
抵抗が変わると、安定と動く範囲の関係も変わる
筋肉名だけでは足りない理由は、器具を使う実験にもある。健康な女性28人がリフォーマー上で脚を開く動作を行った研究では、ばねの抵抗が重い条件と軽い条件を比較した。リフォーマーは、ばねで抵抗を調節する滑走台を備えた器具である。筋電図に加えて立体的な動作解析を用い、筋肉の活動と骨盤・体幹の動きを同時に調べた。[3]
重いばねでは、中殿筋、内腹斜筋、多裂筋の活動が高かった。軽いばねでは内転筋の活動が高く、股関節の動きはより対称的で、動く範囲も大きかった。重い条件では骨盤と体幹の重心移動が小さく、より安定していた。ここでは抵抗の違いが、筋肉の活動だけでなく動きの特徴にも関わっている。[3]
「深い筋肉がよく働く方」という問いなら重い条件の一部の結果に目が向くが、「左右の動きや大きさ」という問いなら軽い条件にも見るべき点がある。重いほど全面的に優れているという結論にはならない。筋肉の活動、体幹の安定、股関節の動く範囲は、並べて観察する別々の項目である。[3]
別の比較研究では、ピラティス経験者16人と未経験者16人が、リフォーマーで背中や骨盤の位置を変えた膝伸展運動を行った。経験者は未経験者よりも腹直筋に対して内腹斜筋をよく活動させ、骨盤と体幹の安定も良好だった。筋活動と安定性の間には中程度の相関が報告されている。[5]
姿勢の条件にも目を向けたい。この比較では、背中を平らにして骨盤を中間に置く姿勢、背中を丸めて骨盤を後ろに傾ける姿勢、背中を伸ばして骨盤を前に傾ける姿勢を使った。経験者が腹直筋より内腹斜筋を活動させる違いは、背中を丸めた条件で特に大きかった。単に「ピラティス経験あり」と記すだけでなく、どの姿勢で差が目立ったかまで読むと、経験の意味を具体的な動作に戻せる。[5]
ただし、経験者と未経験者を比べた結果から、その違いがすべてピラティスの練習によって生じたと断定はできない。また、対象になったのはその器具と姿勢での動作である。研究から持ち帰りたいのは「経験者なら常に正しい」という順位ではなく、活動の大きさと体の動きの両方を見る視点だ。[5]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
首の深い筋肉まで、お腹と同じ説明にしない
「インナー」という言葉が首に移ったときも、お腹の説明をそのまま貼り付けない方がよい。健康な成人17人の首を調べた実験では、頭を傾けた姿勢と最大の力を出す課題で筋電図を測り、筋肉の力と頸椎にかかる負荷を推定した。対象となる部位も、求められる仕事も、体幹の手脚上げとは異なる。[7]
研究では、静的な頭の姿勢を保つ条件では深い筋肉の力が表層の筋肉より大きかったが、最大努力ではその関係が逆転した。深い筋肉は安定した頭の姿勢を保つ仕事、表層の筋肉は大きな力を出す仕事や終末位置で安定を補強する仕事に、より関わると報告されている。[7]
同時に、首を曲げると圧縮負荷や前後方向のせん断負荷が増え、深い筋肉の力も増加した。せん断負荷とは、組織をずらす方向に働く負荷のことだ。ここでも「深い筋肉の活動が増えた」という事実だけを抜き出して、首への負担が小さいと解釈することはできない。[7]
夜のスマホを見ながら「首の奥を鍛えれば大丈夫」と考えるのは、この実験の読み方から離れてしまう。筋肉が働いたことと、負担が小さいことを別々に確かめる必要がある。実験で推定された首の負荷は、個人の症状を診断する数値でもない。痛みの相談は医師にするもので、活動の高い筋肉を探すだけでは代わりにならない。[7]

よくある誤解
「深い筋肉は、小さい力で自動的に働くので意識しなくてよい」という説明は一括りにしすぎである。健康な20人を対象に、局所的な腹筋と全体に関わる腹筋を意図的に収縮させる課題を比べた研究では、局所的な腹筋の課題で大脳皮質、基底核、小脳の活動がより強かった。測定前には2週間の課題練習も設けられている。[6]
脳を調べたこの実験では、局所的な腹筋と全体に関わる腹筋の課題をランダムな順序で行い、同じ参加者の反応を繰り返し測っている。別々の人の得意不得意を並べただけの比較ではない。そのうえで、特定の収縮課題で異なる脳活動が見られたという範囲に意味を置く。脳の反応の違いを、日常の姿勢の良し悪しを判定する試験に変えてしまわないことが大切だ。[6]
これは、局所的な腹筋を意識して使うことが脳にとってより難しい課題である可能性を示す。ただし、脳活動が大きいほど運動の価値が高い、あるいは腰痛が改善するという意味ではない。対象は健康な人で、調べたのは意図的な収縮時の脳活動である。静かな動きなのに集中が必要ということと、治療効果の証明は分けたい。[6]
「表面の筋肉が働いたら、インナーマッスルの練習は失敗」という思い込みも、四つん這いの研究とは合わない。局所と全体の筋肉が一緒に働いていたからだ。お尻や脇腹に活動があることを理由に、深い筋肉が参加していないと判定することはできない。参加者の感覚よりも、研究で何を測ったかを優先して読む。[1]
「筋肉が厚くなったから、支える機能も同じだけ改善した」という読み方にも注意が要る。健康な成人40人を各10人の群に分けた介入研究では、週3回、5週間の安定化運動の前後を超音波で測定した。通常のブリッジでは腹横筋、片脚を上げたブリッジでは腰部多裂筋、四つん這いの手脚上げでは内腹斜筋、サイドブリッジでは外腹斜筋と内腹斜筋の厚さが有意に増えた。[11]
これは運動の種類によって厚さの変化が異なるという結果であり、筋電図の活動順位や、その場で骨盤が安定する程度と同じ指標ではない。隣の記事「インナーマッスルは厚くなるほど働く?超音波の見え方と筋活動を分けて読む」には測定の詳しい話を譲る。ここでは、名称を覚えたあとも「何の変化を確かめたのか」を残して読むことが要点になる。[3][11][13]
今日からできること
- 動画の「インナーマッスル」を、具体的な筋肉名と動作に書き換える。健康な男性9人の比較では、腹横筋と多裂筋で活動が最大になる運動は違った。18〜39歳の女性の種目選びには、同じ順位をそのまま当てはめず動作の目的を確かめる。名称だけで種目を選ばないための確認である。[13]
- 四つん這いの説明を聞くときは、どの手脚を上げるのかを確認する。健康な30人の研究では、組み合わせによって活動する筋肉の様子が異なった。通称だけで別の動作を同じものにしない。[1]
- 指導を受ける際には「今日は筋肉の活動、体幹の安定、動く範囲のどれを見るのか」と尋ねる。女性28人のばね比較では、重い条件では安定、軽い条件では動く範囲に特徴があった。[3]
- 左右の感じ方が違っても、その場で体の異常と決めない。健康な男性の実験でも腹横筋に左右差があったが、18〜39歳の女性の左右差を判定する基準には使えない。痛みが気になる場合は、運動の難しさの自己採点で済ませず医師に相談する。[13]
- 練習の頻度を研究から借りるときは、対象と期間も添える。週3回を5週間続けた研究は健康な成人の筋厚を調べたもので、自分の痛みへの処方として使う数字ではない。[11]

オンザショア立川店で、動作の目的を確認する
筋肉の名前だけで選ぶ前に、どんな動作を練習したいかを言葉にしておく。オンザショア立川店にはピラティスや常温のヨガがあり、通う予定を考える際には、店の案内で種目を確かめられる。溶岩プレートを敷いたスタジオでのホットヨガも扱い、ヨガだけで25種類以上のレッスンがある。
妊娠中は溶岩ホットヨガには参加できず、常温のマタニティヨガがある。医師から運動を止められている場合は利用できない。種目の名称とともに、自分が参加できる条件も先に確認する。
所在地は東京都立川市曙町2-14-10 エトロワビル3F、JR立川駅北口から徒歩1分。営業時間は全曜日8:00〜23:30で、年中無休である。勤務や授業の時間と照らし合わせて、続けるための予定を考えたい。通う経路と参加できる時間帯を先に確かめることも、練習を生活の予定に組み込む準備になる。
ヨガの体験レッスンは税込1,980円。60分のレッスンにバスタオル2枚、フェイスタオル1枚、ヨガマットのレンタルが含まれる。料金と体験の予約を確認する際にも、「どこを使うか」に加えて「何を練習するか」という問いを持っておく。
参考文献
[1] Electromyographic activity of trunk and hip muscles during stabilization exercises in four-point kneeling in healthy volunteers. — Stevens VK, Vleeming A, Bouche KG, Mahieu NN, Vanderstraeten GG, Danneels LA., 2007, European spine journal : official publication of the European Spine Society, the European Spinal Deformity Society, and the European Section of the Cervical Spine Research Society. DOI: 10.1007/s00586-006-0181-1
[2] Motor control problems in patients with spinal pain: a new direction for therapeutic exercise. — Jull GA, Richardson CA., 2000, Journal of manipulative and physiological therapeutics. DOI: 10.1016/s0161-4754(00)90079-4
[3] Motion Analysis of Core Stabilization Exercise in Women: Kinematics and Electromyographic Analysis. — Lee K., 2023, Sports (Basel, Switzerland). DOI: 10.3390/sports11030066
[5] The Relationship of Trunk Muscle Activation and Core Stability: A Biomechanical Analysis of Pilates-Based Stabilization Exercise. — Lee K., 2021, International journal of environmental research and public health. DOI: 10.3390/ijerph182312804
[6] Differences in Activity of the Brain Networks During Voluntary Motor Tasks Engaging the Local and Global Muscular Systems of the Lower Trunk. — Gnat R, Dziewońska A, Biały M, Wieczorek M., 2020, Motor control. DOI: 10.1123/mc.2019-0109
[7] Investigation of the Differential Contributions of Superficial and Deep Muscles on Cervical Spinal Loads with Changing Head Postures. — Cheng CH, Chien A, Hsu WL, Chen CP, Cheng HY., 2016, PloS one. DOI: 10.1371/journal.pone.0150608
[11] Effect of evidence-based trunk stability exercises on the thickness of the trunk muscles. — Yang HS, Lee YS, Jin SA., 2015, Journal of physical therapy science. DOI: 10.1589/jpts.27.473
[13] Electromyographic analysis of transversus abdominis and lumbar multifidus using wire electrodes during lumbar stabilization exercises. — Okubo Y, Kaneoka K, Imai A, Shiina I, Tatsumura M, Izumi S, Miyakawa S., 2010, The Journal of orthopaedic and sports physical therapy. DOI: 10.2519/jospt.2010.3192
この記事の情報は2026年10月時点のものです。個別の健康状態については医師にご相談ください。
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