ダイエット停滞期のハイカーボは脂質よりよい?食事の配分と消費の違いを比べる

ダイエット停滞期に炭水化物を増やすハイカーボは、脂質を増やす食事より有利なのか。健康な成人の比較試験をもとに、レプチン、食欲、消費エネルギーの変化を読み分ける。たんぱく質の割合や測定期間にも目を向け、短期の反応を長期の減量効果と取り違えずに考える。

夕飯の茶碗を前に、「停滞期にはご飯を増やす」という投稿を思い出す。では、揚げ物を増やす場合とは何が違うのか。ハイカーボという名前だけでは、比べる食事の中身がまだ決まっていない。

答えの芯は、炭水化物と脂質で体内の燃料の使い方は変わるが、それを停滞期の解消法の優劣に置き換えることはできない、という点にある。健康で体重が安定した成人の実験では、炭水化物の多い過剰食と脂質の多い過剰食で燃料利用の指標が異なった。一方、脂質の多い過剰食でもレプチンは上昇している。炭水化物だけに反応する単純なスイッチではない。[7][11]

既存記事「ダイエット停滞期の糖質再導入で何が増えた?グリコーゲンと測定のずれを読む」は体重測定の読み方に譲る。また「ダイエットのリフィードで代謝は戻る?レプチンの変化と消費量を分けて読む」の問いを踏まえ、ここでは炭水化物と脂質を比較するときに、たんぱく質の配分まで確かめる視点に絞る。

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ハイカーボと高脂質は、何をそろえて比べるのか

ハイカーボは、ここでは炭水化物の割合が高い食事を指す。比較の入口となるのは、健康で体重が安定した成人79人を調べたクロスオーバー試験である。同じ参加者が異なる食事条件を経験するため、人の違いだけでなく食事条件の違いに目を向けやすい設計だ。研究者は部屋全体で呼吸に伴うガス交換を測る装置を使い、消費エネルギーと呼吸商を調べた。[7]

通常のエネルギー収支が釣り合う食事は炭水化物50%、脂質30%。過剰食では必要量の200%を与え、高炭水化物食を炭水化物75%、脂質5%、高脂質食を脂質60%、炭水化物20%とした。いずれもたんぱく質の割合は同じになる構成である。このように総量と配分を決めて初めて、「どちらを増やしたか」という比較の輪郭が見える。[7]

これは、ご飯を少し戻した日と、外食で食べる量が増えた日をそのまま比べる話とは違う。食事全体のエネルギー、炭水化物と脂質の割合、たんぱく質が同じ条件にあるかを確かめる必要がある。研究の200%という設定は反応を測るための実験条件であり、家庭で再現する献立の目標にはしない。[7]

食事を比べる際には、何が増えたかだけでなく、何が減ったかも言葉にしたい。炭水化物を増やして脂質を減らした食事と、両方を増やした食事は別の比較になる。さらに、たんぱく質まで減らしていれば、結果を炭水化物だけの性質と呼ぶことは難しい。実際、過剰摂取時の消費量はたんぱく質の含有量によって異なることが、別の比較試験で示されている。[19]

比較の対象が違えば、同じ「高炭水化物」という名前でも答えは変わる。先の試験には、通常と同じ栄養素の割合のまま量を増やす条件もあった。高炭水化物食と通常食を比べるのか、通常の割合の過剰食と比べるのかで、食事量と配分のどちらを問うかが変わる。比較相手を書かない「代謝が上がった」という説明では、判断の足場が足りない。[7]

たとえば普段の夕飯にご飯を追加する場合と、脂質の多い料理を減らしてご飯へ置き換える場合を、同じ試みとして記録しないほうがよい。これは特定の献立を勧めるためではなく、食事全体の変化を取り違えないためだ。研究も、通常食の構成と過剰食の構成を区別して燃料利用の反応を比べている。[7]

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脂肪を使う割合と、体脂肪が減る量は別に読む

呼吸商とは、呼吸で出す二酸化炭素と取り込む酸素の比であり、体がどの燃料を使っているかを読む指標である。先ほどの試験では、釣り合いのとれた食事に比べて、高脂質の過剰食で呼吸商は平均4%低下し、高炭水化物の過剰食で8%上昇した。食べたものの構成に応じて、燃料の使い方が変わったのである。[7]

ここで「脂肪を多く使ったなら、脂質を増やすほうが痩せる」と進めたくなる。しかし研究で測ったのは、過剰食に対する短期の燃料利用の反応だ。同じ研究では、その後の自由な生活での体重変化も調べ、高脂質食で呼吸商があまり低下しなかった人ほど、半年後と1年後に体重が増えやすい関連がみられた。高炭水化物食などでは同じ関連はみられなかった。[7]

この結果は、脂質への切り替えに個人差があることを示す手がかりになる。将来の体重との関連を調べた部分は、参加者に長期の高脂質食を割り当てて減量効果を比較したものではない。「高脂質を食べれば太る」「高炭水化物なら停滞を抜ける」という因果の結論にはならない。[7]

燃料を読む指標が、そのまま体重の未来を予測するとは限らない例もある。健康で体重が安定した成人86人(男性67人、女性19人、平均年齢37歳)を対象とした別のランダム化クロスオーバー試験では、たんぱく質をエネルギーとして使う量が多い人ほど、通常のたんぱく質割合の食事条件で脂質の利用が少なかった。しかし、その個人差から自由な生活での2年間の体重や体組成の変化は予測できなかった。男性が多い集団での結果を18〜39歳の女性にそのまま当てはめられるかは、女性に絞った検証が必要である。[4]

昼食で主食を増やしたあと、「今日は糖を使っているなら、脂肪が減らないのか」と心配する必要もない。短時間の燃料配分を測る問いと、生活の中で体脂肪がどう変わるかという問いでは、見ている時間と結果が違う。燃料の切り替えは体の反応を知る窓であり、翌朝の体重を言い当てる札ではない。[4][7]

レプチンが上がれば、食欲も消費も同じように変わるか

レプチンは脂肪組織からのホルモン信号のひとつで、体重調節に関わる。過剰摂取研究を整理したレビューでは、体脂肪が減ったときには食べる量を増やし消費を減らす反応が起こり、低いレプチンなどの信号が体重減少への防御に関わると整理されている。一方、過剰摂取で体脂肪が増えるのを抑える信号の全体像はまだ明らかではない。[5]

「炭水化物ならレプチンが上がり、脂質では動かない」という説明は、少なくともすべての条件に通用しない。健康な若い男性12人のランダム化クロスオーバー試験では、必要量より50%多いエネルギー、脂質65%の食事を7日間とり、脂質36%の対照食と比べた。高脂質の過剰食の条件で、空腹時のレプチンは対照食より高かった。男性だけの試験なので、18〜39歳の女性でも同じ反応が得られるかは別に確かめる必要がある。[11]

ただし、血液の数値と本人の空腹感は同じ動きをしなかった。高脂質の過剰食では空腹時の活性型グレリンが低下したが、空腹時の食欲感覚の時間的な変化には食事間で明確な違いがなかった。グレリンも食欲に関わるホルモンである。体内の信号の変化を、そのまま「空腹を感じなくなる」と訳さないことが大切だ。[11]

食事後の検査場面では食欲を抑える方向の変化がみられたものの、食欲評価には統計的に明確でない結果も含まれた。脂質の多い食品への好みの低下も含め、研究者がまとめたのは控えめな補償反応である。過剰分をすべて食欲の低下で埋め合わせるほどの働きが確認された、という話ではない。[11]

血液検査の項目と、夕方に何を食べたくなったかは、分けて記録するほうが実験の読み方に近い。レプチンが高い食事が、停滞期の人に適した食事だとは決まらない。この試験の対象は健康な男性であり、減量が止まった女性に対して、炭水化物と脂質のどちらが長期的に有利かを決めた試験でもない。[11]

測定の時点も比較条件の一部である。この男性の試験では、空腹時の測定と、食事期間の前後に行う糖負荷検査での測定を分けていた。糖負荷検査とは糖をとったあとの反応を見る検査であり、夕食を食べた直後の感覚を尋ねるのと同じではない。「食後のレプチン」という見出しで紹介されていても、実際に比較されたのが空腹時の値かどうかを確かめたい。[11]

また、この試験は脂質の割合だけでなく、エネルギーの量も対照食とは違う。レプチンの上昇を見て「脂質そのものに特別な働きがある」と結論することもできない。炭水化物だけを主役にする説明を疑うなら、脂質だけを主役にする説明にも同じ物差しを当てる。食事の総量を含む条件の違いが、比較結果の一部をなしているからだ。[11]

数字で読む食事配分と短期の反応

79人:高炭水化物食と高脂質食などを経験した健康な成人の人数である。[7]

75%と5%:高炭水化物の過剰食における炭水化物と脂質のエネルギー割合を示す。[7]

4%低下と8%上昇:高脂質食と高炭水化物食での呼吸商の平均変化である。[7]

12人・7日間:高脂質の過剰食でレプチンや食欲を調べた男性の試験規模である。[11]

128±98 kcal/日:高たんぱく質・低めの炭水化物の食事で大きかった消費量の差であり、炭水化物単独の効果ではない。[3]

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宮川涼 Founder

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