運動後のホルモンは総量だけで読める?遊離型と結合たんぱく質の変化を読む

運動後のホルモンを読むとき、総量だけでは見えない変化がある。テストステロンの総量・遊離型・結合たんぱく質を測った試験を比べ、運動直後と継続後、男性と女性で異なる結果を整理する。数字の増減をそのまま運動の成績にしないために、対象者と測定項目の確かめ方を考える。

筋トレで扱う重りは増えたのに、ホルモンの総量は変わらない。そんな結果をどう読めばよいのだろう。増えたのは、何というホルモンの、どの数字なのだろう。同じテストステロンでも、総量が変わらず、遊離型が下がり、結合たんぱく質が増えた若い男性の筋力トレーニング試験がある。18〜39歳の女性にも同じ変化が起こるかは、この男性の結果だけでは判断できない。[18]

運動後のホルモンは、総量だけでは読み切れない。血中の結合状態に目を向けると、見かけは動かない数字の横で別の項目が変わっている。ただし、遊離型が下がったから運動が失敗した、とも判断できない。同じ試験では、除脂肪量の増加も観察された。[18]

「食欲を抑えるホルモンは総量で読める?運動後のグレリンの形と空腹感を読む」は食欲の問いを扱う。ここでは性ホルモンのテストステロンを軸に、結合する相手と測定する項目を見分ける。女性の運動介入をまとめた研究でも、総量と遊離型は別々の評価項目として扱われている。[16]

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総量が同じでも、中身の読み方は変わる

テストステロンの研究で登場する「総」は、測定対象の全体を見る項目である。「遊離型」は、たんぱく質と結合していない分を指す。性ホルモン結合グロブリンは性ホルモンと結びつくたんぱく質で、英字ではSHBGと記される。これらを同時に測る試験では、総量の変化と遊離型の変化を区別している。[18]

たとえるなら、全体の人数を知ることと、その中のどの状態の人を数えるかは別の問いである。ただし、このたとえからホルモンの働く速さや量まで計算してはいけない。総量、遊離型、結合たんぱく質が実際にどう動いたかを、測定結果で確かめる必要がある。総量から遊離型の増減を決めつけられないことは、運動介入の結果にも表れている。[18]

過体重または肥満で、座って過ごすことの多い若い男性36人を無作為に分けた試験では、筋力トレーニングを12週間、週3回行う群と、運動を行わない群を比べた。対象の年齢は22歳、平均的な体格指数は31.4だった。運動群でSHBGが増え、遊離テストステロンが減った一方、総テストステロンはどちらの群でも変わらなかった。18〜39歳の女性への当てはまりは、女性を対象とした検証で確かめる必要がある。[18]

ここで「男性ホルモンに変化なし」と見出しを付けると、総量の結果だけを採用することになる。逆に「男性ホルモンが低下」とだけ書けば、遊離型の結果を全体に広げてしまう。測定欄の名前を省くと、同じ試験から反対の印象をつくれてしまうのである。[18]

この試験では、遊離アンドロゲン指数という別の指標も低下した。しかし、遊離型そのものと指数は、論文の中で別項目として報告されている。「自由に働く分」という言葉だけで数値の種類をひとまとめにせず、自分が見ている項目の名称を残す。それが総量だけで読まないための出発点になる。[18]

数値を読む順番としては、まず何を測ったか、その次に誰を比べたかを確認すると混乱しにくい。この男性の試験なら、運動前後の総量だけを眺めるのでなく、運動を行わない群との比較と、同時に測った遊離型やSHBGを組にして読む。数値が据え置きになった欄にも、変わった欄にも、それぞれ意味がある。[18]

また、体重が変わらなかったことを「体に変化がなかった」とするのも同じ種類の取り違えである。体重が動かない中で体組成の項目は変化し、総テストステロンが動かない中で結合に関わる項目は変化した。全体を表す数字は便利だが、何がその内側で動いたかを常に代表するものではない。この試験は、その見落としを具体的に示している。[18]

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遊離型が下がっても、筋トレの失敗ではない

同じ男性の試験では、体重の減少を伴わずに、除脂肪量が増え、総脂肪量と体幹の脂肪量が減った。糖を摂取して調べる検査では、血糖とインスリンの曲線下面積も小さくなった。ホルモンの測定項目の変化と、体組成や代謝に関する変化が同時に起きていたのである。[18]

この結果から、遊離テストステロンの低下が除脂肪量を増やした、と原因を決めることはできない。無作為化されているのは運動を行うかどうかであり、遊離型を意図的に下げるかどうかではない。それでも「遊離型が下がれば筋トレの成果は出ない」という一律の読み方とは合わない結果である。[18]

別の無作為化試験では、筋力トレーニング経験のある男性22人が、D-アスパラギン酸の摂取群とプラセボ群に分かれ、全員が12週間の監督付き筋力トレーニングを行った。基礎状態の総テストステロンと遊離テストステロンは変わらなかったが、両群で足首を下向きに押す筋力が増え、大腿とふくらはぎの筋肥大も認められた。男性の経験者で得た結果であり、18〜39歳の女性の筋力とホルモンの関係を直接示す結果ではない。[14]

その筋力の増加は17%で、95%信頼区間は7〜28%だった。信頼区間は推定の幅を表す。この研究は運動をしない群との比較ではないため、すべての変化を運動だけの効果として切り分ける試験ではない。それでも、トレーニング中の筋力や筋の変化を追う際に、安静時のホルモン上昇が必須の目印とはならなかった。[14]

ホルモンの検査値を運動の通知表にすると、こうした変化を見落とす。重りを持てるようになった記録と、採血の欄に並ぶ数字は、違うものを測っている。筋力の変化を知りたいなら筋力の測定を、血中ホルモンの変化を知りたいならその項目を読む、という対応関係を崩さないことが大切である。[14][18]

運動直後の上昇は、結合たんぱく質だけの話ではない

結合たんぱく質が重要だからといって、運動で起きるホルモン変動をすべて結合状態で説明することもできない。成人男性を対象に運動直後の変化を集めたメタ分析では、総テストステロンと遊離テストステロンは上昇したが、SHBGには統計的に有意な変化が認められなかった。18〜39歳の女性に同じ急性変化が起こるかは、成人男性の集計からは決められない。[9]

集計されたのは48研究、参加者は569人である。総テストステロンの上昇は中強度と高強度の運動で認められ、軽い運動では有意ではなかった。運動終了直後と終了後30分以内では上昇が認められた一方、30分を超えた測定では有意な上昇が認められなかった。遊離型についても同様の結果だった。[9]

これは「運動から30分たつと全員が元に戻る」という個人向けの時計ではない。異なる研究を、終了から測定までの間隔で分けた集計結果である。夜の運動直後に測った数字を、翌朝の落ち着いた状態と同じ意味で扱うと、測る場面の違いが混ざってしまう。[9]

この分析の著者らは、急性の上昇は主としてSHBGとは独立した仕組みと考察している。つまり「遊離型が増えたのだから、結合相手が減ったはずだ」という推測は、この集計には当てはまらない。結合たんぱく質は確かめるべき項目であって、あらゆる変化を解く万能の答えではないのである。[9]

長く続けた運動の結果とも分けたい。座って過ごすことの多い40〜75歳の男性102人を対象に、有酸素運動を続ける群と活動を変えない群を比べた無作為化試験では、総テストステロンと遊離テストステロンに有意な群間差はなかった。運動直後の上昇を集めた結果と、長期介入の結果は、答えている時間の尺度が異なる。40〜75歳の男性の長期介入なので、18〜39歳の女性にそのまま当てはめるには対象が異なる。[20]

短時間の研究と長期の研究を比較するときは、「上がったかどうか」の前に、測定時点を文章に戻したい。運動を終えたばかりの男性の値なのか、運動を続けた後の血液の値なのかで、問いそのものが違う。急性のメタ分析は、一時的な変動として上昇を報告している。そこから年間を通じた高値の持続を予想するのは、観察した時間を越える読み方になる。[9][20]

夜の運動のあとに「今日はよく動けた」と感じたとしても、その感覚から総量と遊離型の割合を読み取ることはできない。逆に、ホルモンの研究で一時的な上昇が報告されていても、同じ上昇を起こすことを毎回の練習目標にする根拠にはならない。長期の男性試験では、総量や遊離型の有意な群間差がない中で心肺体力は向上していた。運動の記録と採血の記録を、それぞれの測定対象として扱いたい。[20]

数字で読む総量・遊離型・結合たんぱく質

36人:若い男性の筋力トレーニング試験。総量は変わらず、遊離型とSHBGは変化した。[18]

12週間:その試験の運動期間。運動直後だけを測った研究ではない。[18]

48研究:成人男性の運動直後のテストステロン変化を集めたメタ分析の研究数。[9]

30分以内:急性のメタ分析で、終了直後とともに上昇が認められた測定区分。[9]

17%:経験者の筋力トレーニング試験で認められた足首を押す筋力の増加。総量と遊離型の上昇は伴わなかった。[14]

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宮川涼 Founder

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