており、身長で一部が説明された。体重の近い友人なら同じ消費、と決められる結果ではない。横のマットの人が涼しい顔をしていても、その人の消費を自分の物差しにする理由にはならない。研究がそろえた課題と、なお残った個人差を両方見ることが大切である。[15]

また、個人内のばらつきが比較的小さいことと、日常の姿勢で毎回同じ消費になることも区別したい。この再現性は、決まった負荷と休憩を繰り返す測定法の性質である。自宅の練習で昨日との差を考えるなら、まず記録した姿勢や休憩が同じだったかを確認する、という順序が自然である。[15]

反復との比較は、筋肉の量をそろえると変わる

若い健康な成人7人を対象とした比較実験では、膝を伸ばす筋肉へ表面から電気刺激を加え、膝を動かす場合と動かさず力を出す場合を調べた。女性は1人だった。男性が中心の小規模実験であり、18〜39歳の女性全体の反応を代表する結果としては扱えない。各課題は3分間で、呼吸で測る全身の酸素消費の増加と、画像で求めた働く筋肉の量を比較している。[16]

全身の酸素消費の増加量は、動かす課題が毎分242±128 mL、静止課題が毎分143±99 mLだった。平均値の後ろの±は、この研究では標準偏差、つまり参加者間のばらつきである。動かす課題のほうが有意に大きかったが、働く筋肉の量も動かす課題のほうが多かった。[16]

そこで、働いた筋肉の量で割るとどうなるか。筋肉1 kg当たりの酸素消費は、動かす場合346±162、静止の場合307±198 mL毎分で、差は有意ではなかった。同じ結果を「全身でどれだけ増えたか」で読むか、「働いた筋肉の量当たり」で読むかによって、見える比較が変わる。[16]

筋肉当たりの比較だけで、動き方の違いを説明し尽くすことはできない。さらに初期の膝伸展トルク、つまり膝を回そうとする力の大きさも考慮した指標では、動かす場合の値が有意に大きかった。分母を変えた結果は、それぞれ違う問いに答えている。「筋肉当たりでは差がない」という部分だけ抜き出して、動き方の違いを消すのも適切ではない。[16]

この実験は小規模で、電気刺激を用いている。自分の意思で行うヨガと、筋肉へ刺激を加える膝の課題では条件が異なる。引用できるのは、比較の分母を明確にする重要性と、その実験で観察された違いまでである。反復運動の値を静止運動の値で割って、自宅での消費倍率にする読み方は避けたい。[16]

たとえば「同じ長さの動画だから同じ消費か」と問うなら全身の値が気になる。一方、「同じ量の筋肉が働いたらどうか」と問えば筋肉当たりの値を見ることになる。比較したい問いを先に決めると、研究の数字を選びやすい。値が大きいほうを探してから理由を付ける必要がなくなる。[16]

数字に付ける説明は、運動名だけで終わらせない。酸素消費の増加を測った実験なのか、運動中の平均値を測った実験なのかまで残すと、あとで違う値を比較せずに済む。研究の対象と測定の基準は、数字と一緒に持ち歩きたい情報である。[9][16]

全身の値と筋肉当たりの値の違いは、研究を読む目的にもつながる。膝を動かす実験で全身の酸素消費が大きかった事実は、その条件での体全体の応答を知りたいときに役立つ。筋肉当たりでは差が有意でなかった事実は、働く筋肉の量を考慮した問いへ答える。どちらかだけが正しい数字なのではなく、比べる対象が違うのである。[16]

また、消費と負荷の直線関係も、測定した範囲で確かめられた関係として扱いたい。脚で板を押す実験は低強度の課題であり、その範囲を超えて強く押せば同じ傾きで消費が増え続ける、と予想する材料にはしない。手元の練習を研究に近づけて見るときは、似ている条件だけでなく、違う条件にも目を向ける。[15]

数字で読む静止運動の比較条件

30秒押す・30秒休む:脚で板を押す低強度の測定法で採用された組み合わせである。[15]

約10%と35%:消費と負荷の関係の傾きについて、個人内と個人間でみられた変動係数を示す。[15]

毎分242±128 mLと143±99 mL:健康な成人の電気刺激による反復と静止で、全身の酸素消費が増えた量を比較した値だ。[16]

毎分534±128 mLと558±146 mL:対麻痺のある人の電気刺激による自転車と静止での平均酸素消費で、差は有意ではなかった。[9]

26人:低強度の静止脚運動中に、男女の燃料利用を比較した健康な若年成人の人数である。[6]

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宮川涼 Founder

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