出産の呼吸法は練習していなくても使える?事前の訓練と当日の相談を分けて読む

出産の呼吸法を練習していないと、当日うまく対処できないのか。事前の自己催眠やリラクセーションを調べた比較試験から、痛み、硬膜外鎮痛、分娩時間、不安への効果を分けて読む。練習の有無だけで結果を決めつけず、助産師に何を伝え、どんな支援を相談するかを考える。

入院バッグに肌着を詰めながら、母親学級でもらった呼吸法の紙を開く。息を吐く合図は読めるが、自分で練習した記憶がない。「陣痛が始まってから説明を聞いても使えるのか」。荷物より、覚え残したことが気になってくる。

答えの芯は、事前に練習していないことだけで、当日の対処や出産の結果は決められないということだ。健康な初産婦を対象に、自己催眠やリラクセーションを事前に習った群と通常の妊婦健診などを受けた群を比べた大きな試験では、痛みと硬膜外鎮痛の使用に群間の差は認められなかった。この試験は呼吸法単独の練習効果を検証したものではなく、「当日に教われば練習した人と同じにできる」かも調べていない。[5]

そのため本記事では、呼吸の型を急いで暗記するより先に、研究が何を比べ、何を結果として測ったかを整理する。当日使う方法は、練習していないことを助産師に伝えて相談する。一般のヨガと出産の成果を扱う既存記事「マタニティヨガと出産|効果量が大きいほうが確実性は低いという逆転」とは分け、ここでは事前の準備と、当日に求める支援の関係に絞る。

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練習していない人は、何と比べられているのか

「出産の呼吸法を練習していない」という検索には、違う心配が重なっている。息の吐き方が分からないという技術の問題、痛みに耐えられるかという不安、練習不足で出産が長くなるのではという予測だ。これらは、研究でも別の結果として扱う必要がある。痛みの点数が変わることと、分娩時間が変わることは、同じ結果ではない。[15]

まず知っておきたいのは、通常ケアの群は「誰からも助けてもらわずに産む群」ではないという点だ。事前の特別な訓練を追加した群に対して、普段の妊娠中のケアを受ける群を置いた試験である。追加の教室で得られる効果を問う設計であって、医療者の支援を受けること自体の価値を否定する比較ではない。[5]

同様に、呼吸法、自己催眠、リラクセーションは、名前を入れ替えてよい方法ではない。自己催眠は自分で催眠状態を用いる訓練、リラクセーションは緊張を緩めるための方法を指し、研究では異なる介入として扱われる。心身への介入をまとめたレビューでも、呼吸スキル、筋弛緩法、自己催眠などは分けて整理されている。[5][15]

したがって、自己催眠の試験で差がなかったことを、そのまま「どんな呼吸法も無意味」と読み替えることはできない。反対に、複数の心身への介入に好ましい結果があっても、自分が見た動画の吐き方の効果まで確認されたことにはならない。方法の名前が似ているほど、比較の中身を確かめたい。[5][15]

家で動画を最後まで見たかどうかは、読者が気にしやすい境目である。一方、研究の境目は、どの訓練を受けた群か、何を追加した群かに置かれる。そのずれを埋めずに「未練習でも大丈夫」「未練習では困る」と言い切ると、どちらも研究以上の約束になってしまう。[5]

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自己催眠の大きな試験では、鎮痛の使用率は近かった

デンマークの無作為化比較試験では、健康な初産婦1222人を対象に、自己催眠群、リラクセーション群、通常ケア群を比べた。無作為化とは、参加者を偶然に基づいて群に割り付け、比較する方法である。自己催眠群とリラクセーション群は、それぞれ1時間の授業を3回受け、追加の練習用の音声も使った。自己催眠プログラムと、各種のリラクセーションやマインドフルネスを用いるプログラムの比較であり、息の吐き方だけを教える一般的な呼吸法の教室とは介入の内容が異なる。18〜39歳の女性が読む場合も、健康な初産婦という対象に加えて、受けようとしている講座の内容が一致するかを確かめる必要がある。[5]

主な評価項目は、硬膜外鎮痛の使用だった。背中から薬を用いて痛みを和らげる医療上の鎮痛法であり、研究はその使用の有無を測っている。使用率は自己催眠群31.2%、リラクセーション群29.8%、通常ケア群30.0%だった。研究者は群間に差を認めず、本人が報告した痛みの指標にも統計学的な有意差はなかったとしている。[5]

使用率に添えられた95%信頼区間は、自己催眠群27.1〜35.3%、リラクセーション群25.7〜33.8%、通常ケア群24.0〜36.0%である。推定値に幅があることも含めて読む数字だ。小数点以下の見た目の違いを取り上げ、ある訓練が勝ったとする結果ではない。[5]

この試験が支えるのは、試された事前訓練を追加しても、集団として痛みや硬膜外鎮痛の使用が改善したとはいえなかった、という判断である。研究者も自己催眠を痛みへの方法として退ける前に、特定の集団に着目した研究が必要だと述べている。差がなかった結果と、今後検討すべき余地の両方を残す読み方が必要だ。[5]

ここから実生活へ引き寄せるなら、「習ったのに鎮痛を使ったら失敗」という採点は成り立たない。訓練を受けた群でも、医療上の鎮痛が使われていたからだ。研究で数える使用率は、本人の努力の点数ではない。呼吸法の準備と、痛みへの医療的な支援を相談することは、別々の選択として考えられる。[5]

小さな研究の好結果を、そのまま約束にしない

一方、事前の自己催眠を調べた先行する予備的研究には、好ましい数字がある。訓練を受けた妊婦77人を、出産歴と妊娠週数を合わせた対照3249人と比較した研究だ。初産婦の硬膜外鎮痛の使用は、訓練群で50人中18人、36%、対照群で1436人中765人、53%だった。[1]

相対リスクは0.68、95%信頼区間は0.47〜0.98だった。相対リスクは群の間で起きる割合を比べた値で、この研究では訓練群の使用割合が低かったことを示す。また、分娩促進を必要とした割合も訓練群18%、対照群36%と低く、相対リスク0.48、95%信頼区間0.27〜0.90と報告された。[1]

ただし、ここでは訓練群のデータを前向きに集め、対照には過去に通常収集された出産データを使っている。参加者を無作為に割り付けた比較ではない。出産歴や妊娠週数を合わせたことと、群の条件がすべて同じであることは別だ。研究者自身も、効果を詳しく確かめるためには十分な規模の無作為化試験が必要だとしている。[1]

この結果と、後の大きな無作為化試験で差がなかった結果は、片方を消してよい関係ではない。予備的研究には期待を持てる関連があったが、より大きな比較で同じ方向の差が確認されなかった、という順で読む。好ましい数字だけを抜き出して「準備すれば麻酔を避けられる」とするのは強すぎる。[1][5]

別の古い比較試験では、初めて妊娠した女性を対象に、通常の出産準備教室に、筋肉の電気活動を知らせる練習か、皮膚の電気の通りやすさを知らせる練習を加えた。体の反応を見ながら緊張を調整する、バイオフィードバックと呼ばれる方法である。筋肉の電気活動を使った訓練は有効に行えたが、皮膚の反応を使った訓練はそうではなかった。[2]

それでも、分娩と出産の成績を測る指標では、訓練群と対照群の差は認められなかった。参加者は出産の早い段階で、身につけた技術にある程度の助けを感じたと報告している。練習中に技術を身につけること、本人が助かったと感じること、分娩の指標が動くことは、一続きに保証されるものではないのである。[2]

比較する対象の違いも、読者が見落としやすいところだ。大きな無作為化試験は健康な初産婦を対象にしている。予備的研究は訓練を受けた妊婦全体の人数と、初産婦だけを取り出した結果を分けている。77人という訓練群全体の人数を、36%という割合の分母として計算し直してはいけない。初産婦の比較の分母は50人である。対象をそろえて読むだけでも、数字から受ける印象は整理できる。[1][5]

研究で問われた「効果」の中身も確認したい。硬膜外鎮痛の使用を主に調べる試験では、その使用が減ったかどうかが大きな判断材料になる。一方、バイオフィードバックの研究では、本人が技術に助けを感じたという報告と、分娩の指標に差がなかったという結果が並ぶ。講座を選ぶ人が期待する「助かった」と、研究が数える「差があった」は重なる部分もあれば、重ならない部分もある。何を知りたいかを先に決めると、違う結果を矛盾として捨てずに読める。[2][5]

数字で読む事前練習と出産の結果

1222人:健康な初産婦を対象にした、事前訓練と通常ケアの無作為化比較試験の人数。[5]

1時間を3回:自己催眠群とリラクセーション群が受けた授業。練習用音声も追加された。[5]

31.2%・29.8%・30.0%:それぞれ自己催眠群、リラクセーション群、通常ケア群の硬膜外鎮痛の使用率。群間差はなかった。[5]

36%対53%:予備的研究における初産婦の硬膜外鎮痛の使用率。無作為化試験の結果と混同しない。[1]

24試験から25研究:心身への介入を検討したメタ分析に含まれた数。呼吸だけを調べた本数ではない。[15]

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宮川涼 Founder

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