寝る前に笑うと眠りやすい?動画を閉じる時刻と楽しい気分を分けて考える

寝る前に笑うと気分が軽くなることと、すぐ眠れることは同じではない。健康な若者の比較試験で調べた呼吸、気分、痛みへの耐え方を読み、就寝までの時間へそのまま置き換えられない理由を整理する。大人の夜の楽しみを眠るための課題にせず、自分の眠気と動画を終える時刻を見直す視点を示す。

歯磨きを終えたのに、友人から届いた動画で声を出して笑い、洗面所の前で足が止まる。仕事のことを考えていた気分は変わったのに、次の動画も見たくなる。「楽しくなったのだから、よく眠れるはず」と思う夜に、分けておきたいものがある。楽しい気分、笑っている体の動き、実際に眠りに入ることだ。

寝る前に笑えば寝つきがよくなる、とまでは決められない。健康な若者を対象とした比較試験では、コメディーを見た後に肯定的な気分が増し、視聴中の呼吸には不規則なパターンが多くなった。気分がよいことを、そのまま体が静まったことに置き換えないのが出発点である。[1]

何分前までなら笑ってよいかという境界も、この結果からは決めない。ここで考えるのは、楽しみを禁止することではなく、楽しかった時間と眠るために区切る時刻の扱い方である。既存記事「運動後の昼寝は目を覆うと眠りやすい?遮光と起きた後の注意力を研究で読む」には昼寝の環境という問いを譲り、こちらは夜の笑いを快眠の手段と呼べるかに絞る。

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笑って気が晴れたことと、眠くなったことを分ける

笑いの研究でいう「肯定的な感情」とは、ここでは楽しいといった前向きな気分の評価である。眠気そのものを指す言葉ではない。若い健康な参加者を調べたランダム化比較試験では、コメディーと退屈なドキュメンタリーを見たときの気分を比べている。楽しい映像の後に気分の評価がよくなったことは、笑いの身近な価値を考える材料になる。[1]

ただし、研究の結果を日常へ持ち帰る際には、調べた項目の名前を変えないことが大切だ。「楽しい気分が増えた」を「寝つきが改善した」に変えると、別の結果を付け足すことになる。コメディーがよかったという感想と、布団で眠りに入るまでの経過は、別々の問いとして残す必要がある。[1]

たとえば帰宅後、家事の合間に見た動画で気が晴れたとする。その時間に満足していても、就寝時に眠気があるかは、改めて自分に聞けばよい。「気持ちは軽いが、まだ見ていたい」という答えもあり得る。これは診断ではなく、その夜の感想の整理だ。楽しかった夜に、必ず眠気までそろっている必要はない。

反対に、静かな映像を見ても退屈で落ち着かないなら、映像が静かであることだけで成功と評価する必要もない。研究で用いられた比較対象は、参加者にとって面白くないドキュメンタリーだった。比較する相手が何だったかによって、結果を読むときの意味は変わる。普段の自分の夜と実験の条件を、同じものとして扱わないようにしたい。[1]

この区別は、楽しみを小さく見積もるためではない。気分転換を気分転換として受け取れば、それだけで成立する。「これで眠れなければ意味がない」と評価を厳しくする必要はない。寝つきという別の成果まで背負わせると、好きな動画が就寝前の宿題になる。笑い声に、そこまでの業務を頼まなくてよい。

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健康な若者の試験で、何が変わったのか

中心となる研究は、健康な若者40人を対象としたランダム化クロスオーバー試験である。クロスオーバーとは、同じ参加者が異なる条件を経験して比べる方法だ。参加者は笑いを引き起こすコメディーと、面白くないドキュメンタリーを見た。研究では、筋肉を伸ばしながら力を出す運動で脚の遅発性筋肉痛を起こし、押す力にどこまで耐えられるかも調べている。健康な若者の結果でも、18〜39歳の女性の就寝前にそのまま当てはめるには、対象と調べた結果の両方を区別する必要がある。[1]

コメディーを見た後の肯定的な感情の変化は、評価尺度上で2±1の増加だった。一方、ドキュメンタリーの後は11±2の低下だった。これは気分を測る尺度の数値であり、睡眠時間や眠くなるまでの分数ではない。数字だけを抜き出して「笑いで眠りが増える」と読むことはできない。[1]

この比較は、楽しさの変化を、映像を見終えたという共通の出来事だけで説明しないためにも役立つ。同じ映像視聴でも、内容と、それによって起こる反応は異なる。ただしコメディーを見た条件には、面白いと感じる体験や笑う動作などが含まれる。日常で無理に笑うことを、実験と同じ条件と見なすのは飛躍である。[1]

痛みへの耐え方にも違いがあった。ドキュメンタリーの後は耐えられる力が17±5 N低下したが、コメディーの後は有意な変化がなかった。Nは力の単位ニュートンである。ここで大切なのは、笑った後に耐えられる力が増したと書き換えないことだ。変わらなかった結果と、低下した結果の比較として読む。[1]

研究で笑いを伴うコメディーを見た時間は30分だった。これは、研究が設定した視聴時間である。寝る前に毎晩その長さの動画を見た方がよい、という推奨時間ではない。条件としての数字と、暮らしの目標としての数字は役割が違う。時刻を知りたいときほど、実験の数字を時計へ安易に移さないようにする。[1]

笑う最中の呼吸を、落ち着きの証明にしない

コメディーの視聴では、ドキュメンタリーに比べ、不規則な呼吸パターンが有意に多くなった。笑いの試験は、気分の変化と同時に、体の動きも捉えていたのである。笑っている間の呼吸を、静かに一定の調子で息をしている状態と同じと考える必要はない。[1]

ここから「呼吸が不規則だから眠れなくなる」と進むのも早い。研究で確認された呼吸の違いは、その場の反応として読む。楽しい気分が増えたことも、呼吸が変わったことも、どちらかを消さずに受け止める。片方の結果だけを選ぶと、「笑いは完全な休息」「笑いは睡眠の邪魔」という反対方向の決めつけが生まれる。[1]

「体の覚醒」という言葉にも注意が要る。眠る前に元気が出た感じ、笑って息が弾んだ感じ、実際に眠れず起きていたことは、日常会話では一緒にされがちだ。呼吸の変化を測った結果を使って、夜の覚醒全体が高まったと断言することは避けたい。測った現象を、必要以上に広い言葉へ膨らませない読み方である。[1]

夜の自分を振り返るときも同じだ。「たくさん笑った」と「その後も見続けた」を分けて書くと、確かめたい問いがはっきりする。笑いの強さを変えたいのか、動画を閉じる時刻を決めたいのか。その違いが曖昧なままでは、同じ夜を見ても、笑ったせいだとも、笑えなかったせいだとも説明できてしまう。

立川駅北口から帰る電車で友人と笑った夜と、布団の中で終わりなく動画を選んだ夜では、楽しみの置かれた場面が違う。どちらがよく眠れるかを、この試験で順位づけすることはしない。まず自分が変えようとしているのが、楽しむ内容なのか、終了する予定なのかを分ける。それなら、研究で示された気分や呼吸の違いを越える断定をせずに考えられる。[1]

見比べたいのは、動画の名前だけではない。見終わった後に仕事へ戻る夜と、見終わったら寝床へ向かう夜では、本人が求めているものが違う。前者では気分転換に満足できても、後者では「眠る予定の時刻に終えられたか」も気になるだろう。同じ楽しい動画への評価が違っても、それを矛盾と捉える必要はない。何のために選んだ時間だったかを、自分の言葉で残す方が扱いやすい。

たとえば「笑える動画を見た夜は眠れなかった」という記憶があったとする。その一文には、映像の内容、視聴を続けたこと、寝床へ入ったときの状態が一緒に入っている。そこで、笑わない映像なら解決する、と直ちに結論を出さず、実際に終えた場面を思い出してみる。「続きが気になって閉じなかった」なら、まず検討したいのは終了の選び方である。これは原因を特定する検査ではなく、次に何を考えるかを整理する作業だ。

試験の痛みの結果も、こうした区別の練習になる。「変化がなかった」と「比較対象よりよかった」は両立する。ドキュメンタリーの後に耐性が下がり、コメディーの後には有意に変わらなかったためである。ところが見出しを「笑うと痛みに強くなる」と短くすると、出発時点より強くなった印象になる。夜の楽しみに関する情報でも、何と比較した言葉なのかを確かめたい。[1]

数字で読む笑いの比較試験

40人:健康な若者が異なる映像条件を経験した試験の参加人数。[1]

30分:笑いを引き起こすコメディーの視聴時間。就寝前の推奨時間ではない。[1]

2±1:コメディー視聴後の肯定的な感情の変化。眠気の数値ではない。[1]

−11±2:比較したドキュメンタリー視聴後の肯定的な感情の変化。[1]

17±5 N:ドキュメンタリー視聴後の痛み耐性の低下量。コメディー後の増加量ではない。[1]

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宮川涼 Founder

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