産後の運動再開は授乳中の骨も相談、体重の戻りと骨密度の回復を分けて読む

産後の運動再開では、体重が戻ったことと授乳中の骨密度の回復を分けて考えたい。筋力運動を組み込んだ試験で腰の骨密度低下が緩やかになった結果と、股関節や全身では差がなかった結果を読む。研究の開始時期を再開の許可日とせず、授乳の経過と希望する運動を医師へ伝える準備を考える。

授乳のあと、しまっていた運動着を取り出す。そろそろ運動も前と同じに戻せるだろうか。体重計は目の前にあるが、骨の状態は画面に出ない。産後の運動再開では、体重の経過に加え、授乳中の骨密度の変化も分けて考える必要がある。[7][10]

産後の運動再開を考えるとき、骨についての答えは「動けば必ず元に戻る」ではない。授乳中の女性を対象とした小規模な無作為化比較試験では、筋力運動と体重を支える有酸素運動を組み合わせると、腰の骨密度の低下が緩やかになった。一方、股関節や全身には群間の有意差がなかった。[4] 運動への期待は持てるが、期待する場所と変化の種類を絞る必要がある。

「産後の体力回復は運動で進む?体重の戻りと分けて心肺持久力の変化を研究で読む」では心肺持久力の問いを扱う。ここで確かめるのは、授乳中の骨への負荷をどう読み、運動再開の相談に何を持っていくかである。隣のテーマである抱っこの姿勢や歩行の安定も、骨密度そのものとは分けて考えたい。既存記事「ホットヨガは産後いつから?授乳中の水分と母乳量を分けて考える再開の相談」には、水分と母乳量の論点を譲る。

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体重の戻りを、骨の回復の合図にしない

骨密度は、骨のミネラルの密度を表す指標である。産後の研究では、腰椎という腰の背骨、股関節、全身などを分け、二重エネルギーX線吸収測定法と呼ばれる方法で評価している。[2][4] 体重を量ることとは測定の対象が違う。ズボンのウエストに余裕ができたかという生活の実感とも、そのまま置き換えることはできない。

健康な授乳中の女性20人を追った研究では、本人が選んだ余暇の運動を定期的にしていた11人と、していなかった9人が比較された。出産後の早い時期から3か月までに、腰椎の骨密度は両群で低下した。低下率は運動群で4.1%、比較群で5.4%だったが、骨密度の変化について群による有意な違いは認められなかった。[10]

この研究では体重も減ったが、その減少は骨密度の低下と有意に相関していなかった。[10] つまり、体重がどれだけ戻ったかを見ても、この集団の骨密度の動きを説明できなかったのである。体重が減ったから骨も回復した、逆に体重が変わらないから骨も変わっていない、という読み方はどちらも飛躍になる。

産後の女性18人と妊娠歴のない女性16人を追った別のコホート研究でも、産後の女性の体重は減少した一方、全身と両側大腿骨の骨密度は低下した。産後の初回測定から12か月までに、体重は平均5.2kg減り、骨密度は全身で1.4%、両側大腿骨で3.1%低下した。[7] 観察研究なので、体重の減少が骨密度低下を引き起こしたと読むこともできない。

このコホートでは、骨の吸収に関係する尿中の指標も、一部の参加者で調べられた。指標はとくに両側大腿骨の骨密度低下を反映し、骨密度の変化が観測される前の変化を捉える可能性が示された。[7] 骨を調べる研究には、密度だけでなく、骨の代謝の動きを追う視点もある。ただし、著者らはこれらの指標の利用について、さらに検討が必要としている。

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授乳中の低下と、その後の回復は時間を分ける

授乳中の骨の変化を扱った2009年の試験は、母乳へ1日約200mgのカルシウムが移ることを背景に、運動によって骨密度の低下を遅らせられるかを検討した。論文は、授乳終了後に骨量が妊娠前の水準へ戻ることが多い一方、回復には個人差があると位置づけている。[4] 授乳中に下がることと、その後にどこまで回復するかは別の問いである。

ここで避けたいのは、産後という言葉を、出産直後から授乳終了後まで均一な期間として使うことである。2019年の試験では産後4週から運動介入を始め、20週までの介入を経て、産後1年までを追跡した。[2] これに対して余暇の運動を比較した研究は、産後3か月までの早期の変化を見ている。[10] 同じ骨密度の研究でも、答えている時間の幅が違う。

先のコホート研究では、産後12か月の時点で骨密度の反転上昇は認められなかった。また、約6か月で授乳を終えた女性より、1年間授乳を続けた女性の方が、全身と両側大腿骨の低下が大きかった。[7] これは授乳をいつ終えるべきかを決める試験ではない。授乳期間の異なる人を観察して得た結果を、そのまま授乳中止の指示に変えることはできない。

「出産からこれだけ過ぎたから全員同じ状態」と考えるより、測定した時期と授乳の経過をそろえて読む必要がある。[2][7] 友人が同じ月齢の子どもを育てていても、運動負荷は自分の状態に合わせて相談するものだ。復帰の予定表には子どもの月齢だけでなく、自分の状態を相談する余白も残したい。

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運動試験の成果は、増えたことではなく減り方の違い

2009年の無作為化比較試験では、授乳中の女性を運動群10人と運動を行わない比較群10人に分けた。運動群は産後4週から20週までの16週間、週3日の体重を支える有酸素運動と週3日の筋力運動に取り組んだ。有酸素運動は実施日あたり45分だった。[4] 「少し体を動かした人」という大まかな比較ではなく、内容を組んだ介入である。

腰椎の骨密度は運動群で4.8%、比較群で7.0%低下し、運動群の方が低下が有意に小さかった。[4] 注目するべきなのは、どちらも低下した点だ。この結果を「運動で腰の骨密度が増えた」と言い換えると、研究の意味が変わる。授乳中に進む低下を緩やかにできる可能性が示された、と読むのが適切である。

同じ試験で、股関節と全身の骨密度には群間の有意差がなかった。[4] 腰の結果を見て「全身の骨を守った」と広げることもできない。骨密度という単語が同じでも、測った場所を省くと結論が大きくなりすぎる。記事の見出しで「骨」と書いてあっても、本文で腰なのか股関節なのかを確かめたい。

運動群では各種目の最大筋力が増加し、除脂肪量の減少も比較群より小さかった。[4] それでも股関節の骨密度には有意差が出なかったのである。筋力が伸びること、筋肉などを含む除脂肪量を保つこと、骨密度が変わることは、同じ測定結果ではない。前より重い物を扱えたという実感だけで、骨密度の回復まで確認したことにはならない。

しかも、この介入は有酸素運動と筋力運動の組み合わせだ。[4] 筋力運動だけが結果を生んだのか、特定の種目が必要だったのかを、この比較から切り出すことはできない。自宅で見つけた運動動画やヨガの動きに、そのまま同じ数値を当てはめないことも大切である。

長く追う試験でも、腰と股関節は同じ答えにならない

2019年の研究は、産後1年での対象者数を増やすため、16週間の運動介入を行った2つの試験を合わせて解析した。産後4週に55人を介入群と比較群に無作為に割り付け、体重を支える有酸素運動と筋力運動を組み合わせた群を、運動を行わない群と比較している。[2]

産後4週から1年までの腰椎骨密度の変化は、授乳に関連するホルモンであるプロラクチンの濃度と食事からのカルシウム摂取量を考慮した解析で、時間や群によって有意に異なった。著者らは、筋力運動が授乳中の骨量低下を緩やかにし、産後1年でより高い骨密度につながる可能性を示している。[2]

一方で、全身と股関節には群間の有意差がなかった。[2] 短期の試験と長期の追跡が同じ方向を示す部分はあるが、差が出た部位は腰椎である。また、複数の試験を合わせた解析を、まったく独立した大規模試験が重ねて成功したかのように数えるべきでもない。参加者数だけでなく、どの介入をどう追った研究なのかが結論の強さに関わる。

「産後1年で差がある」という言葉も、妊娠前の骨密度へ完全に回復したという意味ではない。[2] 比較群より良い状態にあることと、本人の以前の水準に戻ることは比較相手が違う。運動の成果を判断するときは、増えたか減ったかに加え、何と比べた差なのかを確かめる必要がある。

無作為化比較試験とは、偶然を使って参加者を群に分け、介入の有無を比較する研究である。腰の低下が小さかった試験では、この方法で運動計画を比較している。[4] 一方、コホート研究は参加者の経過を追う型であり、授乳期間や普段の活動の違いを観察した結果から、特定の運動の効果を直接決めることはできない。[7] 同じ産後の女性を調べていても、研究の型を添える理由はここにある。

数字で読む授乳中の骨と運動

20人:2009年の試験の対象者数。運動群と比較群は各10人であった。[4]

16週間:同試験の運動介入期間。産後4週から20週までを比較した。[4]

4.8%と7.0%:腰椎骨密度の低下率。小さい方が運動群で、増加率ではない。[4]

55人:産後1年まで追った2019年の統合解析の無作為割り付け対象者数である。[2]

1.4%と3.1%:コホート研究での全身と両側大腿骨の骨密度低下率。運動介入の効果量ではない。[7]

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宮川涼 Founder

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