ダイエットのおやつに置くスルメのタウリンが、戻し汁へ出るのかを、乾燥で表面へ移った析出物と、95度で煮た外套の排液から読む。水に溶ける画分ではタウリンが主なアミノ酸の一つで、炒めた足ではうま味のアミノ酸が肉の側に積もった。浸した時間の損失率には置き換えない。
夕食の支度中、乾いたスルメを水の入った器に落とす。底が少し濁る。ダイエットのおやつとして乾いたまま置いていたのに、栄養は戻し汁のほうへ出てしまったのではないか、と手が止まる。
水とタウリンが一緒に動いた到着点を、乾燥スルメの試験は表面に置いている。天日で乾かしたアルゼンチンイカ(Illex argentinus)の表面析出物、ブルームのうち、窒素を含む画分の乾燥重量では、タウリンが 866±177 mg/g と、並んだ遊離アミノ酸のなかで大きい。夜のテンパリングで水が分配し直されると、アミノ酸と脂肪が表面へ移った、と著者らは書く。[2] いっぽう、生のジャンボイカ(Dosidicus gigas)の外套を 95°C で 25 分、肉と水を 1.2 対 5 で煮た排液には、味に関わる遊離アミノ酸が出ていた。その 6 割は、グルタミン酸、セリン、グリシン、アルギニン、アラニン、ロイシン、リシンに対応する。[19] 筋肉から水で分けた分子量 1 kDa 未満の画分では、主なアミノ酸がアルギニン、サルコシン、タウリンだった。[9] 水で抽出できる成分にタウリンは含まれるが、家庭で戻したときの移行量は、この三つの実験からは決められない。
吸水で重さの分母と塩分が変わる問いは、既存記事「ダイエットのスルメは戻すと軽い食品になる?吸水で増える重さと塩分の分母を読む」に譲る。あたりめを水に戻した塩と残る成分は、「間食のあたりめは戻すと塩分が減る?水に移る成分と残る栄養を研究で読む」の側である。こちらは、タウリンと遊離アミノ酸が、どの水の動きと並んでいたかだけを見る。

表面の析出物では、タウリンが窒素画分の大きい数字だった
ブルームの層は、遊離アミノ酸と脂肪から成っていた。窒素を含む画分を分け、走査電子顕微鏡に元素分析を足した方法、赤外分光、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィーで見ている。食品の組成を調べた評価研究である。[2] 18〜39 歳の女性が食べた場合の体重変化に、そのまま当てはめることはできない。
窒素画分の乾燥重量 1 g あたり、タウリンは 866±177 mg、グリシンは 82±7 mg、アラニンは 381±56 mg、グルタミン酸は 178±26 mg だった。脂肪の画分はパルミチン酸 29%、エイコサペンタエン酸 16%、ドコサヘキサエン酸 41% に富む。[2] 表面の粉をアミノ酸の純品だと思うと、脂肪の列が居残る。パルミチン酸の 29% は、袋の中で勝手に生まれた錠剤の表示ではない。析出物は、アミノ酸と脂肪が同じ表面に出た層である。
移動のきっかけとして著者らが書くのは、夜のテンパリングである。水が分配し直し、アミノ酸と脂肪が表面へ移るのを助けた。その後、乾燥品をデシケーターに入れ、30±3°C、飽和食塩水で湿度 75% に保つと、10 日後に表面のブルーミングが起きた。著者らは、この析出が天日乾燥スルメの特徴的な感覚の性質を強めた、と結んでいる。[2] タウリンが水と動いた先は、捨てる汁ではなく、まだスルメの表面だった、というのがこの試験の構図である。
疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。
水で分けた低分子の主なアミノ酸に、タウリンがいた
ジャンボイカの筋肉は、凍結しても機能が残りやすい。著者らは、その理由の候補を分子量の小さい化合物に置き、水に溶ける 1 kDa 未満の画分を赤外分光で見ている。主な成分は、遊離アミノ酸 18.84 mg/g、炭水化物 67.1 µg/mg、そのうち単糖(グルコース、フコース、アラビノースの合計)51.1 µg/mg、塩化アンモニウム 220.4 µg/mg だった。主なアミノ酸はアルギニン、サルコシン、タウリンである。[9]
この画分を、筋肉に含まれる質量分率のまま使うと、水の氷点は −1.2°C まで下がった。再結晶の抑制は 0.66°C で見ている。凍結と解凍のあと、筋原線維たんぱく質の安定は、この画分を除いた筋肉(対照)より有意に保たれた。浸透圧調節に関わる溶質が、たんぱく質の変性や凝集と、氷の再結晶を抑え、凍結下でも筋肉の構造を保った、と著者らは結論する。ごく低い質量分率でも、その低温安定はあった。[9]
それでも、タウリンの居場所のヒントにはなる。水で抽出できる画分の主なアミノ酸に、タウリンは名を連ねている。[9] 乾燥のブルームで表面へ移ったタウリン[2]と、生の筋肉で水溶性画分にいたタウリン[9]は、どちらも「たんぱく質の鎖に組み込まれた残基」としては書かれていない。遊離のアミノ酸として扱われている。鎖を切らないと出てこない成分、という想像とは、置き場が違う。
95度の煮汁が運んだのは、味の遊離アミノ酸だった
工業的な加熱を模して、ジャンボイカの外套を 95°C で 25 分煮ている。肉と水の比は 1.2 対 5。排液の化学的酸素要求量は採取によって 27.4 から 118.5 g O2/L、5 日の生物化学的酸素要求量は 11.3 から 26.7 g O2/L と、3 回の採取で大きく開いた。排液の 1% が全固形分で、その 75% が粗たんぱく質だった。[19]
味に関わる遊離アミノ酸の総量のうち 60% は、グルタミン酸、セリン、グリシン、アルギニン、アラニン、ロイシン、リシンに対応した。ヌクレオチドは、ヒポキサンチンが著しく多く、その次が ADP、AMP、ATP、IMP、イノシンの順だった。ばらつきの理由として著者らは、幼体か成熟かという生理的な違いをおそらく挙げる。排液中の固形分は回収でき、イカを模した食品の風味原料になりうる、とも結んでいる。[19]
著者らの結論は、捨てる液の損得ではなく、固形分を風味原料として回収できる可能性に向いている。[19] ダイエットのおやつとして戻し汁を飲むか捨てるかの指示は、この回収の話からは出ない。出るのは、水に接した筋肉から遊離アミノ酸が液側へ移りうることと、その量の見え方が個体の成熟で揺れうることだ。
台所で知りたいのは、器に入れたスルメから何がどれだけ出たかである。一方、この煮汁の研究が量ったのは、加熱後に集めた排液の組成だ。排液の固形分に占める粗たんぱく質の割合と、加熱前の肉から失われた割合では、割り算の分母が異なる。固形分の組成を読むときは、肉全体の損失率へ話を飛ばさず、液の中に実際に測られたものを追うと、結果の意味がつかみやすい。[19]
乾燥表面の研究でも、量った場所はスルメ全体ではなく析出物の画分だった。[2] 袋から取り出した品の重さ、表面から集めた層の重さ、煮汁から回収した固形分の重さは、それぞれ違う。タウリンの数字が大きく見えても、食べる量と結び付ける前に、その数字がどの試料に付いた値かを確かめたい。水溶性画分での成分の同定[9]は、水と一緒に取り出せる成分を知る手掛かりになる。家庭の浸水での移行量を求めるには、戻す前の品と戻した後の身、液を対応させた測定が必要になる。
数字で読むスルメのタウリンと水
866±177 mg/g:天日乾燥した Illex argentinus の表面析出物のうち、窒素画分の乾燥重量あたりのタウリン。アラニンは 381±56、グルタミン酸は 178±26、グリシンは 82±7 mg/g。[2]
29%、16%、41%:同じ析出物の脂肪画分におけるパルミチン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸。アミノ酸だけの粉ではない。[2]
18.84 mg/g と 220.4 µg/mg:ジャンボイカ筋肉の水溶性低分子画分の遊離アミノ酸と塩化アンモニウム。主なアミノ酸はアルギニン、サルコシン、タウリン。氷点は −1.2°C まで下がった。[9]
1% と 75%:95°C、25 分、肉と水 1.2 対 5 で煮た外套の排液。全固形分は排液の 1%、その 75% が粗たんぱく質。遊離アミノ酸の 60% は 7 種に対応した。[19]
27.4〜118.5 g O2/L:同じ排液の化学的酸素要求量。3 回の採取で開いた幅で、5 日の生物化学的酸素要求量は 11.3〜26.7 g O2/L。[19]
79.18%:アルゼンチンイカの足を 120°C で 0、2、5、10、15 分炒めたとき、主成分分析の第 1・第 2 成分が説明した分散。加熱時間で試料は分かれた。[3]
疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。
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