運動後のおにぎりは冷たい方がよい?消化されにくいでんぷんと燃料回復を読む

男性自転車選手の試験では、難消化性でんぷんの摂取後は筋肉の燃料の再補充量が少なかった一方、翌日の短時間の運動成績に差はなかった。糖質溶液を使ったこの結果と、加工したでんぷんの消化実験を区別し、冷やご飯の温度だけで回復や体重への影響を判断できない理由を読む。

運動を終え、夕食のおにぎりを皿に置く。「温めると太りやすいのだろうか」と考えて、差し出しかけた手を引く。食べたいのは夕食なのに、頭の中では米粒の審査が始まっている。

運動後だから冷たい方がよい、とは決められない。消化されにくいでんぷんを用いた男性自転車選手の試験では、筋肉の燃料の回復量はほかの糖質より少なかったが、翌日の短時間の自転車運動の成績には差がなかった。燃料の蓄えと動ける成績は、別々に読む必要がある。男性選手の結果を18〜39歳の女性の日常的な運動後にそのまま当てはめるには、対象と運動条件が異なる。[6]

この結果は、冷たいおにぎりで太りにくくなるという判定でも、温かいご飯を食べるべきだという温度指定でもない。試験で使ったのは糖質溶液である。今夜の主食を考えるなら、食べる温度だけでなく、何を回復させたいのかを先に決めたい。[6]

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冷たさより先に、でんぷんの行き先を考える

ご飯の話に登場するレジスタントスターチとは、平均的に大腸まで届くでんぷんと、その分解産物を指す。小腸で完全には消化・吸収されず先へ進む部分であり、「冷たい炭水化物」そのものの別名ではない。食品のでんぷんの消化され方には、でんぷん自体の構造と、それを取り囲む食品の構造が関わる。[1]

この定義を検討した研究は、回腸ストーマを持つ人を対象にしている。回腸ストーマとは、小腸の末端から内容物を体外へ出すための出口である。試験では小麦、ジャガイモ、バナナなどの粉を使ったビスケットを食べてもらい、出口から回収したでんぷんと、実験室で予測した量を比べた。参加者は9人であり、米飯の温度を比べた研究ではない。回腸ストーマのある人での測定なので、18〜39歳の女性一般に同じ回収量を当てはめることはできない。[1]

実験室で測定した難消化性でんぷんの摂取量は、試験用ビスケットで1日8.5〜15.0gだった。回収量は平均すると予測値に近かったが、個人間のばらつきは大きかった。同じ食品でも、吸収を免れる量には個人差がある。この個人差も、食品の成分値をそのまま自分の体内の数字にしない理由になる。[1]

ここで大切なのは、でんぷんを「吸収されるか、消えるか」に分けないことだ。大腸まで届いた難消化性でんぷんには、腸内細菌による発酵という別の行き先がある。レビューでは、その発酵で生じる短鎖脂肪酸が大腸機能への作用に関わると整理されている。短鎖脂肪酸とは、腸内細菌の発酵で作られる脂肪酸の一群である。[16]

したがって、消化されにくいという性質と、運動後の筋肉へ燃料が戻りやすいという性質を同じ意味では使えない。小腸を通る段階を調べた研究、大腸での発酵を調べた研究、筋肉の蓄えを測った研究は、それぞれ食べ物の違う行き先を見ている。おにぎりを選ぶ場面でも、この順路を頭の中で分けると話が整理しやすい。[1][6][16]

既存記事「ダイエット中の炭水化物は冷やすと変わる?運動日の主食とでんぷんを読む」には主食の冷却そのものの話を譲り、ここでは消化を抑える性質が運動後の燃料回復にも有利なのかを考える。また、「運動後の呼吸法はゆっくりがよい?心拍が戻る速さと筋肉の回復を分けて読む」とも異なり、食べた糖質から戻る蓄えに焦点を絞る。

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筋肉の燃料を戻す試験では何を食べたのか

グリコーゲンとは、糖を蓄える形である。運動後の食事を扱った試験では、筋肉に蓄えられたグリコーゲンを測定して、糖質の構造によって回復量が変わるかを調べた。対象は平均年齢22歳の男性自転車選手8人だった。18〜39歳の女性のヨガ後に同じ回復量が得られるかは、この男性選手の比較とは別の問いである。[6]

参加者は、最大酸素摂取量の75%に相当する強さで60分間自転車をこぎ、その後に強い短時間運動を繰り返した。筋肉の燃料を減らすことを目的とした運動である。最大酸素摂取量は運動中に取り込める酸素量の最大値を表す指標であり、ここではその値を基準に運動強度が設定された。[6]

運動後12時間で摂った食事は約3000kcalで、エネルギー比率は糖質65%、脂質20%、たんぱく質15%だった。糖質は、ブドウ糖、糖がつながったマルトデキストリン、アミロペクチンだけのでんぷん、アミロースだけの難消化性でんぷんという、異なる溶液から供給された。アミロースとアミロペクチンは、でんぷんを構成する成分である。[6]

比較の中心は食べ物の温度ではなく、糖質の構造である。おにぎりを電子レンジへ入れるか迷う場面と、研究の比較条件をそろえて考えてはいけない。同じ糖質の話でも、「材料を変えた」と「同じ食品の温度を変えた」では介入が違う。研究で使った溶液を、普段の米飯全体と同じものとして扱うことはできない。[6]

さらに、運動直後と24時間後には太ももの筋肉の一部を採取し、グリコーゲン濃度を測っている。本人の「回復した気がする」という感想だけで判定した研究ではない。食事内容の比較と筋肉の測定が結びついている点が、この問いに対して重要である。[6]

ただし、研究用の食事量を読者の夕食量へ移す必要はない。約3000kcalという値は、強い自転車運動を行った選手の試験条件である。「運動後はこの量を食べる」という目安ではない。研究条件として読む数字と、自分の行動の目標にする数字には区別が要る。[6]

蓄えの差と、翌日の成績の差は一致しなかった

運動から24時間後の筋グリコーゲンの増加量は、難消化性でんぷんでは90.8、ブドウ糖では197.7だった。単位はいずれも乾燥筋重量1kg当たりのミリモルである。マルトデキストリンでは136.7、アミロペクチンのでんぷんでは171.8だった。難消化性でんぷんの条件は、ほかの条件より増加量が有意に小さかった。[6]

ここでの「乾燥筋重量1kg当たり」は、筋肉中の濃度を比べる研究上の表し方である。おにぎりを何g減らすか、何個足すかという単位には換算できない。筋肉を採取して得た濃度の差を、茶碗の量の差にそのまま読み替えないことが大切だ。[6]

一方、同じ参加者が翌日に行った30分間の自転車タイムトライアルでは、総仕事量に条件間の差がなかった。タイムトライアル後の血中乳酸濃度も差がなかった。筋肉の燃料の回復量に差があったことと、そのテストの成績に差がなかったことは、両方ともこの研究の結果である。[6]

この組み合わせは「筋肉の蓄えが少なくても、いつでも問題ない」という意味にはならない。確認されたのは、その参加者が、その食事条件の後に行った短時間のテストである。違う運動時間や競技、日常生活の疲れやすさまで同じ結果になると広げるべきではない。[6]

逆に、「難消化性でんぷんを食べると次の日は動けなくなる」と言うのも結果に反する。燃料回復には不利な差が見られたが、測定した運動成績の低下は確認されなかった。体内の指標を大切にしながら、実際に何ができたかも同時に見る。その読み方を残しておきたい。[6]

数字にはばらつきも添えられている。筋グリコーゲン増加量は、難消化性でんぷんで90.8±12.8、ブドウ糖で197.7±31.6、マルトデキストリンで136.7±24.5、アミロペクチンで171.8±37.1だった。単位は同じく乾燥筋重量1kg当たりのミリモルである。中心の数字だけでなく、各条件の値に幅があることも押さえておきたい。[6]

研究での比較は、運動直後の蓄えが条件間で同程度だったことを確認した上で行われている。出発点が大きく違う食事を並べたのではなく、燃料を減らした後に何を摂るかを比較した設計である。そのため、結果は糖質構造と回復量を考える手掛かりになるが、冷たい食品を食べる人と温かい食品を食べる人の生活全体を比べた結果ではない。[6]

例えば運動の翌日にまた自転車をこぐ人と、次は予定が空いた日にヨガへ行く人では、知りたい問いも異なるはずだ。前者は次の運動へ戻す蓄え、後者は食事を生活に収める方法に関心が向くだろう。研究が直接測ったのは、決められた運動後の筋肉と翌日の自転車の仕事量である。自分の場面を先に言葉にしてから結果を読むと、試験用の食事をそのまままねる必要がないと分かる。[6]

数字で読むでんぷんと運動後の蓄え

8人:糖質の構造と筋グリコーゲン回復を比較した男性自転車選手の人数である。[6]

24時間:燃料を減らした運動後、筋肉の蓄えを再測定した時点である。[6]

90.8対197.7:難消化性でんぷんとブドウ糖での増加量。単位は乾燥筋重量1kg当たりのミリモルである。[6]

30分間:翌日の自転車テストの長さ。この総仕事量には条件間の差がなかった。[6]

7人:トウモロコシ由来のでんぷんの小腸での消化を調べた健康な成人の人数である。[5]

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