睡眠不足への強さは遺伝で決まる?眠気と反応の個人差からリスクを読み直す

同じ寝不足でも平気な人とつらい人がいる。その差は遺伝だけで決まるのか。繰り返す断眠試験と遺伝子の研究をもとに、眠気、注意の抜け、反応速度の違いを読み分ける。運動前に友人と比べるときの落とし穴と、自分の変化を記録して予定を組み直す際の考え方まで確かめる。

寝不足の翌朝、友人は元気に話しながら身支度を済ませる。自分はレッスンの開始時刻を確かめるだけでひと苦労。同じ寝不足なのに違うのは、気合いの差なのだろうか。

寝不足による注意力や認知機能の低下には、人によって繰り返し現れる個人差がある。ただし「寝不足に強い」という性質は単純ではなく、眠気、注意を保つ力、別の認知課題での成績は分けて読む必要がある。[1][3]

遺伝的な要因も研究されているが、特定の遺伝子の型から、連日の短い睡眠に耐えられる人を判定することはできない。[15][20] 本記事では、既存の「心肺機能は遺伝で伸び方が決まる?家族で似る体力と訓練後の変化を分けて読む」に体力の遺伝の話を譲り、睡眠を削った際の反応の個人差に焦点を置く。

また、「睡眠不足の運動は合図に反応しにくい?眠気と動き出す速さの違いを研究で読む」には反応速度への影響の話を譲る。ここで問うのは、反応の個人差が同じ人で繰り返すのか、遺伝子で説明できるのかである。

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寝不足への強さは、同じ人で繰り返すのか

ある日の失敗だけなら、忙しさや直前の睡眠のせいかもしれない。そこで重要になるのが、同じ人に条件を変えながら再び参加してもらう研究である。毎回別の人を比べる方法より、その人に繰り返す傾向なのかを確かめやすい。

健康な成人21人、年齢21〜38歳を対象とした実験では、少なくとも2週間の間隔を置いて3回、実験室で36時間の断眠を行った。断眠とは、眠らずに過ごす条件を指す。参加者は起きている間、2時間ごとに認知機能などの検査を受けた。[3] 対象は健康な成人であり、18〜39歳の女性だけに同じ反応の傾向が成り立つかは、この結果だけでは判断できない。

さらに研究者は、実験前の睡眠履歴も操作した。事前の週と実験室での基準夜に、睡眠を1日6時間に制限する条件と、床に入る時間を1日12時間に延ばす条件を設け、順番を無作為に入れ替えて比較した。過去にどれだけ眠ったかという影響と、その人に繰り返す反応を切り分けようとした設計である。[3]

結果は、睡眠不足による機能低下に大きな個人差があり、その差は同じ人の中で安定していた。実験前の睡眠履歴の違いだけでは説明できず、もともとの検査成績や調べたほかの予測因子でも説明されなかった。[3] 「普段から仕事が速いから寝不足にも強い」と、そのまま置き換えることはできない。

ただし、ここでいう安定性は、実験した条件の中での性質である。生涯の耐性を保証する身分証にはならない。この研究が示したのは、同じ人の反応には繰り返す傾向があり、単に直前の寝方の違いだけで片づけられないという点だ。[3]

レッスン前に「友人も寝不足だから自分も同じように動ける」と考える場面に、この結果は別の見方を与える。他人と睡眠時間をそろえても、注意力の状態には個人差が残る。[1][3] 比べる相手を友人から普段の自分に戻すことが、この記事からの実用上の提案である。

実験前の眠り方をそろえたり、条件を入れ替えたりするのは、「寝不足」という言葉の内側にも違いがあるためだ。研究では睡眠を制限する条件と床に入る時間を延ばす条件を設け、順番も調整した。[3] 日常の会話で「自分も寝ていない」と言うときには、その前までの生活にも違いが含まれる。だから、知人同士の印象の比較と、管理された実験での個人差は区別して読む必要がある。

また、反応が安定しているという結論は、毎回まったく同じ得点だったという意味ではない。睡眠履歴を操作した実験でも、それを越えて個人の違いが認められたという話である。[3] 寝不足への影響をすべて性格に帰す読み方も、すべて昨日の睡眠時間だけに帰す読み方も、この比較を十分には表していない。

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眠いことと、反応が遅れることは別の物差しだ

研究で扱う持続的注意とは、刺激が来るのを待ちながら注意を保ち、必要なときに反応する力である。睡眠不足の研究では、合図に反応する課題で調べられる。[1] 日常なら、説明を聞き続けたり、動作の合図を待ったりする場面を思い浮かべると理解しやすい。ただし検査の得点を、そのままヨガの上手さと読み替えてはいけない。

先ほどの成人21人の実験でも、個人差は単一のまとまりではなかった。自分で評価する眠気・疲労・気分、認知処理能力、持続的注意で測った行動上の覚醒という、異なる側面に分かれていた。[3] 眠そうな顔をしているかどうかだけでは、研究で測る反応の全体を表せない。

レビューでも、睡眠不足に対する持続的注意の弱さは、注意の制御など別の認知過程の弱さと分かれうると整理されている。さらに、課題を続けるにつれて反応のばらつきが増える現象は、睡眠不足で強まる。[1] 最初の合図に反応できたことと、最後まで反応の正確さを保つことは、区別して評価される。

平均すると速い人でも、ときどき大きく反応が遅れるなら、その遅れも別に数えたい。逆に、速度だけを見て「今日は遅い」と評価しても、注意の抜けの程度も確認する必要が出てくる。研究でも、どの物差しを採用するかによって、寝不足に強い人の分類は変わりうる。[11]

日常への応用としては、「眠気がある」「説明を途中で聞き落とした」「合図を取り違えた」を、同じ言葉に押し込めず残しておく方法が考えられる。これは診断用の検査ではない。何を見て今日の状態を判断したのかを明確にするための記録だ。研究で違う側面として扱われるものを、生活でも区別して眺めるのである。[1][3]

たとえば、動作を始める前の説明では、聞けたつもりだったのに順番が曖昧だった、と振り返ることがある。その場面を「体力がない」のひと言で終えるより、説明を保つことと動作を実行することを分けて考えたい。ただし、生活の失敗から原因を睡眠不足と確定することはできない。ここでの記録は原因の診断ではなく、状態を言葉にする手段だ。認知機能の側面を分けて扱う研究は、その観察の視点を与えてくれる。[1][3]

徹夜への反応は、短い睡眠が続く場合にも似るのか

徹夜した日の話と、毎晩少しずつ睡眠を削る生活は、同じ条件ではない。ひと晩の頑張りを思い出して「忙しい週も大丈夫」と考える前に、両方を比べた実験を見たい。

健康な成人19人、18〜39歳を対象とした試験では、63時間起き続ける条件と、床に入る時間を毎晩3時間として7晩過ごす条件を、順番を入れ替えて比較した。参加者には男性11人、女性8人が含まれ、両条件の前には実験室で毎晩10時間床に入る期間が設けられた。[17] 18〜39歳の女性も含むが男女を合わせた結果なので、女性だけに同じ数値をそのまま当てはめることはできない。

徹夜条件で認知課題への影響が大きかった人は、短い睡眠が続く条件でも影響が大きい傾向があった。持続的注意の課題で注意の抜けを数えた指標の級内相関係数は0.89、反応速度の指標は0.86だった。[17] 級内相関係数は、ここでは異なる睡眠不足条件をまたいだ個人差の一貫性を見るための数値である。

ただし、この値を「89%が遺伝で決まる」と読むのは誤りだ。遺伝率を測った結果ではなく、実験した条件間の反応の対応を示している。[17] 数字の見た目が似ていても、答えている問いが違う。遺伝の話に持ち込む前に、何と何を比べた数値なのかを戻って確認したい。

この試験では、作業記憶や計算処理、活力や疲労などの気分にも、条件をまたいだ個人の反応の傾向が認められた。一方、検証したのは63時間の断眠と、毎晩3時間の就床を7晩続ける強い睡眠制限である。[17] 普段の軽い寝不足まで、同じ大きさの影響や同じ順位になると広げることはできない。

ここで得たいのは、過去につらかった経験を「たまたま」と切り捨てない視点だ。とはいえ、自分の耐性を調べるために睡眠を削る必要はない。実験条件は勧める生活例ではなく、反応を比較するために管理された条件である。予定を振り返るときは、眠れなかった夜が単発だったか、短い睡眠が続いていたかを分けて記すと、少なくとも比較の前提がはっきりする。

数字で読む寝不足への個人差

21人:同じ健康な成人に、断眠の実験へ繰り返し参加してもらった研究の人数である。[3]

3回:その研究で36時間の断眠を行い、反応の安定性を調べた回数だ。[3]

19人:徹夜と連日の睡眠制限への反応を同じ参加者で比較した試験の人数である。[17]

0.89:その比較における、持続的注意の抜けの級内相関係数。遺伝の割合ではない。[17]

5晩:PER3という遺伝子の型と、毎晩4時間の睡眠制限への反応を調べた試験の制限期間である。[20]

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