
もともとの状態が違えば、同じ期待を置かなくてよい
2022年の別の系統的レビューとメタ分析は、13論文、379人の結果を扱い、抑うつのある妊婦と、抑うつのない妊婦を分けて検討した。抑うつのある妊婦の結果を、18〜39歳の女性全般にそのまま当てはめることはできず、妊娠の有無と気分の状態を分けて読む必要がある。抑うつのある妊婦では、ヨガの後に抑うつと不安の得点が改善した。一方、抑うつのない妊婦の抑うつ得点には、有意な改善が認められなかった。[7]
抑うつのない妊婦の不安には改善が見られたが、感度分析では結果が一貫しなかった。感度分析とは、分析の条件を変えても結論が保たれるかを確かめる作業である。著者らは、研究全体のエビデンスの水準は高くないとして、より質の高い研究が必要だとしている。「誰に行った研究か」を省いて、妊婦全員に同じ効果があると説明するのは、この結果に合わない。[7]
さらに、抑うつのある妊婦を対象に、マタニティヨガと周産期の健康教育を比べた小規模な無作為化比較試験では、抑うつの改善はヨガを支持する方向だったものの、群間に統計的な有意差はなかった。対象は抑うつのある妊婦であり、18〜39歳の女性全般への効果をこの比較だけで判断することはできない。参加者には受け入れられたプログラムでも、比較相手より優れた効果を示すかどうかは別に確かめる必要がある。[18]
健康教育との比較には、日常にも通じる問いがある。予定を空け、説明を受け、自分の体について考える時間を持つことと、ヨガをすることを、研究では区別しようとしている。ヨガの後に少し楽になった感想を否定する必要はない。ただ、その変化をすべてヨガ固有の作用だと決める前に、何と比べた結果なのかを見る視点は持っておきたい。[18]
自分に抑うつがあるかどうかを、これらの論文だけで判定する必要もない。気分の落ち込みや不安で生活がつらいときには、体験で変わるかを試し続けるより、そのつらさを医師に伝えることが先になる。ヨガへの参加を相談することと、気分の状態を相談することは、同じ受診の中で話せる。研究で改善した群があることは、医療の相談を後回しにする理由にはならない。[7][18]
継続後に振り返る対象を考える材料として、妊娠に伴う症状を扱った小規模な試験もある。70人が完了した研究では、ヨガ群35人が週1回、各60分のプログラムを4週間受けた。精神面の症状の平均得点は、ヨガ群で開始前の7.08から終了後の5.22へ低下し、終了後の対照群の7.34より低かった。[5]
この得点は、初回に感じたリラックスの点数ではなく、妊娠に伴う症状を質問して測った結果である。初回には場所や説明への印象を記録し、継続を振り返るときには普段の困りごとも見る、という具合に、振り返る場面を変えられる。ただし、この研究の4週間を、効果が出る期限としてカレンダーに書き込む必要はない。特定の参加者とプログラムを調べた時間枠であり、自分の症状への治療計画とは異なる。[5]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
レビューが多くても、独立した証拠が増えたとは限らない
研究を探していると、「効果がある」とする論文がいくつも見つかり、それだけで確かな話に思えてくる。しかし、複数のレビューが同じ臨床試験を繰り返し引用している場合、その数は独立した確認の回数ではない。マタニティヨガの精神面を扱ったレビューの概観は、まさにこの問題を調べている。[9]
2023年の概観では、10件の系統的レビューに含まれる15件のメタ分析を検討し、独立した元の臨床試験は32件だった。多くのメタ分析が不安、抑うつ、ストレスの改善を示した一方で、レビュー全体の方法論的な質は非常に低いと評価された。また、レビュー間で元の研究が重なっている程度も高かった。[9]
前向きな結果を捨てる必要はないが、似た見出しを見た回数を、そのまま確信の強さに足してはいけない。体験の宣伝で「多くの研究が証明」と聞いたら、どの人を対象にし、初回のどの時点を調べたのかを確かめたい。初回について知りたい人が、継続研究の数だけで安心しようとすると、最初の問いから離れてしまう。[1][9]
もうひとつ確認したいのは、プログラムの中身である。2015年の無作為化比較試験を集めたレビューでは、抑うつのある妊婦を扱った研究には身体のポーズだけの介入があり、ほかの研究には呼吸法や瞑想も含まれていた。指導者による講習だけの場合と、自習を組み合わせる場合があり、頻度も異なった。[20]
つまり「ヨガ」という名前が共通でも、参加者が受けた時間の内容は一枚岩ではない。静かに過ごす時間を期待する人なら、体験前に、どのように説明を受け、どのような内容で進むのかを確認する材料になる。研究で使われた回数をまねる前に、自分が受けようとしているプログラムの内容を知るほうが、予約の場面では具体的だ。[20]

よくある誤解
「初回で落ち着かなければ、自分には向いていない」という決め方は早い。初回と継続後を別々に測った試験があり、時間をかけた後の結果を、体験の日の感想だけで判定する設計ではない。逆に、初回で気分が軽くなったことを、今後の不安も消える証拠として扱うのも飛躍である。初回の記録と続けた後の記録に、別の置き場を作ればよい。[1]
「不安が減るなら、抑うつもストレスも同じように減る」とひとまとめにはできない。2025年のメタ分析では、このうち不安だけに有意な改善が見られた。言葉が近くても、研究で測った結果は分かれている。日常の感想でも、「出産への心配は残るが、帰り道は少し静かな気分だった」と、同時に起きたことをそのまま書ける。無理に全部を改善の側にそろえない。[8]
「リラックスできたから、どんな妊娠経過でも安全」という理解も異なる。初めてのヨガの前後に母体と胎児の検査を行った試験では、合併症のない単胎妊娠で、妊娠28週から36週台の、ヨガ未経験の女性が対象だった。52人が割り付けられ、46人が完了し、単回のヨガ後に胎児血流などの有意な変化は認められなかった。[19]
この研究が支えるのは、条件を満たした参加者の、指導者が決められた内容を教えた場面での結果である。心地よさの感想から、参加できる妊娠経過や動作の範囲を逆算してはいけない。参加の可否や個別の制限は医師に相談する。体験は、妊娠中の安全を自分だけで判定する検査ではない。[19]
今日からできること
- 体験前に「今日いちばん気になること」と「終わったら確かめたい感覚」を短く書く。初回直後の気分と10週間後の結果を分けた試験にならい、その日の問いを長期目標と分ける。[1]
- 終了後には、来る前と比べた気分を自分の言葉で残す。不安、抑うつ、ストレスを別に扱った7研究の分析を踏まえ、すべてを「リラックスできたか」の答えに詰め込まない。[8]
- 継続を検討するなら、内容、指導の受け方、通える予定を確認する。8研究を扱ったレビューでも、身体のポーズ、呼吸法、瞑想の組み合わせや練習頻度は異なった。[20]
- 週2回・各70分や10週間という研究の条件を、自分が守るべき最低量にしない。どちらも特定の試験の設定である。予定を決める際は、参加の可否を医師に相談したうえで、施設の実際の内容を確認する。[1][14]
- 初回で落ち着いたかとは別に、生活で困っている不安や落ち込みを医師に伝える。抑うつのある妊婦を対象にした研究でも、健康教育に比べた改善の差が有意でなかった試験がある。[18]
感想を記録する目的は、自分に効果を証明させることではない。体験予約のときには「不安をなくしたい」と思っていても、帰宅後には「説明を聞けて内容が分かった」がいちばんの感想かもしれない。その違いも、次に何を確認するかを決める材料になる。研究が測った結果を知ることと、自分が求めている時間を言葉にすることを、並べて進めたい。[1][20]

オンザショアで、体験の前に参加条件を確かめる
体験の日に何を確かめたいかが決まったら、次は参加できるクラスを確認する。静かに過ごす時間を求める気持ちと、参加条件を照らし合わせたい。オンザショア立川店には常温のマタニティヨガがある。妊娠中の方は溶岩ホットヨガには参加できず、医師から運動を止められている方は利用できない。体験の案内を見る際も、この条件を先に置く。
所在地は東京都立川市曙町2-14-10 エトロワビル3Fで、JR立川駅北口から徒歩1分。営業時間は全曜日8:00〜23:30、年中無休である。この営業時間と、自分が参加するクラスの時間は分けて確認する。通う予定を考える際には、駅からの移動と、その日に受けるレッスンを合わせて見る。
ヨガの体験レッスンは税込1,980円で、60分のレッスンにバスタオル2枚、フェイスタオル1枚、ヨガマットのレンタルが含まれる。店全体ではヨガだけで25種類以上のレッスンを扱うが、妊娠中は常温のマタニティヨガの案内を確認する。店舗トップと料金で内容を確かめ、体験予約へ進める。ここで選ぶのは、必ず落ち着くという約束ではなく、条件を確かめたうえで通う時間である。
参考文献
[1] Prenatal Yoga and Mental Health During the COVID-19 Pandemic: A Randomized-Control Trial — Duchette C, Tolusso DV, Stone WJ, Blankenship MM, Tinius RA. / 年: 2021 / 誌名: OBM integrative and complimentary medicine / 被引用: 10. DOI: 10.21926/obm.icm.2104051
[5] The Effect of Prenatal Yoga on Pregnancy-Related Symptoms: A Pilot Quasi-Experimental Study — Simsek Sahin E, Can Gürkan Ö. / 年: 2023 / 誌名: Complementary medicine research / 被引用: 3. DOI: 10.1159/000528801
[6] The characteristics and effectiveness of pregnancy yoga interventions: a systematic review and meta-analysis — Corrigan L, Moran P, McGrath N, Eustace-Cook J, Daly D. / 年: 2022 / 誌名: BMC pregnancy and childbirth / 被引用: 41. DOI: 10.1186/s12884-022-04474-9
[7] Efficacy of Prenatal Yoga in the Treatment of Depression and Anxiety during Pregnancy: A Systematic Review and Meta-Analysis — Lin IH, Huang CY, Chou SH, Shih CL. / 年: 2022 / 誌名: International journal of environmental research and public health / 被引用: 24. DOI: 10.3390/ijerph19095368
[8] The Effect of Yoga on Anxiety, Depression, and Stress in the Course of Pregnancy Period: A Meta-analysis Study — Çuvadar A, Baş YÇ, Yuceturk S, Özçalkap N. / 年: 2025 / 誌名: International journal of yoga / 被引用: 0. DOI: 10.4103/ijoy.ijoy_262_24
[9] Prenatal Yoga-Based Interventions May Improve Mental Health during Pregnancy: An Overview of Systematic Reviews with Meta-Analysis — Villar-Alises O, Martinez-Miranda P, Martinez-Calderon J. / 年: 2023 / 誌名: International journal of environmental research and public health / 被引用: 14. DOI: 10.3390/ijerph20021556
[14] Effects of prenatal yoga on women’s stress and immune function across pregnancy: A randomized controlled trial — Chen PJ, Yang L, Chou CC, Chou CC, Li CC, Chang YC, Liaw JJ. / 年: 2017 / 誌名: Complementary therapies in medicine / 被引用: 45. DOI: 10.1016/j.ctim.2017.03.003
[17] The Impact of Prenatal Yoga on Exercise Attitudes and Behavior: Teachable moments from a Randomized Controlled Trial — Babbar S, Porter BW, Williams KB. / 年: 2017 / 誌名: International journal of yoga therapy / 被引用: 7. DOI: 10.17761/1531-2054-27.1.37
[18] A pilot randomized controlled trial comparing prenatal yoga to perinatal health education for antenatal depression — Uebelacker LA, Battle CL, Sutton KA, Magee SR, Miller IW. / 年: 2016 / 誌名: Archives of women’s mental health / 被引用: 38. DOI: 10.1007/s00737-015-0571-7
[19] Acute feTal behavioral Response to prenatal Yoga: a single, blinded, randomized controlled trial (TRY yoga) — Babbar S, Hill JB, Williams KB, Pinon M, Chauhan SP, Maulik D. / 年: 2016 / 誌名: American journal of obstetrics and gynecology / 被引用: 18. DOI: 10.1016/j.ajog.2015.12.032
[20] [Effects of prenatal yoga: a systematic review of randomized controlled trials] — Kawanishi Y, Hanley SJ, Tabata K, Nakagi Y, Ito T, Yoshioka E, Yoshida T, Saijo / 年: 2015 / 誌名: [Nihon koshu eisei zasshi] Japanese journal of public health / 被引用: 11. DOI: 10.11236/jph.62.5_221
この記事の情報は2026年10月時点のものです。個別の健康状態については医師にご相談ください。
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