ソイプロテインのもったり感は濃さだけ?とろみと口の中の摩擦を分けて読む

粘度は流れへの抵抗、口腔内の摩擦は触れ合う面の滑りに関わる指標だ。大豆ゲルでは流動の性質が同じでも、油滴を安定させる材料で潤滑が変わった。植物性たんぱく質の加工による摩擦低下も読み解き、実験食品と家庭の水割りを区別しながら、ソイプロテインの口当たりを比べる視点を示す。

シェイカーからは流れるのに、なぜ口の中には残るのか。朝の支度の途中、一口飲んで手が止まる。流れてはくるのに、口の中では妙に存在感がある。「もったりする」としか言いようがない。その言葉を、とろみと滑りやすさに分けると、飲み心地を考える手掛かりが増える。大豆の発酵ゲルを比べた実験では、流動の性質が変わらなくても、摩擦の性質は配合によって異なっていた。[2]

したがって、濃さだけが答えではない。ただし、実験で摩擦が小さかった配合を、そのまま家庭の粉末飲料の作り方に置き換えることもできない。研究対象は大豆の発酵ゲル、増粘した液体、加工した植物性たんぱく質などであり、完成した食品の構造まで含めた結果だからである。18〜39歳の女性の飲み心地にそのまま当てはめるには、食品を測った結果と人の感覚評価を区別する必要がある。[1][2][4][6]

既存記事「ソイプロテインでお腹が張るのはなぜ?たんぱく質と残る糖質を分けて考える」には腹部の張りの論点を譲る。「プロテインの消化率は便だけで測れる?大腸の発酵と窒素の行方を読み解く」には消化の評価を譲る。ここで考えるのは飲み込む前の口当たりだ。「ソイプロテインは混ぜて待つと滑らか?製造中の処理時間を飲む前の目安にしない」とも区別し、待ち時間ではなく、とろみの測定と摩擦の測定が違うものを見ている点に焦点を当てる。

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もったり感を、とろみと滑りに分ける

食品がどのように流れたり変形したりするかを調べるのがレオロジーである。一方、触れ合う面の摩擦や潤滑を調べるのがトライボロジーだ。大豆ゲルの実験では、この両方が測られている。前者だけで試料を並べる場合と、後者で並べる場合とでは、配合の違いの見え方が変わった。[2]

日常の言葉に置くなら、容器から注ぐときの重さと、口の中で動かすときの滑りを、別々の欄に書くようなものだ。ただし、注いだ印象がそのまま粘度計の値になるわけではない。家庭での観察は研究用の測定の代用ではなく、自分の不満を具体化する方法として使いたい。とろみと摩擦を別に調べる研究の設計が、この分け方の背景にある。[2][3]

たんぱく質を使って脂肪の食感を補う研究を整理したレビューでも、粘度、食感の分析、顕微鏡観察、粒子径、感覚の評価などが併用されていた。口腔内の摩擦の研究は、それらに加わる比較的新しい評価法として扱われている。なめらかさを、ひとつの物性値だけで代表させていないところが大切だ。[3]

「濃厚だが滑る」「流れるが引っ掛かる」という表現は、矛盾ではない。少なくとも大豆を使った実験食品では、流れの性質と潤滑の性質を別に評価する必要があった。[2][4] 自分の一杯を記録するときも、「重い」の一語で終わらせず、注ぐとき、舌で動かすとき、飲んだ後という場面を分けてみる。それぞれを混同しないことが、比較の出発点になる。

ここでいう摩擦は、飲んだ人の努力不足を表す言葉ではない。研究では食品の配合や加工によって変わる物性として測っている。[2][6] 毎朝の一杯に慣れようと気合いを入れる前に、そもそも何が気になるのかを言葉にしてよい。栄養成分の表示欄に「気合い」の項目はない。

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同じ脂肪量、同じ油滴サイズでも違いが出た

発酵させて撹拌した大豆たんぱく質ゲルの実験では、油の小さな滴を何で安定させるかが比べられた。使われたのは分離大豆たんぱく質、ペクチンをもとにした微小なゲル粒子、またはその混合である。油滴を安定させる材料が、完成したゲルの摩擦に関わるかを調べた食品実験だ。[2]

その結果、調べた試料のレオロジー的な挙動は変わらなかった一方、トライボロジー的な挙動は乳化剤によって異なった。脂肪を含まない比較試料に対して、脂肪の添加で牽引係数は低下した。牽引係数はこの実験で滑りへの抵抗を捉える指標として使われている。[2]

さらに注目したいのは、脂肪量も油滴の大きさも同じ試料同士で、潤滑の性質が違った点だ。分離大豆たんぱく質だけで油滴を安定させた試料が最も低い牽引係数を示した。ペクチン由来の微小ゲル粒子を使った試料や、それを大豆たんぱく質と混ぜた試料では摩擦が高かった。[2]

この比較は、「脂質が同じなら口当たりも同じ」という読み方を揺さぶる。栄養成分の量をそろえても、食品内部の組み立て方まで同じになるわけではない。少なくとも、この大豆ゲルでは油滴を安定させる材料の違いが潤滑の違いとして現れた。[2] 買い物で脂質量を確認することと、飲んだときに好みに合うかを確かめることは、それぞれ別の作業になる。

ただし、ここから「家庭のソイプロテインに油を足せばよい」とは進めない。試験で扱われたのは、乳化と発酵を経たゲルである。[2] 水に粉末を混ぜた飲料と、油滴を特定の材料で安定させた発酵食品では、比べている製品が違う。得られる教訓は追加する食材の指定ではなく、配合量だけでなく構造も見るという視点だ。

植物性たんぱく質は加工で滑り方が変わる

植物性たんぱく質を物理的に結び付け、小さなゲルに加工した研究もある。微小ゲルとは、細かな粒子状のゲルとして設計された材料だ。この研究では、舌に似せた表面を用いた摩擦測定に加え、原子間力顕微鏡、粒子の動きや大きさを調べる測定、流動と表面への吸着の測定などを組み合わせている。[6]

加工した微小ゲルは、加工前のたんぱく質に比べ、境界摩擦を約1桁低下させた。境界摩擦は、接触する面の近くで生じる摩擦を考えるための指標である。また、油と水が20対80の乳化物に相当する潤滑性能を示した。効果は微小ゲルが占める体積の割合に依存していた。[6]

ここでの数字は、人が飲んで「もったり感が何割減った」と答えた数字ではない。摩擦測定と数値モデルなどで確かめた、材料の性能の比較だ。[6] 人の感想の目盛りに翻訳して「飲みやすさが約10倍」と言い換えると、研究の測定対象がすり替わってしまう。

それでも、「植物性だから滑らかにならない」という決め付けには別の見方を与える。原料が植物性であるという分類の内側でも、加工して作る構造によって潤滑性能は変えられた。[6] 同じ原料名だけを見て、すべての製品をひとまとめに好き嫌いの箱へ入れる必要はない。

脂肪代替のレビューは、微細化したたんぱく質や微小ゲルの可能性を論じる一方、植物性たんぱく質への研究の蓄積が限られていることも述べている。[3] 食品設計として期待できることと、すべての市販飲料で実現済みであることは違う。研究の成果は、製品の広告文のようにどこへでも貼れる札ではない。

比較の条件にも目を向けたい。発酵大豆ゲルの実験は、脂肪量と油滴サイズをそろえたうえで、油滴を安定させる材料を比べている。[2] もし脂肪量まで違っていたら、得られた摩擦の差をどの条件に結び付けるかが複雑になる。同じ条件を保つ部分と、意図して変える部分を分けることが、この比較の読みどころだ。家庭の飲み比べでも、この発想は観察を整理する助けになる。

また、微小ゲル研究の体積の割合は、たんぱく質を何グラム入れたかという情報と同じではない。研究では、加工で作った粒子が占める割合に応じた潤滑性能が論じられている。[6] 市販粉末の表示にあるたんぱく質量だけを拾って、論文の試料と同じ状態だと考えないようにしたい。素材の量と、素材から組み上がった構造は、分けて読む必要がある。

こうした物性研究の面白さは、名前が同じ材料にも設計の余地があることだ。レビューが扱う微細化たんぱく質や微小ゲルも、原料をただ増減する話にとどまらない。[3] 「大豆はこういう口当たり」と結論を閉じる前に、何に加工され、どの食品で、何と比較されたのかを見る。自分が苦手だった製品の感想を否定せずに、別の製品まで同じと決め付けない読み方ができる。

数字で読む大豆と植物性たんぱく質の滑り

約1桁:植物性たんぱく質を微小ゲル化した研究で示された、加工前に対する境界摩擦の低下の大きさである。[6]

20対80:同じ研究で潤滑性能を比較した、油と水の乳化物の比率である。飲料の推奨配合ではない。[6]

3.83%から5.22%:複合微小ゲルを加えた大豆ヨーグルトでの、たんぱく質含有量の変化である。[1]

6000 µm/s超:その大豆ヨーグルトで、比較対象より低い摩擦係数が特に認められた滑り速度の範囲である。[1]

110.073 Pa.s:増粘した大豆たんぱく質液体の実験で、キサンタンガム使用系が示した最も高いせん断粘度である。[4]

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宮川涼 Founder

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