ダンベルを持ち比べると、同じ重さなのに握りにくいものがある。持ち手の太さと手の大きさ、握る力の向き、前腕の筋活動を調べた研究から、その違いを読む。太ければ負荷が増すとは限らない理由と、器具の実験を筋トレへ当てはめる際の注意点、購入前に確かめたい持ち心地を整理する。
売り場でダンベルを持ち比べる。重さの表示は同じなのに、片方は指が回りにくい。腕を動かす前から、道具選びが始まっている。
持ち手の太さで握る力の大きさや向きは変わる。握る力と太さの関係には、途中で山がある。円筒を最大の力で握った実験では、中間の太さを越えると力が小さくなった。[19] 道具選びでは、太さと自分の手の組み合わせを見ることが先になる。
ここで確かめるのは、ダンベルを動かす手前にある、手と持ち手の相性だ。前腕の筋活動や握力を測った結果は、腕の見た目を変える効果と区別して読む必要がある。[7][19] 持ち手を握っているだけなのに、測るものは案外多い。

握力は太さに比例せず、途中で山をつくる
製造施設から集めた男性29人、女性32人の計61人を対象に、太さの異なる円筒を最大努力で握らせた実験がある。直径は2.54、3.81、5.08、6.35、7.62 cmだった。平均では、2.54 cmから3.81 cmへ太くなると握る力が34.8 N増えたが、そこから7.62 cmまで太くすると103.8 N低下した。Nは力を表す単位である。[19] 男女混合の職場由来の集団での平均であり、18〜39歳の女性にそのまま当てはめるには、手の寸法や作業の違いを考慮する必要がある。
この結果が示すのは、細くするほど有利でも、太くするほど有利でもないという関係だ。対象者の平均では、途中まで増え、それを越えると減った。[19] 売り場のいちばん太い持ち手を、いちばん本格的な道具として選ぶ根拠にはならない。外見の迫力と、実際に出せる力は別の欄に置くほうがよい。
別の測定器の開発・評価研究でも、16人が円筒を最大努力で握ったとき、直径3.81、5.08、6.35、7.62 cmで平均の力はそれぞれ231、236、208、158 Nだった。標準偏差は順に67.7、72.9、72.5、45.7 Nで、参加者間にもばらつきがあった。[18] 平均が近い太さがある一方、太い側では小さな値となっている。
標準偏差とは、測定値の散らばりを表す値だ。この実験の平均値を、そのまま自分の手の能力表にしてはいけない。[18] 友人が持ちやすいと言った道具を借りても、指の収まりまで同じになるとは考えず、自分の手で確かめる出発点にしたい。
また、これらは円筒を最大限に握る課題である。[18][19] 自宅でダンベルを持ち、肘を曲げ伸ばしする課題に、その数値をそのまま割り当てることはできない。最大の握力を出せる太さを探すことと、予定した動きを落ち着いて続けられる器具を選ぶことは、目的が異なる。研究の数字は候補を絞る視点にはなるが、通販の寸法欄を読むだけで購入を決める公式にはならない。
例えば「太い持ち手では握力が小さかった」という結果を読んで、太い道具は楽だと考えるのも早い。測ったのは最大努力で発揮できた力であり、楽に保持できたかという評定ではない。[19] 力が小さいことと、負担感が小さいことを同じ意味にしない。それだけで、道具の説明文から受ける印象はずいぶん変わる。
力の方向まで記録した61人の実験では、最も細い円筒で、指先が手のひらに向かう方向の力が168.6 N、最も太い円筒では同じ方向の力が77.7 Nだった。左右の手を平均した値である。[19] 全体の力だけでなく、ある方向の成分も変わる。太さを変えることは、単に力の大きさと向きを同時に変える操作である。
ダンベル選びに持ち帰るなら、「同じ重さだから握りも同じはず」という前提を外すところまでが妥当だ。円筒の研究は手が出す力を測っており、持ち手の太さをダンベルの重さへ換算したものではない。[18][19] 握りにくさを重さの増加として計算せず、重さと持ち手を別々に確認する。片方の感覚が違ったとき、もう片方まで変わったことにはしない。
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
持ち手の直径は、手の大きさと組にして読む
円筒の太さだけを見ても、手との関係は決まらない。過去の実験データを再分析した研究では、直径38〜83 mmの円筒について、握力、表面を押す力、接触面積と、手の寸法との関係を調べている。持ち手の直径を手の長さで割った比は、握力のばらつきの62%、表面を押す力の57%、接触面積の71%を説明した。[15]
ここでいう説明率は、その割合だけ握力が上がったという意味ではない。参加者や条件の間で結果が違う理由を、直径と手の長さの比がどの程度捉えたかを示す値だ。[15] 「この太さを選べば握力が何割も増す」と読み替えると、研究とは別の話になってしまう。
この研究では、円筒表面を押す力の合計は、分割した円筒で測る握力の平均2.3倍だった。[15] 同じ手が同じ器具を握っていても、接触面全体を足すのか、測定器が捉える方向の力を見るのかで値が違う。握力という言葉を見つけたら、何を測った数字なのかまで目を向けたい。
力には向きもある。健康な右利きの16人が、直径3.81〜7.62 cmの持ち手を、最大の25%、50%、75%、100%の努力で握る実験では、持ち手の太さと努力の程度が、力の向きに影響した。最も小さい努力から最も大きい努力へ変えると、力の角度は平均8.1度増えた。[3]
さらに直径が3.81 cmから7.62 cmへ増える間に、接触する力の中心は、橈側、つまり親指側へ平均1.75 cm移動した。[3] 力の中心とは、接触している力をまとめたときに作用すると考える位置だ。「ぎゅっと握る」は同じ表現でも、手が器具に力を伝える場所や方向も変わる。
日常の持ち比べでは、握れたかどうかだけを合格印にしないほうがよい。手のひらへの当たり方、指の回しやすさ、握り直したくなる感じなど、自分がどこに違いを感じたかを言葉にしておく。これは検査の代わりではなく、道具を比べるための観察である。直径と手の寸法を組にして考える研究は、万人向けの太さを探すより、自分との関係を見る理由になる。[15]
「女性向け」という札も、その観察を省略する理由にはならない。男女を含む実験では、手の大きさと力の方向にも関係があった。[19] 性別の表示から自分の指の収まりまで決めず、実物に触れられる場では、数字と感触を行き来して選びたい。
太いと前腕が楽になる実験もある
持ち手が太いと必ず筋肉の働きが増す、という予想とは異なる研究がある。歯科医師と歯科衛生士24人が、直径と重さの違う10種類の器具で、歯の汚れを落とす作業を模した実験を行った。前腕の筋肉の電気的な活動を測る筋電図と、親指でつまむ力を調べると、直径10 mm、重さ15 gの器具で筋負荷とつまむ力が最も小さかった。[7] 歯科の専門職による作業実験なので、18〜39歳の女性のダンベル運動にも同じ負担の変化が生じるかは、別に確かめる必要がある。
ただし、直径を10 mmより大きくしても、追加の利益は得られなかった。[7] 太くする方向に変化があったことと、太くし続ければ負担が減り続けることは違う。細いペンのように持つ器具で得られた値を、手のひらで包むダンベルの推奨直径にすることもできない。
筋電図は、その作業中の筋活動を捉える測定である。この実験が比較したのは、歯科作業中の前腕の筋負荷とつまむ力だった。[7] ダンベルの宣伝で使われる「腕に効く」という言葉を読む際も、前腕を測ったのか、肘を動かす筋肉を測ったのか、何を効果と呼んでいるかを確認したい。
同じ歯科分野でも、結果を単純化できない。歯科衛生士27人が市販の異なる器具を使った実験では、重さ23 g、直径11.1 mmの器具で、ほかの器具より前腕の平均筋活動が大きかった。一方、重さ16、18、21 gで直径も異なる器具の間では、筋活動は同程度だった。[16] 対象は歯科衛生士であり、18〜39歳の女性一般にこの筋活動の順位をそのまま当てはめることはできない。
最も多くの参加者が好んだのは、重さ16 g、直径12.7 mmの器具で、その割合は62.96%だった。[16] 好み、筋活動、器具の重さを、それぞれ別の評価として読む必要がある。軽さと太さが同時に異なる比較を見て、差の原因を太さだけに押しつけないことが大切だ。
数字で読む持ち手と握る力
61人:男性29人、女性32人が円筒を最大努力で握った実験の対象者数だ。[19]
34.8 N増:直径2.54 cmから3.81 cmへ太くしたときの平均の変化だ。[19]
103.8 N減:そこから直径7.62 cmまで太くしたときの平均の変化である。[19]
62%:直径と手の長さの比で説明された、握力のばらつきの割合だ。[15]
10 mm:歯科器具の模擬作業では、これを越えて太くしても追加の利益がなかった。[7]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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