有酸素運動と筋トレは同じ音楽で続ける?曲の速さと種目の切り替えを考える

男性20人が無音・好きな音楽・動作の音響化を比べた試験では、ベンチプレスの反復回数に有意差はなかった。脳波の変化と運動成績を分けて読み、有酸素運動から筋トレへ移る際の選曲と動作の確認を考える。研究対象と女性読者との違いも踏まえ、曲の感想と種目ごとの実施内容を記録する視点を示す。

歩く運動を終えたところで、曲はまだサビの途中だ。次は筋トレ。同じ曲を流し続けるなら、動く速さもそのまま引き継ぐのか。再生は続けても、その拍に動作まで合わせることは別に考えたい。男性を対象にしたベンチプレスの試験では、音の条件で脳活動の指標が変わっても、反復回数には有意な差がなかった。[2] 18〜39歳の女性に同じ結果が当てはまるかは、この男性の試験だけでは判断できない。

曲の速さを選ぶ前に、この比較の内容を押さえたい。この試験は無音、自分で選んだ音楽、動きを音へ変換する仕組みを比較したもので、曲の速さごとの優劣を決めた比較ではない。[2] 同じプレイリストを使うかという好みの話と、種目ごとの動かし方を決める話を切り離すのが、出発点になる。

既存記事「背中の筋トレに速い音楽は必要か?選曲と引いて戻す時間を混同しないために」には、背中の動作と選曲の問いを譲る。ここでは有酸素運動から筋トレへ移る場面を取り上げ、音の研究が測っている成果と、種目を替える際に確認したいことをつなぐ。

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同じ曲を流すことと、同じ拍で動くこと

たとえば、歩く運動を終えて椅子から立つ運動へ移る場面を思い浮かべる。曲は途中でも、始める姿勢や動作の区切りは変わる。サビが来たから立ち上がる、間奏になったから休むという組み方も想像できるが、曲の構成をそのまま運動の設計図とみなす必要はない。これは特定のテンポを勧める処方ではなく、音楽に何を任せているかを整理するための考え方である。

音楽には、背景として聴く使い方と、音を動作の合図として扱う使い方がある。さらに、動いた結果を音で返す仕組みもある。ベンチプレスの試験で使われた「動作の音響化」は、動きの情報を音楽的な要素で表す仕組みであり、自分で選んだ曲を流す条件と区別されていた。[2] 同じく耳に届く刺激でも、運動との結び付き方は同一ではない。

したがって「音がある方がよいか」と聞くだけでは、問いが広すぎる。気分に合う曲を聴きたいのか、動くきっかけが欲しいのか、自分の動きを確認したいのか。まず用途を言葉にする。ここが曖昧なままだと、音を楽しめた日の感想を、回数や筋力が増えた証拠に置き換えてしまう。

有酸素運動と筋トレの組み合わせ方を調べている人にとって、音楽は選びやすい条件である。一方、研究で比較される運動成果には別々の測定項目がある。音の試験では反復回数と脳活動が分けて測られ、運動介入をまとめた研究でも筋力や認知機能は別の指標として扱われている。[2][3][6] 選びやすい条件と、確かめたい成果を同じ欄に入れないようにしたい。

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ベンチプレスの試験では何を比べたのか

音の影響を調べた試験には男性20人が参加し、無音、自分で選んだ音楽、動作の音響化という3条件で、ベンチプレスを限界まで行った。同じ参加者の条件ごとのデータを比較する反復測定の研究である。測定したのは反復回数と、脳波から得た活動の指標だった。[2] 18〜39歳の女性の反復回数にも同じ傾向が出るかは、別に検証する必要がある。

結果は、動作の音響化で前頭部のアルファ波の左右差を示す指標が、音楽と無音より有意に高かった。一方、反復回数と、ベータ波の活動を表す指標の条件間差は統計的に有意ではなかった。[2] 音が身体に届いていないという結果ではない。しかし、測定項目ごとに結果が分かれた。

この区別は実用的である。「いつもと違う感覚だった」という経験と、「同じ重さで多く持ち上げられた」という記録は、それぞれ別の情報になる。試験でも脳活動の変化と回数の変化は一致しなかった。[2] 運動後の感想を書くなら、気持ちの欄と実施した内容の欄を分けると、どちらかを消さずに残せる。

また、この研究の課題はベンチプレスであり、対象は男性だった。[2] 通勤帰りに歩いてから自重運動をする女性の場面へ、結果を丸ごと移すことはできない。日常に持ち帰るのは「この音なら必ず増える」という選曲表ではなく、何を測った結果なのかを確かめる姿勢である。

限界までの反復という試験条件も、そのまま日々の目標にする必要はない。実験が比較のために設けた課題と、生活の中で続けたい運動は役割が違う。今日は何を行う予定だったのかを先に決め、音の条件をその横に置く。試験の方法を知ることは、自分にも同じ課題を課すことではない。

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脳の反応を、運動の点数に換算しない

試験では、ベンチプレスの反復が限界へ近づくにつれて、ベータ波の指標と前頭部アルファ波の左右差の指標が有意に増えた。[2] つまり、音の条件だけでなく、課題のどの時点を見るかも関係していた。始めと終わりを区別せずに「脳活動が高かった」とだけ読むと、結果の輪郭が崩れてしまう。

脳波の指標が変わったことから、筋肉が長期的に増えた、持久力が向上した、という結論へ進むこともできない。この研究が直接比較した運動成績は、その場のベンチプレスの反復回数だった。[2] 何週間も続けた変化の話をするには、別の時間軸が必要になる。

その違いを示す例が、健康な成人の複数回の筋トレ介入と認知機能をまとめた系統的レビュー・メタ分析である。研究を統合するこの分析では、全般的な認知機能、考えや行動を調整する実行機能、情報を一時的に保って扱う作業記憶、処理速度に改善が関連していた。一方、出来事を思い出す記憶には一貫した全体的利益がなかった。[20] 健康な成人全体を扱った結果であり、18〜39歳の女性に限った効果として受け取るには対象の幅がある。

この分析でも、改善は認知領域によって異なった。介入期間や強度、測定法の違いなどに注意が必要とされている。[20] その場の脳波、繰り返した運動の後の認知検査、持ち上げられた回数。どれも数字になり得るが、数字同士を無断で交換することはできない。

仕事帰りに「頭がすっきりした」と感じたら、その感想は感想として書いてよい。ただし、音の仕組みが脳波を変えた試験の結果を添えて、自分の集中力が向上したと証明するのは別の話になる。[2] プレイリストは気に入った順に並べられる。測定項目まで好きな順に入れ替えるわけにはいかない。

組み合わせる目的を、選曲より先に置く

組み合わせる目的によって、確かめる成果も変わる。高齢者の筋肉量に対する筋力を調べた系統的レビュー・メタ分析は、60歳以上を対象に、少なくとも8週間続けた41件のランダム化比較試験、計3141人をまとめている。筋トレはこの指標を有意に改善したが、有酸素運動や組み合わせ運動では有意な改善が確認されなかった。[3] 60歳以上の結果を18〜39歳の女性の筋力向上へそのまま当てはめることはできない。

ここでいう指標は、筋肉の量で調整した筋力である。筋トレの標準化平均差は0.65、95%信頼区間は0.22〜1.09だった。標準化平均差は、異なる測定尺度の結果を共通の物差しで比べる値であり、重さの増加をそのまま表す数字ではない。研究間のばらつきも大きかった。[3]

一方、座って過ごすことの多い成人を扱った17件、2187人のランダム化比較試験のネットワークメタ分析では、全般的な認知機能の順位は複数要素の運動が高く、実行機能の順位は有酸素運動が高かった。[6] ネットワークメタ分析は、運動同士の直接比較と、共通の比較対象を介した間接比較を統合する方法である。[6] 座位中心の成人をまとめた結果なので、18〜39歳の女性だけでも同じ順位になるかは区別して考える必要がある。

高齢者の筋力と成人の認知機能では、対象も成果も違う。[3][6] この違いは、今日の組み合わせの目的を考える手がかりになる。運動の名前だけで万能な順位を作るより、何を確かめたい日なのかを先に置く。その後で、音楽を続けるか、種目を替えるところで再生を止めるかを選べばよい。

音の条件を選ぶときにも、この順序を使える。筋トレの記録を見たい日なら、実施した種目や負荷を先に確認する。歩く時間を予定に入れたい日なら、その予定を先に決める。曲を替えるかどうかは、それらを決めた後の選択だ。音の試験で回数が増えなかったことは、運動計画そのものを音楽に委ねない理由になるが、好きな曲を聴く楽しみまで捨てる理由にはならない。[2]

認知機能の分析で扱う「複数要素の運動」という分類も、手元のプレイリストが複数の曲から成ることとは無関係である。比較されたのは運動介入の種類であり、選曲の種類ではなかった。[6] 音楽付きの運動という日常のまとまりから、どこを研究が評価したのかを切り出すことが大切だ。

数字で読む、音と運動の評価

男性20人:音の条件を比較したベンチプレス試験の参加者数である。[2]

3条件:無音、自分で選んだ音楽、動作の音響化を比較した。[2]

41試験・3141人:高齢者の筋肉量で調整した筋力を検討した分析の規模である。[3]

0.65:その分析における筋トレの標準化平均差。95%信頼区間は0.22〜1.09だった。[3]

17試験・2187人:座位中心の成人の運動と認知機能を調べた分析の規模である。[6]

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宮川涼 Founder

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