朝の運動はテストステロンが高いから筋力づくりに有利なのか。女性の採血研究をもとに、朝と午後の平均値、月経周期、血液と唾液、運動前後の変化を分けて読む。ホルモン濃度の差をそのまま筋力の差に置き換えず、研究の対象と測定条件から、日常の運動時間を考える記事である。
目覚ましを止めて、床に運動マットを広げる。出勤前にスクワットをするか、夕方まで待つか。「朝はテストステロンが高い」と聞くと、朝を逃した日は筋トレの機会まで逃した気になる。だが、女性の朝の数値を読むとき、時計の針だけで運動の優劣を決めるのは早い。
規則的な月経のある女性を調べた研究では、総テストステロンの平均は朝のほうが午後より高かった。ただし、これは血液中の濃度を比べた観察研究である。朝に運動した女性の筋力が、午後に運動した女性より伸びたという意味ではない。[5]
朝の濃度、運動直後の反応、続けたあとの筋力は、別々の問いとして扱う必要がある。女性アスリートの運動前後を調べた研究では、乾燥血液スポットで測ったテストステロンは安定していた。18〜39歳の一般女性にそのまま当てはめるには、競技者と普段の運動量が違う点を考える必要がある。[4]

朝に高いという研究は、何を比べたのか
テストステロンは女性の血液でも測定されるホルモンである。ここでいう総テストステロンは、研究で血清中の総量として測った値を指す。朝と午後でその値が違うかという問いに、具体的な数字を示したのが、バスラの単施設研究である。[5]
対象は、見かけ上健康で月経周期が規則的な21〜40歳の女性46人だった。同じ参加者から午前8時30分と午後1時30分に採血した。月経中を除き、空腹かどうかにはかかわらず採血している。したがって、空腹条件を厳密にそろえた朝の運動実験として読む研究ではない。[5]
朝の平均値は23.4±12.4 ng/dL、午後は21.7±12.9 ng/dLであり、時刻による差は統計学的に有意だった。数字の単位は血液中の濃度を表すもので、持ち上げられる重りの重さではない。また、平均に添えられた±の値を見ると、参加者の値には幅がある。[5]
この研究から読み取れるのは、その条件の女性たちでは朝の平均値が高かった、という点である。全員が同じ幅で下がった、朝なら誰でも筋力が高い、午後は運動の成果が落ちる、といった説明へ広げることはできない。観察された濃度差と運動の効果の因果関係は、同じものではない。[5]
たとえば出勤前に運動できた日と、残業後に運動した日を思い浮かべてほしい。そこで変わっているのは時刻だけだろうか。仕事の予定、移動、運動を始めるまでの余裕も違うはずだ。朝の平均濃度を示した研究を、そのまま自分の朝と夜の成績表にする必要はない。
「朝に高い」という短い言葉は便利である。だが、対象者、測った時刻、測定したものまで戻すと、実際の答えはずっと具体的になる。少なくとも、この女性46人の研究が比べたのは朝と午後の採血値であり、朝型の生活と夜型の生活の価値ではない。[5]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
一日のリズムにも、そろう結果とそろわない結果がある
朝のほうが高いという方向の結果は、別の女性の研究にもある。25〜63歳の女性23人に同じ日の朝から午後早くにかけて採血した研究では、閉経前でも閉経後でも、テストステロンの平均値は朝から午後へ低下した。閉経後では午前8時から午後3時にかけた採血時刻の影響が有意だった。閉経後の女性も含むため、18〜39歳の女性全体に同じ変動を当てはめるには対象の違いがある。[16]
この研究の目的は、ホルモンと乳がんの関係を比較する研究を設計するとき、採血時刻による偏りに注意することだった。朝の運動を推すための実験ではない。同じ「朝のほうが高い」という結果でも、研究が解こうとしている問題を読むと、使い道が見えてくる。[16]
一方、閉経後の健康な女性6人と乳がん患者6人を調べた比較研究では、午前8時から深夜まで採血しても、テストステロンなどの時刻による変化は統計学的に有意ではなかった。朝のほうが高い傾向はあったが、明瞭な日内変動が確認された、とは書き換えられない。閉経後の女性と患者の比較であり、18〜39歳の健康な女性へそのまま当てはめる根拠にはならない。[17]
その研究では、日中の各ステロイドの値にかなりの変動があり、テストステロンの個人内の変動係数は28.9%だった。変動係数とは、値のばらつきを平均に対する割合で表した指標である。これは「朝から夜へ28.9%下がる」という数字ではない。ばらつきと一定方向の変化は区別したい。[17]
これらの結果は、一方を選んで他方を捨てる関係ではない。対象には年齢や閉経の違いがあり、健康な女性だけの研究と、治療を受けている患者を含む研究もある。少人数の比較で有意差が出なかったことは、時刻の影響が絶対にないという証明にはならない。他方、有意差が出た研究も、すべての女性の一日を決める時刻表ではない。[5][16][17]
採血の回数と時間の範囲にも注目したい。女性23人の研究は同じ日に5回採血し、朝から午後早くの変化を調べた。一方、閉経後の女性を調べた研究は午前8時、10時、正午、午後4時、8時、深夜に採血している。「一日の変動」という共通の言葉でも、観察している時間の窓は一致していない。[16][17]
朝から午後にかけての平均値が下がったという結果を見て、その後も夜まで同じ速さで下がる線を描くことはできない。研究で測った時刻の外側は、その数字で埋めないほうがよい。朝と午後の差を示した女性46人の研究についても、午後1時30分の値を、帰宅後の夜の値と同じように扱わないことが大切である。[5][16]
また、有意差がなかった閉経後の研究は、健康な女性だけでなく乳がん患者を含み、患者の一部は薬物治療を受けていた。日常的に運動する若い女性の時刻選びへ直接当てはめるより、対象条件によって結果の読み方が変わる例として受け取りたい。反対方向に見える研究にも、その研究が実際に観察した人たちがいる。[17]
研究を読む際は「朝に高い派と高くない派の勝負」にしないほうがよい。朝に高い平均値が観察されることと、個々の女性の値を時刻だけで正確に予測することの間には距離がある。運動を予定する際も、その距離を残したまま考えれば、夜に動く自分を不利と決めつけずに済む。[5][17]
月経周期と試料が変われば、同じ言葉でも測るものが違う
女性のリズムを考えるとき、一日の時刻だけを切り出すと見落とすものがある。健康な成人290人から朝の血清を集めた横断研究には女性165人が含まれ、さらに女性の一部で唾液の一日の変化や月経周期との関係も調べられた。年齢層が広く男女を含むため、18〜39歳の女性に当てはめる際は、女性のどの測定結果なのかを分けて読む必要がある。[7]
女性12人は、卵胞期と黄体期に、それぞれ一日の唾液の変化と連続した日の朝の唾液を採取した。卵胞期と黄体期は月経周期を分けて扱うための区分である。唾液中のアンドロゲン、すなわち研究で測ったテストステロンなどのホルモン群には、卵胞期に日内のパターンが見られた。黄体期に日内変動を示したのは11酸素化アンドロゲンだけだった。[7]
11酸素化アンドロゲンは、この研究が従来型のアンドロゲンと分けて測ったホルモン群の名称である。専門的な名前を覚える必要はない。大切なのは、女性のホルモンを一括りにして「どれも朝高く、夜低い」と説明できるわけではない点だ。研究は、ホルモンの種類と周期の区分で結果を分けている。[7]
血清の朝の測定には幅広い年齢の女性が参加している一方、細かな日内の唾液採取を行った女性は小さな集団である。大きな研究に見える場合も、自分の知りたい問いに答える部分が何人を対象にしたのかを確認したい。女性165人という数字を、そのまま全員の一日を追った人数に置き換えてはいけない。[7]
また、この研究の唾液の結果と、先ほどの血清の総テストステロンの値は、そのまま同じ目盛りでは比べられない。試料も、扱うホルモンの種類も、観察する条件も違う。血液の研究が朝の差を示し、唾液の研究が周期ごとの違いを示していても、直ちに矛盾と考える必要はない。[5][7]
さらに、同じ横断研究では、従来型のアンドロゲンは男女とも年齢とともに低くなる一方、11酸素化アンドロゲンではその関係が見られなかった。これは年齢の異なる人を比べた結果であり、同じ女性を長年追った変化として読むものではない。一日の時刻の話に、年齢差まで混ぜて説明しないようにしたい。[7]
朝の予定を決めるたびに周期とホルモンの表を完成させる必要もない。ここでの読みどころは、研究者が条件を分けているのに、生活上の助言だけを「女性は朝」と一行に縮めないことである。研究の細かさは、自分に細かな義務を増やすためのものではない。
数字で読む女性の朝とテストステロン
46人:規則的な月経のある21〜40歳の女性を対象にした単施設の観察研究。[5]
23.4 ng/dLと21.7 ng/dL:午前8時30分と午後1時30分の総テストステロンの平均値。[5]
23人:朝から午後の採血時刻による変動を検討した、25〜63歳の女性の研究。[16]
12人:卵胞期と黄体期に細かな唾液採取を行った女性の人数。[7]
30人と26人:運動との関係を調べた女性アスリートと、体格指数を合わせた非トレーニング対照者。[4]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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