
同じ太陽礼拝でも、研究をまたぐと条件が変わる
メッツとは、安静時を基準に運動の強度を表す単位である。リアルタイムの遠隔指導と対面指導を比べた研究では、健康な初心者11人と経験者11人が、別の日にそれぞれ10分の太陽礼拝を行った。実施順はランダムで、呼気ガスの測定から酸素消費とメッツを求めている。参加者全体の平均年齢は47.2歳だった。18〜39歳の女性にそのまま当てはめるには、年齢構成と経験の違いに注意が必要である。[20]
遠隔と対面の平均値はともに5.0メッツで、有意差はなかった。初心者と経験者の間にも、それぞれの実施方法で有意差は認められていない。少なくともこの研究の太陽礼拝では、画面越しか同じ場所かという違いが、測定された運動強度の違いには結び付かなかった。[20]
一方、男性指導者のポーズ、呼吸法、瞑想を測った研究では、代謝の強度はおおむね1〜2メッツで、3つのポーズでは2メッツを超えた。これを太陽礼拝の5.0メッツと並べて、「ヨガの消費量は研究によって当てにならない」とするのは早い。測った運動の組み立ても参加者も同じではないからだ。[2][20]
ここで分かるのは、単に「ヨガの強度」と呼んでも、その中には異なる実践が含まれるということだ。ポーズを個別に測った値と、連続する太陽礼拝を行った値は、そのまま交換できない。暑いかどうかより先に、その数字がどの動きに付いたものかを確認する。研究をまたいだ平均値の順位より、同じ研究内でそろえた比較のほうが問いに近いことがある。[2][20]
対面と遠隔で有意差がなかった結果も、あらゆるヨガやすべての受講方法が等しいという意味ではない。参加者が行ったのは太陽礼拝であり、測定した時間も限られている。自宅で映像を流しながら途中で別の用事をした日まで、同じ運動量として数える話にはならない。研究で比較した実践と、自分の実際の行動を対応させることが先である。[20]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
消費を増やす問いと、体に望む変化の問いを分ける
ホットヨガで痩せるには何を変えるかを考える際、動作と時間を比較の出発点に置くことはできる。動きを増やした場合の減量効果を確かめるには、体重の変化を継続して測る別の試験が必要である。暑い条件と常温の条件を比べた試験の答えは、運動中の強度指標についてのものだ。[12]
消費の測定と、継続した後の体の変化は、問いの時間軸が違う。毎分の値が示された研究も、それを自分の参加時間に掛ければ将来の体重変化になるという研究ではない。とくに男性指導者の平均消費量を別の参加者へ当てはめると、対象も実践内容も置き換えることになる。数字が具体的なほど、その数字が測られた場面を一緒に持ち歩きたい。[2]
また、運動の価値を消費だけで決めると、別の目的の結果を見落とす。軽度から中等度のうつ病がある18〜67歳を対象とした12週間のランダム化比較試験では、ヨガなどの軽い運動、中等度の有酸素運動、強い有酸素運動、通常の治療が比較された。これは抑うつ症状の変化を調べた試験である。患者を対象とした結果なので、健康な18〜39歳の女性の減量や気分の変化へそのまま当てはめることはできない。[17]
通常の治療との差で見た抑うつの評価尺度の変化は、軽い運動群で−4.05、中等度群で−2.08、強い運動群で−3.13だった。95%信頼区間は順に−5.94〜−2.17、−3.98〜−0.18、−5.07〜−1.19である。いずれも通常の治療より有意に改善したが、運動群同士には有意差がなかった。[17]
見た目の数値だけなら軽い運動を勝者にしたくなるが、群同士の有意差がなかったことを飛ばしてはいけない。逆に、強い運動ほどどの目的でも優れるという読み方も、この結果とは合わない。対象はうつ病のある人であり、健康な人の気分や減量への順位表ではない。医療に関わる運動の判断は医師に相談する領域だ。[17]
この抑うつ症状の試験では、通常の治療群が310人、軽い運動群が106人、中等度群が105人、強い運動群が99人だった。運動の強度の違いは心拍数のモニタリングでも確認されている。強度が違う条件を実際に設けたうえで、症状の変化には運動群間の有意差がなかった点が読みどころだ。強度の確認と、症状の評価を分けた比較である。[17]
こうして目的を分けると、静かなクラスを選んだ日を「消費が少なそうだから失敗」と決める必要がなくなる。今日は消費を比較したいのか、それとも別の目的で参加するのか。研究の結果を選択に生かすには、まず自分が答えを求めている問いを短い言葉にしておく。同じ「効果」という語の中へ、酸素消費と症状の変化を一緒に詰めないためである。[2][12][17]
クラスを選ぶ前のメモも、評価の対象を決めるところから始められる。動作の内容を比べたい日は内容を、参加を続けられたかを振り返る日は参加の記録を見る。研究が測った酸素消費と、自分が残した参加記録に同じ意味を持たせず、それぞれの問いに使うという整理である。[12]

よくある誤解
「暑くて心拍数が上がったなら、同じ動きでも消費が大きく増えるはずだ」。同一内容のヨガを比べた試験では、暑い条件で心拍数ときつさが有意に高かった一方、酸素消費に基づく強度には有意差がなかった。心拍数の結果だけから消費の増加を決める推論は、この試験で支持されなかった。心拍数の上昇そのものを否定する話ではない。[12]
「同じ長さのヨガなら、動く内容は気にしなくてよい」。男性指導者の測定ではポーズ、呼吸法、瞑想で平均エネルギー消費が違った。別の研究では連続する太陽礼拝が測られている。枠の長さが同じでも、中で行う実践を確かめずに消費を比較することはできない。レッスン名を見ただけでは、比較に必要な条件がそろったことにはならない。[2][20]
「動きを増やせば、どの効果も強くなる」。抑うつ症状を調べた試験では、強度の違う運動群の間に有意差がなかった。消費の問いと症状の問いで、判定に用いる結果は異なる。強く動くことを一律の正解にせず、何を変えたくて参加しているのかと、どんな結果を比べた研究なのかを組み合わせる必要がある。[17]
今日からできること
- 比較したいクラスの動作と時間を書き留める。温度だけの差を考える手本は、同一内容を約20分行った試験だ。実際のクラスで内容が違えば、その違いもメモに残す。[12]
- 心拍数の記録の横に、感じたきつさを言葉で残す。試験で最大心拍数に対する割合は67.0%と60.8%に分かれたが、酸素消費の強度には有意差がなかったことを思い出す。[12]
- クラスを振り返るとき、動いた場面と呼吸・瞑想の場面を区別する。毎分2.29kcalと1.37kcalは、研究対象者のポーズと瞑想の平均値であり、自分の消費量を計算するための定数にはしない。[2]
- 太陽礼拝の5.0メッツを、すべてのヨガに貼り付けない。遠隔と対面で各10分実施した研究の値として読む。自分が同じ内容を実施したかも一緒に確かめる。[20]
- 参加後に求める変化を言葉にしておく。12週間の抑うつ症状の試験と、約20分の酸素消費の試験は、答えている問いが違う。体重、気分、運動中の強度をひとまとめに採点しない。[12][17]

オンザショア立川店で、比較できる予定を組む
暑さと動作を分けて比べるには、まず参加したクラスの内容を確かめたい。オンザショア立川店には、溶岩プレートを敷いたスタジオでのホットヨガと常温のヨガがあり、ヨガだけで25種類以上のレッスンがある。同じ「ヨガ」の名前でまとめず、どんな実践に参加するかを選ぶ入口になる。店のトップから内容を確認できる。
参加条件も先に確かめておきたい。妊娠中の方は溶岩ホットヨガには参加できず、常温のマタニティヨガがある。医師から運動を止められている方は利用できない。場所はJR立川駅北口から徒歩1分、東京都立川市曙町2-14-10 エトロワビル3F。営業時間は全曜日8:00〜23:30、年中無休であり、通える時間を予定に組み込む手掛かりになる。
ヨガの体験レッスンは税込1,980円で、60分のレッスン、バスタオル2枚、フェイスタオル1枚、ヨガマットのレンタルを含む。料金と体験の予約を確認し、参加後は暑さの印象に加えて、動いた内容も記録しておきたい。
参考文献
[2] Hatha yoga practices: energy expenditure, respiratory changes and intensity of exercise — Ray US, Pathak A, Tomer OS., 2011, Evidence-based complementary and alternative medicine : eCAM. DOI: 10.1093/ecam/neq046
[3] Comparison of cardiorespiratory responses between Surya Namaskar and bicycle exercise at similar energy expenditure level — Sinha B, Sinha TD, Pathak A, Tomer OS., 2013, Indian journal of physiology and pharmacology. DOI: なし
[12] Objective and subjective measures of exercise intensity during thermo-neutral and hot yoga — Boyd CN, Lannan SM, Zuhl MN, Mora-Rodriguez R, Nelson RK., 2018, Applied physiology, nutrition, and metabolism = Physiologie appliquee, nutrition et metabolisme. DOI: 10.1139/apnm-2017-0495
[17] Training fast or slow? Exercise for depression: A randomized controlled trial — Helgadóttir B, Hallgren M, Ekblom Ö, Forsell Y., 2016, Preventive medicine. DOI: 10.1016/j.ypmed.2016.08.011
[20] Exercise intensity of real-time remotely delivered yoga via videoconferencing: Comparison with in-person yoga — Miura H, Miura T, Kohzuki M, Takahashi T, Akizuki M, Ebihara S., 2023, Complementary therapies in clinical practice. DOI: 10.1016/j.ctcp.2023.101770
この記事の情報は2026年10月時点のものです。個別の健康状態については医師にご相談ください。
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