カラオケのストレス発散で仲間と近づける?集団歌唱の協力と競争から考える

カラオケで仲間と歌えば、いつでも親しくなれるのか。大学生の競争と協力の実験、大小の合唱団、地域の習い事を追った研究から、気分の変化と人への親しさを分けて読む。歌う前の関係や競う相手で結果が異なること、唾液のホルモンだけではストレス発散を判定できない理由も確かめる。

サビに入ると、隣の友人もマイクを持った。同じサビを歌う時間もあれば、点数を見比べる時間もある。同じ部屋で声を出すことと、同じ気持ちになることは、どこまで重なるのだろう。

仲間と歌うことには、人への親しさを高める可能性がある。親しさの変化は、競う相手との元の関係で異なる。大学の友人集団を調べた実験では、あまり親しくない別集団の相手には協力でも競争でも親しさが増した一方、もともと親しい集団内の相手とは、競争の後に親しさが下がった。[16]

一人と合唱の違いは既存記事「ストレス発散に歌うなら一人でもよい?合唱で加わるつながりと気分の違いを読む」に、歌詞の理解は「ストレス発散のカラオケは意味の分かる歌がよい?歌詞の理解と気分を読み解く」に譲る。ここでは、同じ仲間との歌でも、競うか合わせるか、誰を相手にするかで何が違うのかを追う。

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歌って楽しいことと、相手に近づくことは別である

ストレス発散という言葉は便利だが、中には違う問いが入っている。帰るときに気分が軽くなったか。隣の人を身近に感じたか。体の指標が変わったか。これらを分けると、歌った後の「よかった」を、何でも同じ効果として扱わずに済む。実際、気分、人とのつながり、唾液のホルモンを並べて測った研究では、指標ごとに異なる動きが見られた。[1]

若い成人の合唱団員71人を対象にした実験では、歌うか話すか、皆で行うか一人で行うかを組み合わせた4条件が設けられた。歌う条件では話す条件よりも本人が感じる気分が好ましい方向へ変化し、とくに皆で歌うときにその傾向が強かった。また、皆で歌うことは皆で話すことよりも社会的なつながりの感覚を高めた。対象は若い成人の合唱団員であり、18〜39歳の女性が友人とカラオケに行く場面への適用には、合唱経験や歌い方の違いを考える必要がある。[1]

この比較が面白いのは、対照が単なる無活動ではない点だ。会って話す時間にも、人と過ごす要素はある。そのうえで歌う条件に違いがあったのであり、著者らは音楽以外の集団活動を超える心理的・生物学的な作用を認めている。同時に、ストレスの程度、やり取りの親密さ、既存の関係など、周囲の文脈が結果に強く影響すると論じている。[1]

日常に置き換えるなら、「歌った」という行動の札だけでは、その場を説明しきれないということだ。友人に声を重ねた時間と、上司の前で順番を待った時間を、同じ集団歌唱として数えることはできる。しかし本人が確かめたいのは、声を出した事実だけではなく、その時間をどう経験したかである。研究の結論も、歌の存在だけで文脈が消えるとはしていない。[1]

同じ部屋にいること、同じ曲を聴くこと、実際に声を合わせることも分けたい。71人の実験は、歌うか話すかという行為と、皆で行うか一人で行うかという社会的な条件を交差させていた。[1] 友人とカラオケへ行っても、交代で独唱を聴く時間が長ければ、皆が同時に歌う合唱と条件は異なる。「複数人で行った」という予定表の分類だけでは、研究と同じ体験だったかは決められない。

そのため、ここでいう研究から考える工夫は、独唱をやめて全員で歌うように迫ることではない。誰と何を共有したいのかを考えるために、活動の中身を分けることだ。歌うことによる気分の変化と、皆で歌うことによるつながりの変化を区別する設計には、日常の体験を整理する手がかりがある。[1] 好きな曲を聴いて満足した人と、友人に声を重ねて満足した人が、帰り道に同じ言葉を使っていても不思議ではない。

疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。

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競争は、知らない相手と親しい相手で結果が違った

歌を通じた親しさを調べる際に、協力と競争を分けたのが大学の友人組織を対象とした研究である。参加者は88人で、対象は欧州の大学の友人組織である。18〜39歳の女性一般に当てはめるには、この特定の所属集団での実験という違いを考える必要がある。その組織には、独自の名前と集団としての意識を持つ、5〜20人の友人からなる小集団があった。研究者はこの普段の関係を利用し、同じ小集団の仲間か、別の小集団の相手と歌う場面を作った。[16]

参加者は4人のチームに分かれ、別チームと一緒に大きな声で歌う協力条件か、相手より大きな声で歌おうとする競争条件を経験した。ここで比べたのは、友人組織の集団歌唱を再現し、相手より大きな声で歌おうとする競争である。マイクや伴奏、機器の採点を使うカラオケの効果を検証した実験とは区別したい。生声を合わせる集団歌唱と、マイクで声を増幅して交代で歌う場面では、活動の条件が違う。声量競争の結果から、カラオケの点数勝負で親しさがどう変わるかを直接判断することはできない。[16]

別の小集団のチームに対しては、協力した場合も競争した場合も、歌う前より歌った後の親しさが有意に高かった。互いによく知らない相手との間では、共通の協力目標がなくても、歌うやり取りの後に近づくことがあった。競争は必ず人を遠ざける、という読み方は、この結果には合わない。[16]

一方、同じ小集団の別チームと競った場合には、その相手への親しさが下がった。もともと近い相手との競争には、別の結果が出たのである。親しさの変化を読む鍵は、勝負の有無だけでなく、歌う前の関係にもあった。著者らの結論は、親しさの少ない人との結びつきを促す可能性と、緊密な集団内では競争が親しさを損ねる可能性を併記している。[16]

ここから得られる実用的な視点は、盛り上がりを関係の改善と取り違えないことだ。声量が大きくなった場面を見ても、誰が誰を近く感じたかまでは分からない。研究が測ったのは歌った前後の親しさであり、その変化は相手との元の関係によって異なった。[16] 部屋の音量計には、仲の良さを表示する欄はない。盛り上がったという感想だけでなく、また一緒に過ごしたい相手だったかも考えてみたい。

また、大学の実験での「別の小集団」は、街で偶然会った人々を意味しない。同じ大学の友人組織の中にある、別の名前と集団意識を持つ相手である。[16] 共通の所属がある場での結果を、関係のない相手との出会いすべてへ広げないことも大切だ。職場の同僚、昔からの友人、新しく知り合った人では、歌い始める前に共有している時間が違う。誰を招くかを考えるときには、人数だけでなく、参加者がどのような関係で集まるかにも目を向けたい。

大人数の合唱は、出発点と変化量を分けて読む

友人との部屋を離れ、地域の合唱団まで視野を広げると、別の比較が見えてくる。地域の合唱団員が20〜80人の小さな合唱団と、それらを合わせた232人の大合唱団で歌った研究では、90分の練習の前後に、本人が感じる社会的な結びつきと痛みの閾値が測られた。痛みの閾値とは、痛みを感じ始める境目を指す測定値である。対象は地域の合唱団員であり、18〜39歳の女性のカラオケに同じ変化が生じるかは、歌唱経験や集団の構成を含めて別に検討する必要がある。[7]

歌った後には、集団に含まれている感覚、人とのつながり、好ましい気分が高まり、痛みの閾値も上がった。大集団と小集団で、痛みの閾値への影響は同程度だった。ただし、研究ではこの閾値をエンドルフィン放出の代理指標として使っている。痛みの感じ方を測ったことと、その物質の放出を直接測ったことは区別する必要がある。[7]

親しさについては、歌う前も後も、小さい合唱団の方が高かった。その一方で、前から後への変化は大合唱団の方が大きかった。[7] この組み合わせは矛盾ではない。出発点が高いことと、その日に増えた幅が大きいことは違うからだ。「大人数の方が仲良くなる」とだけ紹介すると、もともとの親しさの違いを落としてしまう。

著者らは、互いを知らない人を含む大きな場でも、歌うことが親しさを促す結果だと考察している。[7] ただ、参加者数は、遊びの会を大きくすればよいという推奨人数ではない。小集団の歌唱と大合唱団という研究の条件を示す数字だ。友人をさらに誘うかを決めるために、この人数を目標にする必要はない。

この研究と大学の競争実験を合わせると、集団の規模だけでも、協力の有無だけでも説明は閉じない。元から誰を知っているか、集団全体への親しさを見ているか、目の前の相手への親しさを見ているかが違う。[7][16] カラオケの帰り道に「楽しかった」と思うことと、「あの人とまた話したい」と思うことは、別々に振り返ってよい。

数字で読む歌と仲間への親しさ

71人:歌う・話すと、皆で・一人でを組み合わせて比べた若い成人の合唱団員。[1]

88人:元の友人関係を踏まえ、協力と競争の歌唱を比べた大学の組織の参加者。[16]

232人:小さな合唱団を合わせた大合唱団の規模。歌う前後の親しさの変化を調べた。[7]

90分:大小の合唱団で、前後の気分やつながりなどを測った歌唱時間。[7]

7か月:歌と創作の地域講座を追い、健康や集団への結びつきを比較した期間。[15]

疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。

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宮川涼 Founder

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