心肺機能を鍛えるローイングは走力にも移る?漕いだ距離と走る成果を分けて読む

ジムでローイングの記録が伸びたとき、ランニングの力も伸びたと考えてよいのか。競技者の技術練習、漕ぐ頻度と効率、異種目を組み合わせる指導の研究から、漕ぐ成績と走る成果を分ける見方を整理する。走る練習の代わりに使いたい人が、記録を比べる前に確かめたい条件も考える。

シートを滑らせ、ハンドルを戻す。今日は雨で走れず、ジムで漕ぐことにした。ローイングマシンの距離が前より伸びれば、次のランニングにも期待したくなる。だが、漕ぐ成績には持久力だけでなく、動きをつなぐ技術も関わる。漕いだ距離の伸びを、そのまま走力の伸びに置き換える読み方は避けたい。[6][16]

答えの芯は、練習した種目の成果と、別の種目で確かめた成果を分けることである。訓練された漕手を対象にした無作為化比較試験では、動作への助言を取り入れた練習後、最大努力で漕ぐ課題の距離が伸びた。これはローイングでの成果であり、ランニングのタイムに付ける改善率ではない。競技経験のある集団の結果なので、18〜39歳の一般女性へ同じ効果をそのまま当てはめることはできない。[6]

既存記事「心肺機能はサイクリングから走る力へ移る?練習を置き換える前に読む比較研究」には、自転車と走る力の比較を譲る。こちらでは、ローイングの数字が上がった日に、その数字で何を判断できるかを考える。腕から引くかというフォームそのものの問いも既存記事「有酸素運動のローイングは腕から引く?脚と上体の順序で変わる効率を読む」に譲り、技術の変化を走力と取り違えないための読み方に絞る。

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漕ぐ距離の伸びには、動きを覚えた成果も入る

ローイングの成績を見るとき、「息が上がったから心肺機能だけの検査だ」と考えない方がよい。エリート女性漕手を調べた研究は、強さや持久力に加えて、漕ぐ一連の動きで力を有効に伝える技術の重要性を扱っている。18〜39歳の一般女性の上達をそのまま予測する研究ではなく、競技者の技術を調べた知見である。体を動かした結果を読むには、運動を続ける力と、その種目で力を使う方法の両方に目を向ける必要がある。[16]

具体的なのが、訓練された漕手30人を対象とした無作為化比較試験である。最初に5分間の最大努力のローイングを行い、その後、動作についての即時のフィードバックを受ける群と対照群に分かれた。フィードバックとは、膝・背中・肘の動く順序について、その場で情報を返すことである。練習は漕ぐ頻度の高い条件と低い条件で、それぞれ3回行われた。訓練歴を前提とした試験なので、18〜39歳の一般女性にも同じ改善率が出るとは判断できない。[6]

再び最大努力で漕ぐ課題に取り組むと、フィードバック群の距離は低頻度条件で6±5%、高頻度条件で5±4%増加し、対照群には改善がなかった。ここで示されたのは、助言を伴う動作練習から、別の強度で漕ぐ課題への成果の移り方である。距離が伸びたという観察だけから、心肺機能が同じ割合で上がったと解釈する試験ではない。[6]

ジムの画面は、変化の理由までは表示しない。距離の隣に「今回は動作への慣れが含まれる」と小さく注釈を出してくれるわけではない。だから記録する側が、助言を受けた日、漕ぎ方を変えた日を添えておくとよい。これは数字を疑うためではなく、技術を覚えた成果も成果として扱うための整理である。少なくとも上の試験では、動作への働きかけと漕ぐ距離の改善が一緒に観察されている。[6]

この読み方は、初心者にも同じ改善率が出るという予測とは違う。対象はすでに訓練された漕手であり、日頃運動しない人の初回体験ではない。平均値の前後にある「±」も見落としたくない。全員が同じ割合だけ伸びたという意味で数値を受け取らず、対象と課題が決まった試験の結果として置いておくのがよい。[6]

エリート女性漕手20人の研究では、負荷を段階的に上げるローイングの検査中に、ハンドルや足を置く部分の力と、足首、膝、股関節、腰から骨盤の動きが測定された。解析では、股関節の動きが足の力の出力を予測する重要な要素となり、膝や腰・骨盤の動きは、足から加える力の水平方向の成分と関係していた。18〜39歳の一般女性にこの力と動きの関係がそのまま当てはまるかは、別に確かめる必要がある。持久力を測りたい運動でも、力を伝える仕組みが成績に関わることを考える具体例である。[16]

ただし、これは動きの特徴と力の関係を調べた研究である。特定の姿勢を教えた群と教えない群で、走力の改善を比べた試験としては扱わない。実際の動作を見ずに、股関節だけ大きく動かせばよいという指示にも変換しない。読者がここから持ち帰れるのは、マシンに出た結果を身体能力だけに帰属させず、そのときの動きも含めて見るという姿勢である。[16]

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「移る」とは、どの課題からどの課題へなのか

先の試験では、高い漕ぐ頻度で練習した群の方が、最大努力の課題でも変更した動作を保ちやすかった。著者らは、学ぶときと成果を確かめるときの条件が似ている方が、動作パターンの移行がよいという特異性を示している。特異性とは、ここでは練習で覚えた動きが、どの条件でも同じように現れるとは限らないということである。[6]

この結果を読む際は、「移行」という単語の行き先を省かないことが大切だ。低い頻度で漕ぐ練習から最大努力で漕ぐ課題への移行と、ローイングからランニングへの移行は、別の比較である。同じ言葉を使えても、後者には走るという別の成果の確認が必要になる。ローイングで動作が定着したという結果を、走る動作が改善したという結果へ書き替えることはできない。[6]

別種目への移行を扱った事例として、ランニング、ローイング、カヤックからクロスカントリースキーへ転向した中国の夏季持久系競技者23人についての研究がある。6か月のプログラムに関わったノルウェーの指導者7人への聞き取りで、選手は検査による成績の発達から、高反応9人、中程度3人、低反応11人に分けられていた。競技転向の事例であり、18〜39歳の一般女性の運動の置き換えにそのまま当てはめる根拠にはならない。[3]

指導者の評価では、大きく発達した選手の生理的能力と技術の向上は、高い意欲や、発達過程での困難に対処する能力と関連していた。これは指導者への質的研究であり、意欲だけを変えれば成績が上がるという因果の証明ではない。しかも行き先はスキーである。ローイング経験のある人なら誰でも走る力へ同じように移せる、という表にはしない。[3]

それでも、この研究が示す移行の見方には意味がある。別種目へ進む過程では、身体能力だけでなく、技術の発達や練習と回復の習慣まで評価の対象になる。種目名を取り替えるだけで完了する話として扱わない姿勢だ。日常の運動でも、漕ぐことを選んだ目的と、走る場面で確かめたいことを、別々の言葉で書いておくと判断が混ざりにくい。[3]

同じマシンの数字も、条件を変えれば意味が変わる

漕ぐ頻度を上げて出力が増えたときにも、その変化を持久力だけの成果にしない。高水準の漕手24人が、毎分20、28、34回の頻度で、それぞれ1分間の最大強度の課題を行った研究がある。高い頻度では、引く局面の前半でハンドルの出力が増え、脚・体幹・腕の出力や技術にも変化が認められた。高水準の競技者の結果なので、18〜39歳の一般女性にも同じ変化が出るかは別の問いである。[9]

これは頻度の異なる条件を比較した結果である。「長く練習して体力が育った」前後比較とは区別しよう。今日の画面のワット数が上がっていても、今日は漕ぐ頻度も高くしたのなら、条件の違いを含む数値として読む。同じ人が同じマシンに座っているだけで、比較の条件まで同じになるわけではない。[9]

一方、十分に訓練された女性漕手17人の研究では、毎分28、34、40回の条件を無作為な順で比較している。回転する装置へ伝える出力を一定に保ち、最大努力未満の強度で漕いだところ、総効率には有意差がなかった。女性の研究でも訓練歴が異なるため、18〜39歳の一般女性に同じ結果をそのまま当てはめることはできない。総効率は、使った代謝エネルギーに対して、外へどれだけ仕事を伝えたかを見る指標である。[19]

高い頻度で出力が増えた研究と、頻度を変えても総効率が変わらなかった研究は、単純な矛盾ではない。前者は最大強度での出力や動作、後者は装置へ伝える出力をそろえたときの効率を見ている。どちらも「頻度を上げれば走力が上がる」と読むための結果ではない。測ったものが違えば、数字に返してよい答えも違う。[9][19]

さらに、持久系スポーツの出力を整理した力学的な論考は、体内の代謝の入力と、外へ伝わる機械的な出力を正確に対応させることの難しさを述べている。筋の収縮の仕方や、弾性エネルギーの蓄積と回収が関係するためである。ローイングの画面の出力と、ランニングで動き続ける能力を、単一のものさしに急いで載せない理由になる。[5]

数字で読むローイングの成果と比較条件

30人:動作フィードバックの試験の対象。訓練された漕手である。[6]

6±5%:低い頻度で助言を受けた群の、最大努力のローイングでの距離の増加。[6]

5±4%:高い頻度で助言を受けた群の、同じ漕ぐ課題での距離の増加。[6]

17人:頻度を変えて総効率を比較した研究の、訓練された女性漕手の人数。[19]

毎分28・34・40回:出力を一定にした総効率の比較条件。一般向けの推奨頻度ではない。[19]

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