
映像が楽しいことと、相手に勝つことは別の問い
仮想空間で行う運動は、すべてが対戦ではない。映像の楽しさや没入感を調べた研究を、そのまま競争相手の効果として数えないことが大切だ。2024年の系統的レビューは、没入型の仮想現実を使う身体活動について20研究、計798人を整理し、楽しさの増加やきつさの低下などの傾向を報告した。[8]
ただし研究の質は、弱いものが9本、中程度が10本、強いものが1本だった。系統的レビューという形式であることだけで、結果が確かなものに変わるわけではない。このレビューは仮想空間を使う運動全体の背景を知るには役立つが、対戦相手を表示する機能だけの効果を示す資料としては扱いを分けたい。[8]
健康な大学生60人を対象とした無作為化された順序での比較試験では、通常の自転車運動と仮想現実を伴う自転車運動を、それぞれ10分間行った。どちらも安静時より心拍数などが上がり、運動条件間では心血管系の反応に有意な差がなかった。一方、仮想現実を伴う方が楽しさと自己効力感は高かった。[1]
自己効力感は、自分にできそうだという感覚を指す。この試験の心理面の効果は小から中程度だった。運動としての反応が同程度でも、経験の受け止め方が異なりうるという結果である。画面の魅力を考えるときには役立つが、それで相手に勝てる、競争が苦手な人にも効く、とまでは読み替えられない。[1]
楽しい映像なら出力も上がるという見方には、反対向きの結果もある。健康で運動習慣のない成人21人(男性10人、女性11人、平均年齢22.9歳)を対象に、無作為化した順序でローイング運動を比較した試験では、仮想現実を使う方が1500mの終了まで約3%、時間にして13.6秒遅かった。注意は体の外へ向きやすくなったが、運動成績は良くならなかった。若い女性も含むが、18〜39歳の女性だけの効果としてそのまま当てはめることはできない。[6]
こちらは自転車の対戦試験ではないため、競争の効果を否定する証拠ではない。ただ、「画面に引き込まれるほど頑張れる」という広い主張には歯止めをかける。映像が運動の目標から注意をそらす可能性も含め、種目と課題に合う使い方を考える必要がある。[6]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
その日の好記録を、最短の体力向上に変換しない
帰りの中央線で昨日の走行記録を開く。対戦モードの日だけ速いと、「もう体力がついた」と思いたくなる。だが、ここまでの自転車の競争研究は、同じ参加者に異なる走行条件を設けた比較である。相手に反応して発揮された成績と、練習期間を経て変化した能力は、研究の問いが異なる。[5][19]
長期間の運動を調べた研究としては、女性14人を含む平均年齢24.3歳の32人を仮想現実と抵抗運動を組み合わせた群と、自分で運動する対照群に無作為に割り付け、12週間比べた試験がある。仮想現実の群では、筋力や筋持久力、最大酸素摂取量などの改善が対照群より大きかった。若い女性を含む男女混合の結果であり、18〜39歳の女性に同じ改善幅を見込めるかは別の問いである。[10]
体重当たりの最大酸素摂取量の変化は、仮想現実の群で3.28mL/min/kg、対照群で0.89mL/min/kgだった。ただし、これは抵抗を加える仕組みを含む運動プログラム同士の比較である。画面上に相手を表示するかどうかだけを変えた試験ではない。長期の良い結果があっても、その差を競争相手だけの手柄にはできない。[10]
この試験では週3回の運動を12週間行い、仮想現実の群は各回の時間が14分短かった。短時間で行えたという点は興味深いが、対戦モードを入れれば誰でも同じように時間を節約できるという数字ではない。対象、機器の抵抗の仕組み、対照群の運動を含めた組み合わせの結果として読む数字である。[10]
既存記事「VR運動とダイエットの科学 仮想の対戦相手で変わる頑張りと体脂肪の距離」には体脂肪との関係を譲る。ここで残したい問いは、「その日の出力を比べる条件がそろっていたか」だ。まず条件を確かめることが、画面の機能への期待を、自分の運動記録と結び直す作業になる。[5][19]
日々の記録には、単独か対戦か、相手の基準、設定について受けた説明、終了後のきつさを添える。これは研究で結果が違った条件を見失わないための整理である。[19] 同じコース名であっても、相手の設定を変えた日と変えていない日を、同じ測定の繰り返しとして扱わない方がよい。
長期試験の数字を見るときには、変化量と到達値も分けたい。3.28mL/min/kgは、仮想現実の群の最大酸素摂取量そのものではなく、開始時から終了時までの変化である。[10] 自分の測定値と並べて「研究の参加者より高い、低い」と比べる数字ではない。画面の結果を読むときと同様、何の値を表示しているかを確かめるところから始まる。
また、この長期試験の参加者は32人で、女性14人を含み、平均年齢は24.3歳だった。[10] 男性自転車選手だけの走行試験と対象が異なるため、両方の結果をつないで「競争で出力が増え、その分だけ体力も伸びた」という因果の一本道にはできない。運動プログラムの成果と、対戦条件で発揮された成績を、それぞれの研究に戻して受け取る必要がある。[5][19]

よくある誤解
「相手が見えれば誰でも速くなる」という理解は広すぎる。男性11人の試験では対戦条件で記録が改善したが、男性12人の別の研究では、強い相手の設定を正確に伝えた条件だけで出力が高かった。研究間で課題も条件も違う。結果を競争好きかどうかという性格の話に押し込めず、何を比べたのかを確認したい。[5][19]
距離を決めてできるだけ早く走る試験と、時間を決めて走る試験では、記録の出口も違う。前者は4kmの成績、後者は20分間の出力を見ている。[5][19] アプリの表示で「速さ」と「出力」が並んでいても、別々の課題から出た結果を同じ効果量として足せない。追いかければ何割伸びる、と共通の数字を作ることも避けたい。
「楽しいなら運動が軽くなっている」という理解も、測定結果と照らし合わせたい。大学生の試験では楽しさが高まっても通常の自転車運動と心血管系の反応は同程度だった。[1] 一方、競争設定によって出力ときつさがともに高くなる結果もある。[19] 楽しさ、きつさ、出力は、同じ目盛りの言い換えではない。
「差がなかったのだから画面は無意味だ」という結論も急ぎすぎる。心拍などに差がなくても楽しさが違う場合があり、出力が伸びなくても映像を使う経験そのものには好みがある。[1][6] 今日の目的が走行成績なのか、運動中の楽しさなのかを決めてから、見る指標を選ぶ方が結果に沿っている。
逆に、楽しかったという感想を、翌月も通えるという予測に置き換えない。10分間の比較で高まった楽しさや自己効力感は、その場で測った結果である。[1] その日の経験を大事にすることと、継続を確認することは両立する。画面の相手への勝利を、続けられる人の資格にする必要はない。
今日からできること
- まず画面を使う間も、自転車の抵抗は普段使っている設定に据え置く。仮想現実の有無をそれぞれ10分間比べた大学生の試験を参考に、普段からその時間を無理なくこげる人なら、画面に慣れる10分間を試行の区切りにできる。これは対戦の推奨時間を検証した結果ではなく、使い心地を見るための案である。[1]
- 走り始める前に相手の設定画面を開き、選べるなら過去の自分を再現する相手を選ぶ。相手の基準をメモしてから開始し、試行中は相手の強さと自転車の抵抗を変えずに走る。男性12人の研究は、基準を再現する相手と強めた相手を分けて比べている。[19]
- 終了後は走行時間、出力、きつさの感想を記録する。次に単独で走る際も同じ時間と抵抗設定を選び、対戦のときとの違いを見る。男性11人の4km試験でも、記録の改善と序盤のきつさの増加が併存した。速さだけを次回の負荷を上げる合図にせず、きつさも振り返る。[5]
- 相手に追いつくために設定を上げたくなったら、その日は据え置いて終え、次回の設定を運動後に考える。研究の2%は相手の出力を変えた実験条件であり、自転車の抵抗を毎回増やす指示ではない。相手の設定と、自分が踏む負荷を別々に操作する。[19]
- 映像に気を取られて運動の目的を見失うなら、画面を通常表示に戻して走る。成人21人のローイング試験では、仮想現実で注意が外に向いた一方、終了までの時間は長くなった。順位を追うか、自分のペースを見るかを、その日の目的に合わせて選ぶ。[6]

オンザショア立川店で、次の予定を決める
画面の順位を追う日にも、運動する場所と時間を選ぶという入口がある。オンザショア立川店は、JR立川駅北口から徒歩1分の溶岩ホットヨガスタジオである。営業時間は8:00〜23:30、年中無休。仕事帰りか休日か、自分の生活のどこに運動を置くかを考える場所として案内したい。
所在地は東京都立川市曙町2-14-10 エトロワビル3F。溶岩プレートを敷いたスタジオのホットヨガに加え、常温のヨガやピラティス、女性専用のキックボクササイズ、ボクササイズ、HIIT、パーソナルトレーニングがある。ヨガだけで25種類以上のレッスンを用意している。種目と時間を照らし合わせ、続けるための予定を組むという使い方ができる。
妊娠中は溶岩ホットヨガには参加できず、常温のマタニティヨガがある。医師から運動を止められている方は利用できない。参加条件を確かめてから、生活に合う種目を選びたい。
ヨガの体験レッスンは税込1,980円。60分のレッスンと、バスタオル2枚、フェイスタオル1枚、ヨガマットのレンタルを含む。
内容は店舗の案内、費用は料金ページで確認できる。体験の予約を通じて、運動する予定を具体的な日時に置いてみたい。
参考文献
[1] Psychophysiological effects of traditional cycling, virtual reality-enhanced cycling, and passive virtual reality exposure in young adults: A controlled within-subject study — Alhammad SA, Alhozaimi AY, Kateeb AA, Alghamdi AS, Algabbani MF, Algarni FS, Alr, 2026, PloS one. DOI: 10.1371/journal.pone.0343812
[5] Caffeine ingestion increases endurance performance of trained male cyclists when riding against a virtual opponent without altering muscle fatigue — Tomazini F, Santos-Mariano AC, Dos S Andrade VF, Coelho DB, Bertuzzi R, Pereira , 2022, European journal of applied physiology. DOI: 10.1007/s00421-022-04969-5
[6] Immersive Virtual Reality Decreases Work Rate and Manipulates Attentional Focus During Self-Regulated Vigorous Exercise — Moore AR, Butler BAS., 2024, Research quarterly for exercise and sport. DOI: 10.1080/02701367.2024.2356893
[8] Enhancing Physical Activity with Immersive Virtual Reality: A Systematic Review — Mocco A, Valmaggia L, Bernardi L, Alfieri M, Tarricone I., 2024, Cyberpsychology, behavior and social networking. DOI: 10.1089/cyber.2023.0394
[10] The Efficacy of an Immersive Virtual Reality Exergame Incorporating an Adaptive Cable Resistance System on Fitness and Cardiometabolic Measures: A 12-Week Randomized Controlled Trial — Mologne MS, Hu J, Carrillo E, Gomez D, Yamamoto T, Lu S, Browne JD, Dolezal BA., 2022, International journal of environmental research and public health. DOI: 10.3390/ijerph20010210
[19] Performance, cardioventilatory and perceptual responses to perceived opponent ability during head-to-head cycling competition — Matta G, Edwards A, Roelands B, Hettinga F, Hurst P., 2026, Experimental physiology. DOI: 10.1113/ep093246
この記事の情報は2026年10月時点のものです。個別の健康状態については医師にご相談ください。
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