筋トレの胸は押す前に想像すると違う?実技に足す予習と筋力の研究を読む

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胸を大きくする問いと、押す力の問いを分ける

胸を大きくしたい人にとって、押せる重量は気になる記録だろう。それでも、筋力の測定を体の大きさの測定として扱うことはできない。紹介したプレスの試験が比較したのは、最大随意収縮や反復回数、最大挙上重量やパワーである。[4][15][16] 成績が変わったことを、胸の見た目の変化に言い換えないのが出発点になる。

たとえば「今日は押す動作を思い出せた」「予定の実技を終えられた」「同じ条件の記録が伸びた」は、練習帳では別の欄に書ける。想像の鮮明さ、実行した練習、測定した成績を分ければ、できたことを具体的に振り返れる。この書き分けは日常の工夫であり、特定の記録法に筋力を伸ばす効果があるという提案ではない。

研究の測定方法を合わせる意味も大きい。静的な最大収縮の試験と、重りを動かす最大挙上の試験は、同じ「筋力」という言葉でも課題が違う。[4][15] 想像練習を取り入れた週に、測る種目や動かし方まで変えてしまうと、何が変化したのかが見えにくい。比べたい問いに合わせて、記録の名前も残しておきたい。

小さな試験の大きな数字にも、同じ注意が必要である。健康な若者10人を実技、想像練習、対照の群に分けた予備的なランダム化試験では、3週間の膝伸展練習後、実技群全員の最大トルクが増加した。想像練習群で増加したのは2人で、その増加量は45±10%と報告された。[6] トルクは関節を回す力の指標であり、これは胸の試験ではない。健康な若者を対象とした結果だが、18〜39歳の女性の胸のプレスに同じ変化が起きるかは、この比較から判断できない。

この45%を「想像した人は平均してそれだけ伸びる」と紹介するのは不適切だ。報告された対象が増加を示した人であること、小規模な予備的試験であること、調べた動作が膝伸展であることを、数字から切り離せない。[6] 電車の広告なら数字が先に目に入る。自分の練習に持ち帰るときには、その数字の主語まで読んでほしい。

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動作を覚える研究は、筋力の研究と同じではない

想像練習には、最大筋力とは別に、先に学んだ課題を後の課題から守れるかという問いもある。Lauberらは、瞬発的に力を出す課題を練習した直後に、視覚情報に合わせて動きを追う別の課題を行わせた。先の学習が後の学習によって妨げられる現象を、運動課題間の干渉として調べた実験である。[17]

先の瞬発的課題を頭の中で反復した群は、後の課題のあとにも有意な干渉を示さなかった。一方、別の収縮課題を想像した群や想像をしなかった群などでは干渉が見られた。同じ色の合図を使う条件にも、干渉を抑える結果があった。[17] 単に何かを強く想像すればよい、という話ではなく、何を再現したかが重要な比較だった。

ここで測っているのは、先に練習した課題の成績を、その後の課題を挟んで保持できたかである。胸の筋肉の大きさを測ったものでも、ベンチプレスに追加して最大挙上重量が伸びたかを調べたものでもない。[17] 「動きを覚えやすい」という説明から「胸の筋力が増える」へ、無言で橋を架けないようにしたい。

日常へ下ろすなら、練習の合間に別の種目のことばかり考えてしまうとき、先ほど教わった動作を思い返す材料にはなる。ただし、これはこの実験から着想した練習上の工夫である。ジムで種目を交ぜる順番や、休憩中の最適な過ごし方を、この結果だけで決めることはできない。[17] 取り入れる際には、指導者から何を再現するよう求められたかを、まず言葉にしておくとよい。

想像が鮮明だった日と、実技が安定した日を同じ印で記録しないことも、ここで役に立つ。研究では「何を練習したか」と「何を測ったか」が対応している。[17] 自分の振り返りでも、その対応を大切にすれば、次回は動作を尋ねたいのか、負荷を相談したいのかが整理できる。頭の中の手応えは練習の材料にし、成果の判定は目的に合った実技へ戻すのである。

実際の相談では「うまく想像できないから、この練習に向いていない」と結論を急がなくてもよい。競技者の試験では、想像の鮮明さや能力、主観的な努力感も評価されている。[4] ただ、想像する感覚を測ることと、筋力の変化を測ることは別の作業だ。頭の中の映像が映画のように鮮やかになることを、胸の筋トレの合格条件にする必要はない。

たとえば次の練習前に、前回教わった動作を言葉にしてみる。動く方向は説明できるのか、力を出す感覚だけが曖昧なのか。曖昧なところを指導者と確かめ、実技の予定へ戻る。これは追加の練習量を競う方法ではなく、何を思い浮かべるかをそろえるための工夫である。対応する筋収縮を想像させたプレスの比較試験を手がかりにしているが、胸への上乗せ効果が確定した手順としては扱わない。[16]

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よくある誤解

「想像を足せば、胸の筋トレは必ず伸びる」という期待は修正したい。同じ実技を行う群どうしを比べた試験では、ベンチプレスの最大筋力にも反復回数にも上乗せの差が出なかった。[16] 脚で出た差だけを抜き出して胸にも当てはめると、検索した人が本当に知りたい答えから離れてしまう。

「実技を大半削っても同じ」という読み方も広すぎる。想像への置換を調べた研究には、事前の実技練習があり、実験の課題は最大の等尺性収縮だった。想像併用群の伸びは実技群よりやや小さく、終了後の追加の伸びにも違いがあった。[15] 著者らは部分的な置換の可能性を示しているが、それを誰でも使える実技削減の比率にはしない。

「プロ選手に良かったので初心者の女性にも同じ」は、対象の読み飛ばしである。練習中断期に約2〜9%の改善が報告されたのは、男性プロバスケットボール選手の複数のパフォーマンスだった。[4] 自分と対象が違うから無意味なのではなく、自分の期待する大きさまで確定した情報としては扱わない、という距離の取り方になる。

反対に、胸の比較で差がなかったことだけから「頭の中の練習はすべて無駄」と断じる必要もない。競技者の練習中断期や、学習課題の干渉を調べた実験では、それぞれの条件で有益な結果が出ている。[4][17] 大切なのは賛成か反対かを先に決めることではなく、今日の目的が追加の筋力向上なのか、途切れた練習の補助なのか、動作の復習なのかを分けることだ。

今日からできること

  • 実技に足す予習として考える。休憩中の想像を調べた19人の試験では、胸の成績に群間差がなかったことも、期待値に入れておく。[16]
  • 思い浮かべる対象を具体化する。対応する収縮を見て感じるよう求めた試験にならい、教わった動作のどこが再現できるかを確認する。研究の効果量を約束する方法ではない。[16]
  • 実技と想像の記録を分ける。25〜75%を想像に置き換えた研究は、事前練習と静的な最大収縮を使った条件であり、日常の反復回数を削る比率として採用しない。[15]
  • 練習できない期間の補助として相談する。6週間の競技者の試験は参考になるが、全群が高強度走も行っており、自分の運動計画へそのまま移さない。[4]
  • 成果の名前を残す。最大筋力、反復回数、動作を思い出せた感覚を区別し、脚の結果を胸へ、力の結果を体の大きさへ言い換えない。[6][16]
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参考文献

[4] Ain’t Just Imagination! Effects of Motor Imagery Training on Strength and Power Performance of Athletes during Detraining — Dello Iacono A, Ashcroft K, Zubac D., 2021, Medicine and science in sports and exercise. DOI: 10.1249/mss.0000000000002706

[6] Using Motor Imagery Training to Increase Quadriceps Strength: A Pilot Study — Saumur TM, Perry SD., 2018, European neurology. DOI: 10.1159/000494091

[15] Strength gains by motor imagery with different ratios of physical to mental practice — Reiser M, Büsch D, Munzert J., 2011, Frontiers in psychology. DOI: 10.3389/fpsyg.2011.00194

[16] Benefits of motor imagery training on muscle strength — Lebon F, Collet C, Guillot A., 2010, Journal of strength and conditioning research. DOI: 10.1519/jsc.0b013e3181d8e936

[17] Mental imagery and colour cues can prevent interference between motor tasks — Lauber B, Kurz A, Gollhofer A, Taube W., 2019, Neuropsychologia. DOI: 10.1016/j.neuropsychologia.2018.12.010

この記事の情報は2026年10月時点のものです。個別の健康状態については医師にご相談ください。

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