食欲を高めるホルモンと抑えるホルモン、食後のPYYと満腹感は一致する?

食後に満腹のホルモンが増えても、空腹感や次の食事量が同じ方向に動くとは限らない。PYYを中心に、ブルーベリー、ペカン、ひよこ豆、運動後の試験を読み比べる。採血で分かる反応、本人が感じる満腹感、実際に食べた量を分け、食品の効果をどこまで日常に当てはめられるかを考える。

朝食の皿にブルーベリーを添えたら、昼まで満腹でいられるだろうか。健康な成人の試験では、満腹に関わるホルモンは増えたのに、本人が感じる食欲は変わらなかった。食後のPYYの上昇と、満腹感や次の食事量は別々に確かめる必要がある。[7]

鍵になるのは、腸からの満腹に関わる信号であるペプチドYY、略してPYYだ。食欲は消化管のホルモンと脳の回路が連携して調節され、PYYもその一部を担う。食欲を高める側、抑える側という分類は入口になるが、採血の値と食べる行動は同じものではない。[5][18]

「ピープロテインで女性のホルモンは変わる?食後の血糖と満腹感の試験を読む」には原料と女性ホルモンの区別を、「睡眠不足と食欲・ダイエットの科学 ホルモンだけでは読めない翌日の間食」には寝不足と間食の問いを譲る。

既存の「食欲を抑えるホルモンは総量で読める?運動後のグレリンの形と空腹感を読む」には、グレリンをどう測るかという問いを譲る。ここで比べたいのは、食事でPYYなどが動いた時に、満腹感と次に食べる量まで動くのかである。実際の食事試験には、そこで足並みがそろう場合と、そろわない場合がある。[7][12][15][19]

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食欲を高める側と抑える側は、別々のスイッチではない

食欲の調節を整理したスコーピングレビューは、グレリン、PYY、GLP-1、レプチン、インスリンなどが、脳の食欲調節回路に関わるとまとめている。GLP-1も、消化管と脳をつなぐ食欲調節に関わるホルモンである。末梢から届く信号を脳の視床下部や脳幹が統合し、食べる方向と抑える方向の神経活動の釣り合いを作るという見取り図だ。[5]

別のレビューでは、代謝上の必要に応じる仕組みと、おいしさや報酬に動かされる仕組みが区別されている。消化管は栄養に応じてホルモンを分泌し、それが中枢や迷走神経を介した経路に関わる。お腹が空いているかという問いには、栄養の必要と食べ物への魅力の両方が入ってくる。[18]

だから、グレリンを食欲のアクセル、PYYをブレーキと呼ぶだけでは説明が足りない。車ならブレーキの部品を見れば済む場面もあるが、人の昼食はそう単純ではない。ホルモン同士の相互作用と脳の受け取り方を含むネットワークとして理解する必要がある、というのがレビューの示す方向である。[5]

ここからは、研究が何を測ったのかを分けたい。血中ホルモン濃度は体内の反応、質問票の空腹感や満腹感は本人の感覚、食事の摂取エネルギーは行動の結果だ。この区別は言葉の細部ではない。同じ試験でそれぞれを測ると、結果が異なるからである。[7][12][15]

たとえば、質問票で「満腹」と答えても、その日の摂取エネルギーが変わらない試験がある。逆に、空腹感が変わらなくても、次の食事で食べる量が少なかった試験もある。ホルモンは無意味なのではなく、感覚と行動の全部を代わりに表す指標ではないのだ。[12][15]

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PYYが上がっても、食欲が変わらなかった朝食

分かりやすい例が、健康な成人24人を対象にした、ブルーベリーを用いる無作為化二重盲検クロスオーバー試験である。参加者のうち22人が女性で、平均年齢は28歳だった。クロスオーバーとは、同じ参加者が異なる条件を経験して、その反応を比べる研究方法である。[7]

参加者は炭水化物の多い朝食に、凍結乾燥したワイルドブルーベリーまたは比較用の飲料を組み合わせた。飲料は250mLで、アントシアニンの量が0、150、300、450mgとなる条件を比べている。食後の血糖、インスリン、消化管ホルモンと、本人の食欲を同時に調べた試験だ。[7]

血糖とインスリンには用量に応じた低下があり、GLP-1、PYYなどのホルモンは上昇した。その上昇はアントシアニン450mgの条件で最も顕著だった。しかし、本人が感じた食欲は変わらなかった。体の中で測定できる反応が起きても、この試験では同じ時間帯の主観的な食欲には差が出なかった。[7]

ここで「ブルーベリーは空腹を消す」と言い切ると、研究が実際に測った答えから離れる。試験が示したのは、健康な成人で、特定の朝食と飲料の組み合わせによりホルモンや血糖の反応が変わったということだ。満腹感を保証する食品の順位表ではない。[7]

普段の朝食を考えるなら、果物の成分量だけを追うより、主食と主菜を含めて何を食べたかを見たい。この試験も、飲料だけを空腹時に飲む実験ではなく、炭水化物の多い朝食との組み合わせだった。たとえばパンと卵に果物を添えた朝と、果物だけの朝では、食事全体が違う。これは献立を整理する例であり、試験がその献立同士を比べた結果ではない。[7]

この試験の良さは、「ホルモンが上がった」という途中の結果で読み終えず、食欲の評価まで確認できる点にある。広告などで途中の反応だけが強調されていたら、自分が知りたい結末が測られているかを確かめたい。食後の採血の話と、夕方に何を食べたくなるかの話の間には、まだ距離がある。[7][18]

満腹感まで動いても、食べる量は別の答えになる

ペカンを含む朝食の試験では、少し違う結果が出た。若く健康な成人を対象とした無作為化二重盲検クロスオーバー試験で、無作為化された32人のうち31人が完了した。平均年齢は22歳である。若い成人の結果だが、18〜39歳の女性にそのまま当てはめられるかは、女性を対象とした検証も必要だ。参加者は別々の日にペカン入りの食事と、エネルギーと主要栄養素をそろえた比較食を取った。[15]

ペカンは68g、食事全体は795kcal、比較食は794kcalだった。つまり、「ナッツを足した食事」と「足さない少ない食事」の単純な比較ではない。主要栄養素とエネルギーをそろえて食品の違いを調べているため、普段の朝食にそのまま追加する方法を試した研究とは区別したい。[15]

ペカン条件では食後のPYY反応が大きく、食後120分より後のグレリンの抑制も強かった。満腹感の増加も大きく、自宅に戻ってからの食欲にも抑制が見られた。血液だけでなく感覚にも違いが出た例である。ただし、自己申告による摂取エネルギーには条件間の差がなかった。[15]

この結果は、ブルーベリー試験を打ち消すものではない。食品、対象、観察の時間が違い、何に差が出たかも違う。ブルーベリーではホルモンが変わっても主観的な食欲は変わらず、ペカンでは満腹感にも差があったが、自己申告の食事量まで少なくはならなかった。[7][15]

大切なのは、PYYが増えたからペカンが摂取量を減らした、と因果の鎖を完成させないことだ。食事条件を変えると複数のホルモンや感覚が一緒に変わる。PYYの変化だけを取り出して行動の原因と決めるのではなく、比較した食事全体の結果として読むのが妥当である。[15]

食事量の測り方にも目を向けたい。ペカン試験では、食後に実験室を出た後の感覚を質問票で追い、その日の食事を記録してもらった。そこで差がなかったのは自己申告の摂取エネルギーである。実験室で自由に食べられる食事を用意して測った結果と、同じ精度や場面の数字として扱わないことが必要だ。[15]

また、この研究では食後4時間にわたる採血が行われ、その後も自宅で食欲が評価された。血液の反応と、自宅で感じる食欲を追った時間帯は完全には重ならない。朝食の直後、仕事の合間、帰宅後の食欲を、全部「食後」のひと言で片付けると、どの変化が確かめられたのかが曖昧になる。[15]

ブルーベリー試験の主観的な食欲の観察は食後3時間で、採血によるホルモンの評価は150分までだった。こちらで食欲が変わらなかったことと、ペカン試験のその後の自宅での食欲に差があったことは、同じ時間を同じ方法で比べた勝ち負けではない。研究同士を読む時には、観察の窓の違いも結果の横に置いておきたい。[7][15]

日常でも、昼食の満足感を知りたいのか、夕方の空腹を知りたいのかで問いは変わる。研究の対象と時間を先に確かめれば、「この食品ならずっとお腹が空かない」といった期待を背負わせずに済む。食欲をただ消すためではなく、自分が知りたい場面に近い結果を探すために、PYYという言葉を使いたい。[7][15]

数字で読む食後のホルモンと食欲

24人:ブルーベリー飲料の試験。PYYなどが上がっても、主観的な食欲は変わらなかった。[7]

31人:ペカンの試験を完了した人数。満腹感には差があり、自己申告の摂取エネルギーには差がなかった。[15]

10人:食品の細胞構造を変えたひよこ豆の予備的試験。栄養をそろえて消化管の反応を比べた。[13]

約41kcal:活動的な女性のコラーゲンペプチド試験で、次の食事の摂取量に見られた差。PYYの条件間差はなかった。[12]

14日:超加工食品を多く含む食事の試験の各介入期間。食後の満腹関連ホルモン反応に有意な差はなかった。[1]

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