酸欠であくびは出るのか?視床下部の低酸素と人の飽和度を分けて読む

講義のあとのあくびを、酸欠を補う深呼吸だと決めやすい。麻酔したラットでは、視床下部への化学的な低酸素であくびの一連の動きが出た。無呼吸が疑われる129人では、あくびの多さと平均酸素飽和度の低さが相関した。前方循環の脳梗塞10人では、酸素飽和度を含む臨床指標が正常範囲でも異常なあくびがあった。

会議室で資料を読み終えた途端、大きなあくびが出た。隣の人は、空気が悪い、酸欠だ、と言う。長く息を吸ったあとで目が少し覚めた気がして、その説明を、そのまま受け取りかける。

あくびだけで酸欠を判定することはできない。睡眠時無呼吸が疑われる人では、あくびの多さと酸素飽和度の低さが相関した。[6] 一方、急性期脳梗塞の患者では、酸素飽和度を含む臨床指標が正常範囲でも異常なあくびが観察された。[5] 大きく息を吸う動きの形と、その動きが果たす役割を区別するのが、問いへの入口になる。

有酸素運動のあくびを、眠気と体温と覚醒に分ける問いは、既存記事「有酸素運動であくびが出るのは眠いから?体温と覚醒の仮説を分けて研究で読む」に譲る。ここで分けるのは、低酸素の注入、血の飽和度、中耳の気体である。酸素や二酸化炭素を変えて数値にした実験は、ここで扱う研究では中耳の酸素分圧と圧力を見ている。[15][18]

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大きく息を吸う動きには、覚醒という問いもある

あくびは、人から魚まで広く見られる定型の動きで、仕組みも役割も完全には分かっていない。広い範囲の筋肉を伸ばす動きと一緒になることもある。[4] 背伸びとあくびがなぜ揃うか、別々にも出るかは、既存記事「背伸びとあくびはなぜ一緒に出る?目覚めの連動と別々にも起きる仕組みを読む」に譲る。

酸素を取り込むためなら大きな吸気に目が向く。覚醒を保つ働きを考えるなら、口を開けるときに頸の周囲がどう動くかにも目が向く。2008年の仮説論文は後者に注目した。頸にある頸動脈小体への機械的な刺激が、覚醒や警戒、目覚めた状態を高めるという提案である。[4] 同じ動きを、吸い込む空気の量だけでなく、体の内部への刺激として見る発想だ。

この見方なら、あくびのあとに目が覚めた感じがしても、直ちに酸素補充へ結び付ける必要はない。著者らが提案する経路は、動き、頸の器官への刺激、覚醒という順になる。[4] ただしこれは仮説論文の説明であり、実験で確立した効果として読む段階にはない。後半では、その器官の位置と著者らの考えた仕組みを詳しく見る。

隣の人のあくびを見たときの脳活動も研究されている。映像による研究では、社会的な手がかりに応じる部位や、他者の動作を見た際の活動が検討された。[1][2] 会議室のあくびを考える入口は、空気だけでなく、眠気、身体の動き、目に入る人の顔にも広がっている。

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視床下部の内側は、化学的な低酸素であくびの型を出した

実験は、麻酔下で自分で呼吸しているラットである。18〜39歳の女性の日常のあくびに、そのまま当てはめることはできない。視床下部の室傍核へ、グルタミン酸、シアン化物、一酸化窒素を放出する化合物を微量ずつ入れた。見ていたのは、肋間筋の筋電図を吸気の指標とし、顎を開く筋の筋電図、血圧、皮質の脳電図である。[3]

グルタミン酸を、室傍核の内側の小細胞亜核へ入れると、定型のあくびが出た。最初に血圧が下がり、皮質脳電図が覚醒の側へ移り、そのあと口を開けた1回の大きな吸気が来る。自発のあくびでも同じ順番だった。著者らは、この内側の部位があくびの引き金だと述べている。[3]

シアン化物を同じ部位へ入れると、グルタミン酸のときと同じあくびが出た。著者らは、この部位が室傍核の中の化学的な低酸素、または血流の不足に敏感だと読む。一酸化窒素を放出する化合物では、1回の大きな吸気が出たが、始まるまでの時間は一定ではなかった。拡散する一酸化窒素が、傍らから働く因子としてあくびを起こし得る、という読みである。[3]

酸素センサーの文は、結果のあとに置かれた仮説である。内側の小細胞亜核には酸素を感じる仕組みがあり、それがあくびを起こす、と著者らは仮説している。[3] 仮説の範囲を越えて、講義室の人があくびで血の酸素を補った、とは書けない。対象は麻酔したラットで、低酸素は吸い込ませた空気ではなく、脳の一点への注入である。出た動きには1回の大きな吸気が含まれる。著者らが結果として並べたのは、血圧の低下から吸気までの一連の動きである。

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人の飽和度とあくびが逆に並んだのは、いびきの調査だった

人で酸素の数値とあくびの多さを同じ日の流れに置いたのは、睡眠時無呼吸が疑われるいびきの人を前向きに見た臨床研究である。18〜39歳の女性一般にそのまま当てはめるには、睡眠時無呼吸が疑われる対象者という条件の違いがある。129人が終夜睡眠ポリグラフ検査を受け、眠気のエプワース尺度にも答えた。あくびの数は、検査の翌日の日中に数えている。[6]

群は無呼吸低呼吸指数で分かれる。5未満が43人、30を超える人が86人である。眠りの効率は、二つの群で似ていた(p>0.05)。あくびの頻度の平均順位は、5未満が43.48、30超が75.76で、30超の側が高かった(p<0.01)。[6] 75という数字を、あくびの回数だと読むと、自分の午後を採点したくなる。論文の括弧は平均順位である。回数でも、1人あたりの平均回数でもない。

ノンレム睡眠のN1、N2、N3の平均時間と、酸素飽和度の平均は、30超の群で統計的に低かった(p<0.01)。あくびの頻度は、ノンレムの長さと負の相関(r=−0.53)、平均の酸素飽和度とも負の相関(r=−0.31)、エプワース尺度とは正の相関(r=0.46)だった。いずれも p<0.05 である。[6] 酸素の相関は、眠りの相の長さとの相関より小さい。酸素だけを矢印の先に置くと、同じ表の中の大きい方の相関を落とす。

著者らの結論は、睡眠の相が短いこと、エプワース尺度が高いこと、酸素飽和度が低いことに加えて、あくびの頻度の増加は睡眠不足を示し得る、というものだ。[6] あくびが飽和度を上げた、とも、飽和度の低下があくびを起こした、とも書いていない。相関は、いびきがあり無呼吸が疑われた人の中の並びである。講義のあとで1回したあくびを、この129人の重症側へ重ねない。

数字で読むあくびと酸素

129人:いびきがあり睡眠時無呼吸が疑われ、終夜検査の翌日にあくびを数えた人数である。指数5未満が43人、30超が86人。[6]

43.48と75.76:あくびの頻度の平均順位である。回数ではない。30超の群が高い(p<0.01)。[6]

r=−0.31:あくびの頻度と平均酸素飽和度の相関である。ノンレムの長さとは r=−0.53、エプワース尺度とは r=0.46。[6]

10人:前方循環の急性期脳梗塞で、15分に3回以上のあくびがあった患者である。異常なあくびの18〜39歳の女性一般の日常のあくびに、そのまま当てはめる対象ではない。期間は平均58時間。[5]

r=−0.76:病巣内の見かけの拡散係数の低下と、異常なあくびの期間との相関である。補正後の p=0.02。[5]

42.9パーセント:中大脳動脈の急性期梗塞161人のうち、病的あくびがあった69人の割合である。[12]

脳梗塞の異常なあくびは、尺度と場所に結びついた

異常なあくびは脳梗塞で見過ごされやすい、と10人を画像で重ねた研究は書く。対象は前方循環の急性期梗塞で、明らかな原因がなく15分に3回以上あくびをした人である。期間は平均58時間。グラスゴー・コーマ・スケールは平均12.6、国立衛生研究所の脳卒中尺度は平均11.6、改変ランキン尺度は平均3.5だった。[5]

臨床指標は正常範囲だった。項目には血中の酸素飽和度、血糖、体温、血圧、心拍が含まれる。脳卒中尺度の11.6は健康なゼロではない。正常範囲と言われたのは、尺度の点数とは別に報告された臨床指標である。[5]

病巣は10人中9人で重なった。島皮質が7人、尾状核が7人である。見かけの拡散係数の低下と異常なあくびの期間は r=−0.76(ボンフェローニ補正後の p=0.02)で相関した。著者らは、島皮質がセロトニンを介したあくびの部位かもしれない、と書く。10人の重ね合わせを、健康な人の島の地図にはしない。[5]

横断研究は、中大脳動脈の急性期梗塞161人を連続して見ている。18〜39歳の女性一般への適用には、急性期の患者を調べたという条件の違いがある。病的あくびは、疲労や退屈以外の理由で起こる、抑えがたく頻繁で繰り返すあくびと定義され、操作上は15分に3回以上、観察は6時間である。69人、42.9パーセントにそれがあった。皮質梗塞は112人(69.6パーセント)、島は65人(40.4パーセント)、弁蓋は54人(33.5パーセント)で、病的あくびはこれらの梗塞と、高い脳卒中尺度に多かった(p<0.05)。結果の文では、尺度10以上の重症が軽症から中等症より多かった(p<0.05)。転帰と死亡率とは有意な関係がなかった。[12]

酸素飽和度は161人でも記録項目に入る。結論が結び付けたのは重症度と、皮質・島・弁蓋の梗塞で、長期の転帰と死亡とは結び付けていない。[12] 15分に3回は、梗塞の患者を揃える定義である。[5][12]

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宮川涼 Founder

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