豚ヒレやロースを切って、ピンク色が残ると焼き直すべきか迷う。加熱後の色は中心温度だけでなく、肉の色素や包装条件、筋肉の違いでも変わる。豚肉の調理実験から、見た目と温度、やわらかさを分けて読む。研究で使われた温度を家庭の安全基準と取り違えず、運動日の食事づくりを考える。
運動から帰り、夕食の豚ロースに包丁を入れる。切り口は少しピンク色だ。もう少し焼けば安心なのか、それとも硬くしているだけなのか。フライパンの前で迷うと、夕食より先に気持ちが焦げる。
答えの芯は、肉の色を中心温度の代わりにしないことだ。包装条件を変えた豚ロースの実験では、低い到達温度でもよく焼けたように見える条件と、82℃まで加熱しても赤みが残る条件があった。色と温度は関係するが、同じ目盛りではない。[15]
ここで扱うのは、豚ヒレとロースの減量効果の順位ではなく、調理中に何を確かめるかという問いである。既存記事「疲労回復の豚肉はゆで汁も使う?ビタミンB1の減少と加熱条件を研究で読む」には栄養成分とゆで汁の論点を譲る。こちらは、加熱後の見た目と食べやすさを区別して読む。[2][5][15]

赤みが残ることと、温度が低いことは同じか
この問いを直接考えやすいのが、注入処理を施した豚ロースの切り身を使った食品実験である。研究者は包装内の気体、冷蔵保存の期間、加熱を終える中心温度を変え、加熱した肉の切断面を測った。単に赤い肉と白い肉を並べたのではなく、赤みを変えそうな条件を組み合わせた設計だ。[15]
一酸化炭素を含む包装、高い割合の酸素を含む包装、比較用のフィルム包装が使われた。到達温度は54、60、63、71、77、82℃である。ここに並ぶのは実験の設定値であり、家庭で選んでよい温度の一覧ではない。対象は処理を受けた豚ロースであり、18〜39歳の女性への食事介入ではなく、肉そのものの色を調べた結果として読める。[15]
一酸化炭素を含む包装では赤みが強く、長く保存した後に低い温度まで加熱した切り身が、全体として最も赤く見えた。しかも、この包装の肉には82℃に加熱した後も赤みが残った。一方、酸素の割合が高い包装の肉は赤みが弱く、ほかの包装より低い到達温度でも、よく焼けているように見えた。[15]
同じ「赤い」という観察から、加熱が足りない場合だけを思い浮かべると、この結果を説明できない。逆に「白っぽくなったから十分」という判断も、包装によって見た目が変わる結果とぶつかる。色は肉に起きた変化の手がかりだが、中心が何℃だったかをそのまま表示する計器ではない。[15]
買ってきた肉が実験と同じ包装だと決めつける必要はない。この研究の役割は、家庭の肉の色を言い当てることより、「どんな豚肉でも同じ色なら同じ温度」という前提を崩すことにある。個別の包装が分からないときほど、見た目だけで実験条件を推定しない読み方が必要になる。[15]
包装実験のもう一つの特徴は、保存期間も変えている点である。肉を4℃で保存し、その後に陳列してから調理する設計で、包装内の気体だけを固定した比較ではなかった。一酸化炭素を含む包装の赤みは保存に伴って変わり、高い割合の酸素を含む包装では赤みが時間とともに変わらなかった。同じ温度へ加熱した断面でも、そこへ至るまでの経過が色に関わる。[15]
この違いは、買った日の記憶だけで色を評価しないための材料になる。ただし、実験で長く保存した肉を使ったことは、家庭で同じ日数保存してよいという案内ではない。保存の研究条件と、食材を使う期限の判断を混ぜないことも大切だ。ここでは、加熱前の履歴を変えると加熱後の色も変わりうる、という比較の意味を受け取る。[15]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
肉の色素は、加熱前から条件の影響を受ける
肉の色を調べる研究にはミオグロビンが登場する。筋肉の色に関わる色素であり、酸素と結びついた状態はオキシミオグロビン、酸化した状態はメトミオグロビンと呼ばれる。豚肉の実験では、これらの状態の割合の変化と、測定した赤みの変化が一緒に検討されている。[6][18]
牛肉、豚肉、鶏肉を比べた実験では、空気に触れたときのオキシミオグロビンの形成を、光の反射と酸素が入り込む深さから調べた。23℃では牛肉で速やかな変化が見られたのに対し、豚肉では同じような形成の証拠が乏しかった。肉売り場で見慣れた牛肉の赤さを、そのまま豚肉の物差しにするのは難しい。[18]
この比較では、5℃で保存した豚肉にオキシミオグロビンの形成が見られ、保存中の表面には酸化した色素も生じていた。つまり、調理を始める前の色にも、空気への接触や保存条件による経過がある。生肉の色は、これから入れる熱だけを待っている真っ白な記録紙ではない。[18]
別の豚肉の実験は、異なる周波数の超音波を使って塩漬けを行ったものだ。超音波で処理した肉では、明るさの測定値が下がり、赤みの測定値が上がって、よりバラ色の色調になった。研究者はその変化を、オキシミオグロビンの割合の増加とメトミオグロビンの減少に主に結びつけている。[6]
これは家庭で超音波処理を勧める話ではない。見た目の赤みが、加熱温度以外の処理でも動くことを示す実験として意味がある。中心温度を比べたいなら、もとの肉の条件にも目を向ける必要がある。処理の異なる肉の写真を並べ、赤い方だけを「生に近い」と呼ぶのは、比較の出発点をそろえていない。[6][15]
赤みの測定値という言い方にも注意したい。研究では色を感想だけで表さず、明るさや赤みなどの軸に分けている。包装実験は切り口の色を測り、超音波の実験は色調と色素の状態を調べた。台所で見た「何となく赤い」という印象より、対象を狭く定めた測定なのだ。[6][15]
ロースの結果を、ヒレの焼き方へ移してよいか
ヒレとロースを買い分けていると、片方で覚えた焼け具合をもう片方にも使いたくなる。ただし、豚肉という同じ名前の中でも筋肉の違いを残して読む必要がある。後ろ脚の肉を使った実験では、筋肉の種類と加熱を終える温度の組み合わせによって、加熱後の色が異なっていた。[10]
その研究は、豚の後ろ脚にある大腿二頭筋、半膜様筋、半腱様筋を対象とした。68点の筋肉試料を厚さ2.54cmの切り身にし、中心温度62℃と73℃で調理して、加熱損失、切断に必要な力、酸性度、加熱後の色を評価した。ヒレとロースを食べ比べた試験ではない。[10]
半腱様筋は73℃で調理すると明るく、62℃ではほかの筋肉より赤みと黄色みが強く、赤から茶色への色の変化も小さかった。温度という条件を加えても、どの筋肉かという条件は消えなかったわけだ。すべての豚肉に共通する「この色ならこの温度」の見本帳を作るのが難しい理由になる。[10]
ここで部位名を詳しく覚える必要はない。覚える価値があるのは、結果が「豚肉全体」ではなく、特定の筋肉を切った試料から出ていることだ。研究を家庭へ移す際には、肉の名前だけでなく、切り身の形と調べた部位が同じかを確認する。ヒレにもロースにも同じ色の基準を当てはめる前に、その違いを一度残しておく。[10][15]
運動日の夕食でも、この区別は役立つ。「今日はヒレだから、昨日のロースより淡い色でよい」と自己流の合格線を作らず、見た目と加熱条件を別に記録する発想だ。筋肉ごとの色の違いを調べた研究が教えるのは、部位ごとの安全な色の一覧ではなく、色の比較には条件をそろえる必要があるという点である。[10]
筋肉の比較で使われた切り身の厚さが示されているのも、読むうえで手がかりになる。厚さ2.54cmという条件を外して、薄切り肉や形の違う塊まで同じ比較の中に入れると、研究が実際に扱った料理から離れる。研究の数字を使う際には、温度だけを大きな文字で覚えるより、対象の形も同じ行に残しておく方が、結果の範囲を見失いにくい。[10]
たとえばロースの切り身を買った日と、ヒレの塊を切った日で、完成写真の色を競わせる必要はない。知りたいのが再現性なら、同じ部位を同じ方法で調理したときの違いから見る方が問いを絞れる。部位と到達温度を組み合わせて評価した実験の考え方を、家庭では「何を変えて、何を同じにしたか」というメモとして使える。[10]
数字で読む豚肉の色と加熱
264枚のロース切り身を、63、71、79℃の到達温度へ無作為に割り付けた品質実験がある。[2]
82℃まで加熱しても赤みが残ったのは、一酸化炭素を含む包装を使った注入処理ロースである。[15]
68点の後ろ脚の筋肉試料を使う実験では、厚さ2.54cmの切り身で62℃と73℃を比較した。[10]
82.82%が「やわらかい」と評価した条件は、63℃で真空低温調理した切り身だった。[5]
同じ条件で「ジューシー」は55.83%、「受け入れられる」は60.34%であり、評価項目は別々だった。[5]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
1
2







