脂肪燃焼を期待してトマトジュースを足す前に、試験が測っているのは燃えた脂肪の量なのか、運動で傷んだ脂質やDNAの指標なのかを分ける。未訓練者の150ミリリットルを5週、男性選手の粉末を1週、赤い色素を4週並べ、単体のリコピンとの違いと結果の食い違いまで読む。
冷蔵庫の赤い紙パックを、運動着と一緒にバッグへ入れる。カゴに入れた理由は、喉の渇きだけではない。「トマトは脂肪が燃える」という短い言葉が、レジまでの数秒で勝ってしまう。
その言葉と、運動の論文が測っている仕事は、隣り合っていない。ここで読む試験が終点に置いているのは、体脂肪のグラムでも、運動中に燃料として使った脂肪のグラムでもない。運動のあとで動く、脂質の傷みやDNAの酸化の指標である。[2][13][19]
既存記事「疲労回復にトマトジュースは役立つ?運動後の酸化指標と翌日の体感を読み分ける」には、回復の指標と翌日の体感を譲る。「むくみ解消のトマトジュースは無塩ならよい?カリウムと塩分を別々に読む」には、塩分とカリウムの読み分けを譲る。この記事が分けるのは、同じ赤い飲み物を、脂肪が燃える量の話として読んでよいかである。紙パックは、ペダルの代わりにはならない。

トマトの試験は、燃えた脂肪の量を測っていない
日本語の「脂肪の酸化」は、二つの仕事に使われる。一つは、脂肪酸を燃料として使うこと。もう一つは、脂質が活性酸素で傷むこと、つまり脂質過酸化である。トマトと運動を結んだ試験が追うのは、後者に寄っている。総抗酸化能、マロンジアルデヒド(MDA。脂質が酸化してできる産物)、8-イソプロスタン、DNAが酸化を受けた指標の8-oxodGが、測定の欄に並ぶ。[2][13][19]
トマトを日常的に食べることに伴う健康をまとめた2022年のレビューは、運動については回復を話題に挙げ、トマト製品やリコピンを濃くした製品の摂りすぎには負の面があるとも触れている。[17]
量と期間は、人を運動させた個々の試験に戻る。未訓練者の短い自転車、よく訓練された男性の疲労困憊、2時間の走行、無酸素系の選手の2か月は、同じトマトでも条件が違う。条件を飛ばすと、測った指標まで一色になる。[2][13][19][20]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
150ミリリットルを5週飲むと、運動後のDNAの指標が下がった
未訓練の健康な15人が、エルゴメータの自転車を20分こぎ、その強度は最大脈拍の80パーセントだった。採血は運動の前と、終了の1時間後である。同じ手順を、1日150ミリリットルのトマトジュースを5週間飲んだあとで繰り返し、5週間の休止を挟み、さらに5週間飲む期間を置いた。150ミリリットルは、リコピン15mgに相当する、と試験は記している。研究の型は、対照を置いた臨床試験である。[2]
5週間の摂取のあと、激しい運動後の血清8-oxodGは有意に低下した。著者らは、トマトジュースに抗酸化の働きがある可能性を示し、運動の酸化ストレスで上がった活性酸素を下げうる、と結んでいる。下がったのはDNAの酸化の指標であり、著者らがこの数字で表しているのは活性酸素の側である。[2]

粉末のトマトは、リコピンだけより脂質の傷みに向いた
よく訓練された男性選手11人が、無作為化で二重盲検の交差試験に入った。交差試験とは、同じ人が複数の条件を順に経験して比べる方法である。条件は三つ。トマトの粉末を1週間、製造されたリコピンを1週間、偽薬を1週間。それぞれのあとで、疲労困憊までの運動を行った。研究の型は無作為化比較試験である。男性選手の結果を18〜39歳の女性にそのまま当てはめるには、性別と訓練状態の違いを検討する必要がある。[13]
粉末の1回分には、リコピン30mgに加え、β-カロテン5.38mg、フィトエン22.32mg、フィトフルエン9.84mgが含まれる。製造されたリコピンの条件は、リコピン30mgだけである。採血は開始時、摂取後、運動後の3回で、総抗酸化能、MDA、8-イソプロスタンを見ている。8-イソプロスタンも、脂質が酸化したときの指標である。[13]
著者らは、トマト粉末の抗酸化能と運動で誘発される脂質過酸化への有益な作用について、ほかの成分との相乗が関わる可能性を挙げている。同じ30mgでも、粉末と単体は、この試験では同じ介入として扱われていない。[13]
人数は11人、各条件は1週間、対象はよく訓練された男性である。レッスンに通う女性が夕食に紙パックを1本足す習慣へ、この1週間を写すことはできない。脂質過酸化が指すのは、脂質が傷んだことである。漢字が近いだけで、財布の減り方まで測ったことにはならない。[13]
4週の赤い色素は、ミオグロビンの上昇だけを抑えた
持久走ランナーを対象にした別の二重盲検・無作為化・偽薬対照の交差試験は、リコピンにフィトエン、フィトフルエンなどを含むトマト複合体を4週間、夕食とともに摂らせた。そのあと高強度で2時間走り、うち30分は勾配マイナス10パーセントの下りだった。採血と遅発性筋肉痛の評価は、摂取の前後、走行の直後、1時間後、24時間後、48時間後である。2週間の休止を挟み、条件を入れ替えて同じ手順を繰り返した。持久走ランナーの高強度走行で得た結果を、18〜39歳の女性の日常の運動へそのまま当てはめるには、運動歴と負荷の違いが残る。[19]
血漿のリコピン、フィトエン、フィトフルエンは、偽薬と比べて有意に増えた(いずれもp<0.001)。4週間で血漿カロテノイドは73パーセント増えた。増えた主語は血中の色素である。ウエストの周囲が73パーセント変わった、という文ではない。[19]
運動そのものでは、クレアチンキナーゼ、遅発性筋肉痛、C反応性蛋白、ミオグロビン、9-および13-ヒドロキシオクタデカジエン酸、血漿の鉄還元能、6種のサイトカインに、時間による変化があった(いずれもp<0.001)。条件による違いが出たのはミオグロビンで、相互作用のpは0.016、複合体の方が低かった。クレアチンキナーゼ、筋肉痛、C反応性蛋白、6種のサイトカイン、ヒドロキシオクタデカジエン酸、鉄還元能では、その相互作用は見られていない。[19]
酸化したLDLと、血清の8-ヒドロキシ-2′-デオキシグアノシンには、時間の効果も相互作用も有意ではなかった。この物質は、8-oxodGと同じ系統のDNA酸化の指標である。運動後のミオグロビン上昇は抑えた一方で、炎症と酸化ストレスは抑えなかった、と著者らは記している。[19]
ここに、5週間のトマトジュースで運動後の8-oxodGが下がった試験との食い違いがある。一方は未訓練の15人が20分こいで低下、もう一方は2時間の下りを含む走行のあと、DNAの酸化指標は動かなかった。製品、期間、運動、対象が違う。片方の「下がった」だけで、トマトは運動の酸化を必ず抑える、とは書けない。[2][19]
運動そのものが、血中のリコピンを動かす
補給しなくても、1回の運動で血中のリコピンは動く。見かけ上健康な男性17人(22.6±4.6歳、最大酸素摂取量53.7±7.1ml/kg/分)が、無作為の交差で2種類の歩行をした。高強度の間欠は、最大酸素摂取量の80パーセントで5分を3本、間に30パーセントで5分の歩行を挟む。持続の中強度は、60パーセントで30分。試行の間隔は7日。採血は運動前、直後、2時間、4時間、24時間、48時間である。男性の歩行試験のため、18〜39歳の女性にも同じ濃度変化が起きるかは別に確かめる必要がある。[3]
IL-6とTNF-αは、強度にかかわらず運動直後に上がり、少なくとも4時間は高いままだった。α-トコフェロールは二つの試行を合わせると上昇した(p<0.05)。リコピンは、高強度の間欠の2時間後に低下した(p<0.05)。サイトカインの分泌は、酸化ストレスとは独立に見えた、と著者らは述べている。減ったリコピンを、燃えた脂肪の領収書として読む向きにはなっていない。[3]
数字で読むトマトと運動の酸化
15人・20分・最大脈拍の80パーセント:未訓練の健康な人が自転車をこぎ、運動の前と1時間後に採血した条件である。[2]
150ミリリットル・リコピン15mg・5週:同試験の1日量。運動後の血清8-oxodGは有意に低下した。[2]
11人・1週・リコピン30mg:よく訓練された男性選手の交差試験。粉末にはβ-カロテン5.38mg、フィトエン22.32mg、フィトフルエン9.84mgも含まれ、単体はリコピン30mgだけだった。[13]
73パーセント:4週間のトマト複合体で増えた血漿カロテノイド。運動後のミオグロビンは抑え、炎症と酸化ストレスは抑えなかった。[19]
17人・22.6±4.6歳:高強度の間欠歩行の2時間後に、血中リコピンが低下した(p<0.05)。[3]
7人と10人・18.6±1.1分:筋トレ直後に脂溶性の抗酸化物質は増えても、MDAは両群で増えた。[5]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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