筋トレの筋肉痛は準備運動で防げる?始める前と終えた後で違う痛みへの効果を読む

筋トレの筋肉痛を防ぐため、準備運動とクールダウンはどちらを重視すればよいのか。痛みが少し減った歩行の試験と、差が出なかった腕や脚の試験を比較する。運動後のストレッチの研究も交え、予防と一時的な楽さ、痛みと筋力を分けながら、翌日の予定に合わせた準備の考え方を読む。

昨日は丁寧に準備運動をした。それなのに、朝、洗濯物を取りに階段を下りると太ももが痛い。終わった後のストレッチまで済ませた人ほど、手順のどこを間違えたのかと考えてしまう。

答えの芯は、準備運動をしても筋肉痛を完全には防げない、ということである。運動直前に歩いたことで、その後の痛みが少し減った無作為化比較試験はある。しかし、別の脚の試験や腕の試験では、準備運動による明確な予防効果は認められていない。筋肉痛が残ったことだけで、準備が失敗だったとは判定できない。[3][4][6]

また、始める前に動くことと、終えた後に動くことは同じではない。同じ試験で比べると、前者には小さな軽減があっても、後者には見られなかった。[6] 既存記事「HIITのクールダウンは次の動きに役立つ?乳酸の低下と出力を分けて読む」には運動後の出力の話を譲り、ここでは翌日以降の痛みを減らすための前後の違いを追う。

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準備運動で減ったのは、痛みの全部ではない

まず、前と後を同じ条件で比べた研究を見る。LawとHerbertによる無作為化比較試験は、健康な成人52人が対象で、男性23人、女性29人、年齢は17〜40歳であった。参加者を、準備運動とクールダウンの両方を行う群、準備運動だけの群、クールダウンだけの群、どちらも行わない群に分けている。男女を含む集団の平均なので、若い成人女性だけの効果として読むには慎重さが必要である。[6]

筋肉痛を起こすために行ったのは、傾斜のあるトレッドミルで、下り方向へ後ろ向きに30分間歩く運動である。準備運動とクールダウンには、それぞれ上り方向への前向き歩行を10分間用いた。つまり、運動の前後に何かを足した人と足さなかった人を、同じ本運動のもとで比較している。普段の筋トレをそのまま再現した試験ではなく、慣れない伸張性運動の前後を調べた試験である。[6]

伸張性運動とは、筋肉が力を出しながら伸ばされる運動を指す。筋トレなら、持ち上げた重りを制御しながら戻す場面を思い浮かべると理解しやすい。この研究で問われたのは、そのような慣れない運動に先立つ歩行が、後で感じる痛みを変えるかどうかであった。[6]

痛みの強さは、100mmの線上に印をつける方法で測った。運動から48時間後、準備運動によって痛みは平均13mm低下し、95%信頼区間は2〜24mmであった。信頼区間とは、推定した効果にどれほど幅があるかを表す数値である。著者らは、この結果を小さな軽減と結論づけている。痛みを消した、痛くなる人をなくした、という結果ではない。[6]

ここで13という数字を、痛みが起こる確率の低下に読み替えてはいけない。測っているのは、100mmの尺度上で感じる強さの差である。参加者のうち誰が痛くならなかったか、という人数の話とは異なる。同じ数字でも、線の長さと人の割合では意味が変わる。[6]

一方、クールダウンの平均効果は0mmで、95%信頼区間は−11〜11mmであった。平均値では差がなく、推定の幅は痛みが減る側にも増える側にもまたがる。この試験では、終わった後に同じように歩いても、翌々日の痛みを軽くする明らかな効果は見られなかった。[6]

駅まで歩いて帰れば準備不足を帳消しにできる、とは読めない結果である。ただし、帰り道を歩く行為そのものの価値を採点した試験でもない。問われているのは特定の条件での痛みの軽減である。運動後に落ち着く時間を取りたいという希望と、筋肉痛を予防できるという期待は、別々に持っておく必要がある。[6]

この研究を生活に移すなら、「先に動く時間には小さな軽減を期待できる場合がある」が適切である。「10分歩けば、どんな筋トレでも痛くならない」まで進めると、運動の種類も効果の大きさも入れ替わってしまう。試験で使われた時間は万能の処方ではなく、その結果が得られた条件なのである。[6]

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効かなかった試験まで並べると、条件の違いが見えてくる

準備運動によい結果が出た試験だけを読むと、残る仕事は全員に同じ手順を勧めることに見える。しかし、健康な男女62人を調べたHighらの無作為化比較試験では、異なる結果が出ている。参加者は、太ももの静的ストレッチ、踏み台での準備運動、その両方、どちらもなし、という条件に分けられた。男女混合集団での結果であり、若い成人女性の普段の筋トレへは、運動条件の違いも踏まえて当てはめる必要がある。[3]

静的ストレッチとは、筋肉を伸ばす姿勢を保つ方法である。この研究の本運動は、右脚では筋肉が縮みながら力を出し、左脚では伸ばされながら力を出す踏み台運動で、本人が続けられなくなるまで実施した。その後は5日間、24時間ごとに痛みを評価した。[3]

痛みが最も強かったときの値には、準備の条件による差も、男女による差も認められなかった。一方、伸ばされながら働いた脚では、縮みながら働いた脚より痛みが強かった。著者らは、疲労困憊まで行う運動による筋肉痛を、静的ストレッチや準備運動は予防しなかったと結論づけている。[3]

ここには、研究を読み分けるための大事な点がある。前の歩行試験は運動から48時間後の痛みを示し、この踏み台試験は追跡中のピークを比較している。運動の方法も、続ける限界まで行ったかどうかも異なる。結果の違いを見て、準備運動の効果がある、ないのどちらかを消すのではなく、同じ問いをまったく同じ条件で試した研究ではないことを押さえたい。[3][6]

腕を調べたEvansらの比較試験も参考になる。トレーニングをしていない人を対象に、自分で筋肉を動かす準備運動と、機器で温める受動的な準備を比べた。肘を曲げる筋肉に伸張性運動を行わせ、その後の筋力、動く範囲、腫れ、痛み、血液中の酵素の変化を追っている。[4]

ここでの酵素はクレアチンキナーゼで、筋損傷の間接的な指標として用いられた。準備を行った群と行わなかった群との間で、筋損傷の指標に差は認められなかった。強く温める受動的な準備は腫れを抑える点で有利な可能性があったが、その条件の人数は4人であり、予備的な結果とされている。痛みなど、ほかの症状の予防や早い解消は示されなかった。[4]

温めたことと、翌日の痛みを防げたことは直結しない。この研究で使われたのは肘の筋肉を機器で温める方法であり、暖かい部屋で行う運動とは条件が違う。「温まった実感があるから、慣れない運動も多くこなせる」という予定変更の根拠にはしにくい。[4]

さらに、50人を対象としたRodenburgらの無作為化比較試験では、準備運動とストレッチを運動前に、マッサージを運動後に組み合わせた。前腕の筋肉に30分間の伸張性運動を行わせたところ、腕を伸ばしたときの痛み、最大筋力、肘の曲がる角度、血中の酵素には介入による差が見られた。しかし、押したときの痛みや、別の角度・血液の指標には差がなかった。[2]

著者らの結論は、組み合わせによって負の影響の一部は軽減したが、結果は一貫しないというものである。全部入りの準備とケアであっても、改善した項目と、差がなかった項目がある。また、組み合わせの比較から、準備運動だけが効いた、マッサージだけが効いた、と担当を割り振ることもできない。[2]

これらの試験を自分の予定に引き寄せるとき、まず確認したいのは、準備の名前より比較の中身である。歩行試験では前後に同じ種類の運動を置き、踏み台試験では伸ばすことと動くことを分け、腕の試験では温め方を変えている。どれも「丁寧に準備した人」という印象より、実施した手順を具体的に比べている。[3][4][6]

たとえば、昨日は脚、今日は腕という違いがあるのに、痛みだけを比べて準備法の優劣を決めるのは難しい。研究間でも部位や本運動が違えば、結果をそのまま交換できない。小さな軽減を見込むことと、痛みを避けられる条件が確立していることには距離がある。その距離を残して読むことが、準備運動への期待を適切に保つ助けになる。[3][4][6]

数字で読む準備運動と筋肉痛

52人:準備運動とクールダウンの有無を組み合わせて比べた健康な成人の人数である。[6]

10分:その試験で、運動の前後にそれぞれ用いた上り方向への前向き歩行の時間である。[6]

13mm:100mmの痛み尺度で見た、準備運動による48時間後の平均軽減量。95%信頼区間は2〜24mmである。[6]

0mm:同じ試験でのクールダウンの平均効果。95%信頼区間は−11〜11mmであった。[6]

62人:静的ストレッチや準備運動による、筋肉痛のピークの差が認められなかった踏み台試験の人数である。[3]

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宮川涼 Founder

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