ダイエット用のタバコと健康リスク|体重だけでは見えない腹囲と内臓脂肪の研究

ダイエット用のタバコを健康の面から考える。喫煙量に関連する遺伝的指標と体重、腹囲を比べた研究、日本の女性の内臓脂肪を調べた研究を読む。体重の低さだけでは喫煙の健康リスクを評価できない。腹囲の絶対値とBMIをそろえた比較の違い、健診で体重以外に確認したい情報を整理する。

健診の用紙には、体重の隣にも数字が並ぶ。喫煙の健康リスクを考えるとき、体重の欄だけを見て安心できるだろうか。喫煙量に関連する遺伝的な指標を使った研究では、BMIの低さと、BMIをそろえた場合の腹囲の大きさが、同じ解析の中で並んでいた。[7]

BMIとは、身長に対する体重を表す体格の指標である。腹囲はお腹の周囲の長さだ。同じ体格でも、脂肪の分布には違いがある。日本の健診受診者の研究では、女性の喫煙者で内臓脂肪面積が高く、年齢やBMIを考慮しても喫煙との関連が残った。[6]

したがって、軽い体重を期待してタバコを選ぶ根拠にはならない。「禁煙すると太るのか 体重増加への不安と運動の役割を長期の健康から考える」は既存記事に譲る。ここで見るのは、やめた後の体重ではなく、吸っている間の体格とお腹の脂肪が、なぜ同じ方向の答えにならないのかという問題である。[6][7]

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体重が軽いことと、お腹の脂肪が少ないことは別である

服のサイズが変わらず、自宅の体重もほぼ同じだったとしても、その情報は、そのまま内臓脂肪の量を教えてはくれない。若い成人を対象にした横断研究でも、BMIによる分類と、腹部や内臓脂肪の指標による分類にはずれがあった。[14]

この研究は、医師や看護師の研修者と年齢を合わせた対照を含む、22〜30歳の12,874人を調べたものだ。BMI、腹囲と身長の比、体脂肪率、生体電気インピーダンスから求めた内臓脂肪などで分類を比べた。腹部や内臓脂肪を見る指標を使うと、BMIを使う場合より肥満に分類される割合が高かった。[14]

分類の一致度を表す係数は、BMIと内臓脂肪では0.29、95%信頼区間は0.26〜0.32だった。これは、別の物差しを使っても分類が一致しない人がいることを示す。著者らは、BMIだけでは若い医療従事者の腹部・内臓脂肪を過小評価すると結論している。[14]

ただし、この結果は「若い人にはBMIが不要」という意味ではない。測っている対象が異なるため、体重からの評価だけでは拾いきれない面がある、という話だ。また、男女を含む医療従事者中心の集団の結果であり、18〜39歳の女性全体にそのまま当てはめて割合を推測することはできない。[14]

ここで大切なのは、体の形をさらに厳しく採点することではない。体重の数字が低いという理由だけで、喫煙を有利な行動に数えないことである。BMIの低さを示す結果があっても、腹部脂肪の少なさを保証する材料にはならない。喫煙を調べた研究には、まさにその食い違いが現れている。[7]

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喫煙量の研究では、腹囲の数字が比較の仕方で変わった

この問いの中心となるのは、2015年に発表されたメンデルランダム化のメタ分析である。メンデルランダム化とは、行動に関連する遺伝的な違いを手掛かりに、その行動と結果の関係を検討する方法だ。この研究では、喫煙量に関連する遺伝的変異を使い、体格や腹部の指標との関連を調べた。[7]

対象は16歳以上の欧州系の集団の29研究、計148,731人で、現在喫煙者、過去喫煙者、非喫煙者が含まれていた。非喫煙者も含む全体の人数である。現在、毎日紙巻きタバコを吸う人のデータは最大38,913人であり、結果を読む際には、この集団での関連を見ている点を押さえたい。18〜39歳の女性にそのまま当てはめるには、年齢と性別、集団の違いを考慮する必要がある。[7]

現在喫煙者では、対象となる遺伝子の少数アレルが1つ増えるごとに、BMIの幾何平均は0.74%低かった。95%信頼区間はマイナス0.96〜マイナス0.51%である。腹囲も0.40%低く、95%信頼区間はマイナス0.57〜マイナス0.22%だった。ここだけを抜けば、体格も腹囲も小さい方向に見える。[7]

ところが、腹囲をBMIで調整すると、関連の向きが逆になった。少数アレルが1つ増えるごとに腹囲は0.14%高く、95%信頼区間は0.05〜0.22%だった。腰と尻の周囲の比であるウエスト・ヒップ比も、BMIを調整した解析では0.10%高い方向だった。[7]

調整とは、ここではBMIの違いを統計的に考慮して比べることを指す。「集団全体として腹囲がどう違うか」と「同程度のBMIなら腹囲がどう違うか」は、別の問いになる。著者らの結論も、同じBMIであれば、喫煙量の増加に関連する遺伝的変異は腹囲の増加と関連する、というものだった。[7]

この読み分けを省くと、「タバコを吸うと腹囲が必ず大きくなる」とも、「腹囲まで小さくなるから問題ない」とも書けてしまう。しかし、どちらも比較条件を落としている。同じ研究で、BMI未調整の腹囲は低い方向、BMI調整後は高い方向だった。食い違いは数字の誤植ではなく、比べている問いの違いである。[7]

さらに、0.74%や0.14%は、タバコを1本追加した効果ではない。遺伝子の少数アレルが1つ増えることに対応する推定であり、自分の喫煙本数に掛け算して体重や腹囲を予測する値ではない。喫煙を始めた人が翌月どれだけ変わるかを測った試験とも区別する必要がある。[7]

この研究には、吸わない人の解析も含まれている。非喫煙者では、同じ遺伝的指標はBMIや腹囲が高い方向と関連し、現在喫煙者とは異なる結果だった。喫煙量の代理に使う遺伝的指標だからといって、関連の方向は喫煙状況によって異なる。現在喫煙しているかどうかを区別して読むことが、研究の設計上も欠かせない。[7]

また、BMI調整前のウエスト・ヒップ比の差はマイナス0.08%で、95%信頼区間はマイナス0.19〜プラス0.03%だった。この範囲は差がない値をまたいでいる。腹囲、尻の周囲、両者の比は似た言葉で登場するが、関連の強さは指標ごとに異なった。見出しにしやすい数字だけでなく、はっきりした差を捉えていない結果も残して読む必要がある。[7]

日本の健診では、女性の内臓脂肪に関連が見つかった

腹囲を使った研究に加え、内臓脂肪面積を調べた日本の研究がある。2014年の報告では、見かけ上健康な男女の喫煙者162人と、年齢を合わせた非喫煙者315人を比較していた。大阪大学の健診受診者を対象とした集団である。18〜39歳の女性にそのまま当てはめたときの関連の大きさは、この比較だけでは判断できない。[6]

男女とも、喫煙者は非喫煙者より中性脂肪が高く、HDLコレステロールが低かった。一方、内臓脂肪面積が有意に高かったのは女性の喫煙者であり、男性では同じ差は観察されなかった。年齢、BMI、喫煙は、女性の内臓脂肪面積の高さを予測する独立した因子として挙がった。女性では、頸動脈の壁の厚さの年間増加も、喫煙者の方が非喫煙者より大きかった。著者らは、喫煙習慣を女性の内臓脂肪蓄積と、自覚症状が現れる前の動脈硬化の進行に関わる重要な危険因子と結論している。体重の話だけでこの研究を紹介すると、血管についての結論が抜け落ちる。[6]

この男女差は、女性には関係があるが男性なら安心、という線引きではない。少なくともこの集団で、内臓脂肪面積の差が女性に現れたという結果である。同じ研究でも、中性脂肪とHDLコレステロールの違いは男女双方で認められている。内臓脂肪の結果だけを取り出して、男性への影響全体が否定されたとは読めない。[6]

また、これは人に喫煙を割り付けて体脂肪を増減させた介入ではなく、喫煙者と非喫煙者の比較として読むべき研究だ。年齢やBMIを考慮して関連が残ったことは重要だが、生活背景の違いが結果に影響している可能性は残る。女性の喫煙者に内臓脂肪が多かった、という観察と、喫煙だけが原因だという断定は分けたい。[6]

遺伝的指標を使った研究は同じBMIでの腹囲、日本の健診研究は女性の内臓脂肪面積を扱っている。測定したものも対象も異なるため、同じ効果の追試として数字を足し合わせることはできない。それでも、体格の小ささから腹部脂肪の少なさを推測してはいけない、という読み方は共有できる。[6][7]

数字で読む喫煙と体格のずれ

29研究・148,731人:現在・過去・非喫煙者を含む遺伝的指標のメタ分析の全体である。[7]

マイナス0.74%:現在喫煙者の少数アレル1つ当たりのBMIの差であり、1本吸った効果ではない。[7]

マイナス0.40%:BMIを調整する前の、同じ遺伝的指標に対応する腹囲の差である。[7]

プラス0.14%:BMI調整後の腹囲の差で、95%信頼区間は0.05〜0.22%だった。[7]

162人と315人:日本の健診研究の喫煙者と非喫煙者の人数であり、女性だけの人数ではない。[6]

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宮川涼 Founder

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