HIITの直後は軽かったのに、食事と水分を取ると体重が戻る。その数字を脂肪の増加と決めてよいのか。運動後の水分保持、筋グリコーゲン、食事を変えた比較試験を手掛かりに、短時間の体重変動と長期の変化を分けて読む。体重が落ちないときに確かめたい条件と、運動の評価軸も考える。
運動直後と翌朝で、体重計の数字が違うのはなぜだろう。昨夜は息を切らして動いた。帰宅直後の体重を見て少し驚き、食事と水分を取った今朝、もう一度驚く。数字が戻ると、検索窓には「hiit 太る」と入れたくなる。しかし、運動後に減った体重が戻ることと、脂肪が増えたことは同じではない。競技者の補水試験では、その後に取った水分の保持が測定されているが、18〜39歳の女性の日常の運動後に同じ割合が当てはまるかは別に確かめる必要がある。[2]
糖の貯蔵にも目を向けたい。筋グリコーゲンという筋肉に蓄えられる糖は、食事条件を変えた男女の大学ボート競技者の試験で変化した。18〜39歳の女性にそのまま当てはめるには、競技者との運動量の違いを考える必要がある。ただし、これを根拠に「今朝増えた分はすべて筋肉の水」と言い切ることもできない。筋肉内の糖、水分補給後の保持、体脂肪は、それぞれ別の測定で確かめる必要がある。[7][2][12]
答えの芯は、体重の数字だけから増えたものの正体を決めないことだ。HIITを続け、体重や脂肪量が変わらなくても、体力や糖の処理に関わる指標が改善した試験がある。「落ちない」という一言で、運動の結果を全部片付けなくてよい。[3]

体重が戻ったとき、まず水分の出入りを分ける
運動後の水分補給を調べた無作為化二重盲検試験には、競技者26人が参加した。参加者は水分を取らずに90分のインターバル運動を行い、体重が2.6%減る状態を作った。その後、失った体重に相当する量の飲料を取り、3.5時間にわたって水分の保持を観察した。18〜39歳の女性に同じ保持率を当てはめるには、競技者の脱水条件と日常の運動との差が大きい。脱水をまねる目標にはしない。[2]
比較したのは、水、スポーツ飲料、経口補水液である。観察終了時の水分保持率は、水が58.1%、スポーツ飲料が73.9%、経口補水液が76.9%だった。後者の飲料はいずれも水より高く、両者の間には有意差がなかった。飲んだ量のすべてが、そのまま同じ時間だけ体内に残るわけではなかった。[2]
ここで重要なのは、軽くなった後に体内の水が戻る過程を、脂肪の増減と混ぜないことだ。この試験が追っていたのは水分の保持と尿の排出であり、脂肪を増やす運動かどうかではない。運動直後の体重を出発点にして、その後の増加をすべて「太った」と呼ぶと、研究が分けて測った現象をひとまとめにしてしまう。[2]
飲料の違いは、回復の途中でも現れた。経口補水液では、水に比べて最初の60分の尿の産生が抑えられた。一方、その時間帯のスポーツ飲料と水には差がなかった。最終時点では似た保持率でも、そこに至る経過は同一ではない。運動直後、帰宅後、翌朝という測定時刻の違いを軽く扱わないための手掛かりになる。[2]
もっとも、研究条件は競技者を対象にした管理下の脱水と補水である。立川駅から歩いて帰る人の体重変化に、その保持率をそのまま当てはめることはできない。「自分も同じ割合だけ残る」と計算するためではなく、体重の変化には補水の過程も含まれると理解するために読む数字だ。[2]
隣接する記事「HIIT運動は少しの水分不足でも失速する?後半の出力と体重減少を研究で読む」が問うのは、水分不足と動ける力の関係である。ここでは出力の低下を詳しく追わず、運動後に数字が戻ったときの読み方に絞る。体重計は、増えた分の内訳までは表示してくれない。[2]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
筋肉の糖の貯蔵と、脂肪の増加は別の問いである
筋肉の糖の蓄えを考える手掛かりは、大学のボート競技者を対象にした無作為化試験にある。男性12人、女性10人が参加し、朝と午後に運動する強いトレーニングを4週間続けた。食事のたんぱく質量をそろえ、体重を維持するよう脂肪の量を調整しながら、炭水化物の量が異なる食事を比較した研究である。18〜39歳の女性一般にそのまま当てはめるには、朝夕に練習する競技生活との差を考える必要がある。[7]
炭水化物は、体重1kg当たり1日10gの群と5gの群で比較された。前者では筋グリコーゲン量が平均65%増加したが、後者では変わらなかった。タイムトライアルの平均出力の増加も、それぞれ10.7%と1.6%だった。体重を維持する条件でも、筋肉内の糖の貯蔵と運動中の出力は変化し得たのである。[7]
この結果は「体重が変わらないなら、筋肉の中も変わっていない」という読み方を退ける。同時に、グリコーゲンの増加率を、体重の増加率に置き換えてはいけない。測定の対象が違うからだ。筋肉の中の糖がどれほど変わったかという数字と、人全体がどれほど重くなったかという数字は、同じものさしではない。[7]
朝夕に練習する大学競技者の食事量は、仕事帰りに運動する人への献立指示ではない。試験の炭水化物量をそのまま目標にする必要もない。ここから持ち帰れるのは、食事条件と筋肉の糖の貯蔵を切り離さず考える視点である。食事を変えた後の体重を見て、運動だけの作用だと決めるのは早い。[7][5]
「糖を蓄えるなら、その分の水まで計算できるのでは」と思うかもしれない。しかし、ここで挙げた競技者の結果から、一般の人の翌朝の増加を糖と水へ振り分けることはできない。水分保持を測った試験と筋グリコーゲンを測った試験を合わせても、個人の体重増加の内訳を直接測ったことにはならない。[2][7]
したがって、「筋肉の水分が原因だから気にしなくてよい」と結論を先取りしない。水分の出入りを確認し、食事条件も並べ、長く続く変化は別に見る。糖の貯蔵という説明は、体重を脂肪だけの数字として読まないために役立つ。何でも説明できる便利な答えにしてしまうと、測ったものの違いが見えなくなる。[2][7][12]
食事も変えた試験を、HIITだけの成果にしない
食事と運動を同時に変えた研究では、どちらが何に関係したかを見分けたい。過体重または肥満の中国人女性58人を無作為に分けた試験では、通常の対照群に加え、低炭水化物食だけの群、同じ食事にHIITを加えた群、中強度の持続運動を加えた群を比較した。期間は4週間である。[5]
低炭水化物食を取った群の体重減少は、食事だけで2.85kg、HIITを加えても2.85kg、中強度運動を加えた場合は2.56kgだった。追加の運動は、体重減少に上乗せの効果を示さなかった。一方で、運動を加えた群の最高酸素摂取量は、HIITで14.8%、中強度運動で17.3%改善した。重さと体力で結果が分かれた試験だ。[5]
これを「HIITで2.85kg減った」とだけ紹介すると、食事だけの群にも同じ体重減少があった事実が落ちる。逆に「運動を足しても無意味だった」と紹介すれば、体力の改善が消える。どちらも、都合のよい結果だけを見ている。日常でも、食事と運動をまとめて変えた後は、変化のすべてを運動の名前に背負わせないほうがよい。[5]
研究をまとめた系統的レビュー・メタ分析では、低炭水化物・高脂肪食とHIITの組み合わせを扱う10研究が採用された。体重の統合結果は平均差で約−5.30kg、95%信頼区間は−7.22〜−3.38kgだった。信頼区間は、推定値の不確かさを示す幅である。これは食事との組み合わせの結果であり、HIIT単独の減量幅ではない。[1]
同じ分析で、脂肪量の平均差は約−2.22kg、95%信頼区間は−4.58〜0.14kgで、有意な差ではなかった。体脂肪率には有意な低下があったが、脂肪量と除脂肪量には有意差がなかった。除脂肪量は脂肪を除いた部分の量である。「体重も脂肪も同じように確実に減った」と、結果を一色に塗ることはできない。[1]
メタ分析の体重の数字と脂肪量の数字を、そのまま引き算して「残りが水分だった」と計算するのも避けたい。異なる評価項目の統合値は、個人の体重を成分ごとに解体した帳簿ではない。脂肪量の推定には増加側まで含む幅があり、除脂肪量にも有意差がなかった。数字が並んでいることと、内訳を確定できることは違う。[1]
また、体重の減少と体脂肪率の低下が並んでも、それだけで体重減少の全量を脂肪と呼べるわけではない。この分析でも脂肪量そのものの検定結果は異なった。記事の見出しに使いやすい体重だけでなく、その隣の評価項目まで読むと、「減った」という言葉の範囲がはっきりする。[1]
数字で読む体重と中身の違い
26人:運動後の水分保持を比較した競技者の試験。日常の全員を表す人数ではない。[2]
58.1%:補水から3.5時間後の水の保持率。体脂肪の変化を表す値ではない。[2]
65%:高炭水化物食のボート競技者で増えた筋グリコーゲン量。体重の増加率ではない。[7]
−2.85kg:低炭水化物食だけの群と、それにHIITを加えた群に共通した体重変化。[5]
−4.58〜0.14kg:メタ分析の脂肪量の平均差に付いた95%信頼区間。有意差はなかった。[1]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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