フラフープでウエストが細くなった試験はある。ただし、体重や筋持久力まで同じように変わったわけではない。加重フープと歩行を比べた研究から、周囲長と腹部の脂肪の違い、ゲームの運動との区別、楽しく続けるための考え方を読む。研究の平均値を、自分への約束にしないための記事。
部屋の床に置いた輪をまたぐ。動画では軽々と回っていたフラフープが、自分の腰では落ちる。運動を始めようと思ったのに、まず家具との距離を測ることになる。検索画面には「ウエスト」「ダイエット」の文字が並ぶが、回せるようになることと、体が変わることは別の問いだ。
加重フープを使った小さな試験では、ウエスト周囲長が減った。歩行との比較や体幹の筋持久力の測定も行われている。[2][15] 輪が回ったかどうかより、その研究が何を測ったかを見たい。
既存の「お腹痩せの科学 第1回 腹筋運動で脂肪は落ちるのか、回数より大切な運動の選び方」が扱う腹筋運動一般の問いは、そちらに譲る。ここで読むのは、重さのある輪を回した人の周囲長、体組成、そして遊びとしての運動である。隣の記事の縄跳びやダンスとも、種目の優劣を競う話にはしない。

ウエストの変化は、歩行と比べても見られた
中心になるのは、過体重で糖尿病のない人を対象にした無作為化クロスオーバー試験である。参加者を偶然の方法で順番に割り付け、加重フープと歩行の両方を経験してもらう設計だ。募集したのは55人で、53人が試験を完了した。完了者の平均の体格指数は28±1 kg/m2、ウエスト周囲長は92±1 cmだった。[2] 年齢と性別の内訳はこの報告では確認できず、18〜39歳の女性にそのまま当てはめられるかは未確認である。
使ったのは1.5 kgの加重フープである。フープを6週間、その後に歩行を6週間行う順番と、逆の順番を比較した。両方の運動によるエネルギー消費の増加は同程度になるように設定されていた。実際の平均はフープが1日12.8±0.5分、歩行期間の歩数が1日9,986±376歩だった。[2] この歩数の記載を、フープの時間と同じ長さの散歩と読み替えることはできない。
ウエスト周囲長の変化は、フープ期間で−3.1±0.3 cm、歩行期間で−0.7±0.4 cmだった。フープのほうが大きく減り、運動間の差も統計的に有意だった。[2] 統計的に有意とは、この比較で差が偶然だけによって生じたと考えにくいという意味であり、参加者全員に同じ変化があったという意味ではない。
クロスオーバーという設計では、同じ参加者が別の期間に両方の運動を経験する。最初から別々の人の成績を並べる場合とは違い、人による体格などの違いを比較の中で扱いやすくする工夫である。この試験では実施する順番も無作為に割り付けた。[2] 研究の人数だけでなく、どのように比べたかにも意味がある。
この試験を読む際の限界は、ここにまとめておく。結果は過体重の参加者が、指定された輪を指定された期間使った集団の平均である。体格や道具の違う読者への予測にも、終了後の長期的な維持の証明にも使えない。平均に添えられた「±」は個人が必ず収まる範囲を示すものではなく、ウエスト変化の信頼区間も記載されていない。[2] 買い物の前に「この輪なら自分も同じだけ変わる」と決めるより、比較で確かめられた条件を残して読むほうがよい。
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
腹部の測定結果と、歩行に残る役割
同じ試験の体重変化は、フープ期間で−0.6±0.2 kg、歩行期間で−0.5±0.2 kgだった。両者の差は有意ではない。[2] ウエストの結果だけを見て「歩くより体重を落とせる」と言い換えると、研究が実際に示した比較から外れる。
体組成は、体の脂肪や筋肉などの内訳を指す。この研究では、二重エネルギーのX線を用いる測定によって体組成を調べた。主な評価項目は腹部の指定領域に占める脂肪の割合であり、フープ期間では低下し、歩行期間では有意な低下が見られなかった。変化の運動間の差も有意で、体幹の筋肉量の増加もフープのほうが大きかった。[2]
ここで「腹部の脂肪割合」と「内臓脂肪だけ」を同じ言葉として使うことは避けたい。論文が報告した指定領域の指標を、別の部位の脂肪量に置き換えることはできない。また、脂肪の割合が下がったという結果から、脂肪が何kg減ったのかも計算できない。報告されていない効果の大きさは、空欄のまま読む必要がある。[2]
代謝に関する結果では、歩行で収縮期血圧が下がり、HDLコレステロールが増えた一方、フープではそれらの有意な変化は見られなかった。フープではLDLコレステロールが下がった。[2] いわゆる善玉、悪玉と呼ばれる血中脂質の指標も含め、測った項目によって結果は分かれている。
仕事帰りの散歩を輪に全部置き換えるか、という判断に、この研究だけで答えを出す必要はない。周囲長、体力、外に出る時間、楽しいかどうか。運動に求めることを先に言葉にすると、ある項目の成績だけで種目を選ばずに済む。ウエストの比較でフープがよかったことは、歩行の結果を消す理由にはならない。[2]
別の女性の試験では、持久力は改善しなかった
もう一つの加重フープ研究は、女性18人が参加した6週間の試験である。終了後の測定に戻ったのは13人だった。運動前後にウエストとヒップの周囲長、体幹の筋持久力、皮下脂肪の厚みを測ったが、歩行などの比較群を置いた設計ではない。[15] 女性の研究だが年齢の内訳は記されておらず、18〜39歳の女性にそのまま当てはめられるかは確認できない。
平均のウエスト周囲長は3.4 cm、ヒップ周囲長は1.4 cm減り、いずれも統計的に有意だった。一方で、体幹の筋持久力には有意な変化がなかった。複数の部位でつまんだ皮下脂肪の厚みの合計は、減少せず、増加したと報告されている。[15] この試験の狙いには、輪を回す練習が体幹の持久力を高める道具になるかを確かめることが含まれていた。[15]
この報告にある皮下脂肪の厚みや比率の数値表記には、単位の読み取りに注意が必要な箇所がある。そこから脂肪の増加量を具体的に言い切ることは控え、報告された変化の方向を使う。少なくとも、測った皮下脂肪が一律に減った研究として紹介することはできない。[15]
終了時に再測定できた人が全員ではない点も重要だ。戻らなかった人の結果が同じだったかどうかは、この報告だけでは分からない。周囲長の平均を、そのまま参加した女性全員の成績にすることはできず、比較群がないため、フープだけが変化を起こしたとも断定しにくい。[15]
筋持久力の評価には、体幹の5種類のテストを用いた。ここで測ったのは、姿勢を保ったまま筋肉が力を出す等尺性の能力である。輪を回す動作が上手になったかを採点するテストとは、評価する課題が違う。[15] 輪を落とさず回せた日に達成感があっても、それをこのテストでの改善と同じものとして扱う必要はない。
この結果から次に知りたくなるのは、回している最中に筋肉がどの程度活動したのかである。動作中の活動を調べる測定と、練習後の能力を調べる測定を区別すると、研究の問いが見えてくる。動いている瞬間、練習を終えた時点、その後も続ける気持ち。次の研究は、このうち動作中の筋活動と心理的な評価に焦点を当てている。[1][15]
数字で読むフラフープの試験
53人:加重フープと歩行の比較試験を完了した過体重の参加者数。[2]
1.5 kg:比較試験で使った輪の重さ。家庭用の輪すべての条件ではない。[2]
12.8±0.5分/日:フープ期間の平均実施時間。推奨時間という意味ではない。[2]
−3.1±0.3 cmと−0.7±0.4 cm:それぞれフープと歩行のウエスト周囲長の変化。[2]
18人中13人:別の女性の試験で、参加者のうち終了時の測定に戻った人数。[15]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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