ダイエットのごまは炒るほどよい?香ばしさとセサミンの変化を研究で読み解く

ごまを炒って香りが強くなると、セサミンも増えるのだろうか。焙煎温度を変えた食品分析では、増える成分と減る成分が同時に見られる。セサモールへの変化、油の酸化安定性、黒ごまと白ごまの違いを読み分け、ダイエットの食事で炒り加減を考えるときの判断材料を整理する。

夕飯の青菜にごまを振る前に、フライパンで少し炒る。香りが立つと、同じごまでも体によさそうに感じる。もう少し炒れば、名前を聞いたことのあるセサミンも増えるのだろうか。

答えの芯は、香ばしさとセサミンの量は同じ方向には動かない、である。白ごまを温度別に焙煎した食品分析では、油の抗酸化に関する指標が上がる一方、セサミンとセサモリンは減った。別の分析でも、加熱でセサモールが増え、セサモリンが減る変化が確認されている。[4][5]

炒ることを失敗扱いする必要はない。ただし、料理の香り、残る成分、油の品質は別々に見る必要がある。ここで扱うのは主に種子や抽出した油の実験であり、炒ったごまを食べた人の減量効果を比べた試験とは区別する。[4][5][6]

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香りが立つこととセサミンが増えることは違う

ごまの加工を読むときは、似た名前をほどくところから始めたい。セサミンとセサモリンは、ごまに含まれるリグナンと呼ばれる成分群の仲間である。セサモールはセサモリンが焙煎で変化して生じる成分で、油の酸化安定性に関わる。袋に大きく書かれたセサミンだけを見ていると、加熱中の変化の一部を取り落とす。[5][9]

香りにも独自の変化がある。ごま油の前処理を比べた食品分析では、焙煎やマイクロ波などの処理によって、ピラジン類やチアゾール類という香りに関わる化合物が増え、焙煎香やナッツ様の香りが強まった。香ばしいと感じる背景は、セサミンが増えたから、という説明ではない。[2]

同じ研究では、マイクロ波や蒸気を使う処理で、総フェノール量、セサモール、抗酸化能が高まる一方、セサミンとセサモリンの一部は分解された。総フェノール量は複数の関連成分をまとめて測る指標であり、特定のセサミンの量とは別である。全体を表す値と、内訳の各成分の増減を分けて読む必要がある。[2]

たとえば帰宅後、ごまの香りで冷蔵庫の青菜を食卓に出しやすくする。それは料理としての選び方である。一方、「香りが強いのでセサミンも多い」と成分の説明を加えるなら、別の証拠が要る。香りの評価と成分分析が別々の測定であることは、食べ物の印象を読むうえで役に立つ。[2][5]

香りの変化を楽しむことと、健康上の優劣をつけることを急いでつなげなくてよい。ごま油の加工研究が見せているのは、熱によって複数の性質が動く様子である。鼻は香りを教えてくれるが、セサミンの測定器を兼ねてはいない。[2][5]

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温度を上げると、増える成分と減る成分が分かれる

白ごまを電気オーブンで20分間焙煎した研究では、120、150、180、210、250、300℃の条件を設け、未焙煎の種子から抽出した油と比較した。対象は人ではなく、ごまから得た油である。18〜39歳の女性が食べた際の体重変化に、この食品分析をそのまま当てはめることはできない。温度を段階的に変え、同じ加熱時間で成分や酸化の指標を調べた実験と読む。[5]

この条件群では、セサミンの総量は最大12.5%、セサモリンは最大27.5%減った。最大という言葉が大切だ。どの温度でも同じ割合で減ったわけではなく、調べた条件の中での減少の大きさである。家で炒ったごまの成分が、その割合で減ったと計算する数字ではない。[5]

同時に、抽出油の総フェノール量は152から194mg/100gへ増え、酸化に対する安定性の指標である誘導期間は5.5から10.5時間へ延びた。誘導期間は実験条件で油の酸化への耐性を見る値で、家庭での保存可能時間ではない。セサミンの減少と油の安定性の向上が、同じ実験で並んでいる。[5]

さらに高温側では別の変化が現れた。250℃を超える条件で、脂質の一次・二次酸化に関わる指標の上昇が観察された。研究者は検討した条件の中で210℃を良好な油を得る温度として挙げているが、その評価は抽出油の成分と品質に基づく。食べた人の体重や体調を最も改善する温度、という意味にはならない。[5]

別の種子分析でも、180℃でセサモリンが明らかに減り、250℃では検出されなくなった。一方、セサモールは種子の色にかかわらず増えた。高温でトランス型のオレイン酸やリノール酸が増える変化も見られた。セサモールだけを取り出して「多いほど全体としてよい」と採点できない理由である。[4]

油がどれだけ得られるかという、製造上の変化も報告されている。白ごまの温度別実験では、油の収率は33.5から62.6%へ上がった。これは原料から得られる油の割合である。ごまの粒そのものの栄養価や、人が食べたときの吸収率が同じ幅で上がった、という数値ではない。[5]

収率と濃度は、日常では混ざりやすい。油が多く搾れたという話は、取り出せた量の話だ。一方、総フェノール量のmg/100gは、測った油の一定量に含まれる成分の濃さを表す。どちらも加工の特徴を伝えるが、見ている分母が違う。「増えた」という動詞だけで読み進めず、何に対する量なのかまで確かめたい。[5]

これは買い物の場面でも使える。加工の説明に油の収率、成分含有量、抗酸化の測定値が並んでいたら、同じ物差しとして足し合わせない。料理に使うごまの量を増やす理由を、製造時の収率の高さに求めることもできない。食品の研究には、食べ方を直接決める情報だけでなく、食品を作る工程を理解するための情報も含まれている。[5]

また、加熱で増えた総フェノール量だけを見て、失われた成分を埋め合わせたと判断することも避けたい。セサミン、セサモリン、トコフェロールと総フェノール量は別々に測られている。増減の向きが違う数値をそのまま相殺して、栄養全体の差し引きを計算することはできない。[5]

検出されないという結果は、その実験の測定条件で捉えられなかったことを表す。どんなごまでも同じ加熱で完全に同じ組成になる、という規則ではない。異なる研究の数字をつないで家庭用の温度表を作るより、それぞれの条件で何が増え、何が減ったかを対にして読むほうが正確である。[4][5]

「栄養を残したいなら加熱しない」「抗酸化能を上げたいなら強く加熱する」と、片側だけから答えを決めるのも難しい。セサミンの保持、セサモールの生成、油の酸化指標は、それぞれ違う目的を表す。食品の加工には、目的によって評価が分かれる場面がある。[4][5]

セサモールへの変化は加熱方法でも異なる

セサモリンからセサモールへの変化は、単に温度だけの話ではない。赤外線加熱と従来の加熱を比べた研究では、200℃で30分という条件で、セサモールへの変換効率が51%から82%へ高まった。これは加工法の違いを比べた食品実験である。[9]

変換効率が高いとは、元の成分が変化して別の成分になる割合が高いということだ。「ごまの栄養がその分だけ増えた」「セサミンが増えた」とは読めない。変化の出発点はセサモリン、行き先はセサモールである。よく似た名称でも、この対応を取り違えると炒る意味の説明が逆転する。[9]

同じ研究では、200℃と220℃で30分処理した油のγトコフェロール量が、それぞれ17%と25%減った。セサモールへの変換を促しても、別の成分は減りうる。加熱による変化を「抗酸化成分が増える」という短い言葉だけで説明すると、こうした内訳が見えなくなる。[9]

爆発膨化、マイクロ波、焙煎を比較した別の加工実験でも、処理法によって結果が異なった。マイクロ波はセサモリンからセサモールへの変換を最も促した一方、爆発膨化は複数の植物由来成分や試験管内の抗酸化指標を大きく高めた。何を指標にするかで、評価される処理が変わる。[7]

その研究では、たんぱく質や総アミノ酸、たんぱく質の構造にも処理による損傷が見られた。爆発膨化では、粗たんぱく質と総アミノ酸の減少が比較的小さかった。油の成分だけを測る研究とは評価対象も異なる。こうした工業的な処理の比較を、家庭のフライパンの火力にそのまま置き換えることはできない。[7]

フライパンの「中火」と研究装置の設定温度を同じものとして扱わないことが、日常での読み方になる。論文の温度と時間は、その結果が得られた条件を理解するための情報である。家庭で再現するための調理指示として使う前に、装置も材料も目的も違うことを確かめたい。[5][9]

数字で読むごまの焙煎

20分:白ごまを温度別に焙煎した油の分析でそろえた加熱時間。[5]

最大12.5%減:同じ研究の条件群で見られたセサミン総量の減少。[5]

最大27.5%減:同じ条件群で見られたセサモリン総量の減少。[5]

180℃と250℃:別の種子分析で、セサモリンの減少と検出されない結果がそれぞれ見られた温度。[4]

51%から82%:200℃、30分の赤外線加熱の比較で報告されたセサモールへの変換効率の変化。[9]

29.8〜216.6%増:ごまの水溶性抽出物を調べた実験での、焙煎後の抗酸化総合指標の変化幅。[6]

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