階級制の格闘技では、試合前に体重を落とすことが日常的に行われています。そして最近の調査は、この実践に性差がほとんどないことを示しています——期間も、方法も、訴えられる困難も、男女でほぼ同じです。
ところが、その帰結を検証した研究は男性に大きく偏っています。減量と傷害の関連を14か月・24大会にわたり調べた研究では、有意な関連が検出されたのは男性についてだけでした。回答者の76%が男性、24%が女性という内訳を考えれば、女性で検出されなかったことと、女性に影響がないことは別です。
同じことをしていて、片方だけが調べられている。この記事は、その構造を数字で確認します。

414人の実態調査——性差がなかったこと
テコンドー、柔道、レスリング、ボクシングの韓国エリート選手414人を対象に、急速減量(RWL)の実態を横断的に比較した研究があります。減量前・公式計量時・試合直前の3時点で体重を記録し、妥当性の確認された質問紙で実践、情報源、身体的・心理的困難を評価しました。
| 項目 | 結果 |
|---|---|
| 減量期間 | 平均6.53日 |
| 減量幅 | 体重の5.49% |
| 試合前の回復 | 約95% |
| 減量期間の競技別・性別の差 | なし |
| 減量幅と回復幅の競技別の差 | あり(柔道とレスリングで減量が大きく、レスリングで回復が最大) |
| 減量方法・情報源・身体的心理的困難の競技別の差 | なし |
| 主な情報源 | コーチと仲間 |
| 訴えられた困難 | 疲労、めまい、易怒性、集中力の低下 |
出典: Park (2026) より作成。
著者の結論——「減量期間は競技間・性別間で類似している一方、減量と回復の大きさは競技固有の規定によって変わる。こうした差にもかかわらず、減量方法とそれに伴う困難は一貫しており、証拠に基づく体重管理と医療専門職のより大きな関与の必要性を強調する」(Park, 2026, The Journal of Sports Medicine and Physical Fitness)。
減量と傷害の関連は、男性でのみ有意だった
14か月・24大会にわたり、急速な体重変化と試合7日後の自己報告傷害の関連を調べた研究があります。試合翌日に体重管理の質問紙、7日後に傷害の質問紙が回答されました。
| 項目 | 女性(37人、24%) | 男性(118人、76%) |
|---|---|---|
| 計量7日前からの減量 | 4.9% ± 3.4% | 6.1% ± 3.2% |
| 計量24時間前からの減量 | 2.6% ± 2.1% | 3.0% ± 1.9% |
| 傷害報告との関連 | — | 24時間前の減量:オッズ比 1.20(1.00〜1.43)、p = 0.044 |
出典: Doherty ら (2025) より作成。回答者155人中、88人(51%)が傷害なし、84人(49%)が傷害ありと報告。
著者らの結論——「計量24時間前の男性の急速減量は、試合7日後の傷害報告と関連している。したがって選手とコーチは、傷害の可能性を最小化するために試合前の急速減量を慎重に検討し、制限することを目指すべきである」(Doherty, 2025, Journal of Science and Medicine in Sport)。
「女性では有意でなかった」の意味
このデータで女性は37人、男性は118人です。同じ効果量があったとしても、標本が3分の1なら検出力は大きく落ちます。オッズ比1.20という「1%の減量ごとに傷害報告が1.2倍」という控えめな効果を、37人で検出するのは容易ではありません。
「女性では有意でなかった」は「女性では関連がない」ではありません。この区別は、この記事全体を通じて繰り返し必要になります。
減量が回復・睡眠・傷害に与える影響を統合したスコーピングレビュー(2,784件から17研究)は、より具体的な数字を報告しています——1〜7日かけて体重の2〜10%を落とす急速減量は、クレアチンキナーゼの上昇(ピーク 713.4 ± 194.6 U/L)、主観的疲労の増加(41.8 ± 0.9 → 51.3 ± 2.0)、そして傷害率の上昇と一貫して関連する。報告された傷害率は女性で1,000選手曝露あたり45.62件。睡眠の質は軽度に悪化し(5.15 ± 1.83 → 5.52 ± 1.71)、主観的回復は低下しました(101.40 ± 2.52 → 87.63 ± 2.47)。コルチゾール反応は研究によって上昇と低下に分かれています。
著者らが挙げた必要事項は3点——標準化された方法論、女性選手のより広い組み入れ、長期的影響を評価する縦断研究(Kużdżał, 2025, Journal of Functional Morphology and Kinesiology)。

摂食障害の指標——5人に4人
同じ研究グループが、24大会(2022年9月〜2023年)の前向き調査で摂食障害の指標を測定しました。試合約7日後と約28日後に、競技者向け摂食障害質問票(ADE)が実施されています。
| 摂食障害スコアの区分 | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
| 最小限 | 17% | 11% |
| 中等度 | 36% | 32% |
| 高い | 37% | 36% |
| 非常に高い | 11% | 21% |
| 中等度以上の合計 | 83% | 89% |
出典: Doherty ら (2024) より作成。
変化のパターンにも性差がありました。全体スコアでは改善が男性3%に対し女性25%(p = 0.013)。「身体への不満」の下位尺度では、女性が改善(42% 対 17%、p = 0.035)、男性が悪化(35% 対 4%、p = 0.008)という逆向きの動きが認められています。
著者らの結び——「格闘技の競技者5人に4人で、中等度から非常に高い摂食障害の指標が同定された。身体への不満には性特異的な変化が見られ、大半の競技者は、急速減量の大きさにかかわらず、試合後に食べ物と身体の関係に苦しんでいる」(Doherty, 2024, Journal of Science and Medicine in Sport)。
女性格闘技選手29人の、横断調査
女性選手に特化した調査もあります。SNSとクラブを通じて募集した29人が、健康行動とメンタルヘルスの質問紙に回答し、食事記録とDXA検査を受けました。
| 所見 | 結果 |
|---|---|
| 摂食障害の症状、傷害、部位特異的な低骨密度、低エネルギー利用能(LEA)の症状 | 21〜67%が該当 |
| エネルギーと栄養素の摂取 | 不十分 |
| クラブから食事の情報や指導を受けた割合 | 50%未満 |
| 望ましくない方法や急速減量を用いた割合 | 20%超 |
| セクシュアルハラスメントを経験した割合 | 70% |
| うち格闘技の文脈内で経験 | 41% |
出典: Mathisen ら (2022) より作成。
著者らの結論は、両義性を保っています——「大半の選手はエンパワメントを感じるために格闘技を始め、包摂的な環境を経験した。それでも健康問題の頻度は高かった。格闘技は女性の健康と自信を高めうる包摂的な環境を提供する。しかし本結果は、女性格闘技選手の心身の健康を守るための行動の必要性を示しており、それは格闘技コミュニティ内での文化的変化と、健康・栄養リテラシーの向上を意味する」(Mathisen, 2022, Sports)。

中学生の女子柔道選手の51.8%
年齢を下げると、別の問題が見えます。
日本の女子ジュニア柔道選手を対象としたオンライン質問紙調査です。体重、身長、減量経験、月経、競技成績、生活習慣について回答を得ました。
| 所見 | 結果 |
|---|---|
| 中学時代(12〜15歳)に試合のための減量を経験 | 51.8% |
| 第二次性徴期に減量を経験した人の現在の身長 | 経験しなかった人より有意に低い(p < 0.05) |
| 第二次性徴期の減量と現在の月経周期 | 影響なし |
| 中学時代の減量経験と競技成績 | 有意差なし(χ² = 4.485、df = 3) |
出典: Yoshida ら (2024) より作成。
著者らの結論——「成長期における減量は、正常な発育に悪影響を及ぼす可能性が示唆された。また中学時代の減量は、より良い競技成績をもたらす戦略ではない可能性も示唆された」(Yoshida, 2024, Frontiers in Sports and Active Living)。
横断調査であり因果は確定できません。それでも、成績には効かず、身長には関連するという組み合わせは重い意味を持ちます。
研究のギャップを、数字で見る
では、この領域で女性はどれだけ研究されているのか。
スポーツ医学の主要3誌(Medicine and Science in Sports and Exercise、British Journal of Sports Medicine、American Journal of Sports Medicine)に2021年1月から2023年8月に掲載された全原著・疫学研究1,441本、参加者4,015万人を分析した研究があります。
| 指標 | 結果 |
|---|---|
| 女性参加者の割合 | 43.95%(10年前は39%) |
| 1研究あたりの女性参加者の平均割合 | 40.22% |
| 女性のみを対象とした研究 | 103本(7.15%) |
| 男性のみを対象とした研究 | 268本(18.6%) |
| 研究デザインに月経状態の考慮を含んだ研究 | 66本(5.6%) |
| そのうち「金」評価 | 0.5% |
出典: Ose ら (2025) より作成。
著者らの評価——「過去10年で女性参加者は39%から43.95%に増加した。しかし男性参加者と比べた女性の代表性には、依然として有意な格差が残る。加えて、この重要な変数を考慮した研究はごくわずかである」(Ose, 2025, The American Journal of Sports Medicine)。
競技別の偏りも報告されています。スポーツ医学の主要6誌に2017〜2021年に掲載された669本のうち、70.7%が男性選手のみを対象とし、女性選手のみは8.8%、両方を含むのは20.5%でした(Paul, 2022, The American Journal of Sports Medicine)。別の分析は、女性選手のみを扱う研究は全体の6〜9%、混合研究における女性の参加割合は35〜39%、学術出版における女性のリーダーシップは30%未満と要約しています(Lianingsih, 2025, International Journal of Health, Medicine, and Sports)。
階級制競技に絞ると、格差はさらに明確です——「並行して階級制競技に参加しているにもかかわらず、女性は慢性・急性の両方の時間軸における体重減少介入を検討した研究において、著しく過少代表されている」(Langan-Evans, 2021, European Journal of Sport Science)。
月経に関する研究も同様です。2010年から2025年の文献から41本を組み入れたスコーピングレビューは、格闘技における訓練環境での沈黙、コーチ教育の不足、そして主要な格闘技組織における月経健康方針の不在を指摘し、「月経周期の位相が確認された研究は乏しい」としています(Akhagba, 2025, Sport and Policy Journal)。
傷害プロファイルの性差
研究されていないことと、差がないことは別です。全競技を対象に180本を統合したメタ解析は、性別で比較可能な競技における相対リスクを報告しています。
| 傷害 | 相対リスク(95%CI) | 高リスク |
|---|---|---|
| 脳震盪 | 8.46(1.04〜68.77) | 女性 |
| 骨ストレス傷害 | 3.4(2.1〜5.4) | |
| 膝の傷害 | 2.7(1.4〜5.5) | |
| 足部・足関節の傷害 | 1.25(1.17〜1.34) | |
| ハムストリング傷害 | 2.4(1.8〜3.2) | 男性 |
| 股関節・鼠径部の傷害 | 2.26(1.31〜3.88) | |
| 急性骨折 | 1.8〜2.8倍 |
出典: Hardaker ら (2024) より作成。脳震盪の信頼区間の広さに注意。
著者らは「女性であることは、前十字靭帯損傷を超えて、足部・足関節損傷、骨ストレス傷害、スポーツ関連脳震盪の主要な決定因子であった」と結論しています(Hardaker, 2024, Sports Medicine)。
脳震盪に絞った系統的レビュー(25研究)は、機序についても踏み込んでいます——女性選手は男性より重い脳震盪を負うようであり、それは部分的に頭部衝撃に対する生体力学的閾値の低さによる。加えて脳震盪は視床下部-下垂体-卵巣軸を変化させ、より重い症状と無月経をもたらしうる。女性は男性より脳震盪を報告する可能性が高い一方、過少報告は依然として存在し、治療されないまま経過する脳震盪につながりうる、と(McGroarty, 2020, Orthopaedic Journal of Sports Medicine)。
そして著者らの総括——「脳震盪の臨床的発生率、報告行動、転帰における性差にもかかわらず、女性選手は依然として研究が不十分な集団であり、その結果、受傷後の女性選手に対する性特異的な治療ガイドラインが欠如している」。
誰が助言しているのか
最後に、この領域の構造的な問題です。
14競技・3,994人を対象とした26研究の系統的レビューが、減量実践の実態をまとめています——減量は格闘技選手にきわめて広く行われており、多くが10代で、年に2〜3回、試合のための減量を始める。通常は試合前7〜14日で体重の5%未満を落とす。最も多い方法は運動量を増やすことと段階的な食事制限。
そして5つ目の所見——「科学的専門職が選手に与える影響は、無視できるほど小さい」。著者らはこう続けます——「科学的専門職は選手の減量実践にほとんど影響を持たず、これが資格のない影響の悪循環を形成している可能性がある」(Zhong, 2024, Nutrients)。
先の414人の調査で、選手が主に頼っていた情報源はコーチと仲間でした。29人の女性選手調査では、クラブから食事の情報や指導を受けた人が50%未満。同じ構造が、異なる国と競技で繰り返し報告されています。
読むときの手がかり
| 論点 | いま言えること | まだ言えないこと |
|---|---|---|
| 減量の実態 | 期間・方法・困難に性差はほぼない(414人) | — |
| 減量と傷害 | 男性の24時間前減量で OR 1.20 | 女性は37人で、検出力が足りない |
| 摂食障害 | 中等度以上が男性83%・女性89%。「非常に高い」は女性21% | — |
| 低エネルギー利用能・骨 | 女性選手29人で21〜67%が該当 | より大きな標本での確認 |
| 成長期の減量 | 中学時代に減量経験のある人は現在の身長が有意に低い。成績に差はない | 因果(横断調査) |
| 研究の代表性 | 主要3誌で女性参加者43.95%、女性のみの研究7.15% | — |
| 月経状態 | — | 研究デザインに考慮したのは5.6%、最高評価は0.5% |
| 傷害の性差 | 女性は脳震盪・骨ストレス・膝でリスクが高い | 脳震盪のCIは1.04〜68.77と極端に広い |
| 情報源 | コーチと仲間。科学的専門職の影響は「無視できるほど小さい」 | — |
実務的な読み方を三つ。
「女性では有意差なし」を「差がない」と読み替えない。この領域の研究の多くは、女性の標本が男性の3分の1から4分の1です。同じ効果があっても検出できません。減量と傷害の関連が男性でのみ有意だったこと、脳震盪の相対リスクの信頼区間が1.04〜68.77と極端に広いこと——どちらもデータが足りないことの表れであり、安全性が確認されたことの表れではありません。
成長期の減量は、別問題として扱う。日本の女子ジュニア柔道選手の51.8%が中学時代に試合のための減量を経験し、第二次性徴期に減量した人は現在の身長が有意に低いという報告があります。そして減量経験は競技成績と関連していませんでした。得るものがなく、失う可能性のあるものがある——この非対称は、階級選択と体重管理についての教育の必要性を直接指しています。
情報源を、コーチと仲間から広げる。複数の国・競技の調査が一致して報告しているのは、選手が主にコーチと仲間から減量の方法を学んでおり、科学的専門職の影響がほとんどないことです。国際スポーツ栄養学会が具体的な数値指針を公表し、階級制競技の女性選手に特化した推奨も整理されています。それらが現場に届いていないことが、いま最も大きな改善余地でしょう。
出典
- Park K. Sport- and sex-specific differences in rapid weight loss practices among elite combat sport athletes. The Journal of Sports Medicine and Physical Fitness. 2026. DOI: 10.23736/s0022-4707.26.17620-8
- Doherty CS, et al. Is there a relationship between rapid weight changes and self-reported injury in combat sports athletes? A 14-month study of 24 combat sports events. Journal of Science and Medicine in Sport. 2025. DOI: 10.1016/j.jsams.2025.01.007
- Kużdżał A, et al. Effects of Weight-Cutting Practices on Sleep, Recovery, and Injury in Combat Sports: A Scoping Review. Journal of Functional Morphology and Kinesiology. 2025. DOI: 10.3390/jfmk10030319
- Doherty CS, et al. Prevalence of disordered eating and its relationship with rapid weight loss amongst male and female combat sport competitors: A prospective study. Journal of Science and Medicine in Sport. 2024. DOI: 10.1016/j.jsams.2024.06.007
- Mathisen TF, et al. Empowered, Yet Vulnerable: Motives for Sport Participation, Health Correlates, and Experience of Sexual Harassment in Female Combat-Sport Athletes. Sports. 2022. DOI: 10.3390/sports10050068
- Yoshida E, et al. Evidence of weight loss in junior female judo athletes affects their development. Frontiers in Sports and Active Living. 2024. DOI: 10.3389/fspor.2024.1420856
- Ose BM, et al. Where Are All the Female Participants in Sports and Exercise Medicine Research? A Decade Later. The American Journal of Sports Medicine. 2025. DOI: 10.1177/03635465241278350
- Paul RW, et al. Inequalities in the Evaluation of Male Versus Female Athletes in Sports Medicine Research: A Systematic Review. The American Journal of Sports Medicine. 2022. DOI: 10.1177/03635465221131281
- Lianingsih N, et al. Gender Disparities in Sport Science: A Research Gap Analysis of Female Athletes. International Journal of Health, Medicine, and Sports. 2025. DOI: 10.46336/ijhms.v3i2.212
- Langan-Evans C, et al. Nutritional Considerations for Female Athletes in Weight Category Sports. European Journal of Sport Science. 2021. DOI: 10.1080/17461391.2021.1936655
- Akhagba O. Menstrual Silence and Stigma in Mixed Martial Arts and Combat Sports: A Scoping Review. Sport and Policy Journal. 2025. DOI: 10.15804/spj.2025207
- Hardaker N, et al. Differences in Injury Profiles Between Female and Male Athletes Across the Participant Classification Framework: A Systematic Review and Meta-Analysis. Sports Medicine. 2024. DOI: 10.1007/s40279-024-02010-7
- McGroarty NK, et al. Sport-Related Concussion in Female Athletes: A Systematic Review. Orthopaedic Journal of Sports Medicine. 2020. DOI: 10.1177/2325967120932306
- Zhong Y, et al. The Practice of Weight Loss in Combat Sports Athletes: A Systematic Review. Nutrients. 2024. DOI: 10.3390/nu16071050
本記事は研究論文の要約であり、医学的助言ではありません。減量にともなう月経の停止や不順、疲労骨折、食べることへの強い不安がある場合は、婦人科・内科またはスポーツ栄養の専門家にご相談ください。成長期の減量は発育に影響しうるため、保護者と医療者を交えた判断が必要です。競技の場でハラスメントを受けた場合は、日本スポーツ協会の相談窓口など、所属団体から独立した相談先を利用できます。






