キックボクシングは蹴る前に床を強く押す?地面からの力と脚の速さを読み解く

キックボクシングで「床を押して」と言われたら、強く踏むほど脚は速くなるのか。テコンドーの構えの比較、サッカーの支持脚とエネルギーの解析、回旋トレーニングの試験から、力の大きさと出る時機を分けて読む。ボディメイクが気になる初心者にも、体重だけに頼らない動きの見方を示す。

鏡の前で脚を振るときは動くのに、ミットを前にして「床を押して」と言われると、足裏に力を入れたまま固まってしまう。ミットまでの距離は同じなのに、踏ん張るほど動き出しにくい。知りたいのは、床をどれほど強く踏めばよいか、ということかもしれない。

答えの芯は、床から受ける力は蹴りに関係するが、大きさだけでは速さを説明できない、である。テコンドーの実験では地面から受ける力と脚の速度に関連があり、別の無作為化比較試験では、全身を回すトレーニング後に力のピークが早まり、蹴りの素早さも改善した。強さと時機は、別々に読む必要がある。[5][12]

ここでは「キックボクシング 痩せる」「キックボクシング ボディメイク」と検索した人にも、動きそのものを見る窓を用意したい。扱うのは体重減少の試験ではなく、蹴る動作の力学である。距離の話は既存記事「キックボクシングのローキックは近いほど強い?当たる距離と脚の速度を読み分ける」に譲り、足が床にある間に何が起きるかを追う。

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床を押す力と、脚が速く動くことを分ける

地面反力とは、足が床と接しているときに床から受ける力のことである。蹴りの研究では、足の下に置く力計と体の動きを記録する装置を組み合わせ、床とのやり取りと脚の速度を同じ時間軸で調べている。見えている足先だけでなく、床に残る側にも測る対象がある。[5][7]

経験のあるテコンドー選手9人を対象にした比較実験では、足の構えを0度、45度、90度に変え、回し蹴りを行った。条件の順序は無作為にしている。0度と45度の構えでは、90度より反応時間と動作の実行時間が短かった。地面反力が大きいほど実行時間が短く、太ももと下腿の速度が高いという相関も見られた。競技経験者の結果を18〜39歳の女性初心者へそのまま当てはめるには、競技と習熟度の違いを考える必要がある。[5]

ここで相関という言葉を飛ばしてはいけない。研究は構えを変えて比較しているが、「床をさらに強く押せ」とだけ指示して、その効果を取り出した実験ではない。構えによる動きの違いも含む結果なので、反力と速さが一緒に変わることと、押す強さを増せば誰でも速くなることは同じではない。[5]

また、示された角度は、その実験で定めた足の相対的な位置である。数字だけを持ち帰って、キックボクシングのすべての構えを同じ角度に合わせる処方にはしない。経験者のテコンドーの回し蹴りで得られた知見として、構えが床との力のやり取りや動作時間に関係する、と受け取るのが適切である。[5]

同じ「床を押す」という助言でも、聞き手は踏みつける音、足裏の圧迫感、脚の踏ん張りなど、異なるものを思い浮かべる。論文が測っているのは装置に記録された力と動作である。自分の感覚を観察することはできても、「強く感じた」だけで研究と同じ反力が出たとは扱わない。足裏の主観と測定値の間には、その区別が必要になる。[5]

ボールを蹴る研究には、単純な強さの物語に収まらない結果もある。大学サッカー選手の男性11人、女性12人を比較すると、接触時の垂直方向の地面反力は男性で高かったが、蹴り出したボールの速度には男女間で有意差がなかった。力のある方向だけを見て、最終的な速さまで決めつけられない例である。女性を含む比較でも大学の競技選手が対象なので、18〜39歳の女性一般の蹴り方を直接示す結果にはならない。[20]

この研究では、前後方向の最大地面反力とボール速度との相関は−0.65だった。力が大きいほど何でも速くなる、という読み方とは合わない。だからといって、前後方向の力を小さくすれば速くなるという指示にもならない。力の方向、観察する時点、動作全体を伴う関連として読む必要がある。[20]

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支える脚を変えると、蹴る脚にも変化が届く

支持脚とは、蹴る側が動いているときに体を支える側の脚である。サッカーのインステップキック、つまり足の甲でボールを蹴る動作を調べた介入研究では、この支持側の動きを修正した後にボール速度が変化した。対象は熟練した選手9人で、年齢は平均23.7歳である。18〜39歳の女性初心者への適用を考える際は、この熟練度と競技の違いが境界になる。[7]

介入は、蹴りの踏み込み中に股関節の上下移動がはっきり生じるように技術を調整するものだった。介入後の最大ボール速度は26.3±2.1 m/s、介入前は25.1±1.5 m/sだった。蹴る側の股関節中心の上下移動も、0.041±0.012 mと0.028±0.011 mで、介入後のほうが大きい。[7]

重要なのは、股関節の移動とボール速度だけを別々に眺めないことだ。支持脚と蹴る脚の力学的な変化が伴い、ボールに触れる局面を通じて膝を伸ばす角速度も高くなっていた。角速度とは、関節の角度が変わる速さである。支える側を含む技術の修正が、振り出される側の動きにも及んだのである。[7]

ただし、熟練選手が介入前後に行った比較であり、初心者に跳び上がるような蹴りを勧める実験ではない。キックボクシングとボールを蹴る動作には目的の違いがある。持ち帰れるのは「支持脚は動かない土台でしかない」という見方を修正することだ。どのくらい上下すべきかを、そのまま練習の目標値にする話ではない。[7]

蹴る脚を主役として見ていると、支える脚の変化は映像の端に追いやられやすい。だがこの研究は、支持側を含む動作の修正によって、蹴る側へのエネルギーの流れが変わる可能性を示している。脚を速く振ろうとしているのにうまくいかないとき、観察を蹴る側だけで終えない理由になる。[7]

太ももが減速すると、下腿が加速することがある

蹴りの速さを、個々の筋肉が頑張った量の足し算と考えると、途中で減速する部位は失敗に見える。ところが大学サッカー選手11人の蹴りを解析した研究では、太ももが減速し下腿が加速する連続した動きに、エネルギーを部位間で移す仕組みが関係していた。体の中心寄りから末端へ、動きの主役が移っていくのである。大学の競技選手を解析した結果であり、18〜39歳の女性初心者に同じ連動が生じるかは別に確かめる必要がある。[10]

この研究は、動作と地面反力の測定からモデルを作り、運動エネルギーの変化を筋肉による要因とそれ以外の相互作用に分解したものだ。外から関節に働く力や遠心力に伴う相互作用が、減速する部位から加速する部位への移動を生んでいた。筋肉の出力だけでなく、部位同士の協調が蹴りの効率に関わると論じている。[10]

別の大学サッカー選手9人のモデル解析でも、膝の急速な伸びは単独の要因では説明されなかった。蹴る脚の遠心力、体幹を回す筋肉の作用など、複数の力学的要因が寄与していた。股関節を曲げる角速度と膝の曲がり具合との調整も、効果的なインステップキックに重要とされた。対象は大学の競技選手なので、18〜39歳の女性にそのまま練習の処方として当てはめるより、動作を理解するモデルとして読む。[9]

ここから「筋力はいらない」とは言えない。モデルが示すのは、動いている最中の膝の伸びを、膝の筋肉の働きだけに帰さない説明である。床を押した力がそのまま足先へ届く一本の管を想像するより、体の各部が影響し合う動作として捉えるほうが、この解析の内容に近い。[9][10]

体幹も傍観者ではない。成人男性のアマチュアサッカー選手18人、平均24.0歳を調べた研究では、蹴りの初期に上部体幹から下部体幹、骨盤、下肢へと順にエネルギーが流れていた。解析した関節が生み出す仕事の合計に対し、体幹の機械的エネルギー消費は27%を占めた。成人男性の結果であり、18〜39歳の女性でも同じ割合になるかは、この比較では判断できない。[19]

この27%は「腹筋をその割合だけ使う」といった意味でも、消費カロリーのうち体幹が占める割合でもない。関節での機械的な仕事を解析した数字である。ボディメイクへの関心から読む場合も、運動中のエネルギーの受け渡しと、体脂肪が減るかどうかを同じ言葉でつなげないことが大切だ。[19]

サッカーの解析を読むときには、結果が足先の速さなのか、膝を伸ばす角速度なのか、ボールが離れる速さなのかも確認したい。同じ蹴りの中で関係する値でも、測っている対象は異なる。股関節の上下移動を扱う介入と、部位間のエネルギー移動を分解するモデルは、互いを補う説明にはなるが、同じ測定の繰り返しではない。[7][9][10]

数字で読む床から始まる蹴り

9人:構えを変えて回し蹴りの動作時間と地面反力を比べた経験者の人数である。[5]

−0.65:大学サッカー選手の前後方向の最大地面反力とボール速度との相関であり、改善率ではない。[20]

25.1から26.3 m/s:熟練サッカー選手への技術介入前後の平均最大ボール速度である。[7]

27%:男性アマチュア選手の解析で、関節が生む仕事の合計に対する体幹の機械的エネルギー消費の割合である。[19]

36人:回旋を伴う抵抗トレーニングと対照を比較した無作為化試験の健康な対象者数である。[12]

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